The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine 53巻3号 (2016年3月)

特集 リハビリテーション科専門医のロールモデルとリハビリテーションのエビデンス

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リハビリテーション(以下,リハ)のエビデンスを示す手法として,多数の施設からリハ診療の内容を提供していただき,データベースを作成し,統計的に分析する方法がある.幸いなことに日本では,10年以上も前から回復期リハ病棟協会が主導した実態調査が行われ,有益なベンチマークデータが提供されてきた.加えて2012年からは日本リハ・データベース協議会(JARD)も急性期を含めたデータベースの構築を開始したが,現在の形でのデータ収集は昨年度でいったん終了している.蓄積されたJARDのデータの分析は継続されるが,より広い職種からの協力を得て,迅速なデータ収集と現場へのフィードバックが可能で,なおかつ妥当性が高く,国際的にも通用する新しいデータベースの構築が現在企画されている.リハ科専門医の存在意義というキーワードだけでなく,さまざまなリハ関連場面において役立ち,リハのアウトカムを明確に示せるデータベースを発展させるために,現在の問題点や今後の方向性もこの特集で示せれば有益である(担当:田中宏太佳,企画:編集委員会).

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要旨 日本のリハビリテーション(以下,リハ)医療は人口の高齢化とともに発展し,2000年に介護保険制度施行とともに回復期リハ病棟が創設された.その後,現在までにリハに関する診療報酬は改定ごとに変化したが,理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の国家資格保持者数の増加,回復期リハ病棟の増加などによりリハ医療は各地域に普及した.しかし,回復期リハ病棟における患者1人あたり疾患別リハの平均実施単位数は増加したがfunctional independence measure(FIM)利得の変化は乏しく,回復期リハ病棟の質は医療機関間で大きな差があると指摘されることとなった.回復期リハ病棟を有する病院にリハ科専門医が勤務している病院は2015年4月の時点で29.4%にすぎない.今後,回復期リハ病棟にはリハ科専門医の配置を必須とし,質の向上が期待されるところである.

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要旨 脳卒中急性期リハビリテーションにリハビリテーション(以下,リハ)科専門医が関与することが機能予後に与える影響について,筆者らが検討報告した研究を紹介する.日本リハ・データベースに登録された,2005年1月〜2013年12月の間に急性期病院に入院した脳卒中患者を解析対象とした.3,838名が解析対象となり,うち814名の主治医がリハ科専門医であった.リハ科専門医が担当した患者では,訓練量が多く,自主訓練および定期的なカンファレンスの実施が多かった.多重線形回帰分析の結果,リハ科専門医が主治医として関わることとfunctional independence measure(FIM)effectivenessに有意な関連を認めた.リハ科専門医が急性期から脳卒中患者に関与することで,リハの質と量が向上し,患者機能予後が改善すると推察された.

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要旨 リハビリテーション(以下,リハ)科専門医のかかわりがリハ医療の質を高めるとの報告が増えている.われわれはリハ科専門医の主治医としてのかかわりが,大腿骨近位部骨折回復期患者の機能回復に与える影響を調査した.日本リハ・データベースに登録されたデータを用いて検討したところ,リハ科専門医が主治医であった患者群のほうが,非リハ科専門医が主治医であった患者群に比べて有意にfunctional independence measure(FIM)効率が大きく,在院日数も短かった.リハ科専門医のかかわりが併存障害の適切な管理,リハにおける安全管理,チームアプローチの効率化,退院調整の促進などを通じて大腿骨近位部骨折患者の治療成績を高める可能性があると考えられた.

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要旨 超高齢社会の到来とともにリハビリテーション(以下,リハ)科専門医のニーズは高まっている.しかし,リハ医療に対する専門医の貢献度を目にみえる形で示しているとは必ずしも言いにくい.リハ科専門医が関与する治療効果のアウトプットが不足していることが一因であると考えられる.本稿の前半では,リハ科医師関与のアウトカムを検討することを目的に日本リハ・データベース(Japan Rehabilitation Database,以下JRD)の脳卒中急性期患者の登録データを解析した結果のアウトラインを示した.専門医が関与する脳卒中急性期患者は,主治医・コンサルタント医いずれにおいても,FIM総得点変化が大きいことが示された.本稿の後半ではJRDを用いたこれまでの脳卒中研究のいくつかを紹介し,データベースの有用性や限界,今後の解析に向けての展望に触れる.

