臨床雑誌整形外科 69巻1号 (2018年1月)

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は じ め に

 『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版』1)において,骨密度は骨粗鬆症診断のもっとも重要な項目に位置づけられている.骨密度が1SD低下することで65歳の大腿骨近位部骨折の相対リスクは男性2.94倍,女性で2.88倍増大するとされる.しかしながら日常臨床の場では,骨密度が高値でも軽微な外力で大腿骨近位部骨折をきたす症例をしばしば経験する.そういった症例においては,たとえ受傷前に骨密度を測定する機会があっても骨折のリスクが高くないと判断されてしまい,骨粗鬆症治療の対象から外れてしまうこととなる.

 本研究の目的は骨密度が高値であるにもかかわらず,大腿骨近位部骨折を生じた症例の臨床的特徴を明らかにすることである.

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は じ め に

 経皮的内視鏡下頚椎後方椎間孔拡大術(percutaneous endoscopic posterior cervical foraminotomy:PECF)1)では,最小侵襲で安全に椎間孔の除圧が可能であり椎間の動きも温存できる.しかし,椎間孔の除圧量に比例して椎間関節も切除される.椎間不安定性を惹起させないため椎間関節切除率(facet resection rate:FRR)が50%を超えないようにすべきであるとの報告2,3)があり,十分な除圧を行ううえでの制約となる.さらに,椎間関節切除率を50%としても,実際には椎間孔の狭窄は出口部まで広い範囲に及んでいることもあり,骨切除の外側縁部での最小椎間孔断面積(foramen area around the lateral edge of the resection area:FAL)が十分に広くならないこともある.そのFALが術後成績に関係しているかはいまだ不明である.

 本研究の目的はそれを明らかにすることである.また,術中にはどの程度椎間関節を切除したのか,外方への除圧が十分なのかは神経根を観察しても判断することがむずかしく,外方除圧範囲確定に決定的な方法はない.経皮的内視鏡は細い器具であり術中透視正面像でも周囲構造と重ならず位置を認識しやすいことから,術中透視画像正面で切除範囲を判断する方法を行った.またそれが妥当なのか否かも検証した.

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は じ め に

 近年,高齢者や易感染性宿主,耐性菌の増加により,治療に難渋する化膿性脊椎炎が増加傾向にある1).起炎菌同定後に適切な抗菌薬を選択することが重要であることに異論はないが,診断や治療法に関しては,医師や施設間での相違がある.本稿においてわれわれは3施設間の化膿性脊椎炎に対する治療方針・成績を比較・検討した.

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は じ め に

 内側型変形性膝関節症(膝OA)に対する装具療法として普及しているものの一つに外側楔状足底挿板(足底板)がある.Kakihanaら1)は,膝OA患者に足底板を装着させて歩行分析を行うと13例中2例(15.4%)で足底板を装着しても距骨下関節に外反モーメントが現れず,膝関節内反モーメントが増加し膝関節内側にかかる負荷が増加したと報告した.その理由としてKakihanaらは,足底板の膝OA患者の距骨下関節角度に対する影響は一定ではないと述べている.

 Chapmanら2)は,裸足での足部の最大外がえし角度が小さい膝OA患者は,正常な患者に比べて足底板を装着した時に内反モーメントの低下が有意に小さかったと報告している.Sawadaら3)は,足部の立位単純X線像で中間型の参加者では,最大内反モーメントが裸足歩行時に比べて足底板装着時に有意に低下したが,回内型や回外型の足の参加者では低下しなかったと報告している.

 筆者は本誌に足部の外がえし可動域(ROM)が小さい男性膝OA患者は,傾斜の高い足底板より傾斜の低い足底板を装着したほうが効果的であると報告した4)

 足底板の膝OAに対する効果が足部の外がえしROMによって変化するのであれば,足底板を装着すると同時に足部外がえし訓練を併用したほうが効果的ではないかと考えた.

 そこで,本研究では,43例の膝OA患者に足底板を処方し,無作為に足部外がえし訓練を指導する群と指導しない群に分け,治療効果を両群間で比較した.

