- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
人は家で暮らし,さまざまな人と接点をもち,社会の一員として生活している.たとえ独居であっても,地元の町内会や寄り合い,幼なじみや同僚といった人とのかかわりはもっていることが多い.人は家や社会に生かされていると言える.日常生活活動(activities of daily living:ADL)は,生活するうえで必要なさまざまな活動の総称である.
朝起きて,歯磨きをして顔を洗い,トイレに行く.パジャマを脱いで服に着替えリビングやダイニングに行き,人によっては食事の支度を,人によっては用意されたものを食べたり飲んだりする.家を掃除して洗濯物を干す.テレビを見て,電話がかかってきたら出て,宅配便や書留の受け取り印を押す.自転車や自動車を運転する人もいれば,ブラブラとショッピングをする人もいるだろう.出かけるときは靴を履き,ドアの鍵を閉める.帰宅後は風呂を掃除し,風呂に入り頭や体を洗う.寝るときは寝巻きに着替え,布団やベッドに入る.重なるものを省いて記載したが,ざっと思いつくままに人の1日の生活に共通して行われる活動を挙げてみた.
これらすべてがADL,もしくは手段的日常生活活動(instrumental activities of daily living:IADL)である.臨床現場において患者を目の前にすれば,これはADLでこれはIADLということはなく,患者の生活における重要性という視点のほうが意味をもつ.また,患者が病と闘い,何らかの障害を抱えて自宅に戻るうえで,元の生活でどのように行っていたかという情報,つまり“入院前生活活動の状況”を把握することは重要で,最終的に効果を判断するうえで比較する対象として欠かせない.いかに正確に,真値に近いものを聴取し把握することができるかが,理想に近い退院設定を行ううえで重要な手続きとなる.
Copyright © 2019, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.