訪問看護と介護 21巻10号 (2016年10月)

特集 高齢者の心不全を在宅でケアする

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日本人の死因第1位「がん」に次ぐのが、心疾患による死亡。その原因として最も多いとされるのが「心不全」です。心不全による死亡は85〜90歳にピークを認め、死亡した85%超が後期高齢者。必然的に、高齢者が多い在宅ケアの現場には、“心不全患者が潜在している”といえます。

心不全の増悪、または再入院を防ぐためには、心機能が弱まった方の日々の暮らしを注視し、ときに指導的な介入が必要です。もちろん、併存疾患との関連性を意識したケアも欠かせません。

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 超高齢社会において、わが国の死因第2位に心疾患が上げられ、そのなかでも心不全を要因とする割合は多い。とくに本誌で特集となっている高齢者の心不全患者では、複数の併存疾患を抱えていることが多く、入退院をくり返し、そのたびに病状の進行、自立度の低下が認められる。すでに確立された治療だけでは十分な効果が得られないケースも多く、1人ひとりの生き方に沿った治療・ケアを提供していくことが必要だ。

 つまり、高齢心不全患者へは、心臓という臓器の疾病治癒、命を維持させることを目的とした病院医療における「病院モデル」から、生活の質の向上をめざした地域の医療、介護、保健、福祉などの多施設・多職種による「生活モデル」を意識した医療・ケアの体系が望まれているといえよう。

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 筆者は普段、病院外来で慢性心不全患者さんの心不全療養行動支援を行なっています。患者さんと一緒に心不全をモニタリングし、現在の生活が心不全にとってどのような影響を与えるのかを評価し、そこでもし心不全の病状に合わせて生活を変える必要があるとしたら、具体的に何をどのように変えればいいのかを考えています。

 心不全をもつ方のQOLを保ちつつ、一方で心不全を悪化させないために、ときにプロフェッショナルである医療者が、治療・食事・活動・休息の面から調整方法を考え、患者さん自身が自分の生活に取り入れられるように支えていく——。今回は、そんな心不全の療養行動支援のポイントをQ&A方式で紹介します。

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高齢者にとって、心不全は切っても切れない問題だ

 「心不全」と聞いてどのようなことを考えますか? 新聞の死亡欄に出ているような末期的な状況を想像される方も多いのではないかと思います。しかし、それは心不全の一部の方。心不全には4つの段階があり、徐々に進行していくもので、末期的なのは最後のステージの部分*1に過ぎません。多くの心不全の患者さんは、落ち着いていると症状を忘れてしまうような状態のことが多いのです。

 そうした患者さんは普段の生活において、たとえば、薬を飲み忘れたり、風邪をひいたりすると、隠れていた心不全が急に顔を出すことがあります。“急”と書きましたが、じつは急でないこともわかっていて、もっと早くからあるサインに気づいていれば、前の段階で苦しくならずに対応できたのでは?というケースも多いものです。

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 私は、急性期病院の集中治療室(18床)の担当管理栄養士として日々、栄養サポートを行なっています。集中治療を必要とする患者の多くは、病態が複雑でかつ状態の変化が著しく、栄養状態やADLが低下した方々。人口の高齢化が進んできたなか、複数の基礎疾患をもつ患者も増えています。私が所属する集中治療室では、呼吸器管理をはじめ、透析療法や人工心肺装置などさまざまな高度な治療が行なわれているため、管理栄養士もベッドサイドに行き、患者を直接診て触って病態や状態の変化をリアルタイムに把握し、全身状態の評価を行ないます。管理栄養士も病棟に常駐しながら、チーム医療の一員として心不全患者へのケアを担っているというわけです。

 そうした集中治療室で実践を重ねていくなかで気づかされるのは、心不全患者の再入院の多さです。心不全増悪をくり返す患者は、再入院のたびに栄養状態やADLが低下し、退院から再入院するまでの期間も次第に短くなっていく傾向があります。

