胃と腸 6巻6号 (1971年5月)

  • 文献概要を表示

結核検診の間接撮影にヒントを得たわが国の胃集検方式はその診断技術の向上と共に,今日目覚ましい普及と隆盛の一途を辿っており,その成果は広く海外の注目するところともなってきている.この飛躍的な興隆は先駆者たちの並々ならぬ苦心と献身的な努力に与かるところ大である.一言,その苦心談や現在抱えている問題点あるいは将来のヴィジョンについて語っていただいた.

  • 文献概要を表示

はじめに

 集団検診従事者の努力が徐々にみのってきて,わが国における年間集検受検者の数が200万人を超え,また胃癌の発見率もほぼ定着した感がある.それと共に,はじめて胃集検を受けた集団から見つけ出される胃癌の中に占める早期胃癌の比率はその後,回を進めるに従って次第に減少して行き一度最低の比率になると,その次に新たに発見される胃癌は,ほとんどすべて早期胃癌である,というような傾向もだんだんと明瞭にみられるようになってきた.この傾向は地域集団でもみられる傾向ではあるが,特に,職場のように集団の管理が充分に行なわれ易い場合は一層顕著な傾向であるといえよう.そうなってくると,もはや従来からの胃癌発見のための診断基準をもっと厳密にして,早期胃癌が見逃されることのないように,集検技術の質的向上がより一層要望されるようになってきたのは当然のことといえるであろう.

 そういった意味合いから,集団検診のスクリーニングの方法としてすでに確固たる地位を得ている間接撮影法が再検討され,できるだけ早期胃癌を見落とさず,しかも,効率のよい撮影方法の決定版を探し出さそうという努力がなされているのも当然のことであろう.

 スクリーニングで最も大切なことは,異常者を見落とさないことである.この段階で見落としてしまっては,あとにどんなに優秀な精検技術をもっていても,それを活用することすらできないからなのである.そこで,間接スクリーニングの場合には,早期胃癌のような浅い僅かな変化とか,小さい病変とかを対象にして考えて,胃の中の隅々まで,一応写し出しておくことがまずもって大切なことになる.そのために,筆者らは,最近使われている胃の中の小区域について紹介し,その区域から日常使われている各種の撮影体位の受持区域について簡単に述べ,次いで,それらの組合せによって,どのような「見つけ出し能」の向上がみられるかについて述べ,最後に,現在進行中の研究の一部を紹介しておこうと思う.

  • 文献概要を表示

はじめに

 胃の集団検診は入江らによってわが国に導入,開発された胃間接撮影を主軸として普及している.この方法は1次スクリーニング法としては精度が高いこと,被検者に与える苦痛が殆んどないこと,比較的簡便なことなどの利点があるために広く用いられている.

 しかしながら一方,被検者に対する放射線被曝が直接撮影に比して大きなため,極めて多数の対象に行なう場合,集団としての被曝をできるだけ少なくするために,1人当りの撮影枚数をあまり多くできないという点に問題が存在する.また,通常の間接撮影では透視を全く省略するか,位置決定に用いても極めて像質が不良であり,その際に,操作者が暗順応そして暗室で行なわねばならぬ点にも問題がある.すなわち,多入数を対象とする集団検診では,検査に当る医師,診療放射線技師の疲労が最小となるような方法を用いる必要があるが,暗室での透視を行なうことは,この条件を満足するとはとても言えない.

 このような問題点を解決するために考えられたのが,X線テレビジョンの胃集検への応用である.

  • 文献概要を表示

はじめに

 早期発見のいかんが胃癌の永久治癒率を大きく左右する現状において,そのための有力な手段の一つとして胃集検が行なわれ,その成果は目覚ましいものがあるといえども,なお検討を要すべき点が少なくない.

 胃癌は初期には一般的に自覚症状が軽微であるか,殆んど無症状であるため,一般に健康と信じる人々の中から胃癌,とくに粘膜癌のごとき早期胃癌を見つけ出さなければならない.早期胃癌の発見が集団検診の目的であり,使命であるが,第一次スクリーニングの方法いかんによっては,その成績に重大なる影響があり,見逃し→手遅れ→すなわち死に直結する問題に対し,筆者らは極力見逃し例の防止と,進んで精密度の高いスクリーニング法の必要性を痛感する.間接X線のみによるスクリーニング法は,客観的に病巣,をとらえ得る優れた方法として,広く一般に行なわれており,さらに最近テレビカメラの開発撮影技術の進歩などにより,早期胃癌を始め,微細病変の発見は大きな進歩を示しつつあるが,なお検討を要すべき点も少なくない.

