徹底分析シリーズ ダヴィンチ手術の現在地
巻頭言
末盛 泰彦
1
1福岡リハビリテーション病院 麻酔科
pp.853
発行日 2018年8月1日
Published Date 2018/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101201184
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- 文献概要
ITやAIを駆使するビッグデータに遠隔治療,ゲノム解析にもとづく遺伝子治療など,テクノロジーが医療を様変わりさせる現代。外科領域を変えつつあるのは,手術支援ロボット「ダヴィンチ(da Vinci® Surgical System)」による「ロボット支援下手術robot-assisted surgery(RAS)」だ。この手術室の新規テクノロジーに対し,最も近い場所にいるわれわれ麻酔科医は,どう向き合っていくべきなのだろう。
これまで前立腺癌と腎癌のみに限られてきた保険適用が,本年4月から新たに12の術式で承認された。大方の予想を超えるこの広範な適用拡大は,RASの技術的優位性と安全性が認められたことを示し,外科手術の既成概念を覆す「パラダイムシフト」さえ予感させる。一方で,合併症・不利益事象に関連するエビデンスも蓄積され,麻酔科医が周術期管理の際に目を光らせるべきポイントも出揃ってきた。今後の外科医育成のあり方といった新たな課題に加え,「手術時間が長くなった」などの本音も聞こえてきているのが現状だ。
また別の視点に立てば,このきわめて精密な医療装置の運用には,多職種人材の関与に加え,大規模な環境整備,そしてなにより莫大なコストを要し,現場の「ヒト・モノ・カネ」に及ぼす影響はそれぞれ少なからぬものがある。手術室を預かる麻酔科医には,RASのこうした側面も熟知したうえでのマネージメントが求められている。
今回の徹底分析シリーズでは,国内外で実績豊富な各施設の「現在地」を紹介しながら,それぞれの現場の麻酔科医・外科医の声に耳を傾け,この新たなテクノロジーによる医療について多角的に考えてみたい。
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