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は じ め に

 脳性麻痺などの小児脳原性疾患では,上位運動ニューロンの障害や神経伝達路の障害などに起因する痙性,痙縮により,さまざまな足部変形がみられる.痙縮の強弱のみならず,運動発達のレベルや足部の成長の状態などにより,踵足や尖足に内外反の要素が加わり,徐々に変形がすすんでいく.本稿では,最近5年間に経験した脳性麻痺児の足部変形をgross motor function classification system(GMFCS)1)との関連や変形に対する治療を後方視的に検討したので報告する.

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は じ め に

 近年,がんに対する分子標的治療薬,新たな抗悪性腫瘍薬などの導入により,進行がん患者の生命予後が改善している1).これに伴い骨転移を有する患者も増加し,なんらかの介入を要する機会が増加していると考えられる.骨転移診療は,施設ごとに診療体系が異なっており,近年では骨転移キャンサーボード(cancer board:CB)を行い,多職種で骨転移患者の治療方針などを決定する施設も増加している.当院は「都道府県がん診療連携拠点病院」であるが,本調査を行った時点では骨転移診療に関するCBはなく,原発科主治医(担当医)が必要に応じて,整形外科や放射線治療科などに紹介していた.また,骨転移診療を担う整形外科医にとっては,整形外科以外の原発科医師(他科医師)が骨転移に関して,どれほどの知識をもち,どのような対応を行い,どのような問題を抱えているかは,診療するうえで知っておきたい事項である.

 本研究では骨転移診療の実態や問題点,他科医師の骨転移診療に対する意識を明らかにするため,癌診療を行っている他科医師に骨転移診療に関するアンケート調査を行った.

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 長年整形外科医をやっていると,治療困難な疾患に遭遇することがある.もとより,自身の知識不足や経験不足により診断や治療が困難な場合には,その道の専門家に紹介し診療を委ねることに何の抵抗もないし,患者のためには是非そうすべきである.しかし,教科書にはありふれた疾患として載っていても実際には全国の多くの整形外科医にとって,ほとんど治療経験のない疾患が存在している.その一つが梨状筋症候群である.

 私と梨状筋症候群の初めての出会いは,もうかれこれ27年前になる.その頃の私は電気生理学の研究のため米国に留学し,帰国した直後であった.37歳・女性のその患者は,いわゆる坐骨神経痛を訴え,他施設をドクターショッピングの如く訪れるも,どの施設でも画像上脊椎や骨盤内に全く異常所見がないため心療内科を勧められ続けてきたと涙目で話していた.その当時の私は,最新の電気生理学をアイオワ大学教授・Jun Kimura先生に厳しく鍛えられ過剰な自信を持っていたため,早速詳細な電気生理学的検査を施行した.しかし,単一神経根障害を示唆する所見はおろか,全く異常所見を得ることができず,本人に謝りながら2年間外来で経過観察させていただいた.その間,私には鎮痛薬を投与することくらいしかできず,思いあまって向精神薬を投与し,それに気づいた彼女に泣かれたことも何度かあった.それでも私のもとに通ってくれる彼女に驚くとともに,自分の整形外科のプロとしての無力感にさいなまれていた.学会に出張するたびに経験豊富な先生を捕まえて治療法についてアドバイスを求めたが,答えは決まって「神経内科か心療内科に任せては?」というものであった.それから私は坐骨神経の殿部での圧迫を証明するための電気生理学的新技術開発に真剣に取り組んだ.幸運にもその頃,臨床で梨状筋症候群の診断に有用であるとされてきたFreibergテスト,Paceテストなどを用いての診断に自信が持てなかったところ,股関節伸展位で外旋ストレスをかける腹臥位内旋テストを考案し,有用ではないかという感触を得ていた.

