臨床検査 56巻8号 (2012年8月)

今月の主題 多剤耐性菌の検査と臨床

巻頭言

耐性菌と抗菌薬 岩田 敏
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 2000年4月27日の読売新聞朝刊によれば,各界の著名人に対するアンケート調査の結果,20世紀に人類を幸せにしたものベスト10の第1位はペニシリンをはじめとする抗菌薬で,102票中73票を獲得している.ちなみに第2位はテレビジョン,第3位は飛行機で,以下コンピュータ,電話,洗濯機,冷蔵庫,映画,自動車,ラジオと続いている.個人的には自動車などはもう少し上位にランクされても良いような気もするが,自動車により交通事故が著明に増加したことによるためなのか,意外と評価が低かったようである.もちろん最近話題の原子力は圏外であった.抗菌薬の出現により感染症を積極的に治療することが可能となり,人間の寿命は,それが本当に幸せであるかどうかは別として,大きく延びることにつながったことは事実である.そのような意味で,抗菌薬が20世紀に人類を幸せにしたもののベスト1として評価されたのだと思われる.

 一方で,抗菌薬の進歩は微生物の側にも変化をもたらすことになった.抗菌薬開発の歴史は耐性菌の出現との競争の歴史と言われているが,1940年代半ばにペニシリンが工業的に大量生産され始めた頃には,すでにペニシリンの分解酵素(ペニシリナーゼ)をもつ大腸菌や黄色ブドウ球菌が出現していたこと,このペニシリン耐性菌に対抗するために1960年代にメチシリンをはじめとするペニシリナーゼに安定なペニシリンが開発,使用されるようになったが,すぐにメチシリン耐性黄色ブドウ球菌が出現したことなどからも明らかなように,抗菌薬が新たに開発され使用されると同時に細菌は耐性化し,それらの耐性菌による感染症は,常に感染症・抗菌化学療法の分野で注目され続けているのである.

総論

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これまでのESBL産生肺炎桿菌や大腸菌,MBL単独産生Gram陰性桿菌,多剤耐性緑膿菌などに加え,最近では,新たにNDM-1産生肺炎桿菌,多剤耐性Acinetobacter,OXA-48やKPC-型カルバペネマーゼを産生する肺炎桿菌,第三世代セファロスポリンとフルオロキノロンに同時に耐性を獲得した大腸菌などの多種多様な多剤耐性Gram陰性桿菌が出現し,世界各地に拡散しつつある.これらの多剤耐性菌による感染症に対しては,有効性が期待できる抗菌薬が極めて限られており,また,新しい抗菌薬の開発も滞っているため,それらの早期検出と有効な対策の実施によりさらなる伝播を阻止することが急務となっている.

多剤耐性菌の検出方法 石井 良和
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌,ペニシリン耐性肺炎球菌,バンコマイシン耐性腸球菌,多剤耐性緑膿菌,多剤耐性Acinetobacter属菌,オキシイミノセファロスポリン薬耐性腸内細菌科菌をはじめとする多剤耐性菌による感染症は臨床において深刻な問題となっている.その理由として,それらの感染症に対して,使用することのできる有効な抗菌薬が限られていることが挙げられる.多剤耐性菌の検出は,その病院内への拡散制御に対して重要である.薬剤感受性検査成績のブレイクポイントや解釈基準は毎年,米国臨床検査標準委員会(CLSI)により改正がなされている.そのような背景から,微生物検査室の臨床検査技師にとって,臨床材料から耐性菌を検出することは最も重要であり,かつ困難な検査の一つである.本稿では,CLSIのドキュメント(M100-S22)を用いた多剤耐性菌の検出法に関して解説する.

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薬剤耐性菌による感染症は治療に難渋する場合が多く,患者の予後を不良とし,入院期間の延長や医療費の増加を招く.また医療職員の手や汚染された器具,環境などを介して感染が伝播拡大し,時にアウトブレイクを引き起こすこともある.耐性菌を“作らない”ためにはantibiotic heterogeneity(抗菌薬の使い分け)によるantibiotic pressure control(抗菌薬選択圧のコントロール)が重要であり,また“拡げない”ためには,耐性菌検出時の日常的な対応ならびにアウトブレイクの早期発見のためのシステム化など多岐にわたる対策が必要である.本稿では,筆者らが実施している耐性菌対策の実際を述べた.

各論

MRSA 花木 秀明
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MRSAの環境適応能力は高い.当然,抗MRSA薬存在下の劣悪な環境にも適応してくる.これが耐性として表現されるが,耐性化が起きやすい環境をコントロールして耐性化を起こしにくくすることは可能である.同一の抗菌薬を2週間以上継続すると耐性化が起こりやすくなる.長期治療が必要な場合は,2週間サイクルで別系統(作用機序が異なる)の抗菌薬を用いるなどの知恵が必要である.さらに,長期低用量の治療は耐性化を助長するので,耐性化の防止として短期間高用量での治療などの知恵も必要となる.今後のMRSAに対応するには知恵が最も有効な武器となる.

