快人快説
—麻酔メカニズム研究シリーズ⑧—麻酔薬の作用部位:タンパク質受容体説にもとづく論拠の真偽
松木 均
1
Hitoshi MATSUKI
1
1徳島大学大学院 社会産業理工学研究部
pp.425-435
発行日 2021年4月1日
Published Date 2021/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101201963
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はじめに
麻酔薬の作用部位は生体膜であると特定されている。しかし,生体膜中の脂質二重膜に影響を及ぼしてその作用が発現するのか(脂質膜説),あるいは膜タンパク質に影響を及ぼして作用が発現するのか(タンパク質受容体説)は,以前から論争が行われてきた。現在は,脂質膜説では説明できないが,タンパク質受容体説では説明できる数々の論拠により,脂質膜説は過去の理論として葬り去られ,麻酔作用はタンパク質との直接的な相互作用にもとづくものと認知されている。だが本当に麻酔薬はタンパク質受容体に結合する薬物なのだろうか。
本稿では,脂質膜説とタンパク質受容体説の論争の経緯とタンパク質受容体説の論拠となっている実験事実が脂質膜説を退ける妥当性について考察する。
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