LiSA 25巻9号 (2018年9月)

異職交流インタビュー

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LiSA徹底分析シリーズ「麻酔科×MBA」から早1年。今回はそのMBA医師の先駆け,山本雄士氏を訪ねた。山本氏はハーバード・ビジネススクールでMBAを取得後,医学・経営学両面の知見を生かし公的機関や医療ベンチャーで要職を務める一方,自身でも「ミナケア」を起業。これと並行して主催する私的勉強会「山本雄士ゼミ」には,全国の医学生や医療関係者など延べ3500名あまりが参加。常に活況を呈している。

 有名専門誌で特集記事が組まれ,今やビジネス界の寵児となった感もある山本氏に,LiSAとしては敢えて「医師同士の対話」を申し込んだ。返って来たのは「いいですねえ,何でも訊いてください」との笑顔。もともとどんなタイプの医者だったのだろう。その眼差しがとらえるこれからの医療のかたち,そして麻酔科医のあり方は。

 個人的にはずっと目標としてきた存在でもある。胸を借りる思いでハーバード流ディスカッションに臨んだ。

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ピンチは“ダマ”になってやってくる,というのは,深紅の“闘魂”マフラーで有名な,元プロレスラーの言葉らしい(中島らも『恋は底ぢから』より)。ピンチとはただ一つの問題ではなく,いくつもの厄介ごとが塊になってやってくるからこそ危機的なのだ,という趣旨である。

 われわれ麻酔科医は日々,危機的な状況やきわめて厳しい症例に対面することを常としている。ある程度の臨床経験を積んだ麻酔科医であれば,それなりに高リスクの症例に出会っても,難なく乗り越える知識とスキルを持ち合わせていることだろう。しかし,その症例が複数の重大リスクを有していた場合,その難易度は急激に高くなり,しかもそれが呼吸と循環の問題であったときには,それらが相乗的に互いのリスクを深刻化させることになる。

 今回提示するケースは,重度心機能低下に呼吸機能障害を合併した患者に対する呼吸器外科手術の一例であり,まさにピンチがダマでやってきた症例である。冒頭に引いた言葉は以下のように続く。「その“ダマ”をひとつずつ解きほぐして,ひとつずつやっつけていけば,ピンチってのは必ず乗り切れる!」。

 複数の重大リスクが複雑に絡み合った状態に対し,それぞれを個別に分析し,いかにシンプルな問題に変換して解決へと導くか。問題がダマとなってやってきた時こそが,われわれの臨床麻酔科医としての地力が問われるときである。重度心機能低下に対するECMO,肺機能低下に対する分離肺換気,術後疼痛管理など,読者自身がこの症例に遭遇したら,どのようにこれらのダマを解きほぐしてやっつけるのか,ぜひとも一緒に考えていただきたい。

徹底分析シリーズ ステントグラフト治療最前線

巻頭言 坪川 恒久
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約10年前までは,大動脈瘤・解離の治療はすべて開胸・開腹手術が基本であった。多くは一刻を争う急患だったし,また内容としては出血との闘い(「出血より速く」輸血すること)が求められるし…,ところが予後は芳しくなく,冬場の“ハイシーズン”に立て続けに搬送されてくると,心が折れそうになったものである。

 ステントグラフト(SG)の臨床導入により,状況は劇的に変わった。当初は,腹部の単純な瘤だけが対象であったが,技術の革新,手技の向上により,胸部,そして弓部と,手術対象が広がってきている。そのため麻酔科医は,どこにSGを入れ,どこにバイパスをつくり,どの血管を閉鎖するのかなど,手術手順を正しく理解し,起こり得る合併症を知ったうえで麻酔計画を立てる必要がある。

 また,初期に埋め込まれたSGは10年を越えるようになり,エンドリークが問題としてクローズアップされてきている。エンドリークに対処する方法は追加ステントと手術があるが,こちらもエンドリークのタイプを知って準備することは周術期管理上必須である。

 今回の徹底分析シリーズは,いまだ発展途上にあるSGの過去,現在を知り,未来を見通せるように企画した。ぜひ,明日からの臨床に役立てていただきたい。

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日本では2006年に企業製ステントグラフト(SG)が承認されて以降,大動脈瘤aortic aneurysmに対する治療は大きく変化し,SG術が急速に普及した。それにより,高リスクとして手術を断念されていた患者も破裂の不安から解放されたうえに救命できるようになった。さらに年々,SGの技術,デバイスは進歩し,より安全で確実な治療が可能となっている。

 本稿では,最近の知見を交え,大動脈瘤および破裂性大動脈瘤に対するSG治療について概説する。

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ステントグラフト(SG)に用いられるテクノロジーで,ハイテクノロジーというべきものはほとんどなく,反対にローテクノロジーの集合体といえる。

 本稿ではSGの基本構造とそれに使われる素材,そしてこのシステムを用いる際のさまざまな臨床上での工夫について説明したい。

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腹部大動脈瘤 abdominal aortic aneurysm(AAA),胸部下行大動脈瘤から始まったステントグラフト(SG)内挿術は,近年その適応が拡大傾向にある。疾患としては,動脈硬化性の真性瘤のみならず大動脈解離に対する治療が行われるようになった。解剖学的には,弓部大動脈瘤,胸腹部大動脈瘤thoracoabdominal aortic aneurysm(TAAA)も治療の対象となってきている。

 大動脈瘤を内側から補強するという発想は斬新で,われわれ血管外科医にとっても未知の領域であった。このため,適応が拡大するにつれ,SG内挿術特有の合併症もまた報告されるようになった。なかでも,さまざまなデバイスが大動脈の中を通過することによって生じる術中の塞栓症は,全身麻酔下の手術では発見も遅くなり,発症後の治療も有効なものは少ない。

 本稿では,解剖学的にthoracic endovascular aneurysm repair(TEVAR)が困難といわれている弓部大動脈瘤に対する当施設での塞栓症予防に対する取り組みについて,症例を通して紹介するとともに,今後の展望についても言及したい。

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上行〜弓部大動脈瘤に対する人工血管置換術(open surgery,OS)は現在も治療のゴールドスタンダードではあるが,高齢者や合併症をもつ患者では死亡率,合併症発生率はいまだ高い1)。そこで近年,高リスク患者では低侵襲手術であるthoracic endovascular aneurysm repair(TEVAR)が選択されることが多い2)。しかし通常ステントグラフト(SG)を上行大動脈から留置する場合は,非解剖学的頸部バイパスや,チムニー法による小口径SG留置を併施する必要がある。さらに当院では,脳塞栓症を避けるために,経皮的心肺補助(PCPS)下に頸部バイパスを送血ルートとして脳分離循環を行うこともある。ただし,この術式はまだ広まっておらず,手技も複雑で,種々の麻酔管理上のピットフォールが存在する。

 前稿の術式解説を踏まえ,本稿では麻酔管理上の要点を手術の進行に従ってまとめる。

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胸部大動脈瘤thoracic aortic aneurysm(TAA),腹部大動脈瘤abdominal aortic aneurysm(AAA)に対するステントグラフト(SG)内挿術は,日本でも多くの施設で実施されるようになった1)。手術治療では一定の割合で生じる合併症を避けることはできず, SG内挿術も例外ではない。そして,症例数の増加に伴い,合併症の発生数も多くなってきているといえる。これら合併症には,術中や術直後に起こり,麻酔科医が迅速に対応する必要があるものや,術後数日〜数週間後に発生し,麻酔科医がその予防に貢献し得るものがある。

 本稿では,これらの合併症に焦点を当て,原因や予防法,発生時の対処について述べる。

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日本において企業製腹部用デバイスの保険収載が2007年,胸部用デバイスが2008年と,本格的に大動脈瘤に対するステントグラフト(SG)治療が始まって約10年。この間にさまざまな企業製デバイスが登場し,さまざまな手技が考案され,今なお,発展途上である。

 SG治療の導入を契機に設立された日本ステントグラフト実施基準管理委員会(JACSM)のレジストリーでは,2015年時点で51380例が登録され,その成績が解析されている1)。それによると,instructions for use(IFU)外の症例が,47.6%も含まれているにもかかわらず,手術死亡率は1.15%と,海外における過去の大規模研究と遜色ない結果が示された。

 その一方で,人工血管置換術(open surgery,OS)との多施設ランダム化比較試験(RCT)における長期成績をみると,EVAR trial 12)では,術後6か月までは瘤関連死亡率はendovascular aneurysm repair(EVAR)が有意に低いのに対し,8年後はOSが有意に低い。The Dutch Randomized Endovascular Aneurysm Management(DREAM)の累積12年間の報告3)では,術後の追加治療回避率はOSが有意に高く,EVARの追加治療が課題とされる。実臨床においては,エンドリークによる瘤径拡大に対する追加治療が増加していることを背景に,腹部領域においてOSが占める割合が増加している施設もある。

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外傷性大動脈損傷blunt aortic injury(BAI)は,致死的であり,病院に搬送される前に死亡に至ることも多い損傷の一つである1)。これに対するステントグラフト(SG)の有用性に関する報告も増え,2015年にEastern Association for the Surgery of Trauma(EAST)からガイドライン2)が発表されている。

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X線装置を用いた血管撮影およびinterventional radiology(IVR)は,その低侵襲性から広く応用されている。最近では,大血管のステントグラフト(SG)治療をはじめとした外科手術と血管内治療を組み合わせたハイブリッド治療の普及に伴い,手術室で放射線装置を使用する機会が増加している。より低侵襲で効果的な治療を提供できる反面,治療にかかわる医療スタッフは,手術室において放射線被ばくする機会が増えている。

 本稿では,放射線防護のための原則,血管撮影装置の特性,防護用具の正しい使い方と被ばく軽減のための知識を習得し,放射線防護を実践できるようになることを目的とする。眠くなる原理や物理的な話はできるだけ避け,臨床上すぐ応用できるように具体的なケースを交えて述べていこう。

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はじめに

「なぜ,エコーを使っているのに,新生児や乳児の末梢血管路をうまく確保できないんだろう。モニター画面に映っている丸いものに針を当てるだけなのに…」。こんな気持ちになったことのある方も少なくないでしょう。モニターに血管は映っています。末梢血管路確保は,円筒状の物体に穿刺針の外筒を挿入する単純作業。しかしそこには,小児独特のピットフォールがいくつかあり,その対応には知識とトレーニングが必要です。それらを乗り越えれば小児の血管は誰でも確実に確保できます。

 本稿では,文字どおり“血の滲む練習”と試行錯誤の末にたどり着いた,私流の穿刺方法を紹介します。

連載 ふぁ〜まこKD 第9話

薬力学的相互作用 小原 伸樹
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これまでのあらすじ:

若手麻酔科医の「大先生」は,手術を担当した小学5年生の「ケンタ君」を通じて,薬物動態を一緒に学んできました。今日は大学のオープンキャンパス。大ホールで各診療科がブースを構え,医療機器の展示や健康相談,ミニ講義などを行っています。その中に,麻酔科の展示エリアで見学者が来るのを待っている大先生の姿もあります。

連載

THE Editorials
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The New England Journal of Medicine

Editorial:

Brandstrup B. Finding the right balance. N Engl J Med 2018;378:2335-6.

Article:

Myles PS, Bellomo R, Corcoran T, et al. Restrictive versus liberal fluid therapy for major abdominal surgery. N Engl J Med 2018;378:2263-74.

■腹部手術での輸液療法に対する考え方の変化

腹部手術では「サードスペース」への体液喪失を補うために,以前は大量の細胞外液系輸液剤を投与することが一般的であった。しかし,2003年にEditorialの著者であるBrandstrupらにより,大量輸液によって周術期合併症が増加すること,輸液バランスをほとんどゼロバランスとすることで合併症発生率が低下することが報告された(Ann Surg 2003;238:641-8)。その後,従来の非制限的輸液療法liberal fluid strategyと,制限的輸液療法restrictive fluid strategyを比較した研究が多くなされ,輸液過剰の有害性が示されてきた。

 日本でも,中分子量のヒドロキシエチルデンプン(HES)が市販され,HESを用いることで輸液量を制限することが広く行われるようになってきた。しかし,輸液量が過剰でも不足しても腎障害が起こることが懸念されている。

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Enjoy! ワイン

13 Q&A特集 安部 裕道 , いわむら あきこ
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こんにちは!ワイン安部です。

健康的なワインライフを送っていますか?「Enjoy!ワイン」は2年目に突入しました。

読者の皆さま,誠にありがとうございます。

少しでもワインに親しみをもっていただけるよう,これからも続けていきます。

今月は,本連載で一番やりたいことである「インタラクティブな記事」=「Q&A特集」と題して,ズバッとワイン安部的な観点でお答えいたします。

(今までもたくさんのご質問,ありがとうございます。これからもどうぞたくさん,些細なことでもお寄せください。)

Tomochen風独記

㊺ ロードサービス 山本 知裕
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今回はドイツでもしも自動車関連のトラブルに見舞われた場合に備えてぜひとも加入しておきたい全ドイツ自動車クラブ Allgemeiner Deutscher Automobil-Club(ADAC)について紹介します。

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基本情報

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LiSA
25巻9号 (2018年9月)
電子版ISSN:1883-5511 印刷版ISSN:1340-8836 メディカル・サイエンス・インターナショナル

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