 筆者らは集検の場における,第一次スクリーニング法として,従来の間接X線スクリーニングに,集検用胃カメラを併用して10数年来,胃集団検診を行なってきているが,内視鏡スクリーニングの意義方法,成績およびいくつかの問題点について述べる.

  • 文献概要を表示

はじめに

 胃癌好発年齢層をより多くスクリーニングするための基本的な要件は,そのための施設(検診車を含めて)をいかに増設するかの前に,一次スクリーニングの「かなめ」であり「眼」である「間接X線フィルムの読影」に,より多くの専門医師をいかに多く確保し得るかにかかっている.

 さらに,その「眼」が幸いによく確保されたとしても,特に現在の胃癌対策においては,二次スクリーニング以降の胃カメラ検査,X線直接撮影,ファイバースコープ検査,生検,細胞診などを常時担当し得る専門医師を,どれほどまでに確保できるかによって,一次スクリーニングの実施可能の範囲はおのずから限定される.

 胃集検がその目的とするところを達成するためには,充分な精密検査が行なわれなければならない.しかし実際には,被検者側,検者側のいろいろな都合によって,なかなか充分な精密検査が行なわれ得ないのが現状である.

  • 文献概要を表示

はじめに

 胃集団検診が本格的に行なわれるようになって相当の年月を経るに至り,今日ではその歴史の古いところ,新しいところとそれぞれの苦悩と喜びが刻まれ,一方では外来集検,職域集検など次々と新しい集検システムが続出し,胃集検のシステムについては各々の立場から一つの反省の時機に達している.中でも地域一般住民を対象とする胃集検は,それに絡む要因が複雑多岐であるため特にその感が強い.岡山県では昭和38年度より検診車による一般住民を対象とした地域集検が始り,そのシステムの概略はいわゆる岡山方式にそって終始一貫して行なわれてきたものである.すなわち,40歳以上を対象とし,精検は県医師会,県衛生部,岡山大学で定めた精検委嘱機関(昭和45年現在66施設指定)が行ない,これに各保健所が加わって要精検者と各医療機関との連絡を保ち,事後管理と成績の収集を行なっているものである.このようにして実施されてきた岡山県の成績と経験をもとに地域集検の特殊性について考察を行なった.

職域胃集団検診の特殊性 中馬 康男
  • 文献概要を表示

はじめに

 胃集検が胃癌の早期発見に果した意義は大であるが,結核検診と基本的に異なる問題は,希望検診という被検者の自白意志によらざるを得ない集団検診であることで,かつ全国的に集検人口が増加し,100万人に達しているとは言え,結核に比べるとまだ規模が小で,体系も不完全なことである.胃集検の場では,集検管理が地域集団より職域集団において,質量ともに比較的よくまとまって実施されているので,職域集検の特殊性を地域集団と対比しながら検討してみる.鹿児島県では,昭和36年以来,間接4枚法による検診車集検を行ない,44年度まで約9万名に達し,検診車3台,年間3万名の規模で現在実施している.

 鹿児島県における集検受診者の中に占める職域集検数を検討してみた.昭和44年度の集検実施者数は2万6千名で35歳以上人口80万人の約3%,40歳以上人口の4.3%に相当するが,地区別割合は,町村34%が多く,離島住民21%で,市街地住民22%および職域が23%であり,地城集検が3/4を占め,職域集検数は全受診者のほぼ1/4に相当する.

外来胃集団検診の特殊性 淵上 在弥
  • 文献概要を表示

はじめに

 いままで胃の集検には多くの場合,検診用自動車を用いて特定の地域や職域に出張する集検方法がとられてきたが,昭和40年秋,有賀1)は,これとならんで病院外来のごとき施設においても検診の希望者を集め,これを一つの集団と見做して検診する方法の必要性を提唱し,これを外来集検と呼ぶこととした.

