看護管理 21巻13号 (2011年12月発行)

選択した文献の文献概要を表示する書誌情報をダウンロードする

すべて選択

特集　活動を評価し改善するプロジェクトマネジメント　4病院の事例から

扉 21巻13号 , 2011年12月 , pp.1133

PDF(298KB)

フリーアクセス

文献概要を表示

　現在病院では，さまざまな規模で，またさまざまな部署でプロジェクトが行なわれ，それぞれの達成目標に向かって取り組んでいることと思う。本特集では，プロジェクトマネジメントの手法を用い，チームが自らの活動を評価し改善に至るまでの方法論を4病院の事例から具体的に解説し，組織活性化の一助としたい。

人を育て，活力ある豊かな組織文化を育むプロジェクトマネジメント―秘めたる潜在力を創造的な成果につなげる仕組み牧　卓 21巻13号 , 2011年12月 , pp.1134-1140

PDF(2007KB)

有料閲覧

文献概要を表示

プロジェクトとプロジェクトマネジメントの定義

　プロジェクトマネジメントという言葉を耳慣れない方も多いかもしれません。とっつきにくく堅苦しいという言葉のイメージがあるようにも思います。

　しかし「○○プロジェクト」という言葉はよく耳にされるかと思います。例えば病院のなかでは「電子カルテ導入プロジェクト」や「職員満足度向上プロジェクト」などの例が挙げられます。病院以外では「駅前再開発プロジェクト」や「新商品開発プロジェクト」「学園祭企画プロジェクト」などさまざまな領域で組織され進められています。

短期間で個人の力を組織の力にするビジョンプロジェクト堀江　篤 21巻13号 , 2011年12月 , pp.1141-1146

PDF(892KB)

有料閲覧

文献概要を表示

手稲渓仁会病院（以下，当院）の概要とビジョン

　当院が掲げるミッションとビジョン（表1）の達成に向けた取り組みを紹介します。当院では，ミッションとビジョン達成に向けた具体的な取り組みの1つとして，プロジェクトを組み活動してきました。その第1弾が2005（平成17）年に実施した「Eプロジェクト（救命センタープロジェクト）」です。これは，救急医療体制の充実を中核に，専門医療体制の機能整備，患者サービスの向上，療養環境の改善などを目的に取り組んだもので，救命センター棟の増築を含む中期事業計画の立案と実行でした。同時に当院で初めて本格的にプロジェクト手法を取り入れた取り組みでもありました。

　これまで大きな設備投資を含む事業計画は，トップの決定に対し事務局が実施計画を立て，各部門に通知し実行するというものでした。これに対し，「Eプロジェクト」では増築を含む大まかな計画はトップにより決定されていましたが，実施計画はプロジェクトチームが立案し実行しました。

「5S」を切り口にした，人と組織を育てるプロジェクト―「やらされ感」から，「最善」を求める行動変容へ原田　育子 21巻13号 , 2011年12月 , pp.1147-1149

PDF(654KB)

有料閲覧

文献概要を表示

5Sプロジェクト発足の経緯

　5S活動とは，整理・整頓・清掃・清潔・しつけの5項目をローマ字表記した際の頭文字から由来する，組織体におけるモノや情報および人を対象に全員参加で徹底する活動であり，業務の効率向上，ミス・事故防止，スペースの有効活用などを実現するための基盤整備を目的としている。さらに5S活動を通じて，管理監督者のマネジメント力の向上と組織の活性化をめざすものでもある。

　したがって，5S活動を導入する本来の目的は職場環境の美化，従業員のモラル向上などが挙げられるが，四谷メディカルキューブ（以下，当院）が5S活動を始めた当初の目的は，院内に溢れ返った医療材料の不良在庫・過剰在庫を整理整頓し，コストを現状の半分以下に削減することだった。当院は，セコム提携病院・クリニックのなかでも最先端の高度先端医療を担う都市型クリニックとして開院し，各専門分野の医師を集結した。その結果，各科が希望する医材などもオーダーメードで発注し，使用してきた。

チームがまとまり，個の成長が実感できるプロジェクトの効果―ベリタス病院における経営健全化プロジェクトから森田　俊一 21巻13号 , 2011年12月 , pp.1150-1153

