特集 ノーリフトケア—介護者・対象者 共にやさしい起居・移乗技術
ノーリフトケアが「あたりまえ」になるための在宅での取り組み
福田 裕子
1
1まちのナースステーション八千代
pp.347-350
発行日 2018年5月15日
Published Date 2018/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5003200856
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はじめに
筆者がオーストラリアのホスピスで看護師として働いていた2005年頃には,すでにノーリフトの文化が定着していた。スタッフの身体に負担がないように,定期的に介助方法の研修が病院内で行われ,リフトやスタンディングマシーンもあたりまえのように使用されていた。ベッドを隣の部屋に移す時にさえ,ポーターと言われるベッドを移動させる専門のスタッフを呼んで機械で移動させていた。当初は日本での経験との違いに驚き,なじめないこともあったが,「あたりまえ」にされていることが徐々に自分の中で腑に落ちていったのを覚えている。
まちのナースステーション(以下,当ステーション)を7年前に開設する際には,「ケアする人が癒されていないとケアされる人も癒されない」という理想のステーションを目指す想いの一つに,ノーリフトケアつまり,利用者・介護者のお互いに負担のないケア方法を取り入れスタッフに伝えていった。「経営者が行えばすぐに定着する」と安易に考えていたが,スタッフが必要性を理解していままでのやり方を変え,それを継続することは容易ではなく,スタッフの入れ替わりも多く,ノーリフトケアが定着するには本当に時間がかかった。しかし,スタッフも筆者が初めて見た時と同じ気持ちだと共感し,長い目で文化を根づかせるよう取り組んでいる。現在も試行錯誤中ではあるが,在宅ケアや地域にノーリフトケアの定着に取り組んでいる当ステーションの活動について述べる。
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