理学療法ジャーナル 53巻8号 (2019年8月)

特集 IADL—生活をもっと科学的に

EOI(essences of the issue)
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 理学療法士が使用するADLのスクリーニング検査は,明らかなdisabilityをもたらさない内部障害のような疾患や,高齢者などのフレイルでは,識別力が非常に低くなる.その際に重要となる指標がIADL評価である.現在,一人世帯,高齢者のみの世帯が増加するなか,ADLが自立していても掃除や調理ができずに退院できないという事態に直面し,理学療法士もIADLに注目せざるを得ない状況になっている.理学療法士はADLやIADLを科学的に捉え,もっと戦略的に取り入れる必要がある.本特集はADLやIADLを生活機能として幅広く解釈し再考する機会とした.

ADL・IADLの概念と捉え方 隆島 研吾
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はじめに

 日常生活活動(ADL)は,以前の「生命」の視点が支配的であった医学のなかに,初めて「生活」の視点が導入されたことで,リハビリテーション医療においてはコアな概念である1,2).では,「生活」とはどのようなものであろうか.「生活」という概念は広辞苑3)によると,「生存して活動すること」,「生きながらえること」,「世の中で暮らしてゆくこと」となっており,ここにも「活動」がうたわれている.また「活動」は,「はたらき動くこと」,「いきいきと,また,積極的に行動すること」となっている.すなわち,「生活」とは「生存して,いきいきと,また積極的に行動し,世の中で暮らしてゆくこと」と言うことができよう.

 リハビリテーション医療が捉える「生活」について,中俣ら4)は「狭義のADL」,「広義のADL」,「QOL」,「ICF」の4つの側面からの整理を試みているが,生活の概念がある種曖昧で,科学性を欠く範疇も大きく,経験と勘に依存する部分があることを指摘している.

 しかし,リハビリテーション医療や理学療法サービスにおいて「生活」をターゲットとし,科学的に議論するからには評価可能な範囲が必要である.そこで本稿では,ADLやIADLと言われる範囲を整理し,生活支援という観点から理学療法を科学的にみていく方向性について考えてみたい.

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はじめに

 理学療法は身体に障害のある者に対して基本動作能力の回復を図る技術,学問として出発した.そのため日常生活活動(ADL)の評価について,理学療法士は起居・移動動作や歩行などを中心とする基本的ADL(Basic ADL:BADL)への関心が高かった.

 現在,理学療法士の職能・職域は大きく広がりつつある.ADL評価においてもBADLにとどまらず手段的ADL(instrumental ADL:IADL)についても評価し,その結果を機能障害へのアプローチだけでなく活動や参加へのアプローチに生かすことが求められている.

 本稿ではこのような背景を踏まえ,対象者に応じた適切なADL評価法の選択と臨床および研究におけるADL評価表の使用について述べる.

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はじめに

 人は家で暮らし,さまざまな人と接点をもち,社会の一員として生活している.たとえ独居であっても,地元の町内会や寄り合い,幼なじみや同僚といった人とのかかわりはもっていることが多い.人は家や社会に生かされていると言える.日常生活活動(activities of daily living:ADL)は,生活するうえで必要なさまざまな活動の総称である.

 朝起きて,歯磨きをして顔を洗い,トイレに行く.パジャマを脱いで服に着替えリビングやダイニングに行き,人によっては食事の支度を,人によっては用意されたものを食べたり飲んだりする.家を掃除して洗濯物を干す.テレビを見て,電話がかかってきたら出て,宅配便や書留の受け取り印を押す.自転車や自動車を運転する人もいれば,ブラブラとショッピングをする人もいるだろう.出かけるときは靴を履き,ドアの鍵を閉める.帰宅後は風呂を掃除し,風呂に入り頭や体を洗う.寝るときは寝巻きに着替え,布団やベッドに入る.重なるものを省いて記載したが,ざっと思いつくままに人の1日の生活に共通して行われる活動を挙げてみた.

 これらすべてがADL,もしくは手段的日常生活活動(instrumental activities of daily living:IADL)である.臨床現場において患者を目の前にすれば,これはADLでこれはIADLということはなく,患者の生活における重要性という視点のほうが意味をもつ.また,患者が病と闘い,何らかの障害を抱えて自宅に戻るうえで,元の生活でどのように行っていたかという情報,つまり“入院前生活活動の状況”を把握することは重要で,最終的に効果を判断するうえで比較する対象として欠かせない.いかに正確に,真値に近いものを聴取し把握することができるかが,理想に近い退院設定を行ううえで重要な手続きとなる.

