LiSA 25巻10号 (2018年10月)

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アイオワ大学病院では2011年から経カテーテル大動脈弁留置術transcatheter aortic valve implantation(TAVI)を開始し,2017年末で539件を数えるまでに至った。開始当初は全身麻酔にて管理を行っていたが,2016年,経大腿アプローチの症例は鎮静による麻酔管理へと移行した。また,2016年,米国でのTAVIの適応拡大により症例数が増加し,それに伴い血管造影室でもTAVIを行うようになった。今後,日本でもTAVIの適応が拡大し,その麻酔法,施行場所が変遷していく可能性が考えられる。

 本稿では,アイオワ大学病院のTAVIの現状に関して,麻酔法とその変遷を中心に紹介する。

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今回は,小児の整形外科的先天異常疾患に伴うdifficult airway management(DAM)症例を取り上げる。近年,さまざまなタイプのビデオ喉頭鏡や声門上器具(SGA)の新規デバイスが小児でも使用可能になってきた。一方で,小児のDAM症例において,意識下挿管や外科的気道確保が困難であることは永遠に変わらない。使用可能なデバイスがたくさんある時代だからこそ,その選択に迷うことも多く,より洗練された使い方—気道確保戦略—が求められている。それらの事情を踏まえたうえで,これから提示する小児のDAM症例を読者と一緒に考えたい。

 今回は,背景の異なる三つの施設にPlanを提示していただいた。各施設の経験にもとづいた独自の工夫や哲学があり,たいへん読みごたえのある内容になっている。アプローチが多少異なっていても,根底に流れるエッセンスは共通である。絶対的な正解はない話なので,なかには同意しかねる部分もあると思う。各自読み終えたら,自施設でとられ得る戦略について,ぜひ仲間とともに議論していただきたい。「自分ならこうする」「もっとこうしたほうがよかったのではないか?」など,日頃から議論を行っておくことが,いつか来る小児のDAM症例への備えとなろう。

徹底分析シリーズ 麻酔科医と滅菌

巻頭言 水谷 光
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麻酔科医は滅菌済みの針やカテーテルを毎日のように使う。離被架の向こう側は滅菌済みの器械ばかりである。手術室に住む麻酔科医も,滅菌について知らないよりは知っておいたほうがよい。その知識が患者を守る。また,麻酔科医の仕事と滅菌業務は,手術における重要性や立ち位置が似ている。どちらも表舞台には立たないが,手術に欠かせず,常に安全確実な結果が求められる。

 今回の徹底分析シリーズでは,滅菌の世界に“首を突っ込んでいる”麻酔科医に,滅菌について分担して紹介していただいた。いくつか重複する内容もあるが,それはつまり強調したい部分ととらえていただきたい。専門医試験で滅菌について問われることはないが,実務上とても役に立つ重要な領域である。

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麻酔が発見される前から手術は行われていた。ある病院には大きな鐘があり,手術を始める時にガランガランと鳴らして街の大男を集め,痛みで暴れる患者を押さえ付けて手術したとのこと。地獄である。麻酔は世紀の大発見であった。

 同様に,滅菌が発見される前から手術は行われていた(表1)。そのため,術後は必ず高熱で意識朦朧の瀕死状態となり,かなりの患者は死んだ。敗血症である。体力のある,強運の持ち主だけが生き残ったのである。手術は決死の覚悟で行うもので,手術しなければ死は間違いない患者にだけ,行われたのだろう。

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麻酔科医が患者に対して使う道具は,キレイであるに越したことはない。では,どの程度キレイであるべきか。それを決定するには二つの要素を考えればよい。一つは患者のどこに使うのか,もう一つはその際のキレイ度の必要最小限はどの程度なのか,である。

 Spauldingによる分類がある(1091ページの表2)。患者のどこに使うのかによって医療器具を少なくともどの程度キレイにする必要があるのかが示されている。その分類表が多様に和訳改変されている。ウェブ上にはわかりやすいもの1)もあるので参考にされたい。

 本稿では,麻酔科医が使用する代表的な医療機器について,その処理方法と注意点,さらには現実的な問題点をひもといてみたい。洗浄や消毒の具体的な内容については他稿に譲る。

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臨床の現場で「ディスポ」と呼ばれるディスポーザブル製品の正式名称は,単回使用医療機器single-use device(SUD)である。麻酔科医が使用するSUDの大半は滅菌済みの製品だが,これらのSUDがどうやって滅菌されているかをご存知だろうか?

