連載 つらつらNPノート・9
アメリカナイズドした私を感じるとき
鈴木 美穂
pp.1201
発行日 2011年12月10日
Published Date 2011/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686102294
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渡米して12年以上が過ぎた。日本を出ると自分は日本人であるという強いアイデンティティを感じるもので,アメリカナイズドしてなるものかと日本人らしく生きようとしてきたように思う。もっとも,日本人らしく生きるとはどういうことなのか,はっきりしたものはないのだが。
しかしこのところ,ふと「私,もしかしてアメリカナイズドしてしまったのかも」と感じるときがある。年に何度か日本とニューヨークの間を往き来するが,前回久しぶりに日系の航空会社を使ったとき,なんだか少し居心地が悪かった。というのも,客室乗務員の態度・言葉遣いが妙にていねい過ぎて,よそゆきの感じがするのだ。きちんとお化粧をして,身だしなみに気を遣い,いわゆる営業スマイルをふりまき,“わたくし仕事中です”という看板をぶら下げているようで,決して自分の言葉では話さない。米系航空会社便を使い始めたばかりのころは,その客室乗務員のなんとも適当な勤務態度に呆れていたものだが,最近では日系の「お茶とコーヒーをご用意しておりますが,いかがでしょうか」とまだるっこしいサービスよりも,シンプルに“Tea or Coffee?”と素早く配膳をこなし,乗客と営業トーンではなく会話を交わす米系航空会社のアテンダントにより魅力を感じるようになってしまった。
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