理学療法ジャーナル 53巻2号 (2019年2月)

特集 変形性股関節症とメカニカルストレス

EOI(essences of the issue)
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 股関節は構造的に安定した構築学的特徴を有するだけではなく,動的にもさまざまな役割を有している.骨盤と大腿部間の関節にすぎないという考えは古くなっていくであろう.股関節の動きが他関節に影響することを想像しない理学療法士はいないであろうが,具体的な影響はどのようなものなのであろうか.本特集では股関節へのさまざまな負荷について,イメージマッチング法,daily cumulative hip moment,free moment,力学的エネルギー連鎖という新しい評価方法に匹敵する事項とそれらに対する理学療法的視点から紹介する.また同時に近年注目を集めているfemoroacetabular impingementとはどのような病態なのかについて解説する.

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はじめに

 本邦における変形性股関節症患者の有病率は1.0〜4.3%であり,国内人口で換算すると120〜510万人にも及ぶと推定される1〜3).変形性股関節症に対する術式である人工股関節置換術(total hip arthroplasty:THA)の推移を例に挙げれば,高齢化社会の進展,手術方法および手術器械の進歩による長期成績の向上4〜7)などにより,1999年では約2万件であったのに対して2011年では約5万件とほぼ倍増しており,変形性膝関節症とともに重要な運動器疾患である.股関節は下肢の安定性,円滑な重心移動に重要な役割を果たしており,荷重関節のなかでも損傷を受けた場合の身体機能や活動能力,QOLに与える影響は大きい8,9)

 われわれはイメージマッチング法10)を用いて,さまざまな日常生活活動時における健常股関節11),変形性股関節症12),THA13,14),寛骨臼移動術(transposition osteotomy of the acetabulum:TOA)前後,femoroacetabular impingement(FAI)に対する術前後15,16)などの3次元股関節動態解析を行ってきた.本稿では,われわれの研究結果をもとに,メカニカルストレスに関する文献的考察を交えて報告する.

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はじめに

 「私は先々手術をすることになるのでしょうか…」,「股関節が悪くならないように何をすればいいですか?」.

 寛骨臼形成不全や変形性股関節症(以下,股関節症)を有する患者との会話のなかで,幾度となく聞いた声である.股関節症は慢性進行性の疾患であるため,患者にとっては今現在の症状への不満もさることながら,将来における疾患進行の不安は大変大きく切実な問題である.しかし筆者は,上記のような患者の問いかけに適確に答えることができない.股関節症の進行予防に関する理学療法のエビデンスが極めて乏しいためである.本稿では,股関節症の進行予防に向けた筆者らの一連の研究を紹介するとともに,臨床への示唆を述べる.

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はじめに

 運動器疾患を対象とした理学療法ではバイオメカニクスの観点から,対象となる疾患部位のメカニカルストレス軽減を目的に直接あるいは遠隔的に介入する場合が多い.したがって理学療法士には身体に生じるメカニカルストレスについての理解が必要となる.

 筆者は歩行時の身体に生じるメカニカルストレスを考えるうえでは,地球上での直立二足歩行という重力があるがゆえのストレスに加えて,床面と足底の間に生じた摩擦によるストレスも同様に重要であると考えている.前者は片脚立位時に生じる外部股関節内転モーメント1)や変形性膝関節症患者が増大する外部膝関節内転(内反)モーメント2〜4)といったストレスである.後者の摩擦によるストレスは剪断力として,フットケアの観点から研究5〜7)が行われているが,前者に比べてその報告は極めて少ない.

 立脚期では足底は床面との摩擦によって固定されているにもかかわらず,身体は絶えず水平面上で回旋運動を伴っており8),それによって下肢には捻じれストレスが生じている9).臨床においても歩行時に生じる回旋ストレスに起因すると考えられる症例は少なくない.光学式3次元動作解析装置によって計測された関節回旋運動に関する精度の限界もある10)ため,そのような回旋ストレスをどう軽減させるかは理学療法士の経験やイメージによるところが大きい.

 歩行中の摩擦による捻じれストレスを定量化するべく,筆者はfree moment(FM)というパラメータに着目して研究を行っている.今なお試行錯誤の研究段階ではあるものの,歩行時のFMの振幅には股関節が重要な役割を担っていることがわかってきた.