PDF(439KB)

有料閲覧

文献概要を表示

病院の紹介とプロジェクト発足の経緯

　医療法人晋真会ベリタス病院（以下，当院）は兵庫県東部と大阪府北部との県境である川西市に位置しており，主に内科，循環器科，外科，整形外科，脳神経外科，小児科および産婦人科を有する199床の急性期病院です。近隣の医療機関と連携しながら，良質な医療の提供を通して，地域住民が地元で安心して必要なときに適切な医療を受けることができる病院となることをめざして日々，医療活動を行なっています。

　当院は，これまでに行なってきた設備投資や，医師不足に伴う患者数の減少，職員のコスト意識の不十分などにより，毎期赤字決算を続けていました。安定した経営・財務基盤が欠けている状況では良質な医療を提供することはできません。採用活動の結果医師不足の解消に一定のめどが立った2009（平成21）年9月，提携関係にあるセコム医療システム株式会社のサポートを得ながら病院組織横断型のプロジェクトチームを結成し，経営健全化プロジェクトを開始することになりました。

現場職員参加型の経営健全化プロジェクトK5―現場が考え行動できる組織へ岩切　幸一 21巻13号 , 2011年12月 , pp.1154-1157

PDF(855KB)

有料閲覧

文献概要を表示

赤字経営からの脱却─プロジェクトK5の発足

　久我山病院（以下，当院）は，東京都の世田谷区，杉並区，三鷹市の3市区に挟まれた緑豊かな環境に位置し，地域医療を担う総合病院として地域の方々に貢献すべく，医業に従事してきました。最寄り駅から徒歩7分，高齢者や足の不自由な方向けにシャトルバスも運行しており，病院へのアクセスは決してわるいほうではないと思います。病院周辺は住宅地で，マンションや団地も多く，周辺人口は都内でも恵まれた立地として申し分のない条件で病院運営を行なってきました。しかし，そういった環境のよさとは裏腹に，経営状況は芳しくなく，長年赤字経営に苦悩してきました。どうにかしてこの経営危機を脱し，健全な経営体制を構築しなければならない，そのような切実な思いのなか，経営健全化プロジェクト（プロジェクトK5）が発足しました。

　プロジェクトK5とは，「久我山病院」が「考えて」，「変えて」，「輝いて」，「勝ち組になる」という頭文字にKが5つあることからネーミングされた現場職員参加型の経営健全化プロジェクトです。キーワードは「現場力」で現場の職員が立案，実行，検証を行なっていくわけですが，現場主導という点で当院としても今までにない初の試みでした。そして，このプロジェクトK5というネーミング自体が，病院の向かうべき方向性，目的，使命を全職員が共有する一助にもなりました（図2）。

巻頭　看護×デザイン　医療の質を向上させるコラボレーション・12

［総括］看護とデザインのコラボレーション―展望と期待嶋森　好子 21巻13号 , 2011年12月 , pp.1125-1129

PDF(1318KB)

有料閲覧

文献概要を表示

本企画「看護 ×デザイン」は2010年 8月に開催された，第14回日本看護管理学会年次大会（嶋森好子大会長）シンポジウム“看護管理者とデザイナーのコラボレーション ―気配をデザインする”から着想を得てはじまった。最終回の今回は，同シンポジウム企画者の一人である嶋森好子氏に，看護とデザインをめぐるこの 1年を振り返り，そして未来へ向けた新たな期待について執筆いただき，締めくくりとしたい。

特別記事

無段階入院基本料のためのカーブフィッティング・シミュレーション―ゆとりある勤務体制の実現に向けた政策的アプローチの試案大串　正樹 , 北浦　暁子 21巻13号 , 2011年12月 , pp.1159-1163

PDF(512KB)

有料閲覧

文献概要を表示

　看護師の労働環境を改善する方策のひとつとして，無段階入院基本料の概念を提案する。現状の段階的な入院基本料を前提とした議論では，根本的な労働環境の改善には至らない。発想を大きく転換して，現行の制度設計そのものを根底から見直す新しいアイデアと，これを政策プロセスの俎上に載せる政治的な議論が必要である。

―ナースが関わる病院建築Ⅳ―新病院の医療機器整備と部門運用システムの構築前田　久美子 21巻13号 , 2011年12月 , pp.1164-1170

PDF(1170KB)

