産婦人科の実際 68巻4号 (2019年4月)

特集 ご存じですか? 産婦人科領域で話題の薬物療法

  • 文献概要を表示

高度情報化した現代社会において,テレビ,新聞,本,インターネットなどのメディアを通じて,様々な分野の専門的情報を得ることが可能である。そのため,患者が自分の病気について,医療機関以外から詳細な知識を得た上で受診するケースも多い。一方で,膨大な数の情報のなかから,信頼できるものを抽出して判断する作業は容易ではなく,患者のなかで逆に混乱を生じている場合も少なくない。話題の治療についてはメディアで取り上げられる機会が多く,患者にとって最も興味のある情報であることから,専門家としての見解や説明をしばしば求められる。

  • 文献概要を表示

早産全体に占める医学的ハイリスク(頸管短縮,早産既往など)の割合は半数未満で,半数以上は産科合併症に伴う治療早産である。早産はSGA,妊娠高血圧腎症,胎盤早期剝離など治療早産を要する疾患とともに,胎盤関連産科合併症(PMPC)の1つに位置づけられる。

葉酸とマルチビタミンのサプリメントは早産のみならずPMPCの発症を抑え,治療早産を含む早産率を低下させる可能性がある。EPAやDHAも同様に,強い抗炎症作用から早産やPMPCを予防するが,臨床研究の効果はいまだ不安定である。免疫寛容をもたらす腸内細菌叢の破綻が早産に関連することから,probioticsによる予防医学の確立が期待されている。

  • 文献概要を表示

ARTの普及に伴い,よい胚の獲得,選別法の発展を認める一方で,子宮側の要因で妊娠に至らない症例を多く経験する。筋腫,ポリープなど外科的治療によって着床能を改善させる場合もあるが,子宮内膜の菲薄症例や原因不明の反復着床不全(RIF)では,有効な治療法が乏しかった。菲薄症例に対するG-CSF子宮内腔内投与は,有効でないとする報告もあったものの,近年の2つのメタ解析では有効性が報告されている。また,RIFの一部で免疫異常を認め,同患者に対するタクロリムス療法では着床率の著明な改善を認めるが,本報告はまだ新しいことから他施設からの報告が少なく,今後のデータの蓄積が望まれる。

  • 文献概要を表示

慢性子宮内膜炎(CE)は,着床障害の原因になりうる。CEは,細菌などの抗原に対する免疫学的な軽微な子宮内膜の応答と考えられるが,採取組織における間質内の形質細胞の存在をもって診断する。現在,抗菌薬治療によりCEの多くは治癒し,治癒した患者の胚受容能の改善が報告されているが,今後,CE患者の負担が少なく,妊娠予後も考え合わせた治療について検討していく必要があると考えられる。

  • 文献概要を表示

選択的黄体ホルモン受容体モデュレーター(SPRM)は,基礎実験成績より子宮筋腫細胞に対しては黄体ホルモン受容体アンタゴニストとして作用していると考えられる。臨床試験で子宮筋腫随伴症状の緩和や筋腫の縮小化が報告されており,その背景にはSPRMが筋腫細胞の増殖を抑制し,アポトーシスを誘導し,またコラーゲン産生の抑制と分解の亢進を介した細胞外基質蛋白蓄積の減少をきたす作用機序が関与していると推測される。海外ではすでに実地臨床で使用されているが,わが国でも近い将来に使用可能となることが期待される。

  • 文献概要を表示

私が産婦人科医として大学病院で働き始めてからもうかれこれ35年になる。その1984年頃,ようやく腹式超音波診断装置が普及し始めた。しかし,使用した機器は旧アロカ社(現 日立製作所ヘルスケアビジネスユニット)製の5.5インチテレビモニターで,画像は極めて小さく解析度も低かった(図1)。当時はまだ子宮筋腫における保存的治療がなく,手術が唯一の治療法で,開腹してみると術前診断が異なることも稀ではなかったことを覚えている。

  • 文献概要を表示

2019年に入り,婦人科腫瘍に対する免疫チェックポイント阻害薬(主にPD-1経路阻害薬)について,単剤やほかの抗がん治療との併用療法の臨床試験(治験)成績やMSI-High(高頻度のマイクロサテラト不安定性)をバイオマーカーとする抗PD-1抗体薬の適応承認などが発表されており,いよいよ婦人科領域でも本格的に免疫チェックポイント阻害薬を用いた治療が始まっている。そこで本稿では,子宮体癌(子宮肉腫を含む),子宮頸癌,卵巣癌の順に免疫チェックポイント阻害薬に関連した開発状況と今後の展望について概説する。

  • 文献概要を表示

BRCA遺伝子などの機能喪失により引き起こされる「相同組換え修復異常」の臨床的サロゲートマーカーとしての「プラチナ感受性」再発卵巣癌を対象に,オラパリブ維持療法が臨床現場で広く使用され始めた。血管新生阻害薬あるいは免疫チェックポイント阻害薬との併用では,DNA損傷,低酸素環境,免疫チェックポイント関連分子の発現が関与し,その相乗効果を期待した多くの臨床試験が進行している。今後,BRCA変異を有する進行卵巣癌1次治療後の維持療法としての適応が追加承認される可能性が高いと考えられている。

