LiSA 28巻4号 (2021年4月)

  • 文献概要を表示

癌性痛および慢性痛は,われわれ麻酔科医も出会う普遍的な問題の一つである。近年,鎮痛薬の種類が増えてきており,患者,医療者ともにその恩恵にあずかることが多い反面,有害事象に悩まされる場面も少なくない。その中でも,オピオイド製剤は薬物療法における鎮痛の主体となり,頼もしい存在だが,不適正な使用により患者の生命および人生に悪影響を及ぼし得る。麻酔科医は,周術期のオピオイド使用と癌性痛・慢性痛でのオピオイド使用の違いや代替方法について知る必要があるだろう。

 今回の症例カンファレンスは,多量オピオイド使用中の患者の麻酔方法,末期癌患者の鎮痛,および医療用麻薬の適正使用について読者に考えていただく機会としたい。

予告編
  • 文献概要を表示

次号の症例カンファレンスの提示症例を,一足先に紹介する。自施設にこのような症例が来たら,どのような麻酔計画を立てるか,事前に考えておいてほしい。次回,各施設のPLANをお楽しみに!

徹底分析シリーズ 血管穿刺:より確実に よりスマートに

巻頭言 渡部 達範
  • 文献概要を表示

麻酔科へようこそ! 麻酔科の仕事は手術麻酔をはじめ多岐にわたるが,そのほとんどの分野で迅速かつ確実な「血管穿刺」技術を必要とする。企画者が麻酔科に入ってすぐの頃,穿刺がうまくいかず沈んでいると,「経験を重ねていけばできるようになるよ〜」とやさしく言われた。しかししばらくすると,「そんな刺し方では,いくらやっても上達しないぞ」と言われるようになった。血管穿刺の“理屈”をよくわかっていないことを見透かされたのであろう。

 確かに,経験を積むだけでも成功率はある程度は上がるが,理屈を知らなければ成功率は頭打ちになる。今となれば当たり前のことではあるが,「ひたすら続けていれば,そのうちうまくできるようになる」と思ってしまっていた自分には目から鱗であった。

 穿刺の方法としては,ブラインド穿刺と超音波ガイド下穿刺が広く行われている。それぞれに適している場面があり,両者とも現在では必須の手技であるが,それぞれの方法に“穿刺の理屈”が存在する。その理屈を理解した後に経験を積むことで,成功率を飛躍的に向上させることができる。

 本徹底分析シリーズでは,ブラインド法と超音波ガイド下法,それぞれの“穿刺の理屈”を解説することを試みた。ぜひ,今後の穿刺成功率の向上にお役立ていただきたい。

  • 文献概要を表示

血管穿刺は薬物の投与,輸液・輸血による循環血液量の補正や貧血の改善,高カロリー製剤の投与,動脈圧や中心静脈圧などの測定を行うために必須の手技である。特に全身管理を行う麻酔科領域では基本中の基本手技である。穿刺法に関しては解剖学的な知識をもとにしたブラインド穿刺が広く行われている。しかし近年,特に中心静脈穿刺においてはブラインド手技に代わって超音波断層像を用いる超音波ガイド下手技が推奨されている。

  • 文献概要を表示

体表から確認できる血管の穿刺は容易である。しかし,体表から確認できない場合にも,施行者の感覚を頼りに盲目的に穿刺しなければならない場面があるため,ブラインド穿刺は必須のテクニックである。ブラインド穿刺の成功率は,施行者の感覚や経験,穿刺する血管の性状に大きく左右され,68〜100%と報告されている1,2)。近年,より確実な方法として,超音波ガイド下穿刺が急速に普及しているが,皮膚表層に位置する末梢血管に超音波プローブを押し当てると,内腔が虚脱して逆にわかりにくいことがある。最近の1895人を対象とした超音波ガイド下穿刺とブラインド穿刺を比較したメタ分析の結果でも,超音波ガイド下穿刺は初回穿刺成功率を上げるものの,最終的な穿刺成功率に差はなく,穿刺に要する時間はブラインド穿刺のほうが短いと報告されている3)。“素早く”という観点では,ブラインド穿刺に軍配が上がる。

 本稿では,末梢血管(静脈・動脈)のブラインド穿刺を解説する。必須のテクニックであるブラインド穿刺を身につけるとともに,超音波ガイド下穿刺習熟への橋渡しとしてほしい。

  • 文献概要を表示

超音波ガイド下血管穿刺は近年普及しており,その適応は中心静脈から末梢動静脈にまで広がっている。超音波を使用すれば標的血管がはっきりと見えるので,簡単に穿刺できそうに思えるかもしれないが,理屈をしっかり理解していないと針先を見失い,逆に合併症を増やすことになるだろう。超音波ガイド下血管穿刺には,主に短軸交差法(short-axis out-of-plane approach)と長軸平行法(long-axis in-plane approach)の2種類がある1,2)。どちらも利点,欠点があるが,本稿では短軸交差法について解説していきたい。