有料閲覧

文献概要を表示

　病院建築においては，病院建物施設設備等のハード面は重要であるが，将来発展の病院運営を視野に入れた医療機器整備や部門運用システムの構築もさらに重要となる。ともすれば，旧病院の体制や方法に固執し，新しい発想で将来のシステムを構築することが進まないこともあろうかと思う。発想の転換と創造の動機づけを行なうことも必要である。

方針・目標管理に活かすISO9001―3度目の再認証を受けて宮部　剛実 , 池田　恵津子 21巻13号 , 2011年12月 , pp.1171-1176

PDF(1538KB)

有料閲覧

文献概要を表示

　大阪府済生会吹田病院（以下，当院）は，2011（平成23）年，3度目のISO9001（以下，ISO）の再認証審査を終え，ISO認証病院として10年目に入った。直近の審査総評では「ISOを経営に取り入れ，よく使いこなしている」との評価を得たが，トップランナーというより試行錯誤しながらISOと歩んできたというのが正直なところである。

　本稿では，当院のISOの取組みを振り返り，どのようにしてISOを医療の質向上に活かせばよいのか，看護管理者の思いを交えて紹介する。

短報

がん看護に重要なケアリング行動の実践に影響する環境要因の分析重久　加代子 21巻13号 , 2011年12月 , pp.1178-1179

PDF(215KB)

有料閲覧

文献概要を表示

　本研究は，ケアリング行動の実践に影響を及ぼす環境要因を定量的に明らかにし，ケアリングを育む環境づくりへの示唆を得ることを目的とする。

連載　文部科学省「看護師の人材養成システムの確立」紹介！・10

北里大学―協働を基盤とした高度実践者・教育者育成　看護職のエンパワーを育成するコラボレーションシステムの構築別府　千恵 , 髙橋　眞理 , 黒田　裕子 , 谷口　陽子 , 猪又　克子 , 清水　將統 21巻13号 , 2011年12月 , pp.1180-1183

PDF(521KB)

販売していません

文献概要を表示

　2010（平成22）年度「看護師の人材養成システムの確立」で選定された「協働を基盤とした高度実践者・教育者育成」は，看護部と看護学部の協働を基盤にし，複雑で高度な医療に対応できる看護職，高い教育力をもつ教育指導者，高い実践力をもつ看護教員を養成する取り組みです。主な計画は，①経験年数3～5年目の看護職員がキャリアを積み，エンパワーする能力を獲得できる「教育プログラムの開発」，②継続教育のみならず基礎教育でも活躍できる「教育指導者の養成プログラムの作成と教育指導者の育成」，③看護職員および看護教員の実践力・教育力の向上を図る「横断的人事システム構築」，④基礎教育時から連続したキャリアを描き，自律した看護専門職としての段階的に成長できる「キャリアパス構築」です。これらを「教育プログラムワーキンググループ」「教育指導者養成ワーキンググループ」「キャリアパス構築ワーキンググループ」の3つのワーキンググループが中心となり，調査や研究を進め，エビデンスのある事業推進を行なっていきます。

連載　文部科学省「看護師の人材養成システムの確立」紹介！・11

神戸大学―キャリアシステム・神戸REEDプラン　経験学習にもとづく双方向型教育　Reflective Educative Development Plan 高橋　京子 , 松浦　正子 , 宮脇　郁子 , 大原　彰子 21巻13号 , 2011年12月 , pp.1184-1187

PDF(306KB)

販売していません

文献概要を表示

　本事業は，看護師が看護専門職としてやりがいをもって生涯発達し続けることをめざし，個人のキャリア発達ニーズと組織のキャリア開発ニーズを統合させる仕組みを整えることを理念としています。従来からある医学部附属病院看護部と保健学科看護学専攻の連携をさらに強化して取り組んでいます。

　また，看護基礎教育から現任教育への移行を円滑にし，新人看護師への効果的な教育指導を行なうこと，看護師がキャリアデザインを描くことができる環境を提供し，実現するための支援体制を整えることを目的としています。実現のために次の4つの柱を同時に，そして関連させながら展開します。