 本稿では歩行時の下肢に生じるメカニカルストレスの指標としてFMを紹介し,股関節機能とFMとの関係および変形性股関節症患者のFMについて考察していく.本稿を通じたFMに関する知見が,読者にとって歩行時の回旋運動について再考する一助となれば幸甚である.

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はじめに

 本稿のキーワードは「エネルギー(energy)」である.読者諸氏は,このエネルギーという言葉を聞いて何を想像するだろうか? 広辞苑によるとエネルギーとは,「① 活動の源として体内に保持する力.活気.精力.② 物理学的な仕事をなし得る諸量(運動エネルギー・位置エネルギーなど)の総称.物体が力学的仕事をなし得る能力の意味であったが,その後,熱・光・電磁気やさらに質量までもエネルギーの一形態であることが明らかにされた」とある.つまり,物理学で言うエネルギーとは,仕事をすることのできる潜在的能力と定義することができる.では「仕事」とは何か? ここで言う仕事とは,物体に力を加えて,その物体が力を加えた方向に動かされたとき,その力は物体に対して仕事をしたと言う.よって,仕事(W)は加えた力(F)と物体が移動した距離(ΔS)の積(W=F×ΔS)で規定される.

 そう考えると,臨床場面での立ち上がり動作や歩行といった諸動作は,身体重心(center of gravity:COG)位置が移動(変位)するので,力により仕事がなされた結果であると言える.これをもう少し詳細に述べると,身体の各筋群が発揮した筋張力により各関節レベルで関節モーメントと言う力が発揮され,それら各関節レベルで発揮された力が仕事をした結果,COGが移動したと言える(図1)1).このようにエネルギーは,すべての動作発現に必要不可欠なものである.そこで本稿では,この仕事をすることのできる潜在的能力のエネルギーに焦点を当て,健常者と股関節疾患患者の歩行時における骨盤・大腿・下腿部での力学的エネルギー特性について解説する.

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はじめに

 欧米では,変形性股関節症はそのほとんどが一次性変形性股関節症と診断されてきた.しかし,近年大腿骨や寛骨臼の形態異常が原因とも報告されるようになっている1).なかでもfemoroacetabular impingement(FAI)による股関節唇損傷が注目されている.FAIは2003年にGanz2)によりその概念が提唱されて以降,注目される病態となっている.骨の形態的異常を背景として,股関節唇と関節軟骨の損傷が発生している病態であることから,FAIの診断には画像所見による骨形態異常の確認が必須である.また,治療においては股関節鏡を用いた臼蓋前縁のrim recessionやrim trimming(臼蓋前縁を削る手法)を伴う股関節唇修復術や,その後にcam osteochondroplasty[大腿骨頭と頸部の移行部(以下,head-neck junction)を削る手法]を行う手術療法が選択されることも少なくない(図1).本邦においてもFAIに対する関節鏡視下手術は年々増加傾向にある.理学療法を行っていくうえでは病歴や理学所見および症状などを総合的に把握しておく必要がある.本稿ではFAIに特徴的な臨床症状と病態の解釈および筆者が行っている運動療法について解説する.

連載 脳画像から読み取る障害像と理学療法・2

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はじめに

 理学療法士が脳画像をみる目的は,脳損傷の部位や程度の確認と,それらと臨床現象との照合による評価上での見落としに気づくこと,将来的な可能性とそれを導き出す方法論を検討するための材料にすることなどである.今回は,それらを読み解くために特に注目しなければならないことについて概説する.

とびら

笑顔をあきらめない 萩原 章由
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 表題は日本理学療法士協会が掲げるスローガンです.そして私が掲げている目標でもあります.「笑顔をあきらめない」を意識し始めたのは,私が勤める市立病院の存続が危ぶまれた頃でした.病院のあり方を決める会議では売却を視野に入れた議論まで聞こえてきました.ある経済誌の「頼れる病院,消える病院」という特集で,多額の税金を入れても赤字が続く自治体病院として,繰り入れランキングで不名誉な第1位にランクされました.臨床現場で働く職員もその事態をよく理解し,私自身も不安を感じていました.

