連載 おとなが読む絵本――ケアする人,ケアされる人のために・71
ことしも やまにあきが きた……
柳田 邦男
pp.1204-1205
発行日 2011年12月10日
Published Date 2011/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686102296
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〈秋きぬと目にはさやかに見えねども風のおとにぞおどろかれぬる〉─古今和歌集.藤原敏行
古来,日本人は季節の変化に敏感で,新緑や紅葉,小鳥のさえずり,虫の音などに自分の心を映して,短歌や俳句を詠んできた。しかし,現代社会はめまぐるしく,仕事に追われていると,季節の変わり目の花鳥風月の微妙な変化を嗅ぎ取る感性を衰えさせてしまう。いつの間にか季節が変わっていることにはっと気づくと,人生はまことに「光陰矢のごとし」だ,などと思ってしまう。
〈秋深き隣は何をする人ぞ〉─芭蕉
〈吾木香すすきかるかや秋くさのさびしききはみ君におくらむ〉─若山牧水
最近,絵本のなかに,木や森の彩りの変化をモチーフにして,そこに子どもや動物たちを登場させ,物語をつくる作品が多くなっている。その種の絵本を手に取るとき,私は,作者が創作した物語をとおして,どのように木や森の変化を魅力的に見せてくれるかに興味を抱く。
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