  • 文献概要を表示

はっきり言おう。長軸平行法での血管穿刺はプローブ操作も穿刺技術も短軸交差法と比べて難易度は高く,初心者向けではない。しかし長軸平行法を身につけることができれば,より安全に血管穿刺を行う大きな武器になるのは間違いない。押さえるべきポイントとピットフォールを理解して,安全な血管穿刺に役立てていただきたい。

  • 文献概要を表示

外科技術や器具の改良,術後回復の強化(ERAS)により早期栄養が推奨され,麻酔科医の手術室における中心静脈穿刺の機会は確実に減少している。そのため,これまでのような経験の積み重ねにもとづく技術習得は難しくなってきている。少ない経験で効率よく中心静脈穿刺を身につけるには,まずは理屈を知ることである。穿刺の手順などについては別稿を参照いただきたい。

  • 文献概要を表示

新生児や乳児の血管は成人と比べて非常に細く,視認できる血管も限られているため,穿刺には成人より繊細な操作が要求される。穿刺を成功させるには,「見えている血管を確実に穿刺するブラインド穿刺の技術」と「血管が見えない場合に,超音波を用いて画面上に血管を描出し,確実に穿刺する超音波ガイド下穿刺の技術」の両方が重要である。特に新生児や乳児の場合,目視できる血管がどこにも見つからずブラインドでは穿刺困難なケースも多いため,穿刺困難な症例ほど超音波ガイド下穿刺の技術が重視される傾向にある。

  • 文献概要を表示

肥満患者で末梢静脈路確保が難しいことは昔から知られていた。ひと昔前,大手術の場合は前夜に中心静脈カテーテルを挿入するか,カットダウンで血管を確保すれば手術室滞在時間を短縮できる1)などと本気で論じられていたが,肥満患者の太くて短い頸部を想像しただけでも重大な合併症が脳裏をよぎる。透視下に挿入するにしても,多忙な放射線科医に依頼するのは気が引ける。できることなら末梢静脈路だけで手術を乗り切りたい。しかし,肥満患者の末梢静脈路確保の具体的方法について述べている文献はほとんどなく,超音波装置の使用を推奨している2〜5)程度である。

 本稿では,肥満患者の末梢静脈路確保を中心に,四谷メディカルキューブ(以下,当院)で安全確実にしかもスマートに血管を確保するために日頃行っている方法と心がけていることを紹介する。

  • 文献概要を表示

手術部における針刺し・切創事故は増加傾向にある。また,常に迅速かつ確実な手技が要求されるため,針刺し以外でも血液・体液に曝露するリスクが高い部署といえる。そのため麻酔科医は,血液・体液曝露の危険性について理解し,日常的に曝露対策を実践する必要がある。

 本稿では,針刺しを中心に曝露リスクや事例発生時の対応,予防手段について解説する。

  • 文献概要を表示

はじめに

麻酔薬の作用部位は生体膜であると特定されている。しかし,生体膜中の脂質二重膜に影響を及ぼしてその作用が発現するのか(脂質膜説),あるいは膜タンパク質に影響を及ぼして作用が発現するのか(タンパク質受容体説)は,以前から論争が行われてきた。現在は,脂質膜説では説明できないが,タンパク質受容体説では説明できる数々の論拠により,脂質膜説は過去の理論として葬り去られ,麻酔作用はタンパク質との直接的な相互作用にもとづくものと認知されている。だが本当に麻酔薬はタンパク質受容体に結合する薬物なのだろうか。

 本稿では,脂質膜説とタンパク質受容体説の論争の経緯とタンパク質受容体説の論拠となっている実験事実が脂質膜説を退ける妥当性について考察する。

こどものことをもっと知ろう 第24回

こどもの腎機能 中野 優
  • 文献概要を表示

若手麻酔科医:明日の手術の7歳の患者さん,クレアチニンは0.7mg/dLだな。よし正常だ。

小児科医:先生,この子の身長は何センチなの?

若手麻酔科医:えーと…。ちょっと待ってくださいね。(カルテを調べて)あ,120cmですね。

小児科医:身長120cmならクレアチニン値は0.36mg/dLくらいだよ。0.7mg/dLなら腎機能は半分くらいだよ。

若手麻酔科医:えー! それは気をつけないといけないですね(小児の腎機能はどうやって評価すればいいのだろう…)。

連載 研修医・初心者のための〜Dr.DのおもしろTEE講座 第7回

  • 文献概要を表示

なぜTEEでドプラ法がいるの?