 ついで昭和41年11.月広島で開かれた第4回日本胃集団検診学会秋季大会においても,外来集検がシンポジウムのテーマのの一つとして採り上げられ2)~8),多くの関心が寄せられるようになってきた.

 すなわち,外来集検の特性とするところは,固定された施設においておこなわれるのであるから受診者からみて責任の所在が明確であり,しかも第一次スクリーニングと,それ以降の各種精密検査および爾後の処理が一つの機関内で直結していることである.集検の場合,このような一貫した方式でおこなうことが,精検受診率も高く胃癌,とくに早期胃癌の発見率の最も良い成績が得られていることはすでに多くの人9)10)の指摘しているところである.

 さて,癌研病院1)でも従来より検診車による集検をおこなってきたが,外来集検の必要性を感じ昭和41年6月から検診外来という窓口を新設し,病院を訪れる愁訴の少ない胃の検診希望者に対し車検診と同様に間接レ線検査を第一次スクリーニングとし,次にPカメラを使用するという方法での検診を開始した.その後検診外来を訪れる胃の検診希望者は次第に増加し,また車集検からの処理もすべてここでおこなうようにしてみると,検診外来だけではすでに手狭まとなり,昭和43年9月からは,これをさらに拡大充実し,精密検査終了までの業務のすべてをおこなうことのできる設備をもった検診センターへと発展した.すなわち,ここでは訪れる検診希望者にたいし外来集検をおこなうと同時に車検診の業務も加え,こと集検に関するいっさいの業務はすべてここで取扱うことにした.以来現在までに未だ僅か2年3カ月の年月しか経過していないが,昭和44年1月から12月までの1年間の成績について車集検と外来集検とを比較検討し,外来集検の特殊性について述べることとする.

  • 文献概要を表示

はじめに

 胃集検は昭和28-30年に黒川,入江,有賀,その他により,外来あるいは地域において試験的に行なわれ,31年に有賀がフィールドワークとして組織的な胃集検を3,000余人に実施して以来,漸次その数を増し,昭和37年に胃集検学会が発足し,これにより一つのまとまりをみた.当初は大学の教室が主体であったが,次第に大学以外の病院,都道府県,医師会,財団法人,民間団体などがこれを実施するようになり,全国的な広がりをみるに至った.

 当時,胃集検学会のテーマが胃集検方法の規格化とその統一,それによる評価にあった.そこで,有賀槐三理事長(日本大学教授)はこれを検討するためには全国的な胃集検実施状況の実態とその成績を把握しなければならないとして,昭和38年厚生省がん助成金研究班をもち,それにより学会を中心として第1回の全国集計を行なった.以後,毎年1回の集計が現在まで続いており,毎年胃集検学会総会において特別講演として理事長より報告されている.今回はこれらの各年度の集計をまとめ,考察を加えた.

  • 文献概要を表示

はじめに

 わが国における胃集団検診の歴史はすでに10年以上を経過し,特にここ数年来の普遍化は著しいものがある.厚生行政の立場からも,胃癌対策の一環として,癌の集団検診が施行されるようになったが,この時点において,公衆衛生学的立場からの集団検診の有効性の評価が問題となった.

 疫学的立揚から集団検診の有効性を推論した報告はあったが,公衆衛生学的な観点から,胃の集団検診が胃癌死亡の危険を少なくするという直接の証明は得られていなかった.

 この点を明らかにするため,昭和41年度に癌研究助成金の研究班として「胃集団検診の公衆衛生学的評価に関する研究班」が組織され,9実施機関の協力の下に研究が開始された.この研究に協力された機関と,直接研究を実施した研究者を表1にかかげた.なお昭和43年度以降この研究は,癌研究会附属病院長黒川利雄先生を総括研究者とする「がんの集団検診方法の確立に関する研究」の一部として継続されている.

  • 文献概要を表示

はじめに

 胃疾患の発見率というものを考える時,その母集団と発見疾患数との比で示されるのが普通であるが,この数字には非常に不確実な要素を含んでいる.というのは,母集団の種類によって,また発見方法や技術の差によってその組合わせはいろいろであり,発見率もその意義づけも全く異なってしまうからである.

