理学療法ジャーナル 53巻7号 (2019年7月)

特集 脳卒中患者の上肢に対する理学療法up to date

EOI(essences of the issue)
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 これまで脳卒中患者の上肢に対する理学療法は積極的に行われてきたとは言いがたいが,近年,運動学習理論の応用や神経科学の発展などによりいくつかの取り組みがなされている.本特集では,それらのなかからCI療法(constraint-induced movement therapy),促通反復療法,ボツリヌス療法を併用した理学療法,視覚誘導性自己運動錯覚療法,ロボティクスを導入した理学療法について取り上げた.すでにエビデンスレベルの高いものもあるが,緒に就いたばかりのものも含んでいる.これらをヒントに脳卒中患者の上肢に積極的に迫る理学療法士をめざしてほしい.

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はじめに

 1996年にScience誌に掲載されたNudo博士ら1)による論文以降,中枢神経疾患におけるニューロリハビリテーションは理学療法士にとっても常識となった.その論文では人為的にリスザルに脳損傷を生じさせ,使いにくくなった麻痺手に対してconstraint-induced movement therapy(CI療法;非麻痺手を拘束して麻痺手を強制使用させる療法)を用い,高頻度で麻痺手から感覚・知覚情報を入力することで麻痺手にかかわる運動領野に変化が起きることが紹介された.その後,ニューロリハビリテーションは急速に発展し,brain machine interfaceや経頭蓋磁気刺激法,そしてロボットや通電装置を用いた麻痺側上肢へのリハビリテーションが脚光を浴びつつあるが,理学療法士より医師や作業療法士のかかわりのほうが多い印象がある.

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はじめに

 従来の脳卒中後の麻痺肢に対するリハビリテーションは,能力障害の回復において上肢は下肢に比べて不良である1)ことから,日常生活を自立させるために非麻痺肢を使用した代償的アプローチが主流であった2).しかし近年では,脳損傷後の脳の可塑的変化が可視化できるようになり,損傷を免れた脳領域が損傷部位の機能を代償する機能的再構成が起こることが明らかにされた.これらの知見をもとに,脳の可塑的変化を促進させる治療法として「ニューロリハビリテーション」という概念が提唱された3).Constraint-induced movement therapy(CI療法)は,脳の可塑的な変化をもたらすとされる使用依存性脳機能再構築(use dependent cortical reorganization)の仮説に基づく4).その効果は大規模ランダム化比較試験5)で実証され,本邦では2003年以降,兵庫医科大学リハビリテーション医学教室の道免ら4)によって導入された.脳卒中治療ガイドライン20156)でもグレードAと推奨され,適応者への積極的な実施が望まれる.

 本稿では,CI療法および修正CI療法の概説と脳卒中片麻痺者における効果について述べ,千葉県千葉リハビリテーションセンター(以下,当施設)での具体的な実施方法を紹介する.

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はじめに

 促通反復療法(repetitive facilitative exercise:RFE)とは,新たな促通手技によって患者の意図した運動を実現し,それを反復することによって随意運動を実現するために必要な神経路の再建と強化を目的とした神経路強化的促通法である1)

 促通反復療法は,脳卒中治療ガイドライン20152)で上肢機能障害に対するリハビリテーションとして,麻痺が軽度から中等度の患者に対して高いエビデンス(グレードB)が認められており,有用な治療法として平成記念病院(以下,当院)でも2012年10月より外来,入院患者を対象に実施している.そこで本稿では,麻痺側上肢に対する促通反復療法(川平法)の対象と具体的方法およびその回復過程について紹介する.

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はじめに

 Laiら1)は,脳卒中後運動麻痺は発症から3か月以降で約55〜75%1)に後遺するとしている.その運動麻痺の回復限界の間接的な原因となる脳卒中後痙縮(以下,痙縮)について,de Jongら2)は,脳卒中発症後3か月以降で約42%に後遺するとしている.これらの報告より,運動麻痺を呈した症例のうち3人に2人が痙縮を後遺していることが推察される.

 痙縮は,一般的に運動量が増えてくる回復期以降で発生するイメージが強いが,発症後48時間で10%,10日間で17%と発症早期よりすでに痙縮が発生している2).そのため,欧米医療先進諸国では,ボツリヌス治療を脳卒中後リハビリテーションの補完的治療と位置づけ,すでに一般化されている.ボツリヌス治療だけで痙縮治療が完結するわけではないが,ボツリヌス治療の使い方を知らなければリハビリテーションに役立てることができないため,本稿では痙縮のメカニズムも含め,藍の都脳神経外科病院(以下,当院)の取り組みを中心に説明する.