みなさん,こんにちは。TEEしてますか。今回は,ドプラ法のお話です。ドプラ法の学習で,ドプラ効果の理解は避けては通れません。

「う…ドプラ効果…高校の物理で勉強したけど,いまさらなんで,TEEでいるの?」と思われるかもしれませんが,なぜでしょう? また,パルス波を使用するドプラ法では,測定する速度に上限があるのはなぜでしょうか?

連載

THE Editorials
  • 文献概要を表示

Anesthesiology

Editorial:

Cohn CS, Shaz BH. Warming up to cold-stored platelets. Anesthesiology 2020;133:1161-3.

Article:

Strandenes G, Sivertsen J, Bjerkvig CK, et al. A pilot trial of platelets stored cold versus at room temperature for complex cardiothoracic surgery. Anesthesiology 2020;133:1173-83.

■大量出血時の血小板濃厚液投与

濃厚血小板「日赤」の有効期間は採血後4日間となっている。採血後に核酸増幅検査(NAT)を実施するため,実際に現場に供給されるのは,採血翌日以降となる。血小板製剤は基本的に受注生産である。したがって,院内備蓄はなく,緊急に血小板濃厚液(PC)が必要な場合には日本赤十字社からの供給を待つことになる。予定手術であれば,術前あるいはまだ大出血に至らない術中にオーダーできるが,緊急手術となると,どうしても入手に時間がかかる。最近は,大量出血に対してmassive transfusion protocolを用いる場面が多くなってきた。厚生労働省が出している「血液製剤の使用指針」でも,大量出血に対しては赤血球液:新鮮凍結血漿:PCの単位投与比を1:1:1とすることや,すみやかにPCを投与することが推奨されている。そうなると,解決策はPCをより長く保存できる製剤とし,救急センターなどをもつ医療施設に備蓄しておける体制が必要になってくる。

diary

長崎県佐世保市 深野 拓
  • 文献概要を表示

長崎県北部にある佐世保市は九州本土の最西端に位置します。江戸時代までは寒村でしたが,明治に入り佐世保港に鎮守府が置かれると九州各地から人々が集まり数年で市制が敷かれるほどに発展しました。

 当院は海軍工廠で働く方とその家族のために,佐世保海軍工廠職工共済会病院として1911年に発足しました。終戦後は地域の基幹病院として「共済さん」の名前で親しまれています。当院8階にある大講堂には創立当時からの海軍軍医大佐から中将までの20代にわたる歴代院長の肖像写真が掲げられ,歴史の重みを感じます。佐世保は海軍工廠設備の払い下げによって造船業で発展していくこととなります。また米国海軍基地があり軍関係者が住まれているため外国人バーも多く,ジャズの街として賑わっています。

時短・簡単・驚嘆レシピ 夕ご飯 何にする?

  • 文献概要を表示

春は野菜が柔らかく美味しくなる季節です。春のニンジン,キャベツを主役にした失敗知らずの簡単レシピや,イチゴのお手軽スイーツなどで食卓から春らしさを演出してはいかがでしょうか。

はへほの書評

  • 文献概要を表示

「知的」アプローチを「血的」かつ「痴的」観点から紹介する

屠蘇をコンビニの安酒で済ませたせいか,あるいは「密」を避けるため初詣に行かなかった罰が当たったのかわからないが,新年早々に難題を抱えることとなった。何を血迷ったか,さほど親しくもないLiSA編集長に時候の挨拶メールを送ったのがそもそもの間違いである。昨年末に出版されたばかりの本の批評文を書かされることになった。

 麻酔科医なら知らぬ者の無い(もしあなたがその名を知らないとしたら,それはそれでおめでたいことである)稲田英一先生の『麻酔への知的アプローチ』である。初版から30年,第11版を数えるベストセラー,麻酔科医のマストアイテムといえる書物に,今更批評などがいるのだろうか? 著者の薫陶を受けた教授が全国に星の数ほどいるだろうに,場末の一麻酔科医に過ぎない評者に依頼するとは,編集部の思惑が窺われる。それでなくともコロナ感染爆発で気の休まらない時に,北陸の家々に降り積もる雪のような重荷を背負ったわけである。長時間作用型筋弛緩薬を投与して,Macintosh型喉頭鏡を口の中に突っ込んだら Cormack 分類 grade 4 だった時に匹敵する後悔であるが,スガマデクスがあるのが当たり前の環境で育った過保護な麻酔科医には想像もつかないだろう。

--------------------

from LiSA

目次

LiSAカレンダー

基本情報

13408836.28.4.jpg
LiSA
28巻4号 (2021年4月)
電子版ISSN:1883-5511 印刷版ISSN:1340-8836 メディカル・サイエンス・インターナショナル

文献閲覧数ランキング(
4月5日~4月11日
)