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はじめに

 高齢者における手段的日常生活活動(instrumental activities of daily living:IADL)の制限,特に外出頻度減少や行動範囲縮小といった屋外活動の制限はQOL低下を招く.また,IADLのなかで,買い物や公共交通機関を利用しての外出といった屋外活動は理学療法領域において目標とすることが多い.そこで本稿では屋外活動に焦点を当てて,屋外活動と身体機能,精神・心理機能との関連性やIADLの充実をめざした介入方法について,先行研究を紹介しながら解説する.

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 認知症は,認知機能の程度が自立度に決定的な影響を与えにくいのが特徴であり,認知症をもつ患者では,よほど進行してからでないとADLには支障を来さない.そのため,むしろIADLの状況を把握することが重要で,DSM-5の診断基準においてもIADLの評価は重視されている.しかし認知症が進行すると,失行・失認,遂行機能障害,麻痺などの中枢神経障害などが加わり,ADLが大きく低下するようになる.こうした予防対象者から重度者までの長期的な流れのなかで,理学療法士は「いつ」,「どのような場で」,「どのように」介入すればよいのか.臨床と研究の両面から認知症に携わってきた先生方にご議論いただいた.(2019年2月28日収録)

連載 脳画像から読み取る障害像と理学療法・8

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Question

術前画像と術後画像から,痙縮の推移と筋緊張に影響を及ぼす因子をどう読み取りますか?

とびら

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 国立大学病院に勤務して30年が過ぎ,2017年4月から医師,看護師,薬剤師以外の医療技術職員を取りまとめる組織の部長となった.当院の医療技術部は現在,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士以外に臨床検査技師,診療放射線技師,臨床工学技士,管理栄養士,歯科技工士,歯科衛生士,視能訓練士,公認心理士,精神保健福祉士,医療保育士の13職種240名程度で構成されている.私の主な仕事は働き方改革を遵守し,病院や患者さん,そして職員のために病院長に業務改善について提案することである.

 国立大学病院では19病院に医療技術部や診療支援部といった組織があり,職種の歴史や各部門の人員数から診療放射線技師長や臨床検査技師長が部長になる場合が多い.ところが,リハビリテーション職種が案外医療技術部長に向いているのではないかと思う.病院に対して業務改善などを提案する方法としてはメール,電話,直接会って話をするなどがあるが,定例の業務連絡と違って重要な案件の場合,事前に周りの方から意見をうかがったうえで交渉相手に直接お会いして感触を得るようにしている.さらに,いつ・どのタイミングで伝えるか,どのように話すかなど,伝え方によっても結果が違ってくる場合があるから興味深い.時には緊張して心拍数が上昇することもあるが,成功したときの喜びは一段と大きい.

1ページ講座 理学療法関連用語〜正しい意味がわかりますか?

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 多数の短骨,関節および靱帯から構成される足部は,複合的な運動を可能とし,後足部,中足部,前足部に可動性をもつ.ヒトの足部には,内側縦アーチ,外側縦アーチおよび横アーチの3つのアーチ構造が存在する.このアーチ構造には,トラス構造およびウィンドラス機構が備わっており,その作用には足底腱膜が重要な役割を果たしている.アーチ構造の保持には,静的な状態では筋活動を認めないが,動的な状態では足部外在筋や足部内在筋などが積極的に関与する.

 トラス構造とは,足部が荷重を受けると足底腱膜が遠心性に伸張することで,アーチを低下させる現象である(図a).“トラス”とは,建築用語であり,構成される三角形を単位とした骨組構造の1つである.足部におけるトラス構造とは,アーチを構成する伸縮しない底辺以外の2辺を構成する骨,関節,靱帯と伸縮する足底腱膜が底辺の三角形を指す.この構造は,歩行周期における立脚初期の踵接地から立脚中期にかけ作用し,足部接地時の衝撃緩和や立脚中期の合理的な荷重の分散と吸収を担っている.立脚中期では,距骨下関節および横足根関節(ショパール関節)が回内(外がえし)し,足根中足関節(リスフラン関節)が背屈するため,この運動連鎖によって足底腱膜はさらに伸張され,トラス構造の重要な役割である衝撃吸収を最大限に発揮することを可能にしている.