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 私がいつも若手医師たちに言っていることに「Pitfallの神様」というものがあります.手術になんらかの合併症はつきものであり,特に私が専門としている脊椎外科においては時に深刻な合併症を経験します.何人もそのような合併症を経験することなく,外科医として成長できれば言うことはないのですが,実際にはそうもいきません.多くの合併症を経験した外科医の方が熟練した外科医であり,彼らの意見には重みがあります.人は失敗から学ぶという言葉があります.実際,本当に役に立つのは成功話や武勇伝ではなく,どんな失敗をしたか,どうしたらそれを避けることができたかといった話ではないでしょうか? ある一定の確率で合併症が生じるのであれば,手術そのものを多く経験した外科医ほど,それだけ多くの合併症を経験することになります.

 一方,ある一定の確率とは述べましたが,そこには幅があって,比較的高い確率で合併症を経験する外科医と,そうではなく比較的低い確率でしか経験しない外科医がいることも事実かと思います.その差はなんでしょうか? 型通りの手術を数多くこなす外科医は,合併症の経験も自ずと少なくなるでしょう.平生から難手術に挑戦している外科医は,それだけ合併症を経験する確率が高くなることは当然かと思います.あくまで私の印象ですが,繊細で注意深い外科医が必ずしも合併症を経験する可能性が少ないとも言えません.平生の手術は全く問題なく,極めて丁寧かつ慎重な手術をする外科医が,数年に一度冷や汗をかくような合併症を繰り返し起こすこともあります.私の理解では彼らは自分のことをよくわかっているがために,さらに慎重にならざるをえなかったのではないかと思っています.

診療余卓

起きていたのですか?
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 真夜中に病棟ナースや救急当番医から電話がかかってくることがあります.そんなとき,目の覚めた大きな声ではっきりと話していますか? 筆者(もともと声は大きいほう)は以前,午前3時ころの電話で「先生,まだ起きていたのですか?」と褒められた(?)ことがあり,それ以来,さらに意識して夜中の電話にははっきりした声で応対するように心がけています.

 当直をしていて救急患者のことなどで他科の医師に電話で相談することもよくありますが,かけるほうは真夜中に申し訳ない,とかなり気をつかうものです.電話先の声が元気のよい,明るい声だとほっとするし,逆に眠たそうな不機嫌な口調だと,当直のストレスも倍増します.電話に出る前に一度咳払いでもして,大きな,少し高めのトーンで話したいものです.

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 三次元的に生体組織を構築するBio 3D printingの技術は,すでに血管,気管,角膜など多くの再生医療分野で研究開発がすすめられている.中山功一(佐賀大学)らはスカフォールドを使用せずに細胞のみから形成される複雑な立体構造を,剣山法を用いて構築するBio 3D printer Regenova(サイフューズ社,東京)を開発した.特に血管の分野においては,血管内皮細胞,平滑筋細胞,線維芽細胞の3種類の細胞を用い,細胞を凝集させることで作成した細胞塊(spheroid)を,コンピュータ上で作成した3Dデータに基づいてBio 3D printerを用いて人工的に血管様構造体を作成し,移植する段階にまで到達している1)

 一方,神経欠損を伴う末梢神経障害において自家神経移植がゴールドスタンダードな治療であるが,採取部位の侵襲性などの問題があるため,人工材料製の管腔状の構造体(神経導管)を用いて神経欠損部を架橋することで末梢神経を再生する方法が,すでに臨床の現場でも施行されている.さらに,この神経導管内に支持細胞としてSchwann細胞や間葉系細胞などを加えることで,末梢神経の再生をさらに促進する方法が行われているが,投与した細胞の導管内での残存率や生存率については議論の余地があるところである2).われわれはこの支持細胞に注目し,Bio 3D printingの技術を用いることで,細胞のみからなる神経導管(Bio 3D conduit)を作成し,ラット坐骨神経欠損モデルにおいて,その良好な末梢神経再生を歩行解析,電気生理検査,前脛骨筋による筋湿重量,免疫染色,組織学的評価で確認した3)

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 典型的な仙腸関節障害の特徴的な疼痛域は,上後腸骨棘(posterior superior iliac spine:PSIS)を中心とした殿部の痛みである1).このような殿部痛をもち,仙腸関節ブロックで疼痛が70%以上軽快する症例を仙腸関節障害と診断する1,2).そして,仙腸関節障害に仙腸関節周辺の障害を合併する症例が少なくない3).仙腸関節障害に合併した仙結節靱帯炎と診断した2例に対して,仙結節靱帯のストレッチと大殿筋の筋力強化で疼痛の改善が得られたので報告する.