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はじめに

 ヒトは身体や外界からの情報を固有感覚や皮膚感覚,視覚から得ている.運動を実行すると,それらの運動の感覚が入力され,知覚することができる.筋紡錘への刺激である振動刺激や皮膚を伸張させる皮膚刺激などを行うことで,実際には運動が生じていないにもかかわらず運動を認知する.このように,感覚刺激により,安静にしているにもかかわらずあたかも自分自身の四肢などが運動しているように知覚することを運動錯覚という1).筆者らは,視覚刺激を用いて運動錯覚を誘導する視覚誘導性運動錯覚(kinesthetic illusion induced by visual stimulation:KINVIS)について研究を行ってきた.そこで開発されてきたシステムは,理工学的には仮想現実技術を応用したものである.また,運動の認知以前に映像内の仮想身体像に身体所有感を生じることから,脳内の身体認知システムに対する刺激方法であると言うことができる.さらに生理学的には,ニューロモデュレーション効果を発揮する刺激である.

 われわれは,日本医療研究開発機構(Japan Agency for Medical Research and Development:AMED)“未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業(ニューロリハプロジェクト)”の研究開発支援を受け,脳卒中に代表される中枢神経系疾患に起因する感覚運動麻痺の回復を図るための研究開発に取り組んできた.KINVISを誘導する臨床システムであるKiNvisTMは,そのプロジェクトで開発されたものである.このKiNvisTMを使用し,現在は脳卒中片麻痺患者を対象としたKiNvis療法の効果を検証している.

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はじめに

 近年,ロボットは私たちの日常生活に浸透しつつあり,生活を豊かにしてくれている.お店に行けば店舗案内を行う人型ロボットがいる.家電としてお掃除ロボットを使用している家庭がある.また,ニュースで見かける手術支援ロボットがある.これらのロボットは人の代わりをするのみならず,人では行うことのできない能力も発揮する.テクノロジーはわれわれの生活をより豊かにしているのだ.

 さて,われわれ理学療法の日常ではどうであろうか.さまざまな機器は日常の臨床を手助けしてくれる.しかし,ロボットが浸透しているとは言えない.テクノロジーが発展することで,セラピストの代わりをするのみならず,治療の効果を高めることが可能なはずである.脳卒中患者の上肢に対するロボット療法もまだまだ未開の地である.それらをいかに使いこなすか,今ある根拠をしっかりと整理する必要がある.

連載 脳画像から読み取る障害像と理学療法・7

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Question

この脳画像からどのような障害像が読み取れますか?

とびら

生きがい 山本 優一
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 何かのテレビ番組だったろうか,海外で,日本の「生きがい」という概念を説いているメンターたちがいると知った.日本人と日本文化を観察した彼らの解釈では,生きがいとは「自分が好きなことで,社会に感謝されて,金銭的な報酬が得られるもの」だそうだ.

 これまでの自分の仕事は,わりと行き当たりばったりにがむしゃらであったが,総じて私の理学療法士としての仕事は,まさに生きがいそのものだとしみじみと実感する.そうかと思えば,周囲を見回すと毎日の慌ただしさを嘆く同業者の声は決して少なくないとも思う.

1ページ講座 理学療法関連用語〜正しい意味がわかりますか?

異化と同化 田中 孝平
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■異化・同化とは

 異化(catabolism)とは,複雑な物質を分解してエネルギーを得る反応であり,同化(anabolism)とはエネルギーを使って単純な物質から複雑な物質を合成する反応である.生命維持のために細胞内で行われる異化・同化の反応を合わせて代謝(metabolism)とよぶ.例えば,ミトコンドリアで有機物を二酸化炭素と水に分解してアデノシン三リン酸(ATP)を得る反応は異化であり,肝臓でアミノ酸から血漿タンパク質をつくる反応は同化である.

1ページ講座 外国人とのコミュニケーション

アフリカ 長谷川 仰子
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 今私たちは「アフリカ」という言葉をまるで国名のように使っていますが,アフリカ大陸の面積は中国,米国,欧州を加え合わせたよりも広く,そこには現在55の国と地域があります.過去には欧州の国々の植民地であった国も多く,その名残で公用語は英語,フランス語,アラビア語,ポルトガル語とさまざまです.加えて,スワヒリ語などの母語が数千語も使われています.また,宗教も多種多様でキリスト教,イスラム教から土着の宗教まで数えきれないほどです.そしてアフリカを語るときに忘れてはならないのが民族で,その数は800とも1,000を超えるともいわれています.1つの民族が国境に分断されて数か国にまたがって住んでいることも稀ではありません.