 本稿では,SUDの滅菌法の概要や問題点を中心に解説した。ぜひこの機会に,滅菌の知識を深めていただきたい。

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麻酔科医が主戦場とする手術室は病院の中で最も滅菌物を取り扱う部門である。麻酔科の責任者が手術部門のみならず,使用済手術器械の再生処理を行う材料部門の責任者をも兼任することは珍しくない。しかしながら,麻酔科医を含めた医師のほとんどは,大学医学部の学生時代から臨床医として働くに至るまでの間に,滅菌に関する教育は受けたことがない。手術室においては医師と看護師との間で滅菌にかかわるやり取りを耳にすることもあると思われるが,チーム医療として手術にかかわっていく以上,ある程度の知識をもっておくべきだろう。

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院内で行われる滅菌は,今後も蒸気滅菌が主流

一般に院内で行われる滅菌方法には,蒸気滅菌,酸化エチレンガスethylene oxide gas(EOG)滅菌,過酸化水素を用いた滅菌(過酸化水素低温ガスプラズマ滅菌,過酸化水素ガス低温滅菌),および,ホルムアルデヒドを用いた滅菌〔低温蒸気ホルムアルデヒド滅菌low temperature steam formaldehyde(LTSF),ホルムアルデヒドガス滅菌low temperature gas formaldehyde(LTGF)〕がある。

 蒸気滅菌は,高温高圧の飽和蒸気(通常は134℃3気圧,または,121℃2気圧の飽和蒸気)を滅菌剤として用いる方法であり,手術などに多く用いられている鋼製小物の滅菌に適しているため,院内の滅菌方法の主流である。運用コストが比較的安価であり,滅菌時間が加温工程や乾燥工程を含めても約1時間程度と短時間であることが最大の利点であるが,高温高圧の環境および水分に耐えられない器材は滅菌することができない。一方,蒸気滅菌以外の上記の滅菌方法は,低温滅菌と呼ばれる。滅菌剤として毒性のある薬物(酸化エチレンガス,過酸化水素,ホルムアルデヒド)を用いる必要があるが,約60℃以下で滅菌を行うことができるため,高温に耐えられない樹脂製器材などの滅菌に用いられている。

“国試の「正解」に異議あり”に賛同

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本誌2018年8月号に掲載された髙田真二氏の“国試の「正解」に異議あり”を拝読し,医師国家試験問題解説集の原稿を執筆している筆者も,同じく非常に悩み,難問・悪問と考えていたためコメントを寄せる。

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第112回医師国家試験の問題No.112E 42は,気道管理の問題であり,臨床的な背景を理解して気道確保器具を選択させる“新しいタイプ”の問題である。臨床経験のない医学生にとって,気管挿管でも経口なのか経鼻なのか,エアウェイなのか声門上器具(SGA)なのかを根拠をもって選択することは難しい。その証拠に,某予備校の調査によると本問の正答率は50%を下回っている*1

 本問はE問題(B問題,E問題は必修問題)の臨床実地問題として出題され,配点は1問3点である(一般問題や医学総論,医学各論は1問1点)。その意味でも,重要問題である。これまでにもプライマリケア問題の必修問題で,「まず行うべき処置はなにか」という問いで,気道確保,気管挿管が正解となる臨床問題は何度も出題されているが,本問のように気道確保器具が5種類も並べられたことはなかった。本問の作成者は,患者の現病歴などを読み解けば,麻酔を生業とする医師ではなく,脳神経外科系や内科系医師,もしかすると救急系医師ではないかと想像される。本誌2018年8月号に掲載された髙田真二氏の“国試の「正解」に異議あり”を拝読し,私も気道管理のエキスパートとして,麻酔科医の視点からのコメントを述べてみたい。