 そのような状況のなかで,私は現場で働く職員の士気が下がること,さらに,そのことが患者さんにも悪影響を与えてしまうのではないかと危惧しました.私は職場内では中堅職員として経営面も考えつつ,何よりも患者さんに迷惑をかけないよう,最善の回復をしてもらいたい,職員には理学療法士としての気持ちが折れないでほしいと考えた結果,臨床現場では「笑顔をあきらめない」ように率先して取り組むことを個人目標にしました.その後,存続が決まった要因の1つとして,市民の皆さんからの声が大きかったようです.毎年実施している入院患者さんを対象とした満足度調査の結果は,満足度が高く,必要とされている病院であることからもそれはわかりました.私たち職員の臨床での姿勢や真摯な態度が救ってくれたのではないかと考えています.私一人が勝手に心配や危惧をしていたのかもしれませんし,私個人の取り組みが功を奏したかはわかりませんが,あらためて日々の臨床の真摯な取り組みが大事だと気づかされました.病院経営に関してはまだまだ解決していませんが…….

1ページ講座 理学療法関連用語〜正しい意味がわかりますか?

関連痛(referred pain) 川村 博文
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■痛みの誘因部位と痛みを感じる部位の不一致

 関連痛は,痛みの誘因部位と痛みを感じる部位が一致せず,患部から離れた部位に出現する痛みである.ペンフィールド・ホムンクルスの脳地図では,脳は体表で刺激を受けると脳地図と照らし合わせて刺激に対応して感じる部位を決定することが示されている.

 ところが,内臓,筋肉などの深部の組織が損傷された場合には,患部から離れた部位に関連痛が発現することがある.内臓疾患に伴う関連痛の部位は,狭心症の場合は心臓の上に位置する胸部だけでなく,左上肢,顎,腹部などに痛みを感じることが多い.肝臓疾患では心窩部,右肩部に,尿路結石症では腰部に関連痛を感じることがある.このように関連痛は内臓からの求心性神経が入る脊髄後角の支配領域と一致するデルマトーム(皮膚分節)よりも広い領域に引き起こされることがある.

1ページ講座 外国人とのコミュニケーション

ドイツ 柚岡 一明
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 本稿では,両国の医療制度や文化の違いからドイツ人が戸惑った事例などをご紹介します.

 ドイツでは医療費は保険適用の範囲内であれば原則無料.骨折やかぜをひいた場合の医療費は全額無料です.ドイツ人は日本では軽度の病気の治療でも有料であることに戸惑うようです.また,ドイツでは一般医(ホームドクター)と専門医に分かれています.まず,ホームドクターのところに行き,必要に応じて各種専門医への紹介状を書いてもらえます.専門医は医療機器を用いた検査を行い,病気を詳細に調べます.当然,医療費は無料.さらなる高度の検査が必要な場合は,病院への紹介状も書いてもらいます.日本ではホームドクター,病院の区別がないことから,どこで診てもらえばよいか,戸惑うようです.在日経験の少ないドイツ人には自治体や病院内での英語による外国人のための相談デスクが必要ですが,現状は圧倒的に少ないように思います.

入門講座 身近なツールを治療に活かす・2

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はじめに

 一般的なバランス機器にはバランスボール,不安定板,バランスマット,フォームローラー®などがあり,医療機関での理学療法や,介護保険施設・スポーツ施設,学校や家庭で運動時のツールとして用いられている(図1).しかしバランストレーニングには介入方法がさまざまあり,臨床効果は明確でないのが現状である.評価方法や適切なプロトコルについても確立されていない部分が多い.

 一般的に,これらツールの使用目的は体幹安定性向上,バランス能力向上,協調性改善などであるが,筆者は評価ツールとしても重要視している.さらに柔軟性改善や筋力強化にも役立つことから,素材や形状の違いによって目的に応じてツールを使い分けている.本稿では,主に運動器疾患に対する運動療法やスポーツ傷害のリハビリテーション,再発予防トレーニングを想定した使用方法について経験的な視点から紹介する.