 こうした状況を考えると,アフリカ出身の患者が医療機関に来院したときには,このように対応するのがよいとひと言で言うことはできません.患者がどの国の出身で,どのようなバックグラウンドをもっているのかを,1人ひとりに丁寧に尋ねることが必要です.

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はじめに

 不測の事態に陥ったとき,たとえ血縁がなくても,日頃から付き合いのある人が頼りになることがある.室伏1)によれば,それは「遠くの身内より,近くの他人」といわれるように,認知症高齢者にもみられる現象であり,「なじみの人間関係(仲間)」をつくりだすうえにおいて役立つとされている.なじみの人間関係は,「認知症誤認による虚構的に加工された人間関係」ではあるが,親近感や同類感が認知症高齢者へのインフォームド・コンセント(説明や同意)を容易にしてくれる.

 今回,特別養護老人ホーム(施設)内で転倒し,病院で大腿骨頸部骨折の手術を行ったが,意欲の低下によって術後の歩行練習が思うように進まず早期退院せざるを得なくなった認知症高齢者を施設内で担当する機会を得た.

 本稿では,筆者(理学療法士)と認知症高齢者との間でなじみの人間関係づくりを行い,その心情を理解して信頼関係を得ることに努力して歩行練習を行った.その結果,受傷以前の歩行状態を取り戻すことを経験したので,歩行練習への拒否・意欲の低下に対する向き合い方と対処方法について述べたい.

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はじめに

 少子高齢化の進行によりわが国の傷病構造が大きく変化している.具体的には医療と介護ニーズが混在する高齢患者が増加している.こうした高齢者は種々の慢性疾患に加え認知症やADL障害をもっているため,医療介護のケアに加えて日常生活や住まいなどの福祉的な支援も必要となる.すなわち,超高齢社会である日本では地域包括ケア的な支援体制の充実が求められるのである.

 また,障害の有無にかかわらず地域で最後まで尊厳をもって生活することを可能にするために,生活のすべての場面で地域リハビリテーション的な視点が必要になる.高齢化の状況は地域によって異なることを踏まえれば,こうした体制の整備は地域ごとに行われなければならない.団塊の世代が後期高齢者になる2025年を1つの目途として,そのための対策を地域ごとに考えるというのが,地域医療構想の目的である.

 地域医療構想の議論にあたっては国から提供されている各種データが用いられることになっている.データの内容としては診断群分類(diagnosis procedure combination:DPC)公開データに基づく各地域の急性期病院の診療実績(病院名も公開されている),national database(NDB)を用いた当該地域の医療提供体制の状況[例えば,標準化レセプト比(standardized claim ratio:SCR)],消防庁データに基づく救急搬送の状況,機能別病床数の将来推計など,ボリュームのあるものになっている.

 近年,こうしたデータ提供が急速に進んでいる理由は,政府レベルでのデータ活用促進に向けた強い方針がある.その契機となったのが社会保障制度改革国民会議における永井良三委員の次の発言である.「(日本は)市場原理でも社会主義的でもない,そのために独自の制御機構が必要であるということがまず共通認識として持たれるべきだと思います.(中略)私の提案は,独自の制御機構として日本の医療の現状,必要性,ニーズ,そうしたものをリアルタイムにデータとして集積する必要があるということであります(以下略)」1)

 公私ミックスの提供体制を基本とするわが国の場合,国や地方自治体が医療提供体制のあり方を強制的に変えることはできない.国が診療報酬制度や種々の計画策定の指針を通して発信する意図を的確にくみ取り,冷静に経営判断に活用する姿勢が医療関係者に求められている.ただし,そうした国の意図が常に正しいものとは限らない.現場の状況にそぐわない方針に対しては,データに基づいてそれを正す姿勢をもつことも必要である.このような民主的な手続きに基づいて医療政策が展開されるためには,規制する側とされる側双方が,同じデータに基づいて検討が行える情報基盤の整備が必要となる.

 まだ十分であるとは言えないが,今回の地域医療構想策定にあたって,こうした情報環境の整備は大きく進んだ.特に,話し合いの場として地域医療構想調整会議が設置されたことは重要である.さらに,公的病院については「公的医療機関等2025プラン」の作成を通して,地域の現状と将来の動向を踏まえたうえで,今後10年のサービス提供のあり方を検討するという仕組みも導入された.こうした一連の施策の方向性が医療関係者には正しく理解されなければならない.

 以下,上記のような問題意識に基づいて,医療におけるビッグデータの活用について私見を述べる.