 たとえば,大学病院における胃疾患の発見率といえば,外来総受診数,胃X線検査受診者数などのいずれかを母集団とし,発見疾患数との比率であらわされる.ところが発見疾患数は,X線検査によるか内視鏡検査によるかで,また消化管診断の専門家によってなされたかどうかによってもその数値は異なってくる.今まではどちらかと言えば,後者の分子となるべき検査方法や検査技術が重要視されてきたが,統計という立場からみれば母集団のとり方がむしろ重要になる.

 筆者らが教室の胃疾患発見率をいうときには,ふつうX線検査受診者数を分母とし,その発見疾患数を分子としてあらわされるが,この成績は母集団があくまでも当教室をおとずれX線検査を施行した患者についてのみの発見率であるから,この数値を他機関の成績と比較してもさほど意味がないように思われる.特殊なえらばれた患者が母集団となっているからである.

 そこで,筆者らが何を一番の目安にするかと言えば,ふつう病院の剖検材料による母集団でありまた健康人の事故死による検死材料を母集団としたものである.

 前者は疾病死亡者における胃疾患統計となり,後者はほぼ健康人における胃疾患の統計となる.しかし,これも多数例の胃だけを精密に調べることはなかなか容易なことではない.そこでもう一つの方法が考えられる.これは胃集団検診による発見成績である.

 この方法によれば,多くの実益を伴っているため比較的筆者ら臨床家が実行しやすい方法である.

 さて,胃集検による発見成績まで話がしぼられてきたが,この成績を比較検討する元帳となるべきものがあれば,これは非常に便利である.この元帳が年齢別,性別,健康者の胃疾患統計である.もし,この確実な数値があるとすれば,その物指しをもってすべての発見成績をはかれば,いろいろの意義づけも,また成績のよしあしも,その他疾患内容の分析などの研究にも役立ちそうである.

 それらの数値を胃集検という方法を用いて何とか作り出すことができないだろうか.

  • 文献概要を表示

はじめに

 昭和37年以来,一般住民および職域に対して胃集団検診を行なってきたが,方式の確立されない過去においても,また流行化した現在においてもなお多くの問題があり,所期の目的を達するには道は遠い.逐年胃集団検診の目的は特定集団の同一人を毎年1回継続して検診し,1)新しく発生する胃癌を早期のうちに発見する.2)早期胃癌の経過が比較的長いものが多いことから,前年検診の見逃し胃癌のひろいあげがその主なものである.しかし,現状では逐年検診により100%に継続検診することは極めて困難で,殆んど不可能に近い.

 筆者らは昭和41年以来,医療施設に恵まれない2ヵ町をモデル地域に指定して,“町ぐるみ逐年胃集検”と銘うって,町当局との緊密なる提携のもとに続けてきた.しかし,5年経過した今日,当初の理想とはおよそかけ離れた結果に反省させられると同時に,今後の困難な問題に当惑している実状である.

 本集検は中国新聞社会福祉事業団の協力により集検車,材料の提供を受けて無料で行なったものである.

  • 文献概要を表示

はじめに

 胃の集団検診はその検診対象により,地域住民を対象とする地域集検と,職域団体を対象とする職域集検とに大別される.胃集検の第一目的が胃癌の早期発見であることに論を侯たないならば,地域集検においては特定の目的をもってモデル地域を設定する以外は,浅く,かつ広く集検対象を拡げていくべきである.また,住民の移動も激しく,受検意欲の不徹底,費用の問題なども関係し同一人に対して継続的に逐年検診を実施することはきわめて困難なことである.

 これに対し,職域検診は対象者が同一の職場に集団で長期に在住し,移動も少なく,受検者の管理,受検意欲の向上化も組織的,系統的,時には命令的にでも計ることができる.また,費用の問題にしても事業主が全額ないし大部分を負担するところが多い.このような関係から,職域検診においては逐年検診が比較的容易に可能であるし,また,胃集検の意義から考えても,当然職域集検においてこそ逐年検診が実施されるべきものと考えられる.逐年検診を行なうことにより,疾患の発生率を推測することができるし,またその動態を知ることもできる.さらにまた,胃集検の疫学的,公衆衛生学的評価もなし得るものであろう.筆者らは松下電器健康管理センターにおいて,職域の35歳以上の従業員を対象に,昭和37年以来継続して逐年検診を実施してきたので,これらの成績をもとに職域検診における逐年検診の意義について述べてみたい.