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 私は、福岡県の病院で急性期から生活期までの循環器疾患患者を担当する経験を経て、東京都豊島区にあるゆみのハートクリニック(以下、当クリニック)の訪問リハビリテーション部の立ち上げから勤務しています。現在は、心臓リハビリテーション指導士資格をもつ理学療法士として、「心不全患者さんを再入院させない」をモットーに、在宅での心不全管理、後輩の育成、研究活動などに取り組んでいます。

 当クリニックの訪問リハビリテーション(訪問リハ)は、他の訪問リハの事業所と比較し、大きく2つの特徴があります。❶心疾患の患者さんに関わる機会が多いこと(2015年度の45%が心疾患患者)、❷心不全管理や、そのリハに必要な専門知識をもつ「心臓リハビリテーション指導士(以下、指導士)」が在籍していることです(常勤の医師、看護師、理学療法士が6名在籍)。このような専門的なスタッフが在宅の現場に関わることは全国的にみるとまだ少ないのが現状といえます。

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 私は1997年に三菱京都病院へ入職し、ICU・内視鏡室・内科(緩和ケアを含む)病棟を経て、2007年から循環器内科・心臓血管外科病棟を担当しています。循環器病棟で心不全末期・終末期患者と出会い、苦しみながら最期を迎えることに違和感があったことが、終末期看護を考えるきっかけとなりました。2012年に慢性心不全看護認定看護師1期生として兵庫県看護協会教育課程を経て、現在に至ります。今は、慢性心不全患者の緩和ケア・意思決定支援などを中心に院内・外で活動を行なっています。

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 私(屋比久)は、愛知県名古屋市で訪問看護に携わり、管理者経験を経て2011年に「ひかり訪問看護ステーション」を設立した。その後、沖縄県にいる両親が体調を崩し、少しでも近くにいたいという気持ちが強くなり、大切な家族や叔父・叔母たちがいる大好きな地元・沖縄で地域の力になりたいと思い、2015年9月に那覇市長田に「しなさき訪問看護ステーション」(以下、当ステーション)を設立した。「優しさ思いやりをもってサービスを提供し、利用者様や地域とともに喜ぶことを成し遂げる」という理念に基づき、今後、私自身も生活を続けていく地域が、安心してここで生活したいと思えるところになれるように、日々活動している。とくに当ステーションでは、あらゆる心臓疾患の終末像である慢性心不全の再発予防にも力を入れている。

 本稿では、高齢者の心不全を在宅でケアしていくために考えていることと訪問看護での実践例を、日ごろより連携し、ともに活動している琉球大学医学部附属病院リハビリテーション部の南部路治氏とともに紹介する。

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 私の所属する塚口訪問看護センターは兵庫県尼崎市にあり、2000年4月、介護保険制度の開始とともに開設されました。利用者は約160人で、現在2歳から102歳までの利用者がおり、月1000件前後の訪問看護を提供しています。

 尼崎市は昔から「公害の町」でもあり、大気汚染による喘息患者が多かったことで有名でした。現在ではアスベストによる中皮腫問題が記憶に新しいと思います。そんな尼崎市の高齢化率は約26%。独居高齢者は兵庫県一多く、喫煙率も兵庫県一高いためにCOPDの罹患率も高くなっています。そうした背景からも、肺性心の罹患率が高い点が特徴といえます。

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本誌2011年8月号から2016年3月号にわたり連載された『介護することば 介護するからだ 細馬先生の観察日記』。それをもとにまとめられた書籍『介護するからだ』の刊行を記念して著者の細馬宏通さんと『驚きの介護民俗学』の著者である六車由実さんによる公開対談を開催しました。

人間行動学者として介護行為をはじめとした身体動作をビデオに撮影し、1コマずつ観察・分析してきた細馬さんと、介護施設での聞き書きをもとにした介護民俗学を提唱する六車さんが、介護の現場の「観察」により得られた驚きと歓びについて語り合いました。

連載 地域包括ケアのまちを歩く—コミュニティデザインの視点で読み解くケアのまちづくり・第2回

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2007年、48戸の住宅や店舗をつくる計画でスタートした「リプチの森」。そのなかに2010年、「サポートセンター摂田屋」がつくられた。しかし、初めからすべてが順調に進んでいたわけではない。当初、近隣住民に説明すると、「福祉施設はちょっと……」という戸惑いの声が上がった——。