臨床実習サブノート 「日常生活活動」をみる・3

整容 菊池 智恵
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はじめに

 整容は,円滑な社会生活を送るうえで欠かせない日常生活活動(ADL)です.整容の目的は大きく2つあります.1つは健康状態を保つため感染や疾病を予防することです.もう1つは,相手に不快感を与えないよう身だしなみを整えることです.このため,整容がおろそかになると自身の健康や人とのかかわりに支障を来す可能性が高く1),整容はADLにおいて重要な活動と言えます.

 整容には歯磨き,洗顔,手洗い,整髪,髭剃りなどが含まれ,動作としては比較的容易なものが多いです.そのため,整容は何らかの障害を抱えても自立しやすいとされています.参考までに,脳血管障害患者におけるADL項目別自立度を表1に示します2,3).整容は他のADL項目と比べると,容易で自立度が高い活動であることがわかります.このことから,動作の難易度を考慮しリハビリテーションを行うことは患者自身のできる動作を増やし,早期のADL自立につながります.

 本稿では,整容について,代表的なADL評価法,理学療法を目的とした評価の視点,離床範囲に応じた理学療法の視点,退院に向けたかかわり,を解説します.

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はじめに

 わが国は,世界に類をみないスピードで少子高齢化が進展し,現在では世界最長寿国家となっている.一方で,要介護者の増加や医療依存度の高い高齢者の増加は,大きな課題となっている.そのようななか,わが国において,2006年に介護予防施策が大きく動き出した.介護保険制度のなかに要支援1,2が位置づけられ,予防給付という施策が展開し定義づけられたところから始まった.

 しかし,その介護予防施策は成功したとは言いがたかった.それは,予防とは名ばかりで,新たな予防に資するケアは進展せず,従来どおりの介護が提供され,給付の枠組みだけが,介護給付から予防給付に変化させたサービスが多かったからだと考える.

 このことから,2015年には,介護予防・日常生活支援総合事業が打ち出され,新たな枠組みでの介護予防施策が稼働し始めることになった.

 このような経過において,ほっとリハビリシステムズ(以下,当社)では,2004年から介護予防プロジェクトチームを立ち上げ,自治体ごとに実施される地域での介護予防教室への参画や,予防給付の利用者を対象とした通所介護の運営について検討してきた.本稿では,自治体との連携のもとで進めてきた介護予防事業について報告するなかで,わが国における介護予防事業の今後のあり方について考えてみたい.

私のターニングポイント・第4回

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 本稿では,今の自分がある多くのことのうち,2つのターニングポイントを書かせてもらいます.

 1つ目のターニングポイントは,当時勤務していた高知大学医学部附属病院にて,現愛知医科大学医学部学際的痛みセンターの牛田享宏教授に出会ったことです.牛田教授はそのころ整形外科教室の講師であり,整形外科の回診時に痛みについて気軽に相談していました.そうしたら高知大学の痛みに興味がある人たちの集まりである南国疼痛研究所や,愛知県岡崎市にある生理学研究所の痛みの研究会に誘っていただき,その結果,痛みの臨床や研究にどんどんのめり込みました.牛田教授には,「ゆうてるだけは誰でもできる.論文に結果として残さないと」や「被験者や患者さんに時間や労力を使ってもらってるんやから,論文として残さないと失礼」といろいろ教えてもらい,研究するからには英語の論文にすると決めて,今まで行動しています.行動していますと言っても,いまだに英語で論文を書くのは苦しく,つらくて諦めたい気持ちは山々ですが,昔読んだ「タッチ」という漫画のシーンで,試合の終盤の同点の場面で,主人公の上杉達也が強打者の新田と勝負して打たれたとき,監督に「なぜ勝負したか」と聞かれて,「敬遠は一度覚えるとクセになりそうで」と答えており,それと同じで「一度諦めるとクセになりそうなんで」という気持ちでがんばっています.この漫画を読んだこともターニングポイントの1つです.

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要旨 【目的】人工関節置換術後患者の手術した関節への意識の程度を評価できる評価尺度であるForgotten joint score(以下,FJS-12)の日本語版を作成し,再現性と妥当性を検討した.【方法】質問票の異文化適応プロセスガイドラインに準じて日本語版を作成した.再現性は人工膝および股関節置換術患者55名に対する再テスト法にて,級内相関係数とBland-Altman分析を用いて検討した.妥当性は288名を対象に,日本語版FJS-12と身体機能,患者立脚型アウトカムとの関連について単相関分析を用いて検討した.【結果】級内相関係数は0.85以上と高値であり,Bland-Altman分析から系統誤差は確認されなかった.単相関分析の結果,日本語版と身体機能,患者立脚型アウトカムに有意な関連を認めた.床・天井効果は認められなかった.【結論】日本語版FJS-12は再現性と妥当性を兼ね備えた質問票である.

