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はじめに
最近,メディアではビッグデータ(big data)という用語を多く耳にする.保健・福祉・医療の現場でも,その活用場面は増えつつあるが,理学療法の分野では,まだ一部の領域でのみ活用されているに過ぎず,一般にはあまり馴染みがない.
ビッグデータとは,その名のとおり“大量”のデータのことである.しかし量が多いだけではビッグデータとは呼べない.データは“多種多様”であり,データの発生・更新が頻繁に繰り返されるという“速さ”の性質ももっている.
とりわけ本稿では暫定的に「典型的なデータベースソフトウェアが把握し,蓄積し,運用し,分析できる能力を超えたサイズのデータ1)」と定義しておく.
急激な情報技術(information technology:IT)の発展によって,誰もがパーソナルコンピュータを所有し,利用できるようになった.インターネットの普及に伴い,多くの情報収集が可能となり,また情報発信もできるようになった.それによって個人単位でも莫大なデータ量を扱えるし,ましてや組織全体で考えると,かなり多量なデータを扱うことになる.蓄積されていくデータは有効活用できるものもあろうし,捨てるべき無用なものも多い.
こうして蓄積されたビッグデータは,曖昧な要素が大きいので把握・分析は困難である.誰もが簡単に手を出せるものでもないし,そう言っている間に,随時蓄積されていく.こうしたデータを蓄積するだけにしておいてよいだろうか.
われわれに必要とされているのは,こうしたビッグデータを,いかにして活用できるようにするか,活用するかという点である.一個人の理学療法士にとっては無縁と言いたいところだが,いずれかかわるときがやってくる.そうは言っていられない時代がやってくる.
前号までの本講座では,基礎事項や地域医療分野での活用事例などについて詳しく説明されてきた.本稿では,具体的に理学療法士が組織単位でまたは個人単位でもビッグデータを活用していくにあたり,今後の可能性と,それを活用するために必要となっていく課題について提案する.
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