連載 在宅ケア もっとやさしく、もっと自由に!・85

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 第83回、84回では、暮らしの保健室で出会い、看護小規模多機能型居宅介護「坂道ミモザの家」へつながったYさん夫婦のエピソードを紹介してきました。今回はそのエピローグです。

連載 どう読む!? 在宅医療・看護・介護政策・第10回

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 2018年度からの6年間の医療政策の方向を示す第7次医療計画の策定に向けて、厚生労働省は在宅医療と医療・介護の連携に関するワーキンググループ(WG)をスタートさせた。各都道府県が、医療計画に在宅医療の推進策を盛り込む際の指標や目標設定の考え方などが議論されている。

連載 「介護」「看病」は“泣き笑い” ウチの場合はこうなんです!・第67回

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杏里 「介護女子会」を介護友達が開催してくれたんだけど、「介護していたから出会えたご縁だよね。介護していて良かったこともあったね〜」って、皆でしみじみ語り合ってさ。

母さん 介護していて“良かったこと”か〜。

カラーグラフ 終える命 つなぐいのち・第19回

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※本連載は、本文のみ無料でお読みいただけます。

 写真は、冊子版でのみご覧いただけます。

 島根県の沖合に浮かぶ人口600人あまりの島。ここにかつて、看取りの家があった。当時、入院施設を備えた病院や特養はなく、要介護度が重くなると島を離れて本土の病院や施設などに入れられる高齢者の姿がしばしば見られた。

 生まれ育ち、80年、90年の人生が詰まったこの島を今になって出たくない——。島でヘルパーをしていた柴田久美子さんに、あるおばあさんがそう泣きながら、足にしがみついた。一緒に涙しながらも島外へ見送るしかなかった柴田さんは、決意し、NPO法人「なごみの里」を2002年に立ち上げた。

連載 訪問看護実践と成果のつながりを可視化するために—日本語版オマハシステムの開発に向けて・第5回

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 連載第4回では、心不全状態の78歳の二郎さん(仮名)のケアプラン作成(STEP4:介入計画)までを展開しました。今回は、STEP5:中間時点の問題の状態判定とSTEP6:問題別の成果評価を前回と同じ事例の継続看護実践の評価を中心に、オマハシステムを活用した看護展開を紹介したいと思います。

 まず、2回目訪問の様子を振り返ってみましょう。

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今月の5冊

ニュース—看護と介護のこのひと月

Information 学会・研究会情報

バックナンバーのご案内

次号予告・編集後記 小林 , 小池
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今号の巻頭の公開対談は、台風一過の8月17日に収録されました。公開ということで、事前に本誌7月号ならびに当社ウェブサイトで案内を出したところ、66名の方にご参加いただきました。対談後の質疑応答も盛り上がり、最後のほうには六車さんから認知症の方の世界を描くために「小説を書きたいな」とのご発言も飛び出しました!質疑応答のほか、興味深い内容でありながら紙幅の関係で掲載できなかった話題もあり、編集には悩みました。最後にご参加の皆様、また開催にご協力いただいた皆様に、この場を借りてあらためて御礼申し上げます。…小林

本号の発行は、NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』が最終回を迎える頃でしょうか。ご存知のとおり、同作品には実在のモデルが存在し、作中の雑誌『あなたの暮し』は『暮しの手帖』がモデル。戦後まもない頃、おしゃれに暮らしたいと願う女性のための媒体として創刊され、今なお、暮らしを支える雑誌として歩みを続けています。<(略)この中のどれか一つ二つはすぐ今日あなたの暮しに役立ち、せめてどれかもう一つ二つはすぐには役に立たないように見えても、やがてこころの底ふかく沈んでいつかあなたの暮し方を変えてしまう。そんなふうな、これはあなたの暮しの手帖です>。これは、『暮しの手帖』初代編集長を務めた花森安治氏が創刊号に寄せた言葉。まさに!弊誌も、いつかあなたのケアを変えてしまう、そんなふうな雑誌をめざしたいんです。…小池

基本情報

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訪問看護と介護
21巻10号 (2016年10月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

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