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はじめに

 脳卒中治療ガイドライン20151)では,発症早期からの装具での歩行練習が有用とされているが,実際に装具作製となると完成までに日数がかかり治療開始が遅れることや,コスト面で患者側の負担となることが多い.そこで今回,われわれは市販の靴下を使用し,簡単で安価に作製可能な装具を考案したので,ここに紹介する.なお,症例提示にあたり,患者本人および家族には掲載に関する同意を得ている.

臨床のコツ・私の裏ワザ

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後頸部の構造

 後頭下筋群は後頸部の上位頸椎に限局した片側4つの筋肉(大後頭直筋,小後頭直筋,上頭斜筋,下頭斜筋)で,両側で8つの筋肉から構成されます.この後頭下筋群は,僧帽筋・頭半棘筋あるいは頭板状筋の下を走行します.実際に後頭下筋群(ここでは下頭斜筋)を観察するために超音波画像診断装置を用いて図1aのようにプローブを置くと,図1bのような筋の3層構造が描出されます.

 頭痛・頸部痛を有する症例では,頭半棘筋と後頭下筋群の間で滑走障害を引き起こしていることが多く,この滑走障害を改善するために整形外科医による超音波ガイド下の注射などが行われています1).そのため整形外科医と連携することの多い理学療法士は,滑走障害の改善および再発予防のために適切な運動療法を実施する必要があります.

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 私は若い頃から徒手療法に興味をもち学んできました.理学療法における痛みの治療は技術的な議論がほとんどで,痛みの原因を特に関節や筋肉,脊髄,末梢神経系に強引に求めていた感があります.また,明確な急性痛と慢性疼痛の区別もなく,痛みを症状レベルで捉え,社会心理的な痛みの側面は適応外であるような印象もあり,自ら治療の適応範囲を狭めていた時代が長く続きました.そのようななか,本書の著者らが2011年に上梓した「ペインリハビリテーション」は痛みの概念を整理し,痛みを詳細な解剖学的,生理・生化学的,神経学的な科学的な裏づけとともに捉え,痛みの治療のパラダイムシフトをもたらす内容に衝撃を覚えました.われわれの痛みの治療が,「療法」から「リハビリテーション」になった幕開けであり,理学療法士だけで執筆していることを誇りに思いました.

 この「ペインリハビリテーション」はその内容が充実し,詳細な脳機能や組織学などにも言及しており,読み応えのあるかなり専門的な内容になっていました.そのため,初学者や経験の浅い理学療法士には基礎知識がないと十分に読みこなし,臨床へ応用できるまでには時間を要することが考えられます.そこで満を持して前書をよりわかりやすく,さらに臨床で使う多くの評価指標を付録で提示し,臨床で使いやすいように本書「ペインリハビリテーション入門」が発刊する運びになったと推察します.本書の内容はChapter1「痛みの理解」では痛みの定義,神経生理学,発生のメカニズムが,Chapter2「痛みの評価」として考え方,感覚評価,身体機能・活動評価,情動・認知評価,社会的・QOL評価に関して述べられています.Chapter3「痛みのマネジメント」では急性痛,慢性疼痛に対する具体的なリハビリテーションの要点について述べられています.また,文中の重要な専門用語には下線が引かれ,末尾で用語解説をしていること,用いられている図も大きく見やすいことが特徴として挙げられます.

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目次

文献抄録

編集後記 吉尾 雅春
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 この夏もアツイのでしょうか…….北海道で5月中に35度以上の猛暑日を観測したのは史上初めてのことだったそうです.しかも5月26日に猛暑日を観測した全国の53地点の8割が北海道であったと報じていました.近年,天候に関する記録更新が当たり前のことのようになっていますが,それは地球の悲鳴に相関しているのかもしれません.梅雨明け頃にみられる豪雨が甚大な被害をもたらさないことを祈るばかりです.

 さて,臨床現場をみていると,下肢や歩行は理学療法士の担当,上肢は作業療法士の担当という傾向があるようです.というよりそれが定着しているかもしれません.いつ頃からそのようになったのか定かではありませんが,そのようなことは関係なく,理学療法士は責任をもって上肢もみるべきです.そのみかたやアプローチに作業療法士と異なることはあっても,基本的に作業療法士任せということではないはずです.

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基本情報

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理学療法ジャーナル
53巻7号 (2019年7月)
電子版ISSN:1882-1359 印刷版ISSN:0915-0552 医学書院

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