LiSA 27巻5号 (2020年5月)

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関西地方の麻酔科医たちが「症例カンファレンス」を実際に集まってやってみた。第2弾は,高齢者の経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)と人工膝関節置換術(TKA)について語った。

症例カンファレンス

予告編
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次号の症例カンファレンスの提示症例を,一足先に紹介する。自施設にこのような症例が来たら,どのような麻酔計画を立てるか,事前に考えておいてほしい。次回,各施設のPLANをお楽しみに!

徹底分析シリーズ マイトラクリップ—経皮的僧帽弁接合不全修復システムに麻酔科医はどうかかわるか

巻頭言 瀬尾 勝弘
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僧帽弁閉鎖不全症(僧帽弁逆流)に対するカテーテル治療として,経皮的僧帽弁接合不全修復システム(MitraClip®,以下,マイトラクリップ)が2018年4月に保険償還となり,低侵襲の心不全治療の新たな選択肢として期待が寄せられている。マイトラクリップは,日本循環器学会の施設認定を受けた施設で,ハイブリッド手術室などで全身麻酔下に経食道心エコー(TEE)の画像を確認しながら,僧帽弁にクリップをかけて逆流を減らす手技である。

 この先進的医療は,手技上の難易度に加えて患者の僧帽弁逆流の病態はもちろん,心不全の状態にも配慮が必要である。僧帽弁逆流には,変性による(一次性)逆流と機能的(二次性)逆流があり,機能的僧帽弁逆流に対する有用性については現在なお議論があるが,外科手術適応からはずれる患者に対する本治療の期待は大きい。循環器内科医は,術前の心不全治療,術中のエコー所見の評価,インプランターとしての手技を担い,麻酔科医は,術中の麻酔・全身管理を担う。そのような意味で,複数の循環器内科医と麻酔科医が,多くの医療スタッフとともに,ハートチームとしてチーム医療を遂行することが望まれる。

 本徹底分析シリーズでは,現在の日本でマイトラクリップに先駆的に取り組んでいる施設の循環器内科医と麻酔科医に,自施設での経験とともにマイトラクリップの現状と周術期管理のポイントを,それぞれの立場からわかりやすく説明していただいた。導入予定および検討中の施設の参考として,また,いまだなじみの薄い麻酔科医が全体像をつかむきっかけになれば幸いである。

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心不全患者数は社会の高齢化に伴い年々増加の一途を辿っている。心不全の原因疾患として,虚血性心疾患や高血圧,不整脈などとともに,弁膜症の比重が昨今増加していることは,読者も日々実感されているだろう。弁膜症は,大動脈弁,僧帽弁,三尖弁,肺動脈弁につき,それぞれ狭窄と逆流,その両方が生じ得る。

 中でも特に重症の僧帽弁逆流mitral regurgitation(MR)は,無症候であってもその予後は悪く,薬物療法のみの生存率は低い。これまで外科手術が唯一の治療法であったが,高齢,低心機能,併存症などによる周術期リスクの上昇から,手術ができず保存的加療となっている症例も少なくない。このような外科手術が困難な症例に対し,経カテーテル的に治療しようという試みがなされてきた。方法としては,外科手術を模倣するものが多く,弁形成術,弁輪縫縮術,弁留置術などが試みられている。その中でも最も臨床的に普及しているのがMitraClip®である。これは,逆流している僧帽弁尖をクリップでつまむという治療であり,現在,欧米ではすでに標準治療として臨床応用されている。

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MitraClip®の適応判定には患者背景,僧帽弁逆流mitral regurgitation(MR)の重症度評価およびMitraClipの形態適応の判定という三つの多面的な視点が必要である。MRは,弁膜症としての視点と心不全としての側面がある。これらは,僧帽弁逸脱などの変性による(一次性)僧帽弁逆流(degenerative MR,DMR)か,心機能低下に伴うテザリングに起因する機能的(二次性)僧帽弁逆流(functional MR,FMR)か,と関連してくる。DMRとFMRは同じMRという現象であってもまったく別の疾患と考えなければならないほど,その性質が異なる。

 MitraClipの適応判定には,患者背景や病歴も含めたマクロの視点と,経食道心エコー(TEE)による非常に細かい形態評価といったミクロの視点で総合的に評価する必要がある。

