看護管理 25巻6号 (2015年6月)

特集 新人看護職員研修努力義務化から5年 今こそ育てる「臨床看護教育」のスペシャリスト

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臨床現場の高度急性期化がますます進む昨今,若手スタッフの自立した「臨床判断能力」を育むための効果的な学習支援が各施設共通の課題になっている。この課題を考えるとき,高い臨床能力と臨床看護教育に関する専門的知識を併せ持つ,「臨床教育者」の存在が欠かせない。

そこで本特集では,今後の臨床看護教育において必須の存在と言える「臨床教育者」のありようと育成方法について,国内・海外の先進的取り組みから多角的に考察する。

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これまでの看護教育では,基礎教育においても臨床教育においても,教育に必要な理論や教育技法の体得は多くを個人の努力に任されてきた実情がある。新人看護職員研修の努力義務化から5年が経過し,今こそ臨床教育のスペシャリストの体系的育成について考えるべきときではないか。

そこで本座談会では,高い臨床能力と臨床看護教育に関する高度な専門的知識を持つ「臨床教育者」を育てるための教育の方法論について,先進的な3施設の取り組みをもとに考察する。

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聖路加国際大学大学院では,文部科学省「看護系大学教員養成機能強化事業」として,看護系大学教育の充実に貢献する修士教育「未来の看護系大学教員育成プログラム」を推進している。臨床教育者と看護教員が学生として在籍し,両者が協働して優れた実践能力を教育に結びつけることができ,研究能力も併せ持つ教育者の育成を目指す。本稿では,同プログラムにおける臨床教育者の理想の役割モデルである「クリニカルナースエデュケーター」(CNE)育成の内容を中心に,プログラムの概要と,開講して1年目が終了した現時点での成果を共有する。

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臨床看護師が看護教育者になるために大学院を修了している場合,以降の看護教育者としてのキャリア発達がスムーズになると報告されている。東京医科歯科大学大学院では2014年に全国共同利用施設として「看護キャリアパスウェイ教育研究センター」を設置し,特に大学院進学前の支援に重点を置いた看護教育者の育成支援部門として機能している。本稿では同センターの役割と活動の実際を紹介する。

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卒後教育で求められる人材育成に関する研究を専門とする筆者は,修士レベルのスタッフを看護部の教育専従者として配置している米国カリフォルニア州にある2つの中規模病院の視察を行った。その視察報告記である本稿では,一歩先行く専門性の高い教育専従者活用の実際を紹介しながら,今後のわが国において同様の取り組みを展開するための方策を考察する。

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米国ジョンズ・ホプキンス大学看護学部では,基礎教育および臨床教育の場で活躍できる看護教育者を育成する修士コース“The Nurse Educator Certificate Option”を開講している。オンラインによる教育プログラムであり,臨床で勤務する看護師にも受講しやすい。また,米国看護連盟(NLN)による認定看護教育者(CNE)の認定試験受験の道筋ともなり,わが国でも参考にしたい教育プログラムである。同大学の担当者によるプログラム紹介を日本語訳でお届けする。

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2015年1月10日,本特集でも紹介した聖路加国際大学大学院フューチャー・ナースファカルティ育成プログラムにより,米国オレゴン健康科学大学のクリスティーヌ・タナー(Christine A. Tanner)氏を招いたオープンレクチャーが企画された。タナー氏は臨床判断力を学生が自ら育むための「臨床判断モデル」の開発者として知られている。

本誌ではこの機に,同プログラムのクリニカル・ナース・エデュケーターコース(CNEコース)に在籍する大学院生によるタナー氏へのインタビューを企画した。

聞き手を務めた5名の看護職はいずれも聖路加国際病院の各病棟において新人教育や臨地実習指導を経験し,現在は専門性の高い臨床教育者を目指して同プログラムで学んでいる。本インタビューでは,臨床教育者の実体験に基づく問いに,タナー氏が答えた。

巻頭 うちの師長会・主任会 学習する組織をめざして・18

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「高い志をもち,心温まる思いやりの病院」を実現するために,チームアプローチによって医療の質の向上と人材育成をめざす

1927(昭和2)年に開設され,その長い歴史と温かみのある医療により地域を支え続けてきた済生会八幡総合病院(北九州市)。既に地域包括ケア病棟を発足させるなど,機敏な体制構築により多機能な医療を提供し続けている。今回は,地域の課題に真摯に向き合いながらさらなる看護の質向上を目指す同院看護部の,中間管理者を基盤とした活動を紹介する。