講座 理学療法に関するガイドラインupdate 2・2

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はじめに

 循環器疾患に関する理学療法診療のガイドラインとして,2011年に日本理学療法士協会による『心大血管疾患 理学療法診療ガイドライン』1)が作成された.本ガイドラインでは,循環器疾患における理学療法診療上,必要不可欠な評価項目ならびに介入方法を簡潔に提示しているため,日々の多忙な臨床業務の際にも,利用しやすい内容となっている.なお,このガイドラインは,日本循環器学会およびAmerican Heart Association(AHA)などが推奨している循環器疾患に対するリハビリテーションおよび運動療法に関するガイドラインなどを参考に作成されている2,3).つまり,広義の意味では,循環器疾患における理学療法に関するガイドラインとは,循環器疾患に対するリハビリテーションや運動療法に関するガイドラインも含まれると言える.そのため,本稿においても,『心大血管疾患 理学療法診療ガイドライン』のみならず,循環器領域におけるリハビリテーションや運動療法の最新のガイドラインやステートメントを紹介するとともに,それらのガイドラインを臨床で用いるうえでの留意すべき点を疾患別に解説していく.

 なお,本邦では,循環器疾患に対するリハビリテーション,いわゆる心臓リハビリテーションは,第Ⅰ相(急性期心臓リハビリテーション),前期第Ⅱ相(前期回復期心臓リハビリテーション),後期第Ⅱ相(後期回復期心臓リハビリテーション),第Ⅲ相(維持期心臓リハビリテーション)に分けられるため(表1)4),本稿においてもこれらのフェーズに準じて解説する.

あんてな シリーズ 介護予防への取り組み・2

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はじめに

 大分県における地域包括ケアシステムは,2012年に県主導型の自立支援型ケアマネジメントの推進を目的とした地域ケア会議の導入から始まり,大分県理学療法士協会としても地域ケア会議への助言者派遣を行ってきました.地域ケア会議の実施に伴い,経時的に通所型サービス事業所と訪問型サービス事業所の育成が必要となり,生活機能向上支援事業(2014〜2015年)として,生活機能向上支援マニュアルおよび自立支援ヘルパー育成マニュアルを作成し,県内6つの圏域で研修会などを行いました.2016年度からは,介護サービス事業所自立支援実践事業へとつながっています.

 また,介護保険卒業後の受け皿づくりとして介護予防の推進も同時進行で行い,現在では住民主体の介護予防推進事業へと進化しながら展開しています.これらすべての県主導型地域包括ケアシステム構築に向けた事業過程においても大分県理学療法士協会として協力支援を行っています1)

 本稿のテーマである大分県における介護予防事業については,県主導型から始まり,各市町村によって地域特性にも応じた取り組みがなされています.理学療法とのかかわりとして,大分県の介護予防事業と,大分県理学療法士協会組織との取り組み,また,大分市と杵築市における介護予防事業と理学療法の取り組みを紹介します.

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はじめに

 心地よい爽やかな秋風が吹くなか,2018年10月20(土)・21日(日)に,福岡県第二の都市・北九州市にて第5回日本予防理学療法学術大会が開催されました.本学術大会は,九州栄養福祉大学の廣滋恵一大会長のもと,栄養・嚥下理学療法部門,産業理学療法部門との共催で行われました.大会テーマは「再発予防,疾病予防,健康増進への理学療法オペレーション—次代に向けて理学療法分野を切り開く」と題され,各領域の第一線で活躍する講師陣による特別講演やランチョンセミナー,海外招聘教育講演など,非常にバラエティに富んだ企画が用意されていました.

 今回,私の生まれ故郷である北九州市で日本予防理学療法学会学術集会が開催されるとのことで,一念発起して演題登録し,参加することを決意しました.また,産業理学療法など日頃は聞くことができないような話を聞けることを楽しみに,充実した2日間を過ごしました.本稿では,学会の概要や拝聴した講演内容,そして僭越ながら私の発表についてご紹介できればと思います.

甃のうへ・第66回

和顔愛語 平澤 小百合
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 どうしても理学療法士になりたいという強い思いはなかった.ただ「自立したい」,「資格をもちたい」,「人と接する仕事がしたい」という気持ちは強くあった.

 理学療法士の国家試験合格後,縁があって結婚.まだ育休制度もなかった時代,2人目妊娠時に退職し,専業主婦となった.