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 尺骨急性骨塑性変形を伴った小児Monteggia脱臼骨折は比較的まれではあるが,初診時に見逃され,陳旧例で治療される症例も少なくない1).本稿では本症の新鮮例1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

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 生来の関節弛緩性がある症例において,30年前に屈筋腱再建術が行われ,その後高度スワンネック変形を生じた1例を経験したので報告する.

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 人工膝関節全置換術(TKA)後の関節炎の原因は,感染,関節血症,人工関節の弛み・摩耗,結晶沈着性疾患などがあり,その鑑別は困難な場合がある.

 本稿では,TKA術後に同側の膝窩部から下腿部に嚢胞を形成し,関節炎を続発した2例を経験したので報告する.

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 人工膝関節全置換術(TKA)の際,深部静脈血栓塞栓症(DVT)を予防するために抗凝固薬投与が推奨されている1).本稿ではTKA術後10日間の抗凝固薬投与終了後にいったん下がっていたD-dimer値が再上昇したことを契機に無症候性DVTの診断にいたった症例を経験したので,報告する.

Vocabulary

軟骨細胞シート 高橋 匠
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 膝関節軟骨は無血管組織であるため,自然修復能が低い.加齢や外傷により関節軟骨の変性や摩耗が生じ,病変の進行により変形性膝関節症(膝OA)などを発症し,痛みや可動域制限を引き起こす.末期では,人工膝関節による置換手術が最善の処置となる.

 これまで外傷や加齢による軟骨欠損に対して骨髄刺激法,骨軟骨柱移植,自家培養軟骨細胞移植術(autologous chondrocyte implantation:ACI)などが軟骨再生を目的として行われてきた.しかし再生した軟骨は本来の硝子軟骨には劣る線維軟骨が多く含まれることや,これらの手技が適応とされる軟骨欠損の大きさへの制約などが懸念される.軟骨細胞シートはこれらを背景に,膝OAを伴う広範囲に及ぶ軟骨の部分欠損(骨には及ばない欠損)と全層欠損(骨まで及ぶ欠損)の再生を目的とした研究から開発されてきた.

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は じ め に

 われわれは,胸椎黄色靱帯骨化症例に対して,三次元融合画像を用いて骨化巣評価ならびに手術計画を行い,安全に手術を遂行できた症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

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は じ め に

 ここ10年においては橈骨遠位端骨折(distal radius fracture:DRF)に対する外科的治療には掌側ロッキングプレート(volar locking plate:VLP)がもっとも一般的な手術的治療として行われるようになった1,2).VLPは専門施設だけでなく,一般整形外科病院などでも広く行われており,若い医師でも経験できる手術の一つである3~5).DRFの治療の変遷としては鋼線固定から始まり創外固定やノンロッキングプレートを経て現在ではVLPが主流となっている1,2).DRFの外科的治療を粉砕があっても鋼線固定や創外固定で行ってきた年配の医師たちと,VLPから始めた若い医師とでは治療方針に違いがある可能性がある.

 われわれは,アンケート調査を行い,経験年数が10年目以下の医師とそれ以上の医師のDRFに対する治療方針の違いについて検討した.また,VLPの手術件数と長母指屈筋腱(flexor pollicis longus:FPL)断裂の発生数についての調査も併せて行った.

連載 X線診断Q&A

X線診断Q&A 高田 逸朗
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Question

 症 例.17歳,男.高校2年生.

 主 訴:右小指痛.

 家族歴・既往歴:特記すべきことはない.