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1990年代以降,医療関連感染症の起因菌としてバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の急増が世界的な問題となっている.VRE感染症は医療コスト増大,入院期間の長期化と相関している.VRE感染対策において最も重要なことは無症状の保菌者をもれなく発見し,接触感染予防策をとることである.臨床検査や感染対策にかかわるスタッフは各施設の中心となって保菌者を効率よく発見する体制を準備しておくこと,保菌者発見時の対応を定めておくことが重要である.

ペニシリン耐性肺炎球菌 佐藤 吉壮
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肺炎球菌は健常人においては上気道の常在菌であるが,小児においては中耳炎,副鼻腔炎を含む呼吸器感染症の主たる原因菌の1つである.また特に乳児以降の年齢においては,敗血症および化膿性髄膜炎の主要原因菌でもある.本邦においては,1990年代以降急速にペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)が増加しており,侵襲性感染症の難治化が問題となっている.現在,化膿性髄膜炎以外ではPRSPは大きな問題となってはいないが,今後不適切な抗菌薬の使用,濫用が高度耐性化につながることは間違いないところである.また,耐性菌に有効な抗菌薬の開発も待たれるが,現状ではさらなる耐性化を阻止することのほうが重要と考えられる.

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インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)は小児の髄膜炎や急性喉頭蓋炎などの侵襲性感染症のほか,小児から成人までの幅広い年齢層に気道感染症を惹起する.近年,β-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌(BLNAR)を中心とした薬剤耐性菌が増加するとともに,バイオフィルム産生や気道細胞内に侵入することにより抗菌薬の影響を逃れるといった特性も明らかとなり,治療に抵抗し難治化する症例も報告されている.これらの症例に対しては,抗菌力のすぐれた抗菌薬の十分量の投与とともに,ワクチンによる積極的な予防も必要である.

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マイコプラズマ肺炎は静菌的薬剤が使われていた1990年以前には4年周期の大流行がみられたが,1991年に殺菌的薬剤であるクラリスロマイシンが市場に導入されて以後,周期性は消失した.その後2000年,唐突に薬剤耐性菌が出現したが,この疫学的事実は,2000年に何らかの耐性化要因が発生したことを示唆している.この点について,2000年にはアジスロマイシンが市場に導入されていたことが注目される.2011年には日本でマイコプラズマ肺炎の大流行がみられたが,耐性菌のほとんどない北ヨーロッパ諸国においても同様の“歴史的大流行”がみられており,この事実は,2011年の日本の流行が耐性化とは関係ないことを示唆している.

多剤耐性緑膿菌 松本 哲哉
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本来耐性度が高い緑膿菌がさらに広範囲に高度な耐性を獲得したのがMDRPであり,現在,臨床で分離される緑膿菌の1~数%を占めている.MDRPは免疫不全患者において肺炎や尿路感染症,菌血症,敗血症などを起こし,各種検体から緑膿菌を分離し薬剤感受性検査によって基準を満たしていれば診断は可能である.治療にはコリスチンやポリミキシンBの注射薬が有効とされるが,いずれも現在国内では市販されていない.そこで抗菌薬の併用も1つの選択肢となり,患者から分離された菌を用いてBCプレートなどで適切な組合せを調べることも重要である.医療機関においてMDRPはアウトブレイクを起こすことがあり,感染対策上も重要な耐性菌である.

多剤耐性Acinetobacter 松永 直久
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Acinetobacter属菌は,偏性好気性,ブドウ糖非発酵性のGram陰性球桿菌で,乾燥表面に強く,5か月間も生存したとの報告もある.医療関連感染の原因菌としてはA. baumanniiが最も重要である.Acinetobacter属菌の感染症としては,呼吸器感染症が最も多い.多剤耐性Acinetobacter属菌(MDRA)は海外で大きな問題となっており,日本でも近年報告が続いている.積極的症例探索や環境調査を行う場合には,MDRA選択分離培地を用いると労力を大幅に削減できる.MDRAの治療に関しては,わが国ではcolistin,polymyxin B,tigecyclineが未承認であり,選択肢が非常に限られる.ブレイクポイント・チェッカーボード法で2つの抗菌薬が相乗効果を示す組み合わせを確認して投与する方法もある.MDRAに対する感染対策としては,標準予防策や接触予防策の徹底,環境の清掃や消毒の徹底,普段から感染部位や起因微生物をしっかり意識していたずらに広域抗菌薬を長期間使わないような感染症治療の実践が大切となる.