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要旨 筆者が赴任したケアミックス病院には,療法士は多数在籍していたがリハビリテーション(以下,リハ)科医はおらず,リハ科医を知らない職員がほとんどだった.リハどころではないとの声も聞かれる中,質の高いリハ医療を浸透させるべく他科医師への啓蒙を含めた院内教育を行い,急性期から生活期までリハ科専門医が積極的に関与し,さまざまなチームアプローチを軌道に乗せた.たとえば,摂食嚥下医療,リハ栄養,brace clinic,経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct current stimulation:tDCS)やボツリヌス療法およびCI療法などのニューロリハ,回復期リハ科回診,リハ科医・療法士の学会発表推進などである.リハ科専門医のロールモデルとして,病院全体の意識を変えた4年間の活動を振り返り,リハ科専門医の存在意義を論じたい.

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要旨 リハビリテーション(以下,リハ)科専門医の価値を示すためには,リハ科領域だけでなく関連職種そして社会へと多方向性の戦略が求められる.リハ科専門医によって医療は,介護は,急性期は,回復期は,在宅はこんなによくなるという実感を与えなければならない.2005年よりリハ患者データバンク(DB)が開発(現在はJARDに再編)され,2015年2月現在,33,419のデータが蓄積されているが,論文化や診療報酬への活用はまだ少ない.患者や家族に対しては核となるリハ科専門医の姿(ロールモデル)を直接見せる機会を増やすことが効果的である.新専門医制度では第三者機関である認定機構による認定となった.この機会を生かし,リハ科専門医を目指す医師が増えることを願う.

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要旨 日本リハビリテーション・データベース協議会(Japan Association of Rehabilitation Database:JARD)が運用するデータベース(Japan Rehabilitation Database,以下JRD)には,脳卒中(一般病棟・回復期リハビリテーション病棟),大腿骨頸部骨折,脊髄損傷の患者データが登録されており,2014年度末における累積症例数は23,067例に達した.JRDを利用した論文は徐々に増え2015年10月現在31編ある.多施設データの利点は,症例数の多さと一施設にとどまらない知見を導ける点にある.一方で,参加施設が累積でも60施設と少ないことや欠損値などデータの質に改善の余地があるなどの課題もある.JRDがより代表性の高いものになるために,日本リハビリテーション医学会はじめ,3療法士協会の会員のいっそうの協力が必要である.

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要旨 日本リハビリテーション・データベース協議会(Japan Association of Rehabilitation Database,以下JARD)で管理・運用されているデータベースに,日本理学療法士協会(以下,PT協会)はJARD担当部会を設置して参加しPT協会独自項目を加え,参加病院でのデータ登録を担い,PT協会としてデータを利用した研究を公募している.現在までにPT・作業療法士(以下,OT)が筆頭著者の原著論文も5編発表され,早期作業療法の有効性,介護力が歩行自立の確率を高める可能性などが明らかにされてきた.セラピストが分析に利用できるこのような大規模なデータは他になく,PT・OT・言語聴覚士(ST)にとっても診療ガイドライン作成などに生かせる可能性がある.

 今後もより多くの施設で,より多数例のリハビリテーション患者データが蓄積されることが望まれる.

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 医療機器の開発における医工連携の重要性は以前から広く認識され,実際に医工連携の成功によって製品化された多くの医療機器が医療現場で使用されている.しかし,基盤技術が製品としての医療機器となり流通するまでの道のりは険しい.いわゆるシーズから試作品がつくられ,さらに完成品の有効性と安全性が証明されて医療機器の承認を得るまでの,「死の谷」をまず越えなければならない.そして医療機器として世に出たとしても,商品として生き残れるかどうかはわからず,競合品の中で淘汰され,「ダーウィンの海」に沈むかもしれない.この困難な道を進むには,医学と工学というアカデミアの連携だけでは不十分であり,その連携を実現する環境として,産学官に加えて金融の連携が必要である.しかし,これらの連携があったとしても,またすぐれたシーズがあったとしても,医療機器が自然に生み出されるわけではない.「死の谷」を越え,「ダーウィンの海」を渡り切るには,医療現場のニーズに基づき,はじめから事業化を見据え,試作品の製作から非臨床試験,臨床試験,事業化までを一気通貫で進める仕組みと人材が必要である.その課題を解決するため,トランスレーショナルリサーチセンター,ベンチャーキャピタルが設立されてきた.