 現病歴:体育の授業中にバレーボールが右小指に当たって受傷した.

 身体所見:右小指の疼痛,腫脹が著明であった.疼痛のため,小指の自動運動は困難であり,知覚障害はなかった.受傷前には腫脹,疼痛などの自覚症状はなかった.

 血液検査所見:特に異常所見はなかった.

 単純X線所見:図1に初診時右小指単純X線像を示す.

連載 卒後研修講座

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は じ め に

 現在使用されている骨粗鬆症治療薬は骨吸収を抑制するが骨形成も抑制する,ないしは骨形成を促進するが骨吸収も亢進させる.骨吸収抑制薬により骨吸収と骨形成を長期間抑制して代謝回転を低下させ続けると,骨組織に微細損傷が蓄積するなどの問題点がある.骨形成抑制を伴わない骨吸収抑制薬や骨吸収亢進を伴わない骨形成促進薬など,さらに改良された治療薬が求められるところである.本稿では現在臨床で使用されている治療薬と,2017年9月の現時点で第Ⅲ相臨床試験が完了した三つの新しい薬剤について,骨代謝制御法を中心に概説する.

連載 専門医試験をめざす症例問題トレーニング

骨・軟部腫瘍 林 克洋
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 症 例.68歳.女.

 主 訴:右大腿部腫脹.

 家族歴・既往歴:特記すべきことはない.

 現病歴:5年ほど前から右大腿部前面の腫れを自覚していたが,痛みはなく放置していた.徐々に増大してきた感じがあり,気になってきたため受診した.

 初診時所見:右大腿部前面に,20×10cm大の弾性軟な腫瘤を触知した.圧痛,Tinel徴候,皮膚との癒着はなく,発赤や熱感もなかった.採血に特に異常はなかった.大腿部の外観所見およびMRIを示す(図1,2).

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 症 例.73歳,女.

 主 訴:両膝痛,両手関節痛,両手指痛.

 家族歴・既往歴:特記すべきことはない.

 現病歴:身長152cm,体重60kg.3年前に左膝痛が出現し,近医で変形性膝関節症(膝OA)の診断でヒアルロン酸製剤の関節内注射治療を受けていた.軽度の両膝関節痛は残存していた.戸外の平坦な道を歩くことや階段を5段上がることは少し困難であったが,いずれも可能であった.3週前から特に誘因なく両膝痛が悪化し,関節穿刺とヒアルロン酸注射を受けた.効果は一時的であり,その後両膝痛がさらに増悪し,歩行が困難となったため紹介されて当院を受診した.数日前から両手関節,両手指にも痛みが出てきた.

 初診時所見:歩行が困難で車椅子で来院した.両膝に疼痛・腫脹があり,両膝の可動域(伸展/屈曲)は−20°/95°であった.両手関節,両中指近位指節間(PIP)関節に疼痛・腫脹があった.手背・足背に浮腫はみられなかった.両膝穿刺で黄色漿液性の関節液が各40mLひけた.検鏡で結晶はみられなかった.

 血液検査所見:白血球7,000/μl(好中球72%,リンパ球21%),ヘモグロビン12.0g/dl,CRP 6.1mg/dl,リウマトイド因子(RF)299(施設正常上限18)IU/ml,抗CCP抗体1.3(施設正常上限4.4)U/ml,抗核抗体陰性,赤沈112/時,GOT 20IU/l,GPT 18IU/l,尿素窒素21.6mg/dl,クレアチニン0.6mg/dl,eGFR 73.2ml/分/1.73m2であった.

 X線所見:両膝立位正面像(図1a),両手関節正面像(図1b),両手正面像(図1c),胸部X線撮影で異常はなかった.

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【要 旨】

 目 的:腰椎固定術は,腰椎変性疾患の症状緩和に関して有効であるが,肥満がその術後成績にどの程度関与するかは明確ではない.本研究の目的は,大規模な前向き調査により肥満が腰椎固定術後の成績に及ぼす影響を明らかにすることである.