  • 文献概要を表示

はじめに

 筆者らは,胃集検では追跡検診が重要なことを述べてきた.その理由は,一つには追跡検診で発見する胃癌中に早期癌の割合が高い1)2)ことである.他の報告3)4)でもこの事実を認めるものが多い.他の一つの理由は,胃癌の発生および発育の過程を検討するための基礎データとするためである.以前から,一般外来で発見される早期胃癌の多くは比較的その後の進行がおそく,手術後の予後もよいが,中には小さな胃癌として発見されるにもかかわらず予後のわるいもののあることが認められていた5)

 最近井口6),7)は表層拡大発育型,深部浸潤発育型という2つの発育傾向によって,表在癌のみならず進行癌をも分類し,表在癌の時期にもっていた性格が進行した時期まで受けつがれることを示唆している.筆者は前の報告8)9)で,集検の場で発見される胃癌を初診群,追跡群に区分し,外来群とも対比した.早期癌の割合は追跡群で高く,早期癌中の分類不能型小胃癌,および表層拡大発育型はいずれも追跡群でより高率にみられた.

 今回は追跡集検を中心に,初回および追跡集検での胃癌の診断経過を検討し,発育のはやい胃癌とおそい胃癌を区分して比較した.なお,その前に胃潰瘍,胃ポリープなどの診断であったものが経過観察中に悪性化したのではないかと思われる症例について吟味した.

  • 文献概要を表示

はじめに

 日本では胃癌,胃潰瘍をはじめ,胃疾患罹病頻度が非常に高いことは,医療保健資料1),病院統計,死亡資料2)などの示すところであるが,これらは真の胃疾患罹病実態を示すとはいい難い.

 この点,胃集検資料はより正確に胃疾患の疫学的な罹病状態を把握していると考えてもよいが,それでも,その検診術式や対象集団の把え方(たとえば受診率,継続検診など)により,胃集検成績資料もある程度の偏よりが存在することを否定できない.

 最近,胃粘膜像と加齢との関係についても注目されてきている.これに関して,今井ら3)は日本人の胃粘膜像を白人のそれと比較し,加齢に伴なう胃粘膜の萎縮化割合が日本人に高率であると報じており,胃癌発生を考える上で重要な問題であることを指摘している.しかし,日本人の胃疾患罹病状況や胃粘膜像の実態を,性・年齢別にみた報告は多くない.

 以上のような実状をかんがみ,胃集検資料を臨床疫学的に再分析し,考察することは胃疾患の罹病実態の把握と今後の胃集検活動の展開にとり必要なことであると思う.とくに本論文では,性・年齢の要因と関係づけて,集検および病院診療資料を基礎に2,3の考察を試みてみたい.

  • 文献概要を表示

胃集検の全国各地への普及と,検診技術の目覚ましい進歩と共に,発見される早期胃癌症例の数も年々増加の傾向にあります.本症例は編集部にてこれら胃集検発見早期胃癌症例を広く一般公募し,選考の上掲載させていただいたものです.多数御応募下さいました各先生に厚く御礼申し上げます.

胃集団検診の未来,展望 二階堂 昇
  • 文献概要を表示

はじめに

 予言者的展望を述べねばならない立場に立たされたが,これは極めて困難なことである.

 筆者は,このテーマを手ぎわよく取り纒めることは,個人の力では到底不可能であると考えたので,国内の100名の方々にアンケートをお願いし「胃集検の発展をはばむ要素は何か?」を中心に諸家のご意見をお聞きし,その分析の上に立って,筆者なりに将来の展望を纒めようと考えた.

 また同時に,去る7月コペンハーゲンで行なわれた第4回世界消化機病学会でのシンポジウム「胃癌の早期診断」に参加させていただいた経験なども参考にし,胃集検の未来,展望の筆をすすめてゆく積りである.

胃集団検診の未来,展望 高橋 淳
  • 文献概要を表示

はじめに

 胃集検は好むと好まざるとに拘らず,筆者らの日々の診療行為の中に無視できない立場を築いてしまった.将来の展望を考える前に,この事実の必然性をよく見きわめる必要がある.なぜ胃集検が日本に芽生え,その根を下ろし始めたのかと.