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要旨 一側上肢に生じた複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome:CRPS)に対し,理学療法介入を実施した結果,疼痛および自己身体への無視様症状が軽減し,疼痛と皮膚温との間に一定の関係がみられたので報告する.患側手の皮膚温が高く,患肢の無視様症状を呈したCRPS患者1名を対象に,理学療法介入として段階的運動イメージと関節可動域練習(range of motion exercise:ROM ex)を行い,評価として疼痛の強度をNumerical rating scale,手背皮膚温をサーモグラフィ,無視様症状は質問紙を用いて評価した.結果,段階的運動イメージ後とROM ex後で疼痛と患側手背皮膚温の変化が同様に推移した.さらに,6週間継続して介入した結果,疼痛と手背皮膚温患健差が減少し,4週経過時で患肢の無視様症状が消失した.客観的な生理指標である皮膚温を患者に提示することで,介入効果を患者本人が実感できた.さらに,CRPSの自己身体意識の改善に着目した介入の重要性が示唆された.

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 「脳と神経のしくみは複雑である」と誰しもが思っていることでしょう.医療職に就こうとしている学生にとって,「脳と神経」に関する学習は,最も難渋する分野ではないでしょうか.しかし,馬場元毅先生による本書『絵でみる脳と神経—しくみと障害のメカニズム 第4版』は,それを見事に払拭してくれます.

 本書は,「しくみと障害のメカニズム」と副題にあるように,脳と神経の構造と生理,そしてその障害のメカニズムが一冊のなかで学べるところに特徴があります.解剖生理学と疾病の特徴あるいはそのメカニズムを統合し解釈していくことは,それを学ぶ学生たちにとって最も苦労するプロセスであることを,私は長年の教員生活から知っています.特に神経解剖学,神経生理学,神経学に関する教科書が別々であることから,それらの情報を統合していくことに学生たちはとても苦労するようです.有職者となり臨床に出ればそれらは徐々に自己の経験から統合されていきますが,まだ臨床経験のない学生にとって,解剖生理といった基礎科学と神経学といった臨床医学を結び付けていくことは,至難の技のようです.

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 荒木秀明氏は長年,運動器理学療法を専門とし,運動器専門病院,理学療法士教育機関などで活躍されてきました.特に腰痛理学療法の第1人者の1人です.このたび,これまでの多年にわたる臨床・研究で培われた“腰痛理学療法”の集大成の一つとして,『骨盤・脊柱の正中化を用いた非特異的腰痛の治療戦略』を上梓されました.

 非特異的腰痛とは,厳密に原因が特定できない腰痛の総称です.これまで腰痛の約85%がこの非特異的腰痛とされてきましたが,精査した研究ではこのうちの80%が特定でき,椎間板のほかに椎間関節,仙腸関節といった腰椎の関節部分,さらに背筋など,腰部を構成する組織のどこかに痛みの原因がある可能性は高いとされています.

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目次

文献抄録

次号予告

編集後記 福井 勉
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 私事で恐縮であるが,海外滞在中のため本誌編集会議にはWeb会議で参加させていただいている.また大学院生の指導もこの1年はインターネットを介して行ってきた.大きな不都合はないようにも思うが,臨場感はない.人が会うことの意味を今さらながらに感じている.それとは別に,この何となくある「新しい感」は新鮮に感じられる.新しい道,新しい店,新しい駅,新しい考えなどが多くの刺激を与えることは多くの先人が言ってこられたことだ.

 本誌での変形性股関節症に関する特集は約4年半ぶりとなるが,この「新しい感」に着目していただきたい.以前と比較して,より動的動作におけるメカニカルストレスへの着目度が高くなったと言える.濵井氏による論文では,femoroacetabular impingement(FAI)のスクワット中の貴重な資料をご提示いただいた.建内氏からはdaily cumulative hip momentという新しい累積パラメータについて理学療法の観点から将来への展望を含めて述べていただいた.大川氏には,最近注目を浴びているfree momentの研究の一端を紹介いただき,新しい視点を提供していただいた.加藤氏からはエネルギーフローに新たな観点を付け加えていただき,それぞれ理学療法への新しい可能性に胸が騒いだ.また小野氏にはFAIの貴重なレビューをいただくことができた.

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基本情報

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理学療法ジャーナル
53巻2号 (2019年2月)
電子版ISSN:1882-1359 印刷版ISSN:0915-0552 医学書院

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