1ページ講座 外国人とのコミュニケーション

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 公益社団法人日本モンゴル協会は「モンゴル民族の文化,社会,自然を調査研究し,日本・モンゴル両民族相互の友誼親善に寄与することを目的」とする団体です.ここで「モンゴル民族」と呼ばれるのは,1972年に日本と外交関係を樹立した現在のモンゴル国のみならず,中国内モンゴル自治区やロシア連邦ブリヤート共和国など,国家・地域を問わず世界各地に居住しているモンゴル民族を含みます.同じモンゴル民族であっても,それぞれの育つ環境や歴史や受けた教育が異なるので,文化・習慣を一般化するのはなかなか難しいのですが,共通に言えそうなことを述べていきます.

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はじめに

 入院生活にはさまざまな心的ストレスが伴う.安斎ら1)は,病気や入院に伴う不安に起因して,気分の変化や攻撃性の増大などのパーソナリティの変化が生じると述べている.

 臨床場面において,気分のムラや攻撃的な態度を表す患者に接することは稀ではない.若手理学療法士がこのような患者への対応に悩み,理学療法がうまく進まない原因を患者のやる気や態度に求めたり,患者の機嫌や言動に配慮するあまり,十分な理学療法を実施することが困難となっていたりする状況を目にすることが,少なからずある.

 このような事態が長く続くと,効果的な理学療法を十分に提供できなくなり,患者にとって不利益をもたらすばかりでなく,理学療法士自身も疲弊してしまう.したがって,気分のムラや易怒性を示す患者に対する適切な対応技術が,理学療法士には求められる.

 本稿では,気分のムラや易怒性を示す事例への対応法について,筆者の経験をもとに紹介する.

講座 ビッグデータ・4

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はじめに

 最近,メディアではビッグデータ(big data)という用語を多く耳にする.保健・福祉・医療の現場でも,その活用場面は増えつつあるが,理学療法の分野では,まだ一部の領域でのみ活用されているに過ぎず,一般にはあまり馴染みがない.

 ビッグデータとは,その名のとおり“大量”のデータのことである.しかし量が多いだけではビッグデータとは呼べない.データは“多種多様”であり,データの発生・更新が頻繁に繰り返されるという“速さ”の性質ももっている.

 とりわけ本稿では暫定的に「典型的なデータベースソフトウェアが把握し,蓄積し,運用し,分析できる能力を超えたサイズのデータ1)」と定義しておく.

 急激な情報技術(information technology:IT)の発展によって,誰もがパーソナルコンピュータを所有し,利用できるようになった.インターネットの普及に伴い,多くの情報収集が可能となり,また情報発信もできるようになった.それによって個人単位でも莫大なデータ量を扱えるし,ましてや組織全体で考えると,かなり多量なデータを扱うことになる.蓄積されていくデータは有効活用できるものもあろうし,捨てるべき無用なものも多い.

 こうして蓄積されたビッグデータは,曖昧な要素が大きいので把握・分析は困難である.誰もが簡単に手を出せるものでもないし,そう言っている間に,随時蓄積されていく.こうしたデータを蓄積するだけにしておいてよいだろうか.

 われわれに必要とされているのは,こうしたビッグデータを,いかにして活用できるようにするか,活用するかという点である.一個人の理学療法士にとっては無縁と言いたいところだが,いずれかかわるときがやってくる.そうは言っていられない時代がやってくる.

 前号までの本講座では,基礎事項や地域医療分野での活用事例などについて詳しく説明されてきた.本稿では,具体的に理学療法士が組織単位でまたは個人単位でもビッグデータを活用していくにあたり,今後の可能性と,それを活用するために必要となっていく課題について提案する.

臨床実習サブノート 「日常生活活動」をみる・4

排泄 合田 明生
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活動としての排泄の捉え方

 排泄には老廃物を体外に排出して生命を保持する役割があり,日常生活活動(ADL)上でたいへん重要な行為です.排泄は1日に数回は必要で,通常は便器への移乗動作も含まれるため,当事者にとっても介助者にとっても負担の大きい動作です.また,トイレ動作はなるべく人に見られたくない動作であり,介助が必要となった場合,自尊心が傷つき自信喪失につながる可能性があります.さらに,排泄コントロールの障害(尿意,便意がない,尿漏れなどコントロールや管理が困難)が加わると,当事者,介助者の双方にとって心理面でも介護面でも影響が大きくなります.

