地域リハビリテーション 14巻2号 (2019年5月)

特集 人と地域をつなぐネットワーク構築の取り組み

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 地域包括ケアシステムは,さまざまな生活課題を「自助・互助・共助・公助」の連携によって解決していく取り組みが必要です。なかでも自分の努力や能力で生活課題を解決する自助や,近隣地域や住民相互の関係性を原資として,持てる力を出し合い足りないものを補い合う互助は,居場所づくりやさまざまな生活支援のみならず,自治会や行政,地元企業との協働での地域活性化や就労支援などとても幅広く,そこに住む人たちがどうアイデアを出し,人やものを活かしていくかが問われます。

 本特集は自分がもつ経験や専門的なスキルを地域で活かしたい人(プロボノワーカー)と地域のニーズをマッチングする活動と,都市部での高齢者見守りネットワークを中心としたまちづくりのノウハウを全国各地に展開する取り組みを紹介します。

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はじめに

 本格的な超高齢社会の到来に向けて,地域包括ケアシステムの構築が求められている。なかでも,住民が主体となって取り組む「互助」の活動には大きな期待がかかっている。

 しかし,地域の中で顔が見える関係が築きやすい農村部と違って,これから急速な高齢化が進むと言われている都市部においては,もともと,地域における人のつながりがそれほど強くなく,地域コミュニティが希薄だと言われている。地域の互助を生み出し,広げていくことは決して容易ではない。

 一方で,都市部ならではの強みとして考えられるのが,仕事を通じて様々な経験・スキルを蓄積してきた企業人や専門家の存在だ。こうした経験や専門性をもつ人材を,都市部特有の“地域資源”と捉え,より多様な主体の参画を通じて地域包括ケアシステムを構築していくことが有効だ。

 こうした企業人や専門家などの人材と地域とをつなぐキーワードのひとつが「プロボノ」である。

 本稿では,プロボノについてその意味するところを簡単に紹介したうえで,地域づくりにおけるプロボノが果たす役割や可能性について考えたい。

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はじめに

 「高齢化の一途をたどる大都市東京において,高齢者が住み慣れた地域で生活を継続するためにはどうしたらよいのか?」

 この課題解決に向けて,地域のあらゆる社会資源と協働し,新たな具体的活動を生み出している,地域包括ケアの実現へ向けた新たな都市型ネットワークモデル,それが「おおた高齢者見守りネットワーク」(愛称:みま〜も)である。

 高齢者の孤立を予防するためには,高齢者自身が,元気なうちから地域とつながる意識を持ち,できれば早い時期に地域包括支援センターともつながっていること,そして地域の中で身近な人の異変に気づき,専門機関へ早期に連絡できることが必要である。地域のつながりが薄いと言われる大都市だが,一方では多くの人が住み,働く人材の宝庫,社会資源の宝庫であるとも言える。本会は「気づき・見守り・支え合う地域づくり」を合い言葉に,そのような大都市のメリットを活かした,都市型の見守りネットワーク構築を目指している。

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 「春爛漫の季節となりました。何もわからぬまま入院した私どもにとって,本当にびっくりの口のリハビリでした。お陰様で声も出るようになりましたし,少し言葉も話せるようになりました。何より食べられるようになりました。(…中略…)感謝の気持ちでいっぱいです。どうか口のリハビリがたくさんの方に広がっていきますことを願っております。」

 これは今から15年程前に患者さんが退院される時に奥様からいただいた手紙で,このご夫婦との出会いがその後の歯科衛生士人生を左右することになるのですが,今でもずっと心の支えになっています。

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 認知症は厚生労働省の推計によると,2025年には65歳以上の高齢者の約5人に1人,約700万人が発症するとされるなど,誰もがかかわる可能性がある大きな課題であり,医療介護職だけでなく,社会が身近に感じ理解を深める必要がある。今回,認知症を患った自身の父の介護経験から生まれた小説『長いお別れ』(中島京子,2015)が映画化されることになった。公開に先立ち,これまで家族をテーマに独自の世界を描いてきた気鋭の中野量太監督に,作品を通して訴えたいこと,家族感などについてうかがった。(2019年4月2日収録)

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前編おさらい

 働きづらさを抱える多様な方々への現行の態様別縦割り支援は,限られる予算とスタッフにおいて非効率かつ献身的で,その効果と持続性に多くの課題を抱えていると言わざるを得ない。多くの労働力不足が予測される喫緊の社会課題にあって,個人の幸福としての働くことを手にし,さらに潜在労働力の活用を社会の持続につなげ,さらに社会保障,財政改革にも好影響をもたらす「三方一両得」に寄与すると提起されたのが日本財団WORK! DIVERSITY構想である。その発想は,これまでの態様別に支援を考えるというわが国伝統の近視眼的な視点から,共通の課題として俯瞰的したものにシフトしたものであることが最大の特徴である。