 一方で人材育成は,というと,企業や一部の大学における医療機器法規制の教育にとどまっていたように思われる.そのような中,2015年4月の訪米時に安倍晋三首相はスタンフォード大学において講演を行い,同大の「バイオデザイン」が日本に導入されることに言及した.バイオデザインとは,2001年にスタンフォード大学のPaul Yock博士らが,デザイン思考によって医療機器開発を推進する人材を育成するプログラムとして創出したものである.このプログラムから14年間で40社の起業,400件以上の特許出願がなされ,20万人以上の患者が,本プログラムで創出された機器の恩恵を受けているという.すでにインド,シンガポール,アイルランド,イギリスで導入されていたが,2015年6月,東北大学,東京大学,大阪大学の3大学とスタンフォード大学との間で契約が締結され,ジャパン・バイオデザインが発足した.プログラムは,文部科学省橋渡し研究加速ネットワークプログラムの支援を受け,かつ一般社団法人日本メドテックイノベーション協会を通した産業界との連携により実施される.プログラムの詳細は成書(BIODESIGNバイオデザイン日本語版,薬事日報社)を参照していただきたい.2015年11月現在,全国から選抜された第1期10名のフェローがclinical immersionから何百というunmet needsを探索し,ブレインストーミングを重ねているはずである.ニーズの選別,解決策の創造,そして事業化立案まで,フェローらの挑戦は続いていく.医工連携は,今,新たなステージに入ったと感じている.

Interview 第53回日本リハビリテーション医学会学術集会 会長インタビュー

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第53回日本リハビリテーション医学会学術集会は久保俊一会長(京都府立医科大学)のもと,国立京都国際会館とグランドプリンスホテル京都を会場に,6月9日(木)〜11日(土)の3日間開催されます.大勢の参加者が見込まれている本学術集会ですが,今回のメインテーマに秘められた久保会長の想い,その想いを具現化するプログラムの数々,さらにそこからみえてきたリハビリテーション分野のさらなる飛躍の可能性について,皆様にお伝えできればと思います.(聞き手:大高洋平編集委員)

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視覚入力で誘導される四肢運動の知覚とは

1 自己運動錯覚—静止していても自己の運動を知覚する

 通常,運動の感覚は運動の実行によって知覚される.しかし,いくつかの方法によって,実際には運動が生じていないにもかかわらず,運動が生じている感覚の知覚,すなわち自己運動錯覚(self-movement kinesthetic illusion)を生じさせることが可能である.自己運動錯覚は,ある特定の感覚モダリティを単独,もしくは複合的に刺激することで誘導される.これまでに,皮膚感覚入力1),深部感覚入力2),そして視覚入力3-7)が報告されている.さらに,覚醒下手術中(図1)8),あるいは体性感覚を遮断した状況下で脳を刺激した場合9)にも,自己運動錯覚は確認されている.

連載 高次脳機能障害に対する認知リハビリテーションの技術・第3回

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はじめに

 高次脳機能障害は外見上症状が目立たず,在宅での日常生活,特に社会活動場面(就労,就学,買い物,役所や銀行の手続きなど)で気づかれることが多い.一見障害が軽そうにみえる高次脳機能障害者であっても,在宅では家族のケアの上に生活が成り立っている実態が明らかとなっている1).そのため,地域で生活する高次脳機能障害者の生活障害への支援では,実際の生活場面に介入するとともに家族への支援が不可欠である.

 高次脳機能障害者の地域における生活支援の新たなシステムとして,生活版ジョブコーチ研究事業が2009〜2011(平成21〜23)年度に実施された.生活版ジョブコーチとは,「生活場面に介入し,専門的な知識・技術を活用して生活がうまく送れるように援助する人」 と定義され,実際に生活する場で,繰り返し行動の定着を支援し,自立させる訪問型の生活訓練を行っていく2).筆者は本事業にて生活版ジョブコーチの職務を行った.

 今回,交通事故により遂行機能障害,脱抑制を主とした高次脳機能障害を呈した両側前頭葉損傷例に対し,生活版ジョブコーチによる家族支援を含めた生活場面への介入を行った結果,公共交通機関利用による作業所への単独通所が可能となったので報告する.

連載 ISPRM招致活動記録・第3回

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 今回の招致活動から2019年の開催に至るまで,おそらく最もキーになるのがKenes groupというPCOとの付き合い方だと思います.

 PCOとは,Professional Congress Organizerの略で,会議運営サービス会社のことを指します.さまざまな会議,学会などの企画・運営を総合的にサポートし,国内のみならず国際的な会議などの総合運営サービスを提供しています.日本リハビリテーション医学会(以下,本医学会)でも,PCOに学術集会の企画・運営を委託しています.記憶に新しい2015年の第52回本医学会学術集会においては,学術集会としては初めてプログラムの検索やスケジュール登録が行えるアプリが導入され,たいへん有用であったことを覚えています.このような新たなシステムを導入できるのも,会議運営に関するプロフェッショナルとしてのPCOのもつ利点だと思われます.