 排泄を自立して実施するためには,下部尿路や下部消化管の機能が正常であるだけでは十分ではありません.当然のことながら,排泄にまつわる諸動作を,安全に効率よく遂行するための身体機能が必要です.さまざまな疾病や外傷により患者の身体機能が低下し,歩行や起立などの基本動作の遂行が困難となることで排泄が要介助となることは臨床でよく経験することでしょう.さらに,正常な認知機能が保持されていることも重要です.たとえ動作が自己にて実施できたとしても,病棟内で迷ってトイレにたどり着けなかったり,自己や環境の清潔保持に配慮した動作が実施できなかったりする場合は,排泄の自立に至らないと考えられます.

あんてな シリーズ 介護予防への取り組み・8

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はじめに

 理学療法は,主に予防,治療,リハビリテーションの3つのアプローチに分類できる.在宅におけるいわゆる生活期の理学療法は,リハビリテーションの最終局面で予防と重なってくる.なぜなら,予防は,多様な「したい(する)こと」,「行きたい(行く)所」,「会いたい(会う)人」(以下,「want to」)があって,それらが適当な活動量や心の充実感とともに達成できているからこそなされるからである.一方,リハビリテーションは,目標となる多様な「want to」があり,それらが同様に達成されてこそ成し遂げられたとされるのである.つまり,本来,介護予防事業は,高齢者が要介護状態になるのを未然に防ぐための事業であるが,視点を変えると,医療や介護保険給付によるリハビリテーション終了後の受け皿となるリハビリテーション事業でもある.

 本稿では,福井県小浜市における介護予防事業の概要と理学療法士のかかわりについて報告し,また,在宅リハビリテーションの視点からみた介護予防事業について考察を加える.

甃のうへ・第69回

感謝 森井 和枝
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 1966年に日本初の理学療法士が誕生し,はや半世紀が過ぎた.私が理学療法士になった頃は「獲得困難職種」とされ,就職支度金まで支給された.それが,今や年間1万人もの有資格者が誕生する状況となった.必要性の高まりはありがたいが,現状においては希望する職場に就職することも容易ではないだろう.私は先輩の誘いもあり,リハビリテーション専門病院に就職した.さまざまな疾患について経験し学修する機会を得ることができた.研究部門もあり,設備も充実していた.3次元動作解析装置など最新の計測機器があり,研究員の方には研究方法の立案や装置の修正まで相談し,協力していただけた.本当に恵まれた環境で理学療法士を続けることができた.そして,結婚,妊娠と,特別扱いされるのが嫌で,移乗介助などもひとりで頑張った記憶がある.職業人として性別を超えて対等であるべきという考えが,自分の根底にあった気がする.

 現在,内閣府で推進している「ワーク・ライフ・バランス」という事業がある.最近では,バランスというとどうしてもシーソーの関係となり,仕事と生活の調和を図るためには「統合」,つまり「ワーク・ライフ・インテグレーション」という考え方が適切ではないかとの意見もある.いずれにせよ,言葉でいうより簡単ではない.

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要旨 【目的】本研究の目的は,末期変形性膝関節症[膝osteoarthritis(OA)]患者における生活空間(Life space assessment:LSA)と身体活動量,運動機能の特徴を明らかにし,生活空間の狭小化を予測する歩行速度のカットオフ値を検討することである.【方法】対象は末期膝OA患者40名とした.測定項目は,LSAと身体活動量,膝関節角度,膝伸展筋力,疼痛,Timed up and go test,歩行速度とした.対象者をA群(LSA<56点),B群(LSA>56点)の2群に分類し,各群のLSA,身体活動量,各運動機能の比較,LSAの得点と歩行速度とのReceiver operating characteristic(ROC)解析を行った.【結果】LSA,身体活動量,膝伸展筋力,歩行速度は,A群よりB群で有意に高い値を示した.また,ROC解析の結果,歩行速度のカットオフ値は1.0m/秒であった.【結論】生活空間が狭いと筋力,歩行速度,身体活動量は低下していることが明らかとなった.歩行速度1.0m/秒は,生活空間の狭小化を判別する指標になることが示唆された.

ひろば

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 私は訪問看護ステーションに勤務する理学療法士で,現在は10歳と6歳の子どもをもつ母親です.

