連載 回り道ナース・15
もし宝くじが当たったら…
松本 圭古
pp.536
発行日 2015年6月10日
Published Date 2015/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686200214
- 有料閲覧
- 文献概要
スペイン語で仮定法を学ぶとき,必ずといっていいほど出てくる「Si tocara(中南米ではganara) lotería, 〜(もし宝くじが当たったら,〜する)」という例文がある。実現性が多分に疑わしい,乏しい場合の仮定法構文なのだが,日本人にこれを使って「もし宝くじが当たったら,何をしますか?」と作文をさせてみると,皆判で押したように「仕事を辞めて,死ぬまで遊んで暮らす」と答えるのが不思議で仕方がない,とスペイン語講師をしている友人が言っていた。
「日本人は勤勉で働き者だと聞いていたのに,なぜあんなにみんな隙あらば働かないで暮らそうとしか言わないのか。しかも『遊んで暮らす』のも具体的に突っ込んで聞いてみても何がしたいのかはっきりしない。確かにスペイン人は働くことは嫌いだが,何もしないで暮らすのはもっと嫌だし,それになぜ日本人はみんなその幸運を独り占めしてただ消費していくことが前提なんだ? 他の国で同じことを聞いてみたらその賞金でファウンデーションを設立運営するとか,ママに家を買ってあげるとか,人に分配したり活用すると答える人がいるものだけど,日本みたいに全員が揃って何もしないで暮らすのに使いたいと言うのは本当に理解できない」と頭を抱えていた。
Copyright © 2015, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.