Japanese
English
今月の主題 知っておきたい直腸肛門部病変
症例アトラス
非腫瘍性疾患
粘膜脱症候群
Mucosal Prolapse Syndrome
八坂 達尚
1
,
久部 高司
1
,
石原 裕士
1
,
山崎 一朋
1
,
寺澤 正明
1
,
山岡 梨乃
1
,
植木 敏晴
1
,
平井 郁仁
2
,
松井 敏幸
3
,
八尾 建史
4
,
原岡 誠司
5
,
岩下 明德
5
Tatsuhisa Yasaka
1
1福岡大学筑紫病院消化器内科
2福岡大学筑紫病院炎症性腸疾患センター
3福岡大学筑紫病院臨床医学研究センター
4福岡大学筑紫病院内視鏡部
5福岡大学筑紫病院病理部
キーワード:
粘膜脱症候群
,
CCP
,
直腸
Keyword:
粘膜脱症候群
,
CCP
,
直腸
pp.1020-1021
発行日 2018年6月25日
Published Date 2018/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403201424
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疾患の概念
直腸の粘膜脱症候群(mucosal prolapse syndrome;MPS)は,従来の直腸孤立性潰瘍症候群,inflammatory cloacogenic polyp,限局性深在性囊胞性大腸炎(colitis cystica profunda of the rectum;CCP),hamartomatous inverted polypなどと呼ばれた疾患が臨床病理学的に共通した特徴を有することから,これらを包括して1983年にduBoulayら1)により提唱された疾患概念である.
臨床症状としては,血便や残便感,しぶり腹があり,ほとんどの症例で排便時間が長く,排便時にいきむ習慣を持つ.比較的若年者に多く,下部直腸から中部直腸,特に前壁側を中心に好発する.直腸肛門部の機能異常に起因するとされており,その病態は排便時に弛緩すべき恥骨直腸筋が強く収縮した状態が長時間続くと直腸前壁の粘膜が下方に脱出し,慢性的な機械刺激が加わることや肛門括約筋による絞扼によって虚血性変化を起こす病変と考えられている2)3).病理組織学的所見では,粘膜表層の毛細血管の増生・拡張と粘膜の線維筋症(fibromuscular obliteration)および幼若上皮から成る腺管の過形成が特徴的である4).原則として保存的加療が中心となり,排便習慣の改善が最も効果的であり,必要に応じて食事療法や緩下剤などの薬物療法で対症的治療を行う.過大手術は避けるべきであるが,外科治療が有用であった報告もある5).
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