 対象および方法:2008年1月~2013年12月に,腰椎後方固定術を施行した805例を対象とした.背景因子と術前および術後1年のOswestry Disability Index(ODI),腰下肢痛のvisual analogue scale(VAS)を調査し,body mass index(BMI)<25を正常体重群(N群),25以上30未満を過体重群(Ow群),≧30を肥満群(O群)に分けて比較・検討した.

 結 果:805例の内訳は,N群204例(25.3%),Ow群365例(45.3%),O群236例(29.3%)であった.術前の運動時間は,O群で週に平均2時間と有意に少なかった(p<0.001).術前のODIと腰下肢痛のVASは3群間で有意差はなく同程度であった.術後1年でのODIの変化量は,N群−25,Ow群−24,O群−23(p=0.013)と近似していたが,ODI≧40の高度障害例の割合がN群14.7%,Ow群17%,O群24.2%とO群で有意に高かった(p=0.0052).術後1年での腰下肢痛はOw群・O群と比べN群で有意に改善していた(p<0.05)

 結 論:腰椎固定術は肥満例に対しても有用であるが,その術後成績は正常体重例に比し劣る.

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【要 旨】

 目 的:人工股関節全置換術(THA)において,シミュレーションでカップ設置高位が可動域(ROM)に与える影響を検討することである.

 方 法:Crowe分類type Ⅱもしくはtype Ⅲの片側性の変形性股関節症32例を対象とし,シミュレーションソフト(Zedhip:Lexi社,東京)を用いて解析を行った.涙痕間線~骨頭中心の垂直距離(vertical center of rotation:V-COR)の平均値15mmを原臼位とした.原臼位よりカップを内板に沿わせ5mmずつ45mmまで上方化し,それぞれの高位におけるカップcenter edge(CE)角となんらかのインピンジメントまでのROMを計測した.

 結 果:原臼位でカップCE角0°以上を満たす症例はわずか40.6%であり,V-COR 35mmまで割合は増加し,40mm以上では逆に減少した.屈曲・内旋は上方化するほどROMは減少し,伸展・外旋では上方化の影響は少なかった.

 結 論:カップの原臼位設置では十分な骨性被覆を得られず,高位設置せざるをえない状況がある.V-COR 35mm以上の高位設置になるほど屈曲・内旋でROMは減少した.高位設置の許容範囲はROMの観点からV-COR 35mm程度である.

喫茶ロビー

古地図に想う 中村 孝志
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 京都大学の広報誌に『紅萠』がある.年一回の発刊で,2017年号が手元に届いた.平成8年(1996年)と明治22年(1889年)の大学周囲の地図を並べたものが表紙を飾っている(図1).今回は教養・共通科目が特集されているが,その中で最初に取り上げられているのが地域地理学,「地図に残された歴史の後をさぐる」というもので,この関連で古地図と現代の地図が並べてあるようである.

 解説をみると,明治の地図には吉田神社や百萬遍の知恩院,京都大学北部キャンパスにのこっている後二條天皇陵などが記載されているが,現代地図に載っている京都大学とその周囲の建物は,その年に移転してきた第三高等学校の建物が少しみられるだけで,吉田山から鴨川まで田畑が連なった農村である.京都大学の横を通る東大路通や今出川通がない.東大路通と今出川通は大正の都市開発で作られたものであり,だから明治の地図には載っていないとのことである.鴨川の西側は,東の農村とは対照的に建物が密集している.現代の京都大学周囲と同じように建物が建っているのがわかるという.京都大学医学部ができたのは1899年であり,明治の地図にはない.一方,荒神橋の西に病院らしき建物がある.これは京都府立医科大学で,大学としては1881年にできているので1889年の地図ですでに医科大学となっていたわけである.

