胃と腸 53巻7号 (2018年6月)

今月の主題 知っておきたい直腸肛門部病変

序説

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 「胃と腸」誌で直腸肛門部病変が取り上げられるのは本号で5度目である.本稿では,この分野の現状および最近の変化について述べたい.

 本誌第22巻3号(1987年)の序説で,武藤徹一郎先生が“胃腸疾患には精通していても直腸肛門部病変には不得手な消化器専門医が少なくない”と指摘された.それから23年経った2010年7月,早期胃癌研究会の開始直前に,筆者が本誌45巻8号のレビューを行った.その際に会場の聴衆の先生方に“痔のようなので診てほしいという患者が来院したら,どうしていますか”という質問をした.選択肢を2つ提示し,“①消化器内科の医師が肛門鏡を使って診察して痔の診断をする”,“②消化器内科の医師は肛門診察せずに外科へ回す”のどちらかに挙手をお願いしたところ,②が圧倒的多数であった.筆者は愕然として,これでは直腸肛門部病変の特集をしても読んでもらえるわけがないと思った.われわれは,日々診療している患者や疾患だからこそ,興味を持つ.目の前の患者を治療するために,文献を紐解いて(最近ではインターネットで検索して)勉強する.肛門の診察をしない医師が,肛門部病変に興味を持つことはないし,学ぶ必要性を感じたりしない.それにしても糖尿病や腎臓病専門の医師ではなく,消化管領域のプロ集団である早期胃癌研究会参加者に行ったアンケートでこの結果は残念であった.

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要旨●肛門は消化管の最終部であり,消化管診療にかかわる医師は外科,内科にかかわらず,最低限の知識を持っておく必要がある.肛門診療にかかわることが少ない消化器内科医が,日常診療で知っておくべき直腸肛門部の解剖,直腸肛門の診察法,代表的な肛門疾患と簡単な治療法をまとめた.

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要旨●肛門周囲・直腸肛門部には,日常診療でよく経験するいわゆる肛門疾患以外に,種々の悪性腫瘍,口側からの脱出性病変,非上皮性腫瘍,炎症性腸疾患の肛門病変,sexually transmitted diseaseを含めた感染性疾患,薬剤起因性疾患など極めて多彩な疾患がみられる.これらの多彩な疾患の中で増加する悪性腫瘍を見逃さないことは直腸肛門部疾患診療において極めて重要である.本稿では多彩な疾患の中で直腸肛門部において“目で見ることができる病変”,“怒責状態で見ることができる病変”,“内視鏡で視ることができる病変”に注目し自験例を供覧,その鑑別診断・治療について報告する.そしてこれらの症例を通じて“肛門を見る・視る,そして診ること”の重要性を強調したい.

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要旨●炎症性腸疾患(IBD)に合併する直腸肛門病変はその特徴的形態から疾患の診断に有用である.またQOLに大きな影響を及ぼすことも多く,その診断治療は,IBDを扱ううえで重要である.Crohn病(CD)に伴う肛門病変の治療は,一次病変はCD病変そのもののため内科治療を,二次病変は外科治療(切開,seton法など)の後,内科治療の強化を行う.潰瘍性大腸炎(UC)に合併する肛門病変では通常の肛門治療を行う.近年CD肛門病変の癌化例が増加しているが,予後が極めて悪いものの,有効なサーベイランス法が確立されていない.肛門部は容易に観察できる消化管で,診察法に慣れれば内科医でも簡単に診察できる.まず,肛門を見ることに慣れ,症状,形態の変化に早めに気づくことが重要である.

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要旨●痔瘻癌は難治性痔瘻を母地として生じるまれな癌である.今回,筆者らは痔瘻癌80例を解析し,その病理学的特徴を明らかにした.肉眼型は筆者らが提唱した,①管外型,②突出型,③潰瘍型の3型に分類した.それぞれほぼ同数で,潰瘍型は進行例や低分化な組織型が多い傾向があった.組織型は,これまでの報告同様,粘液癌が大半を占めた.免疫染色の結果では,CK7が大腸癌より陽性率が高く,ムチン抗体は大腸の粘液癌と類似した所見だった.p53の陽性例と陰性例では異なる特徴がみられた.Crohn病に合併した痔瘻癌は,臨床病理学的に特徴があることが報告されている.今後も症例の蓄積を通してさらなる解析が必要である.