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緒言

 チーム医療は,複雑化した医療問題を解決するための取り組みとして注目されている1)。厚生労働省は,チーム医療推進のためには医療スタッフ間の連携・補完の推進が重要であるとしている2)。また細田は4つに分類したチーム医療の要素の1つに協働志向を挙げている3)。これらの報告から,多職種連携や協働はチーム医療を構成し促進する重要な要素と考えられる。

 しかし連携や協働は定義づけ,共通理解が難しい。連携・協働に相当する英語が混同されているという研究や4),「専門職連携」と同義とみなされる単語が50以上存在するという指摘からも5),多職種連携・協働を個人や職種間で共通理解することの難しさが示唆される。また本研究に先立ち,病院スタッフが認識する連携・協働の現状,課題について調査した先行研究を概観しても,文献数は多いものの研究ごとに焦点を当てた場面設定や職種が異なり,かつ国内の文献レビューも行われていないことが示唆された。以上より,多職種連携・協働は,その促進が求められている一方,概念の共通理解が難しく,臨床実践において多職種連携・協働に取り組むことの困難性がうかがえた。

 そこで本研究では,病院スタッフが認識する病院での多職種連携と協働の実際や課題を調査した国内の最新の文献から,多職種連携・協働を促進する取り組みの現状や,促進していく上での課題を明らかにすることを目的とした。本文献レビューは,わが国の臨床現場における多職種連携・協働の実際と課題を把握し,多職種連携・協働を促進していくための方略を検討することに有用であると考えられる。

連載 看護管理者としてよりよく生きるために 倫理課題とどう向き合うか・2

病院というところ 勝原 裕美子
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 前回は,医療や看護ということを特別に意識しなくても,倫理の問題は日常の中にあり,私たちは倫理と共に生きているという話だった。今回は,医療の場で起きている倫理課題について考えてみたいと思う。

連載 看護管理の現場を紐解く ミッションを共有し,ともに価値を創り出す組織を目指して・15

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オートポイエーシス理論を用いた考察

 前回(5月号)は,ひどいいじめがあった小学校5年生のある学級が,新しい担任教師が赴任してからの2年間で劇的に変化した事例を紹介した。今回は,教育学者の蘭氏らが非平衡型認知理論およびオートポイエーシス理論を用いて,この変容過程をどう考察したかを紹介するところから始めたい。

 蘭氏らは,「集団を管理運営していく立場にある担任教師にとっては,学級の構造や役割を明確にし,機能的に集団を運営していこうと考えるのは自然なことであるし,必要な作業でもある」としながらも,「その方策によっては,逆に学級集団を崩壊させる危険性も孕んでいる」と指摘している1)。実際に,集団を効果的に運営していこうとする教師の意図に反して,学級集団が集団として機能しなくなっていく例は少なくない。看護管理の現場でも,目標に向けて自部署を組織化し役割分担をして年度をスタートさせたにもかかわらず,思い描いたように展開していかないことがある。

連載 実践! インストラクショナル・デザイン 効果的・効率的・魅力的な人材育成を目指して・14【最終回】

IDを用いた看護管理 浅香 えみ子
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エミ師長の研修企画・運営のBefore Afterの気づき

 最終回の今回は,これまでの学びを振り返りながら,「IDを用いた看護管理」について考えてみたいと思います。

 看護管理者は,よりよい看護サービスの提供,そして組織のミッション遂行に向けて臨床現場を管理します。そこには,実践者がよりよい成果を上げられるようにする上での課題がいくつもあります。

連載 臨床現場で実践したい「倫理的合意形成」入門 ・3

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 臨床現場で治療法やケア方法をいかに決定するかということは,人の生命に直結することもあるため,医療者,患者の両方にとって,重要な課題です。特に,倫理的問題に関わる治療法の決定などの場面では,患者,家族,医療者という関係者の意見が異なることも少なくありません。そのような場面で,「合意形成」の理論と方法論を用いることは,1つの解決策を導くことにつながるでしょう。

 では,合意形成とはどのような考え方でしょうか。また,看護管理者は,合意形成の考え方をどのように現場に取り入れたらよいのでしょうか。今回は,合意形成の基本的な考え方を解説し,看護管理とどのように関係しているのかについて見ていきましょう。

