徹底分析シリーズ マイトラクリップ—経皮的僧帽弁接合不全修復システムに麻酔科医はどうかかわるか
巻頭言
瀬尾 勝弘
1
1小倉記念病院 救急部(麻酔科・集中治療部)
pp.503
発行日 2020年5月1日
Published Date 2020/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101201667
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- 文献概要
僧帽弁閉鎖不全症(僧帽弁逆流)に対するカテーテル治療として,経皮的僧帽弁接合不全修復システム(MitraClip®,以下,マイトラクリップ)が2018年4月に保険償還となり,低侵襲の心不全治療の新たな選択肢として期待が寄せられている。マイトラクリップは,日本循環器学会の施設認定を受けた施設で,ハイブリッド手術室などで全身麻酔下に経食道心エコー(TEE)の画像を確認しながら,僧帽弁にクリップをかけて逆流を減らす手技である。
この先進的医療は,手技上の難易度に加えて患者の僧帽弁逆流の病態はもちろん,心不全の状態にも配慮が必要である。僧帽弁逆流には,変性による(一次性)逆流と機能的(二次性)逆流があり,機能的僧帽弁逆流に対する有用性については現在なお議論があるが,外科手術適応からはずれる患者に対する本治療の期待は大きい。循環器内科医は,術前の心不全治療,術中のエコー所見の評価,インプランターとしての手技を担い,麻酔科医は,術中の麻酔・全身管理を担う。そのような意味で,複数の循環器内科医と麻酔科医が,多くの医療スタッフとともに,ハートチームとしてチーム医療を遂行することが望まれる。
本徹底分析シリーズでは,現在の日本でマイトラクリップに先駆的に取り組んでいる施設の循環器内科医と麻酔科医に,自施設での経験とともにマイトラクリップの現状と周術期管理のポイントを,それぞれの立場からわかりやすく説明していただいた。導入予定および検討中の施設の参考として,また,いまだなじみの薄い麻酔科医が全体像をつかむきっかけになれば幸いである。
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