  • 文献概要を表示

2016年5月よりわが国で子宮頸癌に対する初の分子標的薬としてベバシズマブ(商品名:アバスチン)が保険承認され,進行・再発子宮頸癌に対して広く使用されている。化学療法とベバシズマブの併用療法は,GOG240試験において全生存期間,無増悪生存期間の延長を認めたが,ほかの癌腫よりも消化管瘻孔・穿孔,血栓塞栓症の頻度が高い。現在,海外やわが国において,ベバシズマブを使用した臨床試験が進行中である。本稿では過去の臨床試験の結果を基に,子宮頸癌のベバシズマブ使用に関して解説を行い,さらに現在進行中の臨床試験を解説する。

  • 文献概要を表示

月経困難症や子宮内膜症の治療の第1選択である低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)は周期投与でも有効であるが,消退出血時の疼痛症状に対する効果が不十分な場合には連続投与により疼痛の頻度を少なくすることができる。また,子宮内膜症に対しては月経困難症だけでなく慢性骨盤痛や他覚所見の改善,術後の再発予防にも連続投与のほうが有利である。国際的には経口避妊薬(OC)の連続投与が主流となっており,今後日本でもLEP連続投与の普及が期待される。

  • 文献概要を表示

女性アスリートの視床下部性無月経に対しては,低エストロゲン状態であることを確認した後,経皮吸収エストラジオール製剤を用いたエストロゲン補充療法を開始する。ジドロゲステロン内服を1~2カ月に1回,競技スケジュールに応じて入れる。月経痛や月経前症候群(PMS)などの月経随伴症状に対しては経口避妊薬(OC)/LEPが有効であり,アスリートには特に連続投与・フレキシブル投与が勧められる。プロゲスチンの特異性を理解して処方製剤を選択するのがよい。

  • 文献概要を表示

子宮頸癌に対して根治的放射線治療(RT),または同時化学放射線療法(CCRT)を施行した症例では,子宮頸部に病変が残存することがある。救済的子宮全摘術を追加するオプションはあるが,その効果と安全性については議論が残る。本研究は根治的RT/CCRT後に局所残存を疑った子宮頸癌症例のうち,救済的子宮全摘術の適応となりうる症例に対して経過観察を選択した場合の経過を明らかにすることを目的とした。対象は当院で根治的RT/CCRTを行い,照射終了から3カ月以内の細胞診または組織診で,局所にのみ病変の残存を疑ったⅠB~Ⅱ期子宮頸癌症例とした。対象となった11例は全例で経過観察中に局所病変の消失が確認され,照射終了から消失の確認までに要した期間は中央値で99日だった。根治的RT/CCRT後に局所病変残存を疑う症例は,病変の消失が得られ追加治療を回避できる可能性がある。

  • 文献概要を表示

妊娠関連性乳癌は進行癌で発見されることが多く,若い母親の生命リスクにかかわる予後不良の疾患である。妊娠関連性乳癌死を少しでも減らすため,産婦人科医に何ができるかを検証する目的で,妊娠関連性乳癌27例,非妊娠関連性乳癌90例,妊娠期乳房超音波検査426例を後方視的に検討した。その結果,乳房超音波検査はいまだ解決すべきいくつかの問題点を有するものの,妊娠~産褥期の任意型乳癌検診として有用かつ現実的なツールであることが明らかになった。妊娠関連性乳癌を早期発見するためには,具体的に何が必要なのか,妊産婦,乳腺外科医,産婦人科医,助産師,看護師,超音波検査技師らによる幅広い合意形成が望まれる。

  • 文献概要を表示

腫瘍重量が20kgであった上皮性卵巣癌症例を経験した。年齢は58歳で,顕著な下腹部腫瘤感のため近医を受診し,卵巣腫瘍の疑いで当科を紹介された。腹部全体を占める腫瘤があり,CTでは腫瘍長径が約40cmで,囊胞性像が主体,一部に充実性成分が確認された。卵巣癌の疑いのもとに,腫瘍内容液のドレナージを行いながら両側付属器摘出および子宮全摘出を実施したところ,摘出した右卵巣腫瘍の重量は20.3kg(体重比28.9%)であり,組織型は粘液性癌であった。術後経過は良好で,術後10日で退院した。腫瘍内容液のドレナージは周術期合併症の軽減に寄与すると考えられた。

  • 文献概要を表示

子宮体癌はエストロゲン依存性に発育するものが大部分を占め,高プロゲステロン環境となる妊娠中や,妊娠直後に発生することは稀である。今回われわれは産褥1カ月で子宮腔内に遺残胎盤様の組織を認め,産褥2カ月で子宮体癌と診断しえた症例を経験した。組織型は明細胞癌,類内膜癌Grade 2の混合癌で,明細胞癌の成分が8割程度を占めていた。手術進行期はⅠA期,摘出検体に子宮体癌の遺残はみられなかった。産褥期に子宮内腔の遺残組織を回収した場合,稀ではあるものの子宮体癌の可能性も念頭に置いて組織学的評価を行うことが肝要である。

  • 文献概要を表示

非外傷性で突然発症する妊娠中の腹腔内出血を総称してSHiPと呼び,近年子宮内膜症との関連性が注目されている。生殖医療の発展に伴い,重度の子宮内膜症症例でも妊娠が可能となり,今後さらにSHiPの症例は増加すると見込まれる。突然の下腹痛とショックを呈する疾患として,常位胎盤早期剝離や子宮破裂をまず想起するが,今後は鑑別診断としてSHiPの可能性も念頭に置き,子宮内膜症の既往や腹腔内出血の有無にも注意を払う必要があると考えられる。

--------------------

目次

バックナンバーご案内

投稿規定

次号予告

基本情報

05584728.68.04.cover.jpg
産婦人科の実際
68巻4号 (2019年4月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0558-4728 金原出版

文献閲覧数ランキング(
1月18日~1月24日
)