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 現在,超音波(エコー)診断装置を使いこなせることが,整形外科医にとって必須の技能になりつつある.超音波診断は小児股関節疾患,腫瘍の診断などで使われていたが,鮮明な像が得られない場合があることや,習熟しないと手技,読影ともむずかしいことから,多くの整形外科医にとって日常的に行われる検査ではなかった.しかし超音波診断は,検査する場所を選ばず,患者に特別な準備を必要としないことや,患者,医療者にとってX線被曝がなく,非侵襲的な検査であるという大きな利点がある.近年,小さくて扱いやすく高解像度の超音波診断装置が普及してきたことから,整形外科でも一般的な検査になってきた.また,超音波検査は診断のみではなく,神経ブロック施行時にもきわめて有用である.従来,神経ブロックは透視を用いるか,体表から触れる骨性隆起,圧痛を指標に盲目的に行われてきた.超音波診断装置を用いることで,解剖を確かめながら針を刺入して薬液を注入することができ,血管・神経損傷の危険性が大きく下がった.

 本書は,島根大学麻酔科教授・齊藤洋司先生,獨協医科大学越谷病院麻酔科教授・奧田泰久先生の編集のもと,経験豊富な麻酔科・ペインクリニックの医師らによって執筆された,ペインクリニックとしての超音波ガイド下神経ブロック法のテキストである.本書の特徴は二つある.

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1.は じ め に

 2017年10月6日(金)~8日(日)に第44回日本肩関節学会が菅谷啓之会長(船橋整形外科病院スポーツ医学関節センター長)[図1]のもと開催された.また高村隆先生(船橋整形外科病院理学診療部部長)[図2]が会長を務められ,第14回肩の運動機能研究会も合同開催された.例年2日間の開催であったが,今回は会期を2日半に拡大しての開催であった.会場もグランドプリンスホテル新高輪・国際館パミール(東京都)と過去に類をみない大規模な会場であり,内容も劇的にスケールアップされていた.まず大きな変更点としては,理学療法士や看護師,アスレティックトレーナーなどのメディカルスタッフが参加する肩の運動機能研究会から看護セッションを独立させて,第1回肩の看護研究会(小形松子会長:船橋整形外科病院看護師長)[図3]としてはじめて開催された点である.また近年の国際化の流れを組み入れ,海外から多くの講師を招いて第1回アジア太平洋肩肘シンポジウム(The 1st Asia-Pacific Shoulder & Elbow Symposium)が併催された.医師,療法士,看護師いずれも過去最大の参加人数となり,初日から最終日まで活発な討議が行われた.

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1.は じ め に

 2017年9月8日(金)~9日(土)にシーガイアコンベンションセンター(宮崎市)において,帖佐悦男会長(宮崎大学)のもと本学会が開催された(図1).宮崎大学では1993年に田島直也氏が第19回の学会長を務められており,24年ぶりの開催であった.

 帖佐会長は,本学会のテーマを「スポーツ医学イノベーション 継承と革新―RWC 2019,Tokyo 2020」とされた.イングランドでのラグビーワールドカップ(RWC),リオデジャネイロオリンピック・パラリンピックでは,日本中が感動の渦に巻き込まれた.これから日本で開催されるRWCやオリンピック・パラリンピックでもより一層感動できるよう,スポーツ医科学の分野からサポートしたいとの思いから,このテーマに定められたそうである.

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1.は じ め に

 日本手外科学会カダバーワークショップは,学術集会,春夏2回の教育研修会と並ぶ学会の重要行事で,2012年の第1回を皮切りにほぼ隔年で開催され,今回第3回が2017年9月7日(木)~8日(金)の2日間で開催された.関節鏡コース(3台各テーブル3名)と皮弁コース(7台各テーブル4名)の2コースに分かれ,計37名の選ばれた先生方が参加された.

 参加資格は,① 日本手外科学会会員であること,② 代議員の推薦があること,③ 日本整形外科学会もしくは日本形成外科学会の専門医取得者であることの三つで,応募人数は定員の2倍以上と,今回も多数の応募希望のある人気の企画であった.

基本情報

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臨床雑誌整形外科
69巻1号 (2018年1月)
電子版ISSN:2432-9444 印刷版ISSN:0030-5901 南江堂

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