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は じ め に
ヒトの固有受容体は筋や腱が引き伸ばされることによって反射を引き起こし,四肢に安定性を与え,過度の運動を抑制する1).一方,変形性膝関節症(膝OA)患者では関節包の肥厚などによって,正常な解剖学的位置関係が変化し,靱帯の不安定性となり固有受容体の機能が障害されていることがある2).
膝OAに対する膝蓋部の皮膚が露出したサポーターの作用機序は,固有知覚の改善であるとの報告がある.Herringtonら3)は,膝蓋部の皮膚が露出した軟性装具装着前後で三つの異なった種類の固有知覚の試験(軌跡試験,再現試験,角度認知試験)を行った.その結果,膝蓋部皮膚露出型サポーターを装着するとすべての固有知覚試験が鋭敏になった.
過去の筆者の研究では,膝軟性装具の前面8ヵ所に穴を開け,皮膚の露出面積を増やしたクモの巣状穴あき装具の装着時には,穴なし装具装着時に比べて位置覚を評価する角度再現試験の誤差が有意に減少し,重症度指数の改善率が有意に上昇した4).このため,穴あき装具は膝OA患者の膝の安定性を改善し,膝疼痛を引き起こすような荷重を回避する可能性があると報告した.
Pruitt5)は膝OAによる靱帯の不安定性は角度認知覚を変化させ,疼痛の増悪を引き起こすが,この靱帯の不安定性に対して支柱つき膝サポーターは,内外側方向への動揺性(外側スラスト)を制御することによって位置覚を改善し,膝疼痛を緩和すると述べている.
われわれは穴あき装具の外側にヒンジ型支柱を挿入すれば,支柱による安定性と穴あきによる皮膚露出面積の増加によって位置覚が相乗的に改善し,膝疼痛が緩和するという仮説を立てた.そこで本研究では,装具メーカーに作製を依頼した支柱つき穴あき軟性装具と文献4での研究で使用した穴あき軟性装具との間で,角度再現試験の誤差と8週間の装具装着による膝疼痛の改善度を比較した.
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