 胃癌の死亡率が高いからとまず考えるのが常識であろう.しかし,胃癌の死亡率の高いのは日本だけであったはずがない.肺結核の対策に諸外国は伝染病としての割り切り方を厳しくした.したがって,日本のように集団検診をその対策の主力とした国は少ない.結核は伝染病だからその治療に専念するとともに,一方では伝染源である患者の隔離に徹底した.この伝染源の隔離は,早期発見,早期治療の必要性を認めさせない.したがって,集団検診という発想は余り出てこないことになる.しかし,日本では肺結核の集団検診が芽生え,そして普遍化し,さらに法制化されるまでになった.なぜであろうか?肺結核患者が当時余りにも多すぎて到底隔離の完全性なぞは望むべくもないと諦めたためであろうか?否,必ずしもそうではなかったように思われる.たしかに結核病棟を作り,隔離の方向に結核対策は向かっていたことも事実である.しかし,日本人である筆者らはこの隔離の徹底よりも,“肺結核も早期に発見すれば治るのだ”との道を選んだ.この道にはたしかに厳しさがない.しかし,それなりに集団検診の効果をあげてきたことは周知の事実である.これは肺結核の疫学的な流れだけが,日本という国に集団検診の根を下ろさせたのではない.この道を選んだのは,日本民族の特性というか,あるいは民族としての叡智がその根底にあったように思われる.

 日本人は団体を作って旅行することが好きである.この団体としての行動は日本人は上手なのかもしれない.個人として動くよりも,集団のリズムに乗って行動することに余り抵抗を感じない.この集団性も日本人の一つの特性かも知れない.団体旅行には案内人と称する指導者がいる.この指導する側の人たちの計画に従って旅行するのが団体旅行である.胃集検も健康を管理する立場の人がいることが前提である.「健康なり,疾病の予防なりの管理は結局は個人の責任において行なわれるべきである」という考え方がある.個々の人が,個々の責任においてその健康の管理なり,疾病の予防なりを行なうべきであるという考え方である.この個人としての立場を厳しくすることは決して間違ったことではない.しかし,この考え方に徹すると集団検診への道は遠くなる.「症状の無いのにわざわざ病院なんかに行けるか」という人たちを肯定しないと集団検診は成立しない.個人としての意識の厳しさのない人の立揚を肯定しないと集団検診は生まれてこない.個々の人たちが,自らの発想で,病院に来る検診の「和」は集団検診ではない.これは多人数検診であろう.だから健康管理とか,胃癌の対策とかは,その方法論として,個人検診と集団検診とに分かれるのは当然である.この2つの方法論をどのように組合わせるかを,胃癌対策の基本において明確にしておくことは大切なことである.そして日本人の特性を考えると,集団検診の立場に相当の比重を置かざるをえないということになる.このような考え方から胃集検の未来と展望を考察してみた.

巻頭言

  • 文献概要を表示

 わが国で胃の集団検診が実施されるようになってから,すでに数10年が経過したと思う.その間,実施方法に幾多の変遷があり,その対象範囲も年々拡大され,現在にみるがごとく,まがりなりにも全国的な規模において行なわれるようになった.しかし,胃集団検診の辿った道を振り返り,現況を再検討してみると今なお幾多の問題点が残されていることも事実である.これらの問題点にいかに対処し,いかに解決するかが筆者らの課題であり,そこに筆者らの任務と責任があると思う.

 明治以来国民病として猛威をほしいままにした結核が昭和38年代に急速に終熔に向ったのも,ストレプトマイシン,パスなどの特効薬の開発もさることながら早期発見,早期治療のスローガンのもとに医療に携わる者と行政をあずかる者が大同団結して国をあげて実施した結核の検診が,その原動力となったことは何人も等しく認めるところである.

  • 文献概要を表示

胃集団検診は国民全部の権利である一方その正確で効率的な実施方法にはまだまだ克服しなければならない多くの現場的な体制的な悩みがまつわっている.

  • 文献概要を表示

第1部の「方法論」を受けて,在来の胃集団検診の「成績」といわれたものを再吟味し,将来いかにしてより良い成績に結びつけて行くべきかの「展望」を試みた.

