- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
理学療法士はよく10m歩行時間を測定しますが,横断歩道を渡りきるのに10mを何秒で歩く必要があるかを知っているでしょうか.ADL評価でトイレ動作の可否をみていますが,トイレが汚染したときの掃除やトイレットペーパーの調達について考えたことがあるでしょうか.内部障害などで運動負荷量を決めますが,実際のADL負荷量を測定したうえでの指導ができているでしょうか.さらに,日常使用されているADLのスクリーニング検査の得点を算出しただけで終わらせている勘違いはないでしょうか.医師や看護師に比べて,もっと先の生活を見通すことができる理学療法士にとって,ADLやIADLの知識はいわゆる「武器」と言えます.ADLやIADLには,科学的に整理する余地がまだまだたくさんあるのです.
本誌では,ADLを特集テーマとして取り上げる機会は多くなかったので,特別な思いで企画しました.隆島論文では,何気なく使用しているADLやIADLの概念は,今に至る歴史のなかで,より科学的に捉えようとする努力が重ねられてきた経緯がわかります.浅川論文ではさまざまなADLやIADLの評価表の選択方法と活用について,わかりやすく述べられています.中山論文は,臨床現場にいながら,常に退院後の生活の1日を念頭に置くベテラン理学療法士の考え方が伝わる内容となっています.池添論文では,理学療法士があまり臨床で使わないIADLの詳細と介入方法について,丁寧に解説されています.座談会では,認知症疾患に焦点を当てて,具体的な展開を期待して4名の先生にお集まりいただきました.仙波先生には日本理学療法士学会の精神・心理領域理学療法部門を担当する立場から,島田先生には予防的見地から,山上先生にはケアの視点を含めた理学療法について,横井先生には介護関連施設での理学療法経験から,認知症のADLやIADLについてさまざまなご意見をいただきました.
Copyright © 2019, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.