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要旨 はじめに:脳損傷者の自動車運転再開に必要な高次脳機能の基準値の妥当性を検証するために実態調査を施行した.方法:2008年11月〜2011年11月までに東京都リハビリテーション病院に入院し運転を再開した脳損傷者を基準値群,2011年12月〜2012年11月まで同院に入院し運転を再開した脳損傷者を検証群とした.検証群の高次脳機能検査結果より暫定基準値の妥当性を検討した.結果:基準値群は29名,検証群は13名であった.検証群のうち高次脳機能検査結果がすべて基準値内である脳損傷者は9名(69.2%)であった.暫定基準値を下回った高次脳機能検査項目は,1名はMMSEおよびTMT-A,1名はWMS-Rの視覚性再生および視覚性記憶範囲逆順序,2名はWMS-Rの図形の記憶であった.結論:机上検査結果は運転再開可否の目安となるが絶対的基準とは言えず,症例ごとに運転再開の安全性について検討すべきである.

リハニュース【Topics】

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はじめに

 日本の専門医制度は,各学会が独自に制度化していた制度から,一般社団法人日本専門医機構(以下,日本専門医機構)が基本領域やサブスペシャリティ領域の専門医を統括するシステムへ移行するという変革期を迎えている.TOPICSでは2回にわたり新専門医制度について解説する.第1回はリハビリテーション(以下,リハ)科領域の新専門医制度の概要と研修プログラムについて述べる.

リハニュース【セラピストだより】

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 当院は中野区および練馬区の中核病院として1958(昭和33)年に開設された慈生会病院を2010(平成22)年に南東北グループが引き継ぎ,総合東京病院としてリニューアルオープンしました.南東北グループは福島県を中心に宮城県,青森県,東京都,神奈川県に病院・診療所・介護老人保健施設・特別養護老人ホーム・身体障害者療護施設などの施設を運営しています.総合東京病院では「すべては患者さんのために」の院是を掲げ,地域医療に加え救急医療,がん・脳疾患・心臓病の三大成人病への取り組みを中心とした,高度専門医療への取り組みを積極的に行っています.

 2014(平成26)年9月にはHCU(High Care Unit)のある急性期・一般病棟を開設,2017(平成29)年5月にCCU(Coronary Care Unit)や循環器センター,小児救急,回復期リハビリテーション病棟などを含む新棟を開設予定となっており,現在も変革の途上にある病院です.その中で総合東京病院のリハビリテーション(以下,リハ)部門は,リハを必要とするすべての患者さん・利用者さんに対し,適切なリハ医療と円滑なサービスが提供できるように充実したスタッフ配置をしています.また他施設と連携することで,患者さん・利用者さんが住み慣れた地域で,その人らしく,幸せに生き生きとした生活を送れるように,患者さんやご家族の立場に立った取り組みを行っています.

リハニュース【REPORT】

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 第10回日本リハビリテーション医学会専門医会学術集会は,平成27年11月28日(土)・29日(日),「専門医新時代 〜今こそアピール,リハ医の真価〜」をメインテーマに,東京御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンターで開催された.

 まず千野直一慶應大学名誉教授,石川誠輝生会理事長,下堂薗恵鹿児島大学教授の3人による,メインテーマと同じタイトルのシンポジウム1で始まり,オタワ大学Prof. Hillel M. Finestone氏の招待講演,シンポジウム2「脳損傷者の自動車運転再開を支援するために我々ができること」と続いた.また2つのパネルディスカッション,「リハ医のものづくり」「International researcherとしてのリハ科専門医」が開催され,一般演題ポスターセッションではリハビリテーション科開業医師・一人医長の奮闘記」をテーマに18演題が発表され,それぞれの工夫を凝らしたノウハウが報告された.今回は8つのSIGすべてから企画が出され,多くのハンズオンやディスカッションがなされた.事務局からはハンズオンセミナー「リハビリテーション科診療における超音波診断装置入門」も企画され,多くの教育講演と合わせて,多彩な学習プログラムであったと多方面からご評価いただいている.参加者1,223人で過去最高人数が集まった.最後に本学術集会にご協力いただいた専門医会幹事をはじめとする,日本リハビリテーション医学会会員の先生方に厚く御礼申し上げます.

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お知らせ

次号予告

基本情報

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The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
53巻3号 (2016年3月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1881-3526 日本リハビリテーション医学会

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