 図1にあるように,ひきこもり,刑余者,難病など,その態様,対象別に支援は行われ,その体制も制度に基づくものであるのはまだしも,ボランタリーな活動となっているものまで,混在の状況となっている。一方,筆者が長くかかわってきた障害者就労に関しては,その質を問われながらも,数としては全国くまなくその支援体制が障害者自立支援法(現障害者総合支援法)施行以降,構築され,その数は15,000カ所あまりとなっている。有期限で就労トレーニングを実施し,企業への就労を図る「就労移行支援事業」にしても労働契約により保護的雇用となる「就労継続支援A型事業」にしても,必須条件は障害者であること。そこに付随してニート,触法,がんサバイバー等であることはその利用に一切差し支えないが,障害が前提でなければどのような働きづらさが要因としてあっても,その利用は認められないというのが現ルールにおける要件である。

連載 化粧で生活を楽しく!・その2

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 前回,化粧療法についての概要をインタビュー形式でお伝えしたが,今回は医療・介護現場における「化粧」の存在意義を,回復期リハビリテーションにおける実症例を交えながらお伝えしていこうと思う。

連載 高次能機能障害・発達障害・認知症のための邪道な地域支援養成講座 実戦編・第2回

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私はリハビリ科出戻りナースのあいか! 今日は集団リハビリに参加してます!

連載 地域リハ人を育む大学・研究室・第1回【新連載】

金城大学医療健康学部 澤 俊二
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先生の研究テーマを教えてください。

 地域包括ケアにおける健康増進や地域リハの効果的なアプローチ方法など,保健・医療・介護・環境の改善をするための研究をしています。在宅・生活期におけるリハは効果を実証するのがとても難しいのですが,効果判定をプロセス評価・アウトプット評価・アウトカム評価に分類し,多角的にかつ客観的に捉えることで,見えてくるものがあるのではと考えています。具体的には,① 老人保健法に基づく脳卒中者の機能訓練事業実態調査研究(茨城県立医療大学)と,② 脳卒中者の退院後追跡調査の研究(茨城県立医療大学・藤田保健衛生大学〔現 藤田医科大学〕・金城大学),そして,③ 大田仁史先生(茨城県立健康プラザ 管理者)が提唱されている介護期・終末期リハビリテーション研究(藤田保健衛生大学・金城大学),④ 対面した時の笑顔の効果を光ポトグラフィを用いた研究(藤田保健衛生大学),⑤ 認知症予防,作業遂行時,安静時の脳波研究(金城大学)です。

連載 拝見! 訪問セラピストのカバンの中身・第2回

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地域包括ケア時代を迎え,在宅におけるリハは今後ますます力が注がれる分野になりました。そこで,訪問リハを行うPT,OT,STの3人の先生方に訪問リハにうかがう際のカバンの中身を見せていただき,それぞれのこだわりポイントや,今後の展望などをうかがいました。

連載 のまりーの「ダンスの時間」・第2回

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 父が90歳で大往生の後,昭和2年(1927年)生まれの母とその老猫を迎え,同居を始めて3回目の春だ♥ 母と私は性格が真逆で,もし学校で同じクラスだったら友達になりたくない相手だ。それが親子になってしまったので,40年間も確執がいっぱいだった(泣)。母は悲観的で慎重で愚痴が多い。私は楽観的で大胆ですぐ調子に乗ってしまう。互いに相手の言動を受け入れがたく,しょっちゅう大声で口喧嘩をしては,父にたしなめられていた♥ 大喧嘩時代は20年間つづき,その後にやってきたのは20年間の沈黙時代。話すと喧嘩になるので,できるだけ会話をしない時代だ。幸い孫たち(私の子ども)に恵まれ,われわれが話をしなくても,実家に里帰りの楽しい時間は保たれた(感謝)♥