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僧帽弁逆流mitral regurgitation(MR)に対するカテーテル治療であるMitraClip®が日本でも始まった。この治療では,正確な心房中隔穿刺が必要であり,X線透視ではなく経食道心エコー(TEE)を主なガイドとして用いるなど,これまでのカテーテル治療とは違った部分がある。そのため各施設において手技のスタイルを確立するまで時間がかかる場合がある。

 本稿では,仙台厚生病院(以下,当院)での手技スタイルを提示するとともに,MitraClipのtips & tricksを手技のステップごとに概説する。

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MitraClip®が日本に導入されて約2年が経過した。日本における市販後調査の結果によると,初期500例の平均年齢78歳,米国胸部外科学会(STS)スコア11.9%に対して30日死亡は2.4%と良好な成績を収めている。

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2018年4月に日本でもMitraClip®による経皮的僧帽弁形成術が開始された。症例を経験していくなかで,治療によって劇的な効果が得られるケースもあれば治療後の心不全コントロールに難渋するケースにも遭遇する。また,これまで機能的(二次性)僧帽弁逆流(functional MR,FMR)に対するMitraClipの効果は明らかではなかったが,2018年秋に欧米においてFMRに対するランダム化比較試験(RCT)の結果が発表され,患者選択の重要性が改めて議論されている。

 本稿ではこれまでのエビデンスと今後の予後に関して概説する。

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投薬など内科的治療では改善が望めない重症左心不全に対する侵襲的治療として,さまざまな方法が試みられている。究極の治療法として心臓移植や左室補助装置(LVAD)装着などが挙げられる。また,心筋シートなどの再生治療も開始されようとしているが,まだ確立されてはいない。

 重症の僧帽弁逆流mitral regurgitation(MR)に対しては,開心術による僧帽弁形成手術や弁置換術が選択されるが,侵襲性が高いため,その適応を十分に検討する必要がある。内科主導での侵襲的治療法としてIMPELLA®装着による左室補助もあるが,根本的な治療法とはならない。大腿静脈アプローチによるMitraClip®は,通常の開心術に比べると侵襲は非常に低く,高リスクであっても適応となる症例が少なくない。

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日本が高齢化社会へと移行する中で僧帽弁閉鎖不全症の患者数は増加している1)が,本来は手術適応となる症候性の重症僧帽弁逆流mitral regurgitation(MR)症例の約半数が併存疾患により外科手術が行われていない2)。日本でMitraClip NTシステム®(Abbott Vascular Japan社)による経皮的僧帽弁接合不全修復術(MitraClip®)が開始された2018年はMITRA-FR3),COAPT4)と大規模前向き試験の結果が相次いで報告された年でもある。現在,日本でも症例数が増加しつつあるMitraClipにおける麻酔管理について紹介,概説する。

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本稿ではMitraClip®においてのモニタリングについて,その管理の実際と麻酔科側の工夫などについて述べる。

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MitraClip®は,重症僧帽弁逆流mitral regurgitation(MR)に対する経カテーテル治療である。対象は「十分な内科治療を行っているにもかかわらず心不全症状を有する慢性高度僧帽弁逆流の患者で外科手術が困難かつ,MitraClipに適した解剖学的僧帽弁形態である患者」とされている。すなわち,変性による(一次性)僧帽弁逆流(degenerative MR,DMR)では,左室駆出率(LVEF)<30%,もしくは合併症のため外科手術が高リスクな患者,機能的(二次性)僧帽弁逆流(functional MR,FMR)では,血行再建の適応がなく,両心室ペーシングを含めた内科治療下に有症状で,①LVEF>30%で外科手術のリスクが高い,②LVEF<30%で左室補助デバイスや心移植の適応のない患者が適応である1)。手術侵襲は小さいものの,正確なMRの病態生理の理解にもとづいた術中循環管理が必要である。