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要旨●教科書にCrohn病の肛門病変の病理組織学的特徴の記載はあるが,病理組織像を提示した解説はみられないため,その特徴は十分理解されていない.腹痛など腸管病変としての症状が出現する前の,より早期の段階でCrohn病と診断することは患者の良好な予後に寄与すると考えられる.Crohn病の肛門病変においても病理組織学的特徴は基本的には腸管と同様であるが,膿瘍などの二次的変化の影響を加味して組織像を評価することが鑑別において重要である.

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疾患の概念

 肛門管とは解剖学的には恥骨直腸筋付着部上縁より肛門縁までの管状部のことを言い,ここにできた癌を肛門管癌と言う.肛門管癌は比較的まれな疾患であり,大腸癌全体の1%前後とされている1)2)

 病理組織学的には,腺癌,扁平上皮癌,腺扁平上皮癌,類基底細胞癌,その他の順に多く,腺癌を除くと扁平上皮癌の割合が約80%となる3)

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疾患の概念

 肛門管類基底細胞癌は,本邦では肛門管悪性腫瘍の組織型の一つに分類され,欧米では扁平上皮癌の亜型として分類される.肛門の移行帯上皮から発生し,基底細胞に類似した比較的小型の細胞が特徴的な配列を示しながら粘膜下主体に増殖する傾向を有する.肛門管悪性腫瘍の中で1.6%とまれであり1),中高年の女性に多い(平均64.8歳)2).病因としてoncogenic typeのHPV(human papilloma virus)16型,18型の関与が指摘されている.臨床症状は腫瘤・出血・疼痛を主訴とすることが多く,診断は肛門鏡や内視鏡所見による肉眼所見と生検による病理組織診断で行う.治療は扁平上皮癌に準じて行われ,放射線化学療法が選択されることが多い2)

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疾患の概念

 直腸癌のpagetoid spreadとは,直腸肛門部の悪性腫瘍が肛門周囲の皮膚表皮内へ浸潤しPaget病様の像を示すことを指す.Paget病は1874年にPaget1)により報告された乳輪周囲にみられる腺癌の表皮内進展した病態で,その後,肛門のPaget病が報告され2),以後,乳房外Paget病と称されるようになった.

 Paget病がアポクリン汗腺由来あるいは表皮内のmultipotential germ cell由来の癌と考えられているのに対し,pagetoid spreadは肛門管腺癌もしくは直腸癌が下方の肛門外側皮膚へ進展したものである3)

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疾患の概念

 痔瘻癌は痔瘻が慢性化し,癌化した比較的まれな癌であり,いまだ臨床的に不明な点もある1).本邦の大腸癌研究会のアンケート調査2)では,肛門部悪性腫瘍1,540例のうち痔瘻癌は6.9%であったと報告されている.痔瘻癌の発生起源は痔瘻そのものおよび肛門腺に加えて,先天性奇形の重複腸管の説がある3).しかし,痔瘻癌は進行した状態で発見されることが多く,また既往手術のため発生母地が破壊されていることも多く,組織学的に痔瘻から発生したことを証明することは困難である3)4).そのため,診断基準として臨床経過を重視した隅越ら5)の5項目が用いられる.

 ①痔瘻が長期(10年以上)にわたって慢性炎症を繰り返している,②痔瘻の部分に疼痛,硬結がある,③ゼリー(ムチン)様の分泌がある,④原発性の癌を直腸肛門部以外に認めない,⑤痔瘻開口部が肛門管または肛門陰窩にある,である.しかし,この基準を何項目以上満たした場合に痔瘻癌と診断するかについては確定した定義はない4)

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疾患の概念

 悪性黒色腫(malignant melanoma)は,神経堤起源細胞でメラニン産生細胞であるメラノサイトに由来する悪性腫瘍であり,本邦における悪性黒色腫の罹病率は1.12人/10万人とされている1).消化管の悪性黒色腫は非常にまれであり,大部分は皮膚を原発としたものの転移である.消化管原発の悪性黒色腫の主な部位は,食道と直腸肛門部であり2),肛門部の悪性黒色腫は,全悪性黒色腫の0.2%,直腸肛門部の悪性腫瘍の0.5%と極めて少ない3).好発年齢は50〜70歳代で,女性に約2倍多いとされる4)

 症状は肛門出血が最も多く,肛門部腫瘤,肛門痛,便通異常などを訴える5).悪性度が極めて高く,早期からリンパ行性はもとより血行性に肺・脳・骨・肝などに転移を来す.

