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脳血管疾患患者を主たる対象とした回復期リハ専門病院として長崎リハビリテーション病院を開設して8年が経過した。この間,多くの脳卒中患者が入院されたが,やはり年々平均年齢が高くなっているとともに再発や転倒骨折,肺炎後の廃用による再入院なども増えてきたようである。そして特に昨今,困難症例として挙げられ,目立ってきたのが基礎疾患(または併発疾患)として単に高血圧や糖尿病のみならず,慢性心不全や慢性腎不全,慢性閉塞性肺疾患(COPD),肝硬変などの内臓器障害あるいは変形性(膝)関節症や下肢切断などの運動器障害を有する脳卒中患者,または脳卒中後遺症片麻痺患者の大腿骨頸部骨折などである。これらは脳卒中片麻痺のみの患者とは異なり,リハプログラムや予後予測の設定などに苦慮することが多々である。しかし脳卒中リハをはじめとして,心臓リハ,呼吸リハ,運動器リハなどそれぞれ臓器別のリハに関する解説書(教科書)は多く見られても,先のような内部障害患者などに併発した脳卒中片麻痺患者のような重複障害者に対する適切なリハのガイドラインについて記した成書は見つけることができなかった。その意味で本書は待望の第1弾である。
第1章「重複障害のリハビリテーション総論」では“重複障害の定義”に関して種々の観点から多くの参考文献をもとに,考察・整理されている。そして第2章「重複障害をめぐる基礎知識:臓器連関」では,視覚と聴覚など,脳・神経と骨・関節など,心臓・血管と脳・神経など,呼吸器と脳・神経など,腎臓と脳・神経などそれぞれの臓器の解剖・生理学的基礎知識に加えて2つの臓器の連関の観点から概説されているのが特徴である。第3章は「重複障害のリハビリテーション各論」として臓器別疾患のリハ,特に脳・神経,脊髄疾患,心臓・血管疾患,呼吸器疾患,腎臓疾患,運動器疾患そして生活習慣病,悪性腫瘍,摂食嚥下障害に関して整理がなされている。そして第4章においては「重複障害のリハビリテーションの実際」として16例の異なった臓器別疾患が重複した事例を紹介・解説されている。
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