温故知鍼灸〜目に見えない世界を覗く〜

1 中医学と経絡 郷家 明子
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鍼灸との出会い

幼いころ風邪をひくと,自宅近くの鍼灸院に連れて行かれ,目の見えないおじいちゃん鍼灸師にお灸をすえてもらっていました。糸状に艾を細く捻り,1cmほどの長さに切ります。皮膚の上にあるツボという場所を湿らせたあと,艾の先端をツボに置きます。艾のもう一方の端にお線香の火をつけると,火が艾に燃え移り,ツボまで降りてきます。火が付いた艾が皮膚に触れた瞬間のピリッと痛熱い感覚には耐えなくてはなりませんが,その後体がポカポカして,汗をかいて風邪が治ることが多いのです。

 皮膚の上にあるツボというものに刺激を与えると,何らかの力が働いて身体の中が変化することを,子供ながらに理解し,体感していました。のちに,それが身体のなかの「気」を動かしていると知ると,目には見えない気というものに興味をもつようになりました。鍼灸で家人の病気が治るのを目の当たりにしたこともあり,いつか鍼灸治療をやってみたいと思うようになりました。医師の道へ進み,循環器内科医として働いていた10年目に,中医学を学ぶため台湾へ留学しました。

こどものことをもっと知ろう 第14回

両親との上手な接し方 久我 修二
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麻酔科研修医「術前診察にいったら,こどもが泣いて暴れてほとんど評価できなかったです。両親もあやすのに必死で,こちらの説明はほとんど理解できていない感じでした。とりあえず同意書のサインはもらえましたけど」

麻酔科指導医「まあ,サインもらったからいいか……」

その後,両親がナースステーションに訪ねてきた。

両親「麻酔のことをあまり聴き取れなかったので,もう一度,小児科の先生からでいいので,説明してもらえないでしょうか?」

小児科医「……わかりました」

AYBのresidencyブログ

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2月1日(土)

本日より聖路加国際病院では神経麻酔領域のISO 80369-6(NRFitTM)が導入されます。

土曜日なので当直医の先生方,ご対応よろしくお願いします<m(__)m>

緊急手術ではあまり使用されることはないと思いますが,無痛分娩では混乱のないように,事故のないように,助産師さんと協力してください。

バランスト・スコアカー道—マネジメントをめぐる冒険

BSCとの出会い 末盛 泰彦
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はじまりはQBS

2007年の冬,ふと目にした「マネジメントの時代」という文言が気にかかった。麻酔科医としての今後の自分に足りないものは,この「マネジメント」とやらではないのだろうか,と。それは,九州大学大学院経済学府産業マネジメント専攻,通称「九州大学ビジネス・スクール(QBS)」の募集要項の中で目にしたものだった。

 QBSの入学試験は,秋の一般試験と冬の特別選抜の2度実施される。特別選抜とは一般試験の後に若干名を追加募集するもので,小論文と面接が課される。そもそも経済学的な素養もなく,臨床に追われる身での一般試験挑戦は無謀だ。ただ特別選抜の小論文なら何とかなるかもしれない。そこで,一念発起で受験を決意し,駆け出し麻酔科医として抱いていた当時の問題意識を一つ一つ小論文内に記してみた。また面接の場では,特に手術室で有効な「マネジメント」を学びたい,ということを規定時間いっぱいに述べた。思い返せば,いずれもギャンブルだった。しかし賽の目は味方し,とにもかくにも翌年4月から,病院勤務後に夜学として開講されるQBSキャンパスに駆けつける慌ただしい生活が始まった。

diary

徳島県三好市 木下 康
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当院は三好市池田町,吉野川のほとりにあります(写真1)。三好市と隣の美馬市など二市二町を合わせた県西部診療圏の中核病院で,地域救急救命センターに指定され,診療圏内の他医療施設とは緊密に地域連携しています。診療圏全体の人口は約8万人,山間過疎地域で,高齢者が圧倒的に多く,麻酔科依頼件数のうち65歳以上は全体の75%,90歳以上は10%を超えます。住民は素朴で協力的な人が多く,挿管実習にも快く応じてくれます。当院では多くの診療科で徳島大学や徳島県立中央病院から派遣される非常勤医師が診療にあたっています。2018年に麻酔科に赴任して以来,麻酔科常勤医は診療圏全体で私のみですが,定年退職された前副院長と徳島大学や徳島県立中央病院,パートの医師などに手伝ってもらっています。全身麻酔件数が多いのは整形外科で,次いで消化器・呼吸器外科,泌尿器科,脳神経外科の開頭術や頸動脈内膜剝離術(CEA)などです。週末以外は私が麻酔待機ですが,やむを得ず緊急症例を徳島県立中央病院や香川県の病院に受け入れてもらうことがあり,感謝に堪えません。

時短・簡単・驚嘆レシピ 夕ご飯 何にする?