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疾患の概念

 直腸肛門部に発生する悪性黒色腫は,直腸肛門移行部の上皮基底層に存在するメラノサイト由来と考えられている1).消化管原発の悪性黒色腫はまれであるが,直腸肛門部は食道と並び好発部位とされ,本邦における頻度は全悪性黒色腫の4.6%2),直腸肛門部悪性腫瘍の0.38%3)と報告されている.直腸肛門部悪性黒色腫の平均生存期間は8〜25か月,5年生存率は4.6〜15%と報告されており,予後不良な疾患である4).色調はメラニン色素を反映した黒色調を呈するものが多いが,肉眼的に黒色調を呈さない低色素性あるいは無色素性のamelanotic病変が6.6〜26.4%と報告されており2)3)5),診断が困難な場合がある.

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疾患の概念

 大腸リンパ腫は大腸悪性腫瘍の0.1〜0.7%,消化管原発リンパ腫の3〜10%を占め,直腸リンパ腫は大腸リンパ腫の10〜35%を占める1)2).組織型ではMALT(mucosa-associated lymphoid tissue)リンパ腫が最も多く,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma;DLBCL),T細胞リンパ腫,濾胞性リンパ腫も頻度が高い1)2).頻度は低いが,Burkittリンパ腫やマントル細胞リンパ腫なども直腸病変を来すことがある.各組織型の特徴をTable 1に示す.

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疾患の概念

 直腸の良性リンパ濾胞性ポリープ(benign lymphoid polyp;BLP)は,粘膜下層の正常リンパ濾胞の限局性過形成に伴う,粘膜下腫瘍様隆起とされる.リンパ濾胞が過形成を来す原因は,何らかの慢性刺激による反応性の変化とする説が有力である1).組織学的には,粘膜から粘膜下層の胚中心を有するリンパ濾胞から成り,粘膜上皮は萎縮し固有腺管の消失やびらんを認める.

 本邦では,rectal tonsil,benign lymphoma,pseudolymphomaなどとも呼ばれる.BLPは,欧米では数多く報告されているが,本邦での報告は比較的少ない.中高年の女性に多く,血便を契機に発見されることが多いが,無症状の場合も少なくない2)3)

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疾患の概念

 消化管の平滑筋腫は筋原性の良性腫瘍であり,以前は消化管筋層から発生する腫瘍のほとんどは平滑筋腫と考えられていたが,病理診断に電子顕微鏡が導入されるようになり筋層由来の腫瘍の多くが平滑筋細胞としての特徴像を有しないことが明らかとなった.その後,消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor;GIST)という概念とc-kit染色診断の確立により,従来の平滑筋腫の多くはGISTであることが判明した1).今日では真の平滑筋腫は広義の消化管間葉系腫瘍の10〜15%を占めるとされている2).消化管では食道に好発し,大腸はまれであり,発生部位としては直腸〜S状結腸に多い3)

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疾患の概念

 肛門部囊胞は肛門部に発生する囊胞性疾患であり,肛門部手術における頻度は0.06%1),肛門科専門外来で遭遇する頻度は0.02%とされるまれな疾患である2).肛門部に発生する囊胞性疾患のうち,粘液の貯留した囊胞内腔に肛門腺組織が認められるものが,肛門腺由来の病変で肛門腺囊胞(anal gland cyst;AGC)と考えられている.AGCは極めて緩徐に発育する弾性軟・無痛性の貯留性囊胞で,単発・単房性の病変が多い3)

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疾患の概念

 消化管に発生する,主に紡錘形細胞から成る間葉系腫瘍GIMT(gastrointestinal mesenchymal tumor)は,平滑筋性腫瘍,神経性腫瘍,およびGIST(gastrointestinal stromal tumor)にほぼ分類される.GISTは消化管のペースメーカー細胞であるCajal介在細胞(interstitial cells of Cajal;ICC)より発生すると考えられている1).GISTの確定診断には,免疫染色を含めた病理組織学的評価が必要である.免疫染色では,c-kitのGISTでの陽性率は80〜95%,CD34は食道,大腸GISTでの陽性率が95%と報告されている.最近DOG1(discovered on GIST)が免疫染色においてGIST診断に有用であり,感度,特異度がc-kitを上回っているとの報告もある2)