連載　文部科学省「看護師の人材養成システムの確立」紹介！・12

本事業の概要と今後の発展市村　尚子 21巻13号 , 2011年12月 , pp.1188-1189

PDF(290KB)

販売していません

文献概要を表示

　文部科学省では，各大学において大学改革の取り組みが一層推進されるよう，国公私立大学を通じた競争的環境のもとで，特色・個性ある優れた取り組み（Good Practice；以下，GP事業）を選定・支援しています。GP事業には，大学教育等の充実と教育の質保証をめざすものや，高度医療人材の養成と大学病院の機能強化をめざすものなどがあり，高度医療人材の養成をめざすGP事業のひとつとして，看護師を対象とする「看護師の人材養成システムの確立」事業が2009（平成21）年度からスタートしました。

連載　公論・私論・12【最終回】

地域を見据えた看護管理者教育櫨本　和代 21巻13号 , 2011年12月 , pp.1190-1191

PDF(460KB)

販売していません

文献概要を表示

　筆者は，熊本県立大学大学院アドミニストレーション研究科看護管理コースを受け，看護管理者教育に対する認識が変わった。それまで熊本大学医学部附属病院で約30年勤務し，認定看護管理者として働いていたが，看護現場での看護管理者教育に疑問をもち，同コースに進学した。管理者教育という言葉自体が独り歩きをし，院内のことにしか関心が向いておらず，時代の流れや環境の変化に自分自身が対応しなければならないことを掴めていなかった。大学院教育を通して，看護管理者には，経営，組織，医療施策等，全般にわたる影響などに関連した視野の広さが求められること，自分自身が時代の流れや環境の変化に対応しなければならないということを改めて見直した。

連載　実践交渉力講座　渡辺ゼミ基礎編・12【最終回】

交渉のポイントをおさえて実践してみよう渡辺　徹 , 北浦　暁子 21巻13号 , 2011年12月 , pp.1192-1195

PDF(572KB)

有料閲覧

文献概要を表示

　さまざまな医療職者と関わりながらチームで医療を提供していくことが求められている時代，そして，自分とは異なる多様な価値観や背景の患者・家族との関わりが当たり前になってきた時代，そんな時代に，「交渉力」は看護師に欠かせない能力となっています。

　これまで『実践交渉力講座　渡辺ゼミ』では，ビジネスや外交での交渉戦略にもとづきながら，看護現場の実情にそった実践できる交渉戦略をご紹介してきました。

　今回が最終回。

　改めて，これまでの基本をコンパクトにまとめますので，ちょっとしたところから実践に活かしてみてください。

連載　看護師長のためのわかりやすい病院経営基礎講座・8

医事管理入門大鶴　知之 21巻13号 , 2011年12月 , pp.1196-1199

PDF(335KB)

有料閲覧

文献概要を表示

①医療保障制度

　病院の収入は，基本的に，各種の医療保障制度にもとづく保険者などからの診療報酬と患者からの一部負担金です。診療報酬は公費や保険料が財源であり，公的な性格が強いため，適切な請求を行なうことは病院としての責務です。また，これらの制度をよく理解して適切な請求を行ない収入の安定を図ることで，より良い医療を継続して行なうことができます。

　わが国の医療保障制度は，75歳未満の人を対象にした医療保険制度，75歳以上の人を対象にした長寿医療制度（後期高齢者医療制度）と，社会福祉の観点などから公費（国・地方公共団体）で医療費を負担する公費負担医療制度があり，概要は以下のとおりです。

連載　看護と医療政策を考えるヒント・32【最終回】

高齢者医療と看護への期待松村　啓史 21巻13号 , 2011年12月 , pp.1200

PDF(195KB)

販売していません

文献概要を表示

　国立社会保障・人口問題研究所は，2025年には75歳以上の人口構成は20％近くになるとし，厚生労働省も，同年には国民医療費が50兆円，うち半分以上が75歳以上の高齢者医療費になると推計しています。

連載　つらつらNPノート・9

アメリカナイズドした私を感じるとき鈴木　美穂 21巻13号 , 2011年12月 , pp.1201

PDF(288KB)