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“ジョイ女医クッキング”は,もう15年も続いているお料理好きの麻酔科医,看護師の集まりです。

時短,簡単,驚嘆をモットーに,仕事のあとの夕食作りを楽しんでいます。

皮ごと料理,ほったらかし料理,便利調味料を使うなど,調理の簡略化を試み,できあがったお料理は,盛り付け,テーブルセッティングなどを工夫して,見た目も美しく,美味しく楽しめます。

常備菜や便利調味料のほか,健康,アンチエイジング,ダイエットなどを考えた料理も作っています。

楽しく食生活が豊かになるレシピを紹介していきますのでぜひ作ってみてください。

クラシック音楽談義 ゆるりと音楽の話をしませんか 第12回

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「美しい」曲が書けないベートーヴェン

ベートーヴェンの有名なピアノ曲と言えば「エリーゼのために」でしょう。この曲は佳曲ですが,ロマンチックなタイトルにしては,万人の心に響くような美しい曲ではありません。有名なピアノとヴァイオリンのためのソナタ「春」にしても,革新的と言われてはいますが“美しい”とは言えない曲です。

 ベートーヴェンは,美しいメロディがちっとも書けませんでした。皆が思い浮かぶベートーヴェンの傑作といえば「英雄」「運命」「田園」などの交響曲でしょう。一方,ピアノ曲はとっつきにくいイメージがあり,聴いてやるぞという積極性が必要になります。ベートーヴェンの信奉者は,ベートーヴェンのピアノ曲を評してbeautifulとかsweetなどとは言いません。amazing, superb craftsmanshipやbreathtaking, incredible passage…などと評しています。

連載

THE Editorials
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The New England Journal of Medicine

Editorial:

von Mutius E, Martinez FD. Vitamin D supplementation during pregnancy and the prevention of childhood asthma. N Engl J Med 2020;382:574-75.

Article:

Litonjua AA, Carey VJ, Laranjo N, et al. Six-year follow-up of a trial of antenatal vitamin D for asthma reduction. N Engl J Med 2020;382:525-33.

■気管支喘息とビタミンD

日本における気管支喘息患者は130万人を超え,さらに増加傾向にある。学童期の有病率も上昇傾向にある。気管支喘息は2〜3歳までに発症し,そのうちの20〜30%は成人喘息に移行するといわれている。喘息の原因には,ダニやハウスダストなどのアレルゲンの増加,そのほか環境の悪化,過労やストレスなども関係している。

 ビタミンDが気管支喘息のコントロールを改善することや,ビタミンD不足が気道過敏性を亢進させたり,呼吸機能を低下させたり,気管支喘息のコントロールを不良にすることが報告されている。ビタミンDが気管支喘息のコントロールを良好にする機序としては,肺における炎症反応カスケードを抑制することや,抗炎症効果をもつインターロイキン-10の産生を増加させることなどが挙げられている。さらに,妊婦にビタミンDを投与すると,乳児期の喘息や一過性喘鳴の頻度が低下することも報告されている。ビタミンDが胎児の肺の発達を促進することや,免疫反応を修飾することがその機序として考えられている。

Tomochen風独記

64 K1病棟勤務—夜勤 山本 知裕
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ドイツ小児心臓センターDeutsches Kinderherzzentrum(DKHZ)循環器ICU(K1)病棟での業務について,最後は夜勤です。

—髙橋トレーナーが解決!—オペ室でのびのびストレッチ

殿部 髙橋 勇気 , 武石 健太
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【登場人物】

髙橋 勇気:麻酔科医特有のカラダの悩みをストレッチで解決する名トレーナー

武石 健太:麻酔科3年目。向上心高めな熱血タイプ

(※登場人物のプロフィールは実際の状況とは異なります)

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基本情報

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LiSA
27巻5号 (2020年5月)
電子版ISSN:1883-5511 印刷版ISSN:1340-8836 メディカル・サイエンス・インターナショナル

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