 消化管GISTの発生部位は,胃60〜70%,小腸25〜35%,結腸ならびに直腸(ほとんどは直腸)は5%程度と海外から報告されており3),直腸GISTは消化管GISTの中でもまれである.最近の本邦からの報告でも,直腸GISTの全消化管GISTに対する割合は3.6%であり,海外と同様の発生頻度であった4)

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疾患の概念

 ICP(inflammatory cloacogenic polyp)は肛門管移行帯上皮から発生する非腫瘍性ポリープであり,1981年にLobertとAppelman1)が最初に報告した.病理組織学的には,粘膜筋板から粘膜固有層に進展する線維筋組織の増生と炎症細胞浸潤やうっ血浮腫を伴う過形成粘膜が特徴であり,移行帯上皮からの発生を示す重層扁平上皮や移行上皮を認めることが本症の診断根拠とされる(Fig.1).

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疾患の概念

 直腸の粘膜脱症候群(mucosal prolapse syndrome;MPS)は,従来の直腸孤立性潰瘍症候群,inflammatory cloacogenic polyp,限局性深在性囊胞性大腸炎(colitis cystica profunda of the rectum;CCP),hamartomatous inverted polypなどと呼ばれた疾患が臨床病理学的に共通した特徴を有することから,これらを包括して1983年にduBoulayら1)により提唱された疾患概念である.

 臨床症状としては,血便や残便感,しぶり腹があり,ほとんどの症例で排便時間が長く,排便時にいきむ習慣を持つ.比較的若年者に多く,下部直腸から中部直腸,特に前壁側を中心に好発する.直腸肛門部の機能異常に起因するとされており,その病態は排便時に弛緩すべき恥骨直腸筋が強く収縮した状態が長時間続くと直腸前壁の粘膜が下方に脱出し,慢性的な機械刺激が加わることや肛門括約筋による絞扼によって虚血性変化を起こす病変と考えられている2)3).病理組織学的所見では,粘膜表層の毛細血管の増生・拡張と粘膜の線維筋症(fibromuscular obliteration)および幼若上皮から成る腺管の過形成が特徴的である4).原則として保存的加療が中心となり,排便習慣の改善が最も効果的であり,必要に応じて食事療法や緩下剤などの薬物療法で対症的治療を行う.過大手術は避けるべきであるが,外科治療が有用であった報告もある5)

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疾患の概念

 1985年にWilliamsら1)によって初めて報告されたまれな大腸の慢性炎症性疾患である.主に直腸〜S状結腸に,頂部に白苔を有する多発隆起性病変がみられ,下痢や血便,腹痛を生じ,時に蛋白漏出による低蛋白血症から浮腫や腹水を呈する場合がある.

 幅広い年齢層で発症し,約1:3で女性に多い2).いきみ習慣の改善,メトロニダゾール,ステロイド薬,インフリキシマブ,H. pylori(Helicobacter pylori)除菌療法,手術が奏効したとする報告があるが,確立された治療法はない3)

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疾患の概念

 梅毒は,近年本邦における報告者数が急激に増加している性感染症で,Treponema pallidumが,性行為によって生殖器,口腔粘膜,肛門部などから感染することで発症する.臨床所見としては,陰部の初期硬結や硬性下疳,全身の皮疹などの症状を契機に診断されることが多いが,肛門性交により直腸炎を呈する男性同性愛者の症例もまれながら報告されている1)

 梅毒の臨床経過としては,第1期梅毒(感染部位の初期硬結,硬性下疳を認めるもの),第2期梅毒(全身の皮膚,粘膜の発疹や臓器梅毒の症状がみられるもの),潜伏梅毒,晩期梅毒の順に進行することが知られている2)3)(Fig.1).梅毒が直腸炎を来す機序としては,肛門性交による第1期梅毒として潰瘍を呈する場合と,第2期梅毒の粘膜病変の一部として出現する場合があるが1)4)5),第1期梅毒と第2期梅毒の症状が同時にみられることもあり,区別が難しい症例も多い.

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疾患の概念

 広岡ら1)は,急性出血性直腸潰瘍(acute hemorrhagic rectal ulcer;AHRU)の疾患概念を“重篤な基礎疾患(特に脳血管障害)を有する高齢者に,突然無痛性の大量新鮮出血にて発症し,歯状線に接するかその近傍下部直腸に不整形地図状ないし帯状で多発もしくは単発性の横軸に長い潰瘍で,止血がなされれば比較的良好に治癒軽快する”と初めて報告した.また,その成因は脳血管障害のみではなく,重篤な基礎疾患に起因するストレス潰瘍説が最も考えられるとした.