有料閲覧

文献概要を表示

　渡米して12年以上が過ぎた。日本を出ると自分は日本人であるという強いアイデンティティを感じるもので，アメリカナイズドしてなるものかと日本人らしく生きようとしてきたように思う。もっとも，日本人らしく生きるとはどういうことなのか，はっきりしたものはないのだが。

　しかしこのところ，ふと「私，もしかしてアメリカナイズドしてしまったのかも」と感じるときがある。年に何度か日本とニューヨークの間を往き来するが，前回久しぶりに日系の航空会社を使ったとき，なんだか少し居心地が悪かった。というのも，客室乗務員の態度・言葉遣いが妙にていねい過ぎて，よそゆきの感じがするのだ。きちんとお化粧をして，身だしなみに気を遣い，いわゆる営業スマイルをふりまき，“わたくし仕事中です”という看板をぶら下げているようで，決して自分の言葉では話さない。米系航空会社便を使い始めたばかりのころは，その客室乗務員のなんとも適当な勤務態度に呆れていたものだが，最近では日系の「お茶とコーヒーをご用意しておりますが，いかがでしょうか」とまだるっこしいサービスよりも，シンプルに“Tea or Coffee?”と素早く配膳をこなし，乗客と営業トーンではなく会話を交わす米系航空会社のアテンダントにより魅力を感じるようになってしまった。

連載　やじうま宮子の看護管理な日々・69

医療観察法をご存じですか？宮子　あずさ 21巻13号 , 2011年12月 , pp.1202-1203

PDF(236KB)

販売していません

文献概要を表示

突然降りかかった医療観察法

　はや今年も12月号。この原稿の締め切りは10月中なので，まだまだ一年の終わりという感じではないのですが……。でもここは一区切り。今年も一年お世話になりました。私はこれから1月末の博士論文提出に向けて，まさに正念場に入ります。

　そんな折，私が勤める訪問看護室では，新たな取り組みに向けての学習が始まっています。それは，医療観察法（正式名称は「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」，2003（平成15）年7月成立，2005（平成17）年7月施行）にもとづく訪問看護開始のため。この取り組みが始まるまで私は，この法律に関し，重大な犯罪を犯しながら，心神喪失として無罪になった人に精神科医療を行なうための制度，という程度の知識しかありませんでした。

連載　おとなが読む絵本――ケアする人，ケアされる人のために・71

ことしもやまにあきがきた…… 柳田　邦男 21巻13号 , 2011年12月 , pp.1204-1205

PDF(374KB)

有料閲覧

文献概要を表示

〈秋きぬと目にはさやかに見えねども風のおとにぞおどろかれぬる〉─古今和歌集．藤原敏行

　古来，日本人は季節の変化に敏感で，新緑や紅葉，小鳥のさえずり，虫の音などに自分の心を映して，短歌や俳句を詠んできた。しかし，現代社会はめまぐるしく，仕事に追われていると，季節の変わり目の花鳥風月の微妙な変化を嗅ぎ取る感性を衰えさせてしまう。いつの間にか季節が変わっていることにはっと気づくと，人生はまことに「光陰矢のごとし」だ，などと思ってしまう。

〈秋深き隣は何をする人ぞ〉─芭蕉

〈吾木香すすきかるかや秋くさのさびしききはみ君におくらむ〉─若山牧水

　最近，絵本のなかに，木や森の彩りの変化をモチーフにして，そこに子どもや動物たちを登場させ，物語をつくる作品が多くなっている。その種の絵本を手に取るとき，私は，作者が創作した物語をとおして，どのように木や森の変化を魅力的に見せてくれるかに興味を抱く。

連載　患者の目線　医療“関係者”が患者・家族になって・9

「基本的にはDNR」しかし実際は……―救急車で病院の処置室に運ばれて M. T. 21巻13号 , 2011年12月 , pp.1206-1207

PDF(337KB)

有料閲覧

文献概要を表示

　肺がん末期の日々を在宅で過ごしていた，フリー看護師M. T. さんの義父。〈患者・家族としての本音〉は，基本的にはDNR（蘇生処置拒否）でまとまっていたのに，急変した日曜日早朝という時間帯の〈医療者のおかれている諸事情〉を思うと，救急車に連絡したほうがいいのか，往診依頼していいのか……家族の心はゆれます。