 しかしある日,子どもたちもたしなめ役の父も不在で,母と二人っきり,古家の茶の間でお茶を飲むシーンが訪れた。穏やかな昼下がり。前触れもなく,言いようのない憤りが竜巻のように私の内に起き上がったのだ。昔,中学や高校から帰るたび,この同じ茶の間の同じテーブルでお茶を飲みながら,毎度聞かされた母の人生への不満や愚痴。当時の私にはそれがなんとも重荷で辛かったことがぐるぐる〜と湧き上がり,激しい言葉になって口から出た♠ 以前だったら言い返してくる母が,すでに80歳を過ぎたその時は違った。私の石つぶてのような言葉に耳を傾け,よく受け止めてくれた。それからすっと背筋を伸ばし座り直して言った。「私が悪かった。本当にごめんなさい。真理ちゃんがしっかりしていたから,つい頼っちゃったのね。大事な娘に辛い思いをさせて私が大バカでした」潔い詫びだった。それを聞いて私は40年間分の勢いでワンワン泣き,泣きながら「母との確執」という重たいカタマリがするする〜と溶けて無くなるのを見た♥

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Abstract:【目的】小児領域の訪問リハビリテーションの利用状況,利用希望調査を行い,実態を明らかにする。

 【方法】北海道札幌市,旭川市にある小児に対するリハビリテーションの広域拠点施設で外来理学療法実施中の在宅生活児・者の保護者394名を対象にアンケート調査を行った。

 【結果】訪問リハビリテーションの利用あり81名(20.6%),利用なし313名(79.4%)であった。利用なしのうち,訪問リハビリテーションに興味ある161名(51.4%),興味なし152名(48.6%)であった。興味ある方の内,実際に利用を希望された方は146名(90.7%)となった。札幌市と旭川市の施設ごとの訪問リハビリテーションの利用,興味,利用希望の結果に大きな差はなかった。

 【結論】小児領域の訪問リハビリテーションは保護者が利用を希望しても利用に充分に結びついておらず,結果,利用している方も少なかった。今後は訪問リハビリテーション提供事業所の拡充やリハビリテーション専門職の育成による対応の拡大が望まれる。

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Abstract:急性期病院の入院患者は,リハ開始の遅延によりしばしば入院関連機能障害(HAD)を生じる。当院では入院早期に,病棟看護師に次いでリハスタッフがHAD発症のリスク評価を行い,リハが必要と判断されたときには,すみやかに医師に情報提供するHAD発症予防システムを構築した。入院日に病棟看護師が記載したADLスクリーニングシートと栄養・摂食嚥下スクリーニングシート,退院調整スクリーニングシートを用いて,関連各職種に自動的に評価依頼がなされるものである。システム導入後と導入前年同時期の各5カ月間を比較すると,リハ依頼件数が増加しただけでなく,入院後早期にリハが開始され,結果として在院日数の短縮(p<0.01)につながるとともに,Barthel Index利得も増加傾向となった(p=0.09)。

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 日本財団と鳥取県が協働する「障害者工賃3倍増プロジェクト」が効果を現し始め,2017年度の全国工賃実績発表で伸び率が全国1位となった。一人あたりの工賃は1,200円程度であるが,総額では前年比1億円超の工賃増を示した。47都道府県中唯一の千円単位の上昇という成果に各自治体からも問い合わせが多く寄せられている。障害者の所得向上を目的として設置された「障がい者の自立のために所得向上をめざす議員連盟」(超党派衆参議員111名)の関心も非常に高く,今回の総会での報告に至った。当日は,出席議員12名,秘書による代理出席22名(資料のみ持ち帰り含む)の参加をいただいた。

 まずは,本事業の概要を推進する鳥取県平井伸治知事より説明。その後を受けて日本財団尾形武寿理事長から,鳥取市と倉吉市に設置した共同作業場が特に功を奏したことが報告された。

Book Review

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 本書は,すでに書かれたものの再録やそれらの大幅な加筆で成り立っており,評者の田島の編著である『「存在を肯定する」作業療法へのまなざし—なぜ「作業は人を元気にする!」のか』(三輪書店,2014)(以下,作業療法へのまなざし)の第2章の文章が,本書の第12章に収められている。

 著者の立岩真也氏は,ともすると置き去りにされがちな障害や病をしっかりとすくい取ったうえで壮大な社会理論の構想をしていることで知られる著名な社会学者であるが,立岩氏の社会に対しての問いの視点は一貫している。それは,「この社会における所有に関する規則とそれに関わって生じる財の配置と能産的であることで人は価値を有するという価値」(p98)である。そして,それについては,ポストモダンと呼ばれる懐疑的思想の流行っている現代においても,あまり変化はしておらず,そうした意味において社会はあまり変わっていないと言う(p97)。

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地域リハビリテーション
14巻2号 (2019年5月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1880-5523 三輪書店

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