特別増大特集 新型コロナウイルス・パンデミック—今こそ知っておきたいこと、そして考えるべき未来
[Ⅲ章] 「ヘルスケアシステム」や「社会」は構造的にどう変わったか、変わっていくか
—「文化人類学」の視点から—医療施設の「面会制限」は何を守っているのか?—出会いと交流の空間試論
磯野 真穂
1
1慶應義塾大学大学院 健康マネジメント研究科
キーワード:
面会制限
,
オンライン面会
,
対面信仰
,
動的空間
Keyword:
面会制限
,
オンライン面会
,
対面信仰
,
動的空間
pp.74-77
発行日 2021年1月15日
Published Date 2021/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429202959
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コロナ禍においては、人と人が1つの場に集うことが危険とみなされ、出会いと交流の場は次々に「オンライン」に移行した。それが最も顕著なのは、医療施設と介護施設である。「家族であっても面会できない」「許されても15分」「たまたま濃厚接触者になってしまったので、面会はおろか居室から出ることも許されない」といった話をこれまで耳にした。
このような状況は、時に否定的に捉えられる。たとえば、在宅緩和ケア医の新城拓也1)は、「新型コロナウイルスで緩和ケアは自殺したのではないか? 医療者は、死者の権利を冒涜している」という記事をBuzz Feed Japan Medicalに寄稿した(2020年6月13日)。このなかで新城は、緩和医療で推進されるタブレット端末による面会は「実際に顔を触り、手を握り、体をさすり声をかけることに比べれば、比べるに値しないのは当たり前です」と述べ、感染対策を掲げて面会を禁ずる今の状況を「死者の権利を冒涜している」とさえ思うと告白する。
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