連載 漢方の歩き方 レーダーチャートで読み解く痛みの治療戦略:第30回

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荒:あ,矢数先生,ご無沙汰しています。育休をいただいていましたが,今日から復帰です。

矢:荒井先生,元気そうですね。

荒:はい。でも,臨床の感覚を取り戻せるか不安です。

矢:赤ちゃんがいると,漢方の勉強もなかなか難しいでしょう。

荒:そうなんです。漢方の勉強も復活したいのですが,だいぶ時間が空いてしまったので,いろいろ忘れてしまっていて…。

矢:それでは,復習をしながら復活しましょうか。福井先生も呼んで来ましょう。

連載

THE Editorials
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The New England Journal of Medicine

Editorial:

Cannon JW. Prehospital damage-control resuscitation. N Engl J Med 2018;379:387-8.

Article:

Sperry JL, Guyette FX, Brown JB, et al. Prehospital plasma during air medical transport in trauma patients at risk for hemorrhagic shock. N Engl J Med 2018;379:315-26.

■外傷性出血性ショック患者の多くは受傷後2時間以内に死亡する

出血性ショック患者に対して,近年は赤血球液と新鮮凍結血漿(FFP)を1:1の比率で投与することが推奨されている。赤血球液とFFPを一組として現場に届け,必要に応じて血小板濃厚液を投与するmassive transfusion protocol(MTP)は日本の救命センターでも広く用いられるようになってきている。米国では,外傷による出血性ショックで死亡する患者は年間約5万人とされ,多くは受傷後2時間以内に死亡している。Sperryらは,Prehospital Air Medical Plasma(PAMPer)trialにおいて,外傷センターへのヘリコプター移送中から血漿製剤を投与することの意義を検討している。この論文では,「ダメージコントロール蘇生damage-control resuscitation」という言葉が用いられている。

連載 ふぁ〜まこKD 第10話

サイズと薬物動態(1) 小原 伸樹
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これまでのあらすじ:

ちょっと(かなり)おっちょこちょいの若手麻酔科医の「大先生」。小学生の患者「ケンタ君」に薬物動態について教えることで,自らも学んできました。今日は指導学生を伴い,予定帝王切開の妊婦への麻酔術前説明です。

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報告

産科麻酔研修 持留 真理子
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2014年の厚生労働省の報告によると日本の帝王切開率は19.7%,5人に1人が帝王切開という時代です。多くの麻酔科医は麻酔科1年目から,予定・緊急にかかわらず帝王切開の麻酔を担当する機会が多いことと思います。私が産科麻酔に興味をもったのも,最初は帝王切開の麻酔からでした。

Enjoy! ワイン

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こんにちは,ワイン安部です。

暑い夏が終わり,ようやくワイン消費も本番を迎えることができそうです。

今年の夏は暑過ぎて「ワインがまったく売れない」という話を頻繁に聞きました。

業界にとってこの暑い夏は完全に向かい風。

特にレストラン向けの売上が多いインポーターは苦戦したようです。

これだけ暑いと早く帰ってシャワー浴びて,ビール…となりますよね。

さて,今回はワインの流通の中でインポーターが請け負っている輸入について,もう少し掘り下げてご紹介します。

Tomochen風独記

㊻ 側弯症 山本 知裕
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私が6年間勤務していたのは,小児心臓センターと小児総合病院,それに産科が合わさった病院でしたので,小児病院では整形外科手術も行われていました。今回はドイツの小児病院で経験した整形外科手術の中から,側弯症Skolioseの手術について紹介します。

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基本情報

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LiSA
25巻10号 (2018年10月)
電子版ISSN:1883-5511 印刷版ISSN:1340-8836 メディカル・サイエンス・インターナショナル

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