- 有料閲覧
- 文献概要
父が90歳で大往生の後,昭和2年(1927年)生まれの母とその老猫を迎え,同居を始めて3回目の春だ♥ 母と私は性格が真逆で,もし学校で同じクラスだったら友達になりたくない相手だ。それが親子になってしまったので,40年間も確執がいっぱいだった(泣)。母は悲観的で慎重で愚痴が多い。私は楽観的で大胆ですぐ調子に乗ってしまう。互いに相手の言動を受け入れがたく,しょっちゅう大声で口喧嘩をしては,父にたしなめられていた♥ 大喧嘩時代は20年間つづき,その後にやってきたのは20年間の沈黙時代。話すと喧嘩になるので,できるだけ会話をしない時代だ。幸い孫たち(私の子ども)に恵まれ,われわれが話をしなくても,実家に里帰りの楽しい時間は保たれた(感謝)♥
しかしある日,子どもたちもたしなめ役の父も不在で,母と二人っきり,古家の茶の間でお茶を飲むシーンが訪れた。穏やかな昼下がり。前触れもなく,言いようのない憤りが竜巻のように私の内に起き上がったのだ。昔,中学や高校から帰るたび,この同じ茶の間の同じテーブルでお茶を飲みながら,毎度聞かされた母の人生への不満や愚痴。当時の私にはそれがなんとも重荷で辛かったことがぐるぐる〜と湧き上がり,激しい言葉になって口から出た♠ 以前だったら言い返してくる母が,すでに80歳を過ぎたその時は違った。私の石つぶてのような言葉に耳を傾け,よく受け止めてくれた。それからすっと背筋を伸ばし座り直して言った。「私が悪かった。本当にごめんなさい。真理ちゃんがしっかりしていたから,つい頼っちゃったのね。大事な娘に辛い思いをさせて私が大バカでした」潔い詫びだった。それを聞いて私は40年間分の勢いでワンワン泣き,泣きながら「母との確執」という重たいカタマリがするする〜と溶けて無くなるのを見た♥
Copyright © 2019, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.