ESBL産生菌 木村 由美子 , 栁原 克紀
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ESBLとは基質拡張β-ラクタマーゼ(extended-spectrum β-lactamase)の略称で,ペニシリン系薬だけでなく,第三,第四世代セファロスポリン系薬およびモノバクタム系薬まで分解することのできるクラスA,またはクラスDに属するβ-ラクタマーゼのことである.主に腸内細菌科に属するGram陰性桿菌のプラスミド上にESBL産生遺伝子が存在し,菌種を超えて伝播する.したがって,近年,世界各国にて分離頻度が急激に上昇してきている.ESBL産生菌の蔓延を防ぐためにも,スクリーニング検査,確認試験などを的確に行い,抗菌薬の適正使用および感染管理を行わなければならない.

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メタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)はGram陰性菌が産生するカルバペネマーゼの一種で,Amblerの分類ではクラスBに属するβ-ラクタマーゼである.クラスBに属するMBLは,主に緑膿菌をはじめとするブドウ糖非発酵菌が産生し,多くの場合は,カルバペネム系薬を含む各種β-ラクタム系薬を分解する能力を有する.最近,腸内細菌科の菌種から新たなMBLとしてニューデリーメタロ-β-ラクタマーゼ1(NDM-1)が検出された.本稿では,MBL産生菌の性質および国内外での分離状況およびNDM-1産生菌の問題点について述べる.

多剤耐性結核菌 奥村 昌夫 , 吉山 崇
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多剤耐性結核症(MDR-TB)は,患者側の不適切な服薬や,医療従事者側の不適切な治療によって作られるman-made diseaseである.結核治療を開始する際には,すべての結核患者から適切な検体を採取し薬剤感受性検査を行い,早期に診断を行うことが必要となる.また,他者への感染を防ぎ新たなMDR-TBをつくらないことが重要である.

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1.はじめに―抗菌薬の併用療法

 今日,感染症を取り巻く状況はますます難しいものとなっている.その理由として,耐性菌の増加と蔓延の問題は重要であり,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)はもちろんのこと,最近では多剤耐性緑膿菌(multiple drug-resistant Pseudomonas aeruginosa;MDRP)やバンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin-resistant enterococcus;VRE)などの問題が大きく社会問題として取り上げられている.MDRPは,カルバペネム系薬,フルオロキノロン系薬,アミノグリコシド系薬の3剤に同時に耐性を示すことから,単剤による抗菌薬治療は困難である.

 また,非定型病原体が関与する頻度の高い市中肺炎などにおいては,βラクタム系薬+マクロライド系薬,あるいはβラクタム系薬+フルオロキノロン系薬などの併用療法を余儀なくされる症例を経験する.日本呼吸器学会が発行している「成人市中肺炎診療ガイドライン」1)においても,ICUでの治療が必要となるような重症肺炎症例では1群(カルバペネム系薬,第3・4セフェム系薬+クリンダマイシン,モノバクタム+クリンダマイシン,グリコペプチド系薬+アミノグリコシド系薬)に2群(フルオロキノロン系薬,テトラサイクリン系薬,マクロライド系薬)の薬剤を併用して治療を行うことを推奨している.

 本稿では,抗菌薬の併用療法の目的と意義,それが実施される状況について概説するとともに,MDRP感染症に対するオーダーメイド併用療法の可能性に関して,ブレイクポイント・チェッカーボード法について紹介する.

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1.はじめに

 抗菌薬については,日本発の医薬品も数多く世界で使用されている領域の一つと言えよう.数多くの製薬企業が日本国内に研究所を有し,シーズの抽出・合成を行い,それらを臨床開発,承認取得と着実に実を結ばせてきた.現在も世界で広く使用されている抗菌薬の中には,日本発のシーズであったり,日本が世界に先行して開発・承認取得をしているような抗菌薬も数多く存在している.

 これらの抗菌薬の多くは,β-ラクタム系薬やキノロン系薬といった広域スペクトルを有する抗菌薬であり,呼吸器感染症や尿路感染症を中心に比較臨床試験が実施され,その抗菌薬の科学的特徴やその時々の医療ニーズに応じ,外科,産婦人科,耳鼻咽喉科などの領域の感染症に対する開発が実施されてきた.これらの抗菌薬の使用により,われわれは数多くの感染症を克服することができたが,新たな抗菌薬が登場するたびに新たな耐性菌の問題に遭遇していることも事実である.このような状況は海外でも同様であり,近年では国内外を問わず抗菌薬開発は,主として耐性菌感染症治療薬を標的としている.

 世界の抗菌薬の登竜門であるICAAC(Interscience Conference on Antimicrobial Agents and Chemotherapy,http://www.icaac.org/)にて発表されている抗菌薬を見ても,新規化合物としては,細菌を対象とするものでは耐性Gram陰性菌や耐性結核などを標的としