LiSA 25巻8号 (2018年8月)

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扁桃摘出術は,市中総合病院でも日常的に行われている手術の一つである。LiSA読者の中にも,小児の扁桃摘出術の麻酔管理を経験した方は多いだろう。日本では一般的に入院して行われることが多いが,米国の小児病院では,低リスクのものは日帰り手術で行われており,気軽に行うことができる手術と考えがちである。一方で,低酸素脳症や死亡例などの重篤な術後合併症が意外に多いという研究が発表され,あらためて警鐘が鳴らされている。扁桃摘出術を受ける小児は,症例によって重症度が大きく異なるため,リスクを適切に評価し,安全な術後管理を意識した麻酔計画を立てる必要がある。実際に麻酔計画を立てるにあたって,具体的にどのような点に注意が必要か,今一度,初心に戻って考えてみたい。

徹底分析シリーズ ダヴィンチ手術の現在地

巻頭言 末盛 泰彦
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ITやAIを駆使するビッグデータに遠隔治療,ゲノム解析にもとづく遺伝子治療など,テクノロジーが医療を様変わりさせる現代。外科領域を変えつつあるのは,手術支援ロボット「ダヴィンチ(da Vinci® Surgical System)」による「ロボット支援下手術robot-assisted surgery(RAS)」だ。この手術室の新規テクノロジーに対し,最も近い場所にいるわれわれ麻酔科医は,どう向き合っていくべきなのだろう。

 これまで前立腺癌と腎癌のみに限られてきた保険適用が,本年4月から新たに12の術式で承認された。大方の予想を超えるこの広範な適用拡大は,RASの技術的優位性と安全性が認められたことを示し,外科手術の既成概念を覆す「パラダイムシフト」さえ予感させる。一方で,合併症・不利益事象に関連するエビデンスも蓄積され,麻酔科医が周術期管理の際に目を光らせるべきポイントも出揃ってきた。今後の外科医育成のあり方といった新たな課題に加え,「手術時間が長くなった」などの本音も聞こえてきているのが現状だ。

 また別の視点に立てば,このきわめて精密な医療装置の運用には,多職種人材の関与に加え,大規模な環境整備,そしてなにより莫大なコストを要し,現場の「ヒト・モノ・カネ」に及ぼす影響はそれぞれ少なからぬものがある。手術室を預かる麻酔科医には,RASのこうした側面も熟知したうえでのマネージメントが求められている。

 今回の徹底分析シリーズでは,国内外で実績豊富な各施設の「現在地」を紹介しながら,それぞれの現場の麻酔科医・外科医の声に耳を傾け,この新たなテクノロジーによる医療について多角的に考えてみたい。

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腹腔鏡下手術支援ロボットは1980年代からその開発が進められてきたが,1999年のda Vinci® Surgical System(Intuitive Surgical社)の登場によって急速に発展してきた。日本における胃癌に関するロボット支援下手術robot-assisted surgery(RAS)は先進医療Bの臨床試験を経て2018年4月から保険収載となった。RASは,従来の手術治療の問題点を克服するさまざまな可能性を秘めている一方,特有の術中合併症をきたす可能性があり,今後,この手術を安全に普及させるためには,外科医,麻酔科医,看護師,臨床工学技士を含めた手術チームの結成とRASに対する十分な習熟が必要となる。

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日本において,ロボット支援下前立腺摘除術robot-assisted radical prostatectomy(RARP)は2012年に保険収載を受けて日本全国に急速に広まり,ごく一般的な手術として泌尿器科医に受け入れられるようになってきており,さらに2016年4月には腎癌に対するロボット支援下腎部分切除術robot-assisted partial nephrectomy(RAPN)も保険収載され,各施設において適応が拡大している。

 本稿では,泌尿器科領域で行われてきたロボット支援下手術robot-assisted surgery(RAS)における技術的な利点や合併症について述べ,さらに今後の展望や教育システムについても述べる。

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ロボット支援下前立腺摘除術robot-assisted radical prostatectomy(RARP)が日本で2012年に保険適用となり,その後の6年間で,全国にda Vinciが普及しました。泌尿器科領域では2016年にロボット支援下腎部分切除術robot-assisted partial nephrectomy(RAPN),2018年にロボット支援下膀胱悪性腫瘍手術robot-assisted radical cystectomy(RARC)へと適用は拡大しています。そのため麻酔科医は,多くの新しいロボット支援下手術robot-assisted surgery(RAS)に対応しなければならなくなりました。

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2018年度診療報酬改定により消化器外科領域へのロボット支援下手術robot-assisted surgery(RAS)が保険適用となった。RASは,従来の腹腔鏡下手術にはない術野展開をもたらすとともに,より精緻な手術操作を可能とする。当科において胃癌に対する従来型腹腔鏡下胃切除術との比較では,術後合併症発生率,膵液瘻発生率が減少,術後在院日数が短縮し,RASの有用性が示された。今回の保険収載に伴い,ロボット支援下胃切除術は急速に普及する可能性がある。

 本稿では,当科での経験と文献的考察を踏まえ,消化器外科領域,特に胃癌に対するロボット支援下胃切除の現状と今後の展望について概説する。

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ロボット支援下胃切除術に対する麻酔法(使用する麻酔薬や手技など)に関しては,従来の腹腔鏡下胃切除術と同様の選択でよい。すなわち,施設ごとの細かい違い(例えば硬膜外麻酔を行うか否か,吸入麻酔薬か全静脈麻酔か,など)も含め,それぞれの慣れた方法を採用してよい。

 管理の要点はむしろ手術室内のマネジメントにある。手術の進行や手術支援ロボットda Vinci® Surgical System(以下,da Vinci)の機器の動きを把握して,手術の進行をアレンジしたり,トラブルを防止したり,迅速に対処することに関して,麻酔科医にも準備段階から積極的にかかわっていただきたい。

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手術支援ロボットda Vinci® Surgical System(以下da Vinci)は,米国食品医薬品局(FDA)の認証(2000年)に先駆けて1999年に欧州内での医療機器認可にあたるCEマークを取得し,販売が開始された。以後,フランス,イタリア,ドイツを中心に欧州各国での導入が進み,2017年のデータでは欧州内で700台以上,ドイツ国内では80台以上のda Vinciが稼働しているとされる。

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da Vinciによる精緻操作は,正確な手術を可能にしてくれる。特に,葉間や肺門部の剝離,リンパ節郭清,癒着剝離,縦隔操作,縫合などに有用とされる。2018年4月から肺癌と縦隔腫瘍に対するロボット支援下手術robot-assisted surgery(RAS)が保険適用となった。RASでは,術後の呼吸器合併症の軽減とQOLの向上が期待されるが,胸部外科領域では血流豊富な大血管が多く,リスクマネージメントが重要である。胸腔鏡下手術に対する優越性は明らかにされていないため,どうすみ分けるかがポイントとなる。

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日本では,2009年に内視鏡手術支援ロボットda Vinci® S Surgical Systemが薬事承認され,ロボット支援下手術robot-assisted surgery(RAS)が急速に広まっている。しかし,前立腺癌をはじめとする泌尿器外科領域と比べ,呼吸器外科領域ではRASの占める割合は数パーセントであり,いまだ広まっていない。2018年度よりRASの保険適用が肺悪性腫瘍手術と縦隔腫瘍手術にも拡大されたため,今後の手術数の増加が予想される。

 本稿では,ロボット支援下胸腔鏡下手術robotic-assisted thoracoscopic surgery(RATS)の麻酔管理上の注意点について述べたい。

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ロボット支援下手術robot-assisted surgery(RAS)の健康保険適用の範囲が2018年度から広がった。それを受けてda VinciⓇ Surgical System(以下da Vinci)を導入する医療機関が増えることが予想される。麻酔科医にとって,臨床上配慮すべき点はあるが,手術室の運営・管理上の観点もある。

 本稿では,da Vinciを導入し,RASを頻繁に行っている医療機関としての経験から,後者について述べる。

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はじめに

酸素はヒトの生命維持に必須な分子である。もう少し細かく述べると,酸素はヒトの細胞のアデノシン三リン酸(ATP)産生に必須な分子である。酸素が欠乏するとエネルギーが不足し,生体機能の維持ができなくなる。ミトコンドリアでの酸化的リン酸化,つまり電子伝達系に共役して起こる一連のATP合成反応において,酸素は電子の最終的な受容体として機能しており,酸素が不足すると,NADH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)やFADH(還元型フラビンアデニンジヌクレオチド)といった一連の補酵素の酸化と,酸素分子の水分子への還元反応が立ち行かなくなる。その持続的な欠乏は,生体機能の失調を経て個体の死に至る。これが,古典的な酸素観である。

 しかし,このような古典的な酸素観は,ここ20年ほどの研究により見直しが進んでいる。哺乳類をはじめとする高等生物は,酸素が生命維持に必須な分子であるのに,その酸素を体内で生合成する仕組みをもたない。高等生物を構成する多臓器は常に「酸素不足」のリスクに曝されており,それ故,生体は低酸素に応答する仕組みを進化的に獲得してきた,とする考え方が支配的になってきている。

南方派遣体験記

大海のサムライ 甲斐沼 篤
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海上保安庁は,東南アジア海域等における海賊対策の一環として,2000年から巡視船を東南アジア等の各国へ派遣しており,2017年度はインドおよびマレーシア派遣が計画されました。巡視船の長期航海派遣には,常勤医師の配乗が必要となり,京都府立医科大学への依頼を受け,海上保安庁の非常勤職員として参画しました。国を守る公務員として守秘義務もあるため,すべてを語ることは難しいですが,海上保安庁の活動を知っていただくよい機会ですので,その経験と感じたことを紹介します。

国試の「正解」に異議あり

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第112回医師国家試験(国試)が2018年2月10・11日に実施され,3月19日に合否とともに全問題の正解が厚生労働省(厚労省)から発表された。そのうち「必修問題」の一つに,疑義を抱かざるを得ない「正解」が目に留まった。誤ったメッセージが広く医学生に伝わってしまうことを懸念するとともに,試験問題作成の前提についても思うところがあり,一文を寄稿する。

連載 ふぁ〜まこKD 第8話

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これまでのあらすじ:

ちょっと(かなり)おっちょこちょいの若手麻酔科医「大先生」。小学生の患者「ケンタ君」に薬物動態について教えることで,自らも学んできました。

連載

THE Editorials
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Anesthesia & Analgesia

Editorial:

Biccard BM. Postoperative troponin elevation, myocardial injury, and pulmonary embolism. Anesth Analg 2018;126:1435-7.

Article:

Grobben RB, van Waes JAR, Leiner T, et al. Unexpected cardiac computed tomography findings in patients with postoperative myocardial injury. Anesth Analg 2018;126:1462-8.

■MINSは予後悪化の要因

myocardial injury after non-cardiac surgery(MINS)は,術中あるいは術後30日以内に起こる心筋傷害と定義される。MINSは30日,1年生存率を低下させる重大な独立因子である。MINSは,心筋酸素需給バランスの悪化や,粥腫破裂による冠動脈閉塞などにより起こる。MINSは心電図異常やトロポニン値上昇により疑われることが多いが,敗血症や肺塞栓症など,トロポニン値上昇の他の病因を除外する必要がある。冠動脈疾患がある場合とない場合で,治療のアルゴリズムも異なってくる。

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2018年の年明け早々に出雲空港を出発し,1月2日午前5時(現地時間)にタイのスワンナプーム国際空港に到着した。当院手術部 佐倉伸一教授がマヒドン大学医学部ラマティバディ病院(バンコク),コーンケン大学病院(コーンケン)(写真1),プリンス・オブ・ソンクラー大学病院(ハートヤイ)の三つの大学病院を訪問するのに同行したのであった。これらタイの大学医学部と島根大学医学部との間で国際交流協定があり,麻酔科の間では6年前に佐倉教授が区域麻酔の講義や実技指導に招かれてから交流が始まった。以降,佐倉教授はタイ麻酔科学会での講演や医療機関への訪問を毎年継続し,タイの各大学からも麻酔科スタッフやレジデントが当院麻酔科に2〜4週間の見学や講義に来るなど,交流は年々盛んになっている。今回の訪問もこの交流事業の一環である。

Enjoy! ワイン

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こんにちは!ワイン安部です。

3回にわたってお送りした「アジアのワイン事情」いかがでしたか。

アジア各国のワイン熱の高まりはまだまだとどまるところを知りません。

アジアへの出張やご旅行の際は,ぜひワインをチェックしてみてください。

さて今回は,夏に飲む赤ワインです。

Tomochen風独記

㊹ アウトバーン 山本 知裕
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日本人に「ドイツといえば何?」と聞いて返ってくる答えの定番は,ビールBier,ソーセージWurst,そしてアウトバーンAutobahnです。今回は,そんなドイツの高速道路について紹介します。

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基本情報

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LiSA
25巻8号 (2018年8月)
電子版ISSN:1883-5511 印刷版ISSN:1340-8836 メディカル・サイエンス・インターナショナル

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