症例カンファレンス
右自然気胸に対する右肺瘻閉鎖術(左側臥位)
豊田 浩作
1
,
冨田 晶子
1
,
髙内 裕司
2
,
池﨑 弘之
3
,
中里 桂子
3
,
岡原 修司
4
,
清水 一好
4
Yuji TAKAUCHI
2
,
Hiroyuki IKEZAKI
3
,
Keiko NAKAZATO
3
,
Shuji OKAHARA
4
,
Kazuyoshi SHIMIZU
4
1倉敷中央病院 麻酔科
2大阪はびきの医療センター 麻酔科
3かわぐち心臓呼吸器病院 麻酔科
4岡山大学病院 麻酔科蘇生科
pp.927-943
発行日 2018年9月1日
Published Date 2018/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101201201
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ピンチは“ダマ”になってやってくる,というのは,深紅の“闘魂”マフラーで有名な,元プロレスラーの言葉らしい(中島らも『恋は底ぢから』より)。ピンチとはただ一つの問題ではなく,いくつもの厄介ごとが塊になってやってくるからこそ危機的なのだ,という趣旨である。
われわれ麻酔科医は日々,危機的な状況やきわめて厳しい症例に対面することを常としている。ある程度の臨床経験を積んだ麻酔科医であれば,それなりに高リスクの症例に出会っても,難なく乗り越える知識とスキルを持ち合わせていることだろう。しかし,その症例が複数の重大リスクを有していた場合,その難易度は急激に高くなり,しかもそれが呼吸と循環の問題であったときには,それらが相乗的に互いのリスクを深刻化させることになる。
今回提示するケースは,重度心機能低下に呼吸機能障害を合併した患者に対する呼吸器外科手術の一例であり,まさにピンチがダマでやってきた症例である。冒頭に引いた言葉は以下のように続く。「その“ダマ”をひとつずつ解きほぐして,ひとつずつやっつけていけば,ピンチってのは必ず乗り切れる!」。
複数の重大リスクが複雑に絡み合った状態に対し,それぞれを個別に分析し,いかにシンプルな問題に変換して解決へと導くか。問題がダマとなってやってきた時こそが,われわれの臨床麻酔科医としての地力が問われるときである。重度心機能低下に対するECMO,肺機能低下に対する分離肺換気,術後疼痛管理など,読者自身がこの症例に遭遇したら,どのようにこれらのダマを解きほぐしてやっつけるのか,ぜひとも一緒に考えていただきたい。
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