 次いで,中村らはAHRUの病因として仰臥位寝たきり状態が重要と考えた.そこで,AHRU患者において血流を測定し,AHRUの好発部位である下部直腸においてのみ,側臥位から仰臥位への体位変換により有意な粘膜血流の減少を認めた.以上より,中村ら2)は,AHRUの疾患概念を“動脈硬化の要因を背景に血流低下の準備状態にある高齢者が,何らかの理由で寝たきり状態になり,下部直腸の粘膜血流低下を来し惹起される虚血性粘膜障害である”と提唱した.

宿便性潰瘍 長坂 光夫 , 大宮 直木
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疾患の概念,形態的特徴

 宿便性潰瘍は大腸内に停滞した糞便塊の圧迫による血流障害により生じる褥瘡潰瘍で,1894年にBerry1)によって報告された.直腸〜S状結腸に好発し,潰瘍の形態は単発あるいは多発の不整形地図状潰瘍で,周辺粘膜との境界は比較的明瞭で潰瘍周囲の隆起や炎症を認めないのが特徴である(Fig.1a)2).近傍に糞便塊が存在することが多い.発症の背景には心不全などの循環不全,慢性腎不全,脳卒中,大腿骨頸部骨折など,高齢の長期臥床者に好発する.便秘の症状が先行し,無痛性の大量出血を来す.

早期胃癌研究会

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 2017年12月の早期胃癌研究会は2017年12月20日(水)に笹川記念会館2F国際会議場で開催された.司会は永田(広島市立安佐市民病院内視鏡内科)と小澤(総合犬山中央病院消化器内科),病理は味岡(新潟大学大学院医歯学総合研究科分子・診断病理学)が担当した.「早期胃癌研究会方式による画像プレゼンテーションの基本と応用」は,松本(岩手医科大学医学部内科学講座消化器内科消化管分野)が「画像診断プレゼンテーションの基本手順(基礎編):小腸・大腸(主に非腫瘍性疾患)」と題して行った.

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要旨●患者は70歳代,女性.20年前から肺サルコイドーシスと診断され,呼吸器内科で経過観察中,胃X線検診にて異常を認め来院した.胃X線検査にて胃体中部後壁に10mm大の透亮像と胃穹窿部大彎にひだ集中を伴う陥凹性病変を認めた.内視鏡検査にて胃体中部後壁に粘膜下腫瘍様隆起,胃穹窿部大彎にひだ集中を伴う白色陥凹を認めた.NBI拡大像では陥凹内に血管のごく軽度な走行異常を認めるも境界不明瞭であった.EUSでは第2〜3層に均一な低エコー域を認めた.生検にて非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認めた.PAB抗体陽性でありアクネ菌との関連が示唆された.大腸内視鏡検査,胸部CTにて異常を認めず,サルコイドーシスの胃病変と考えられた.

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目次

欧文目次

「今月の症例」症例募集

早期胃癌研究会 症例募集

学会・研究会ご案内

次号予告

編集後記 八尾 隆史
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 「胃と腸」誌で直腸肛門部病変が取り上げられるのは本号で5回目であるが,序説で松田が述べているように肛門病変の診療は消化器内科医にとってはまだまだ十分には行われていないようである.前回の45巻8号(2010年)の特集では,直腸肛門部の解剖から診察法,検査法,病変の鑑別診断と臨床病理学的特徴について詳細に解説されているが,今回の特集では内容的な重複はあるものの新しい知見も加え,直腸肛門部病変の診療への興味が湧くような一冊にすることを目指して編集した.

 まずは,よりわかりやすく馴染みやすい解剖と実践的な診察法について別府らに執筆していただいた.腫瘍性病変については稲次らに執筆していただき,特に目で見える肛門腫瘍性病変に対して印象的かつ興味ある肉眼画像が多く提示されている.炎症性疾患に関しては太田らに執筆していただき,特にCrohn病における肛門病変の多くの肉眼像が提示され,鑑別診断のポイントや治療法について詳細に解説していただいた.これらはすべて実臨床に直結した内容が盛り込まれ,明日からの診療にすぐ実用可能と思われる.

基本情報

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胃と腸
53巻7号 (2018年6月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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