連載　グループ・ダイナミックスへの招待　本当に病棟を変えたい人のために・7

個人主義の「かや」―見苦しい瞬間杉万　俊夫 21巻13号 , 2011年12月 , pp.1208

PDF(156KB)

有料閲覧

文献概要を表示

　100年ちょっと前まで「個人」という言葉は，日本語にありませんでした。明治になって欧米から新しい学問が入ってくるようになり，日本語への翻訳が必要になりました。でも，どうしても訳せない言葉がいくつかありました。その一つが，「インディヴィデュアル」でした。

　インディヴィデュアルとは，ある人間像のことでした。「人間とは，皮膚で囲まれた肉体である。その肉体の内部のどこかに心（あるいは頭）の世界をもっている。そして，心の中で考え判断して人間は行動する」……そんな人間のことがインディヴィデュアルでした。

連載　管理者のためのブック・セレクション・11

「組織」と「個人」を導く安井　はるみ 21巻13号 , 2011年12月 , pp.1209

PDF(241KB)

販売していません

文献概要を表示

振れ過ぎた振り子を正す

　12年前の患者取り違え事故以来、看護管理者の医療安全に果たす役割は拡充している。その一方、過剰・過少な安全管理は、「振れ過ぎた振り子」になっている感は否めない。そのようななか、絶妙なタイミングで、改めて医療安全管理に対する取り組みを再考させ、これからの看護管理者の医療安全活動に必要な新たな視座を与えてくれる本が出版された。それが『組織事故とレジリエンス─人間は事故を起こすのか、危機を救うのか』である。

　医療の現場に限らず、「生産性」と「安全性」を同時に高めることが求められる場面は多々あるが、生産性を追求しすぎれば安全性が低下し、安全性を追求すれば生産性が下がるなど、この2つの言葉は「トレードオフ」の関係という性質をもつ。生産性と安全性の間に存在し続けるこの「緊張」状況に看護管理者として「個人」と「集団」の両方の注意深さを高める具体的方法を提示している。

書評

その先の看護を変える気づき―学びつづけるナースたち橋野　恭子 21巻13号 , 2011年12月 , pp.1210

PDF(198KB)

フリーアクセス

文献概要を表示

自己を知り，自身の新たな看護を展開していくために

自身の経験からの気づきを促す

　看護職のキャリアアップを支援する者として，急性期の高度医療を提供する臨床において，専門的知識・技術を駆使するのはもちろん，心の調和する看護を提供できる人材の育成につなげたい。看護専門職者として就業し基礎研修を終え一人前として歩みだすときや，実践家として組織の中心で活動していくとき，看護管理者として役割を果たすなど人間的成長や役割拡大が期待されるとき，逆に迷ったり行き詰まったりしているとき，一人ひとりの看護師・助産師がそれまでの看護実践を振り返り，自己を知り，次の段階に進めるためにはどうしたらよいか。編著者の一人である佐藤紀子氏からこの本をいただいたのは，そんな模索していたときであった。

　本書は序章で「書くことと内面の成長」について述べており，本書の意義・意味づけを説いている。本編に記録されている看護師の記憶に残る物語を読んでいると，自分の学生時代や新人，中堅・看護師長時代のどの時代にも，その状況に類似した私自身の記憶が鮮明に呼び起され，その時の状況が重なり，胸にこみ上げるものがあった。それと同時に，自分自身の看護の在り方や他者への関わりが頭の中を巡った。このように考え実践していたのか，こんな看護の意味づけがあったのかと共感し，あらためて気づかされることばかりであった。また描写された人の生き様やそのときの状況から，その人となりをみる自分自身の眼やとらえ方を再認識させられた。まさに自分の気づきを促してくれる一冊である。

--------------------

新刊紹介 21巻13号 , 2011年12月 , pp.1211

PDF(277KB)

フリーアクセス

INFORMATION 21巻13号 , 2011年12月 , pp.1212-1213

PDF(256KB)

フリーアクセス

投稿規定 21巻13号 , 2011年12月 , pp.1214

PDF(198KB)

フリーアクセス

バックナンバーのご案内 21巻13号 , 2011年12月 , pp.1215

PDF(302KB)

フリーアクセス

次号予告・編集後記金子　西窪 21巻13号 , 2011年12月 , pp.1216

PDF(210KB)