連載 看護事故の舞台裏・18

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高齢者は生理的な加齢現象やさまざまな病態により,健康な若年者と比べると転倒・転落事故を起こしやすいことは誰もが認めるところでしょう。脳や心臓の病気で生じるめまいやふらつきはもちろんのこと,足腰の不調でも転びやすくなりますし,あるいは血圧降下薬や睡眠導入薬などの影響で転倒・転倒事故につながる事例も決して少なくありません。

 もし自宅やその近所で転んでケガをした場合には,ある意味で仕方のない事故,もしくは自己責任という見方も可能です。ところがもし病院に入院中の患者さんや,介護施設でケアを受けている高齢者に転倒・転落事故が発生した場合にはどうなるのでしょうか。「不可抗力」による残念な事故でした,という説明で本人や家族が納得すればよいのですが,施設側の管理責任を追及して紛争へ発展する事例が多いことも事実です。そこで連載の18回目は,病院内で何度も転倒・転落を繰り返した裁判例の舞台裏を探ることにします。

連載 おとなが読む絵本——ケアする人,ケアされる人のために・109

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 かつて柴犬を家族の一員にしていた頃,いつも忠実そのもののような目で私を追うように見つめるので,「おい,サブロー,何だね」と言葉をかけてやる。サブローはわが柴犬の名前だった。そのつぶらな瞳は,「散歩に行きたいよー」と訴えているのが,私にはすぐにわかるのだが,私が「さん(散)……」と片言でも言いかけようものなら,もうわかってしまって,嬉しさを抑えきれずに,部屋中を走り回る。だから,散歩できないときには,うっかり「散歩に行きたいの?」などと言うのは禁句で,「おい,何だね」ととぼけるのだ。

 赤ん坊のときから育てた愛犬との目のコミュニケーションの経験から推測すると,動物行動学の研究者や動物園の飼育係などが,ゴリラやオランウータンのような動物たちと,気心が通じ合っていて,親密な関係を持っていると言われるのは本当のことだと思う。

連載 回り道ナース・15

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 スペイン語で仮定法を学ぶとき,必ずといっていいほど出てくる「Si tocara(中南米ではganara) lotería, 〜(もし宝くじが当たったら,〜する)」という例文がある。実現性が多分に疑わしい,乏しい場合の仮定法構文なのだが,日本人にこれを使って「もし宝くじが当たったら,何をしますか?」と作文をさせてみると,皆判で押したように「仕事を辞めて,死ぬまで遊んで暮らす」と答えるのが不思議で仕方がない,とスペイン語講師をしている友人が言っていた。

 「日本人は勤勉で働き者だと聞いていたのに,なぜあんなにみんな隙あらば働かないで暮らそうとしか言わないのか。しかも『遊んで暮らす』のも具体的に突っ込んで聞いてみても何がしたいのかはっきりしない。確かにスペイン人は働くことは嫌いだが,何もしないで暮らすのはもっと嫌だし,それになぜ日本人はみんなその幸運を独り占めしてただ消費していくことが前提なんだ? 他の国で同じことを聞いてみたらその賞金でファウンデーションを設立運営するとか,ママに家を買ってあげるとか,人に分配したり活用すると答える人がいるものだけど,日本みたいに全員が揃って何もしないで暮らすのに使いたいと言うのは本当に理解できない」と頭を抱えていた。

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施設にとどまらない,高齢者看護の実践バイブル

高齢者の最後の時に関わる悩み

 2025年に多死時代のピークを控え,時代の転換期である昨今,国は“在宅で最後の時を”と人々に意識の変革を促している。場所ではなくケアそのものの質が問われる時代になった。病院であれ在宅であれ,高齢者の最後の時に関わる私たちは,「これでよかったのか?」「これがベストの看護だったのか?」と悩むことは少なくない。

 ものがたり診療所(富山県砺波市)の医師である著者は,その敷地に隣接してナラティブホームを開設した。そこで「その人が人生の最後の時を悔いなく生き抜いてくれることを援助する医療」を実践し,得てして虚しさが多い終末期医療において,看護と介護のスタッフが共に達成感のある仕事ができるハードとソフトを作り上げた。

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基本情報

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看護管理
25巻6号 (2015年6月)
電子版ISSN:1345-8590 印刷版ISSN:0917-1355 医学書院

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