  • 文献概要を表示

 腹腔内諸疾患の診断に,側面より重要な意義をもつものが腹水の原因疾患の決定である,腹水を発生せしめる良性疾患としての,結核性腹膜炎,化膿性腹膜炎,腎疾患,心疾患,肝硬変症などと癌性腹膜炎との鑑別に細胞診が重要な役割を果している.

  • 文献概要を表示

 下部食道から噴門にかけて,いわゆる食道胃境界部と呼ばれる場所はこれまで主にX線学的な面から検討されてきた.

 内視鏡検査についていえば,食道直達鏡,硬性胃鏡の時代に食道側からこの附近を時間をかけて十分みることは観察体位のうえからも困難であった.また,個人差もあって同部位がまったく観察できないものもあった.胃側からの観察でも,噴門部は軟性胃鏡でも盲点とするのが一般的であった.

  • 文献概要を表示

 患者の十分な協力が得られない状態で強引な内視鏡の挿入を試みれば今日の進歩した胃ファイバースコープ,胃カメラでも食物入口部,下部食道の粘膜損傷,稀には穿孔をおこしうることはよく知られている.

 アングルのついた胃内視鏡ではスコープ先端を咽頭後壁にぶちあててこの部の粘膜を傷つけることは非常に稀となったように思う.しかし,食道入口部ではどうであろうか.以前,各種の胃内視鏡の検査は,入口部を詳細に調べてみたいと思って多少仕事を進めたことがあるが,幸いそれほど挿入技術がまずい人がないせいもあってデーターとしてまとまらないまま放っている.最近の内視鏡では極めて稀とはいえ,時に食道入口部損傷の話もでてくる.常に注意して挿入することが必要なのは,直達鏡でみながら通過させるのと違って抵抗感に頼る以上当然のことであろう.挿入にてこずった場合には粘膜の裂創ぐらいできているのではないかと考えて処置をしておくぐらいの用心深さがほしい.

  • 文献概要を表示

 第10回日本胃集団検診学会(会長崎田隆夫博士)が昭和46年3月31日東京で開かれ,春の学会の幕があいた.

 特別講演「集団検診の10年の反省と将来」では有賀椀三理事長が「集団の医学」という新しい考え方を導入し,さらに過去10有余年にわたる胃集検の発展を披露すると共に,胃集検の実施上の諸問題(診断能の向上,検診方法の標準化,検診体制の充実など)を提示した.これらの問題点は今後解決される方向に進むと思うが,消化器診断,胃集検関係に携わる者の努力だけでなく,行政的な面,さらに機械的な面からの協力が大いに必要であろう.

  • 文献概要を表示

Blauらが75Se-メチオニンを生合成し,膵臓のスキャンニングを報告して注目をあびたのは1916年のことであるが,このR.I.検査法はその後さかんに臨床応用の研究がされ,慢性膵疾患,なかでも膵癌の診断の有力な武器となりつつある.わが国では千葉大学放射線科筧教授らが1962年にこの検査の臨床応用を始められたが,最近ではこれを実施できる病院も少なくない.

 膵スキャンニングの方法については省略するが,スキャンナーは初期のころの3吋スキャンナ一からフォトスキャン,シンチカメラと急速に改善され,その診断精度も初期よりもさらに向上していると思われる.

--------------------

欧文目次

編集後記 崎田 隆夫
  • 文献概要を表示

 本号は現段階における胃集検の一大集成号であるといえる.昭和45年秋の胃集検学会長春日井博士の巻頭言に始まり,この領域における元老,先達ともいえる黒川博士ほか9博士の御随想につづいて,胃集検の方法,成績と将来の展望に分けられ,それぞれ座談会をまじえて第一線の代表的研究者の報告がまさにくりひろげられているという内容で,読者諸兄姉は昔より現在まで,そして現在の胃集検の実態をほぼ把握されることと思う,

 方法論としては,間接X線,テレビおよび内視鏡によるスクリーニングについて,それぞれ市川,村上,藤田の諸博士により,集検における精検については北川博士により,地域,職域および外来の集検の特殊性についてはそれぞれ北,中馬,淵上の諸博士によりあまねくすぐれた報告がよせられた.

基本情報

05362180.6.6.jpg
胃と腸
6巻6号 (1971年5月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

文献閲覧数ランキング(
11月12日~11月18日
)