連載 長期経過例に学ぶ骨折治療のエッセンス
第1回 鎖骨骨折
松村 福広
1
1自治医科大学 栃木県災害医学寄附講座
キーワード:
calvicle fracture
,
distal calvicle fracture
,
long term result
Keyword:
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,
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,
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pp.815-823
発行日 2025年7月1日
Published Date 2025/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei76_815
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は じ め に
骨折治療でむずかしいことの一つに治療方針の決定がある.治療方針は症状,神経血管損傷の有無,画像所見,患者背景(年齢,職業,既往歴,合併症など),患者や家族の希望など多くの因子によって決定される.体幹や下肢の骨折であれば,早期日常生活および社会復帰を目的に手術療法が選択されることが多い.一方で,上肢骨折の場合は手術療法だけでなく保存療法も良好な機能が得られ,症例によっては保存療法が優先されることもある.筆者も整形外科医として骨折手術の経験が増えた時期に,患者に説明しながら保存療法と手術療法のどちらを選択すればよいのか悩む時期があった.手術療法を選択した場合でも,どのような手術法が最適なのか決定することが困難なこともあり,長期成績が不明なまま手術法を決定することに躊躇することがあった.自分の手術能力も考慮したうえで,手術侵襲と獲得される機能成績のバランスを考えることも必要である.
このようにベストな治療法を選択することがむずかしい骨折治療において,長期成績を知ることはめざすべき治療の目標を定めるうえで重要な指針になる.本連載では,骨折治療後の長期成績を知り,そこからより最適な治療法について考えたい.

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