整形トピックス
Bio 3D printingを用いた人工神経による末梢神経再生
淘江 宏文
1
1京都大学大学院感覚運動系外科学
pp.28-28
発行日 2018年1月1日
Published Date 2018/1/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei69_28
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三次元的に生体組織を構築するBio 3D printingの技術は,すでに血管,気管,角膜など多くの再生医療分野で研究開発がすすめられている.中山功一(佐賀大学)らはスカフォールドを使用せずに細胞のみから形成される複雑な立体構造を,剣山法を用いて構築するBio 3D printer Regenova(サイフューズ社,東京)を開発した.特に血管の分野においては,血管内皮細胞,平滑筋細胞,線維芽細胞の3種類の細胞を用い,細胞を凝集させることで作成した細胞塊(spheroid)を,コンピュータ上で作成した3Dデータに基づいてBio 3D printerを用いて人工的に血管様構造体を作成し,移植する段階にまで到達している1).
一方,神経欠損を伴う末梢神経障害において自家神経移植がゴールドスタンダードな治療であるが,採取部位の侵襲性などの問題があるため,人工材料製の管腔状の構造体(神経導管)を用いて神経欠損部を架橋することで末梢神経を再生する方法が,すでに臨床の現場でも施行されている.さらに,この神経導管内に支持細胞としてSchwann細胞や間葉系細胞などを加えることで,末梢神経の再生をさらに促進する方法が行われているが,投与した細胞の導管内での残存率や生存率については議論の余地があるところである2).われわれはこの支持細胞に注目し,Bio 3D printingの技術を用いることで,細胞のみからなる神経導管(Bio 3D conduit)を作成し,ラット坐骨神経欠損モデルにおいて,その良好な末梢神経再生を歩行解析,電気生理検査,前脛骨筋による筋湿重量,免疫染色,組織学的評価で確認した3).
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