 結婚を機に,勤めていた病院を退職し転居しました.以前から興味のあった訪問リハビリテーションで働きたいと考えていたところ,今の職場に出会いました.育児をしながら働くことに理解のある職場でしたので,長男を授かり1歳になってすぐに職場復帰をしました.

臨床のコツ・私の裏ワザ

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骨盤帯・股関節分離運動の重要性

 運動連鎖の破綻により関節へのメカニカルストレスが増大することは数多く報告されています.もちろん正しい運動連鎖は重要ですが,動作に応じて骨盤帯・股関節の分離運動を促すことはスポーツ障害だけでなく,日常生活活動時における関節への力学的負荷軽減の観点からも重要であると考えられます.分離運動の低下はジャンプや切り替えし動作時のknee inを誘発しやすく,膝前十字靱帯損傷のリスクを増加させ,膝関節内側支持組織へのメカニカルストレスを増大させます.したがって股関節運動を分離して獲得することが重要であり,そのためには深層外旋六筋の機能が重要となります.

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手指背側コンパートメント症候群

 母指の腱鞘炎(ドケルバン病)は短母指伸筋腱と長母指外転筋が手関節の背側にある手背側第一コンパートメントを通るところに生じる腱鞘炎です.手の使い過ぎの人やスポーツ愛好家,指を多く使用する仕事の人に多いのが特徴です.現在ではスマートフォンやパソコンなどが普及し,症状を生じる方が多くみられます.評価は母指と一緒に手首を尺側に曲げることで疼痛を再現できます.治療方法の多くは注射やテーピング固定です.しかし母指の動きを制限し,日常生活を行うことは非常に難しいものです.そのため,評価・治療は母指以外の残り手指の機能を高め,手関節の過度な尺屈位が起きないようにすることを重要視しています.

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 これからの時代,リハビリテーション医療における意思決定には,臨床現場で創られた実証結果であるエビデンスが求められることは想像に難くない.そのエビデンスとは何か? 臨床および社会で生かすための幅広い研究法エッセンスを学べる書籍が本書である.

 本書の構成として小生が捉えた特徴的な点は3つである.1点目は研究デザインの網羅性,2点目はエビデンスの活用法にも触れている実用性(実践性),3点目はマンガを用いた理解へのリーチ性である.

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目次

文献抄録

次号予告

編集後記 金谷 さとみ
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 理学療法士はよく10m歩行時間を測定しますが,横断歩道を渡りきるのに10mを何秒で歩く必要があるかを知っているでしょうか.ADL評価でトイレ動作の可否をみていますが,トイレが汚染したときの掃除やトイレットペーパーの調達について考えたことがあるでしょうか.内部障害などで運動負荷量を決めますが,実際のADL負荷量を測定したうえでの指導ができているでしょうか.さらに,日常使用されているADLのスクリーニング検査の得点を算出しただけで終わらせている勘違いはないでしょうか.医師や看護師に比べて,もっと先の生活を見通すことができる理学療法士にとって,ADLやIADLの知識はいわゆる「武器」と言えます.ADLやIADLには,科学的に整理する余地がまだまだたくさんあるのです.

 本誌では,ADLを特集テーマとして取り上げる機会は多くなかったので,特別な思いで企画しました.隆島論文では,何気なく使用しているADLやIADLの概念は,今に至る歴史のなかで,より科学的に捉えようとする努力が重ねられてきた経緯がわかります.浅川論文ではさまざまなADLやIADLの評価表の選択方法と活用について,わかりやすく述べられています.中山論文は,臨床現場にいながら,常に退院後の生活の1日を念頭に置くベテラン理学療法士の考え方が伝わる内容となっています.池添論文では,理学療法士があまり臨床で使わないIADLの詳細と介入方法について,丁寧に解説されています.座談会では,認知症疾患に焦点を当てて,具体的な展開を期待して4名の先生にお集まりいただきました.仙波先生には日本理学療法士学会の精神・心理領域理学療法部門を担当する立場から,島田先生には予防的見地から,山上先生にはケアの視点を含めた理学療法について,横井先生には介護関連施設での理学療法経験から,認知症のADLやIADLについてさまざまなご意見をいただきました.

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基本情報

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理学療法ジャーナル
53巻8号 (2019年8月)
電子版ISSN:1882-1359 印刷版ISSN:0915-0552 医学書院

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