フリーアクセス

看護管理　第21巻　総目次 21巻13号 , 2011年12月

PDF(608KB)

フリーアクセス

基本情報

看護管理
21巻13号
(2011年12月発行)

電子版ISSN：1345-8590 印刷版ISSN：0917-1355 医学書院

お気に入り登録(雑誌)
お気に入り登録(号)
最新号をみる

バックナンバー ( 閲覧可 )

35巻(2025年)
34巻(2024年)
33巻(2023年)
32巻(2022年)
31巻(2021年)
30巻(2020年)
29巻(2019年)
28巻(2018年)
27巻(2017年)
26巻(2016年)
25巻(2015年)
24巻(2014年)
23巻(2013年)
22巻(2012年)
21巻(2011年)
20巻(2010年)
19巻(2009年)
18巻(2008年)
17巻(2007年)
16巻(2006年)
15巻(2005年)
14巻(2004年)
13巻(2003年)
12巻(2002年)
11巻(2001年)
10巻(2000年)
9巻(1999年)
8巻(1998年)
7巻(1997年)
6巻(1996年)
5巻(1995年)
4巻(1994年)
3巻(1993年)
2巻(1992年)
1巻(1991年)

文献閲覧数ランキング(
11月3日～11月9日
)

第1位身体拘束最小化に向けた看護実践のあり方とは—倫理的な問いかけが育てる感性桐山啓一郎看護管理 35巻 11号 pp. 938-943 (2025年11月10日) 医学書院
第2位「生きる！」を支えるACP 明智龍男看護管理 35巻 10号 pp. 899 (2025年10月10日) 医学書院
第3位急性期病院入院高齢者の身体拘束を最小限にするための看護管理指標南﨑眞綾看護管理 35巻 11号 pp. 948-954 (2025年11月10日) 医学書院
第4位扉看護管理 35巻 11号 pp. 936-937 (2025年11月10日) 医学書院
第5位コンクリートに咲く花稲葉俊郎看護管理 30巻 10号 pp. 887 (2020年10月10日) 医学書院
第6位倫理的な組織文化への変革—意思決定支援と身体的拘束最小化に向けて三浦直子看護管理 35巻 11号 pp. 944-947 (2025年11月10日) 医学書院
第7位 —【コラム】「同意書」の法的位置づけとは—法的責任に萎縮しない医療・ケアのために若山朋代看護管理 35巻 11号 pp. 968-969 (2025年11月10日) 医学書院
第8位 —【インタビュー】—身体拘束最小化を組織でかなえる看護管理者は，何を見ているのか髙橋陽子,桐山啓一郎,南﨑眞綾看護管理 35巻 11号 pp. 956-966 (2025年11月10日) 医学書院
第9位組織のなかの看護村上睦子看護管理 15巻 8号 pp. 681 (2005年8月10日) 医学書院
第10位 —【実践報告】岐阜病院の実践—「これはドラッグロックではないか？」—日中の観察から気づき，多職種による検討でドラッグロック解消へとつながった事例髙木みちる看護管理 35巻 11号 pp. 982-985 (2025年11月10日) 医学書院

投稿規定

看護管理 21巻13号 (2011年12月発行)

特集 活動を評価し改善するプロジェクトマネジメント 4病院の事例から

巻頭 看護×デザイン 医療の質を向上させるコラボレーション・12

特別記事

短報

連載 文部科学省「看護師の人材養成システムの確立」紹介！・10

連載 文部科学省「看護師の人材養成システムの確立」紹介！・11

連載 文部科学省「看護師の人材養成システムの確立」紹介！・12

連載 公論・私論・12【最終回】

連載 実践交渉力講座 渡辺ゼミ基礎編・12【最終回】

連載 看護師長のためのわかりやすい病院経営基礎講座・8

連載 看護と医療政策を考えるヒント・32【最終回】

連載 つらつらNPノート・9

連載 やじうま宮子の看護管理な日々・69

連載 おとなが読む絵本――ケアする人，ケアされる人のために・71

連載 患者の目線 医療“関係者”が患者・家族になって・9

連載 グループ・ダイナミックスへの招待 本当に病棟を変えたい人のために・7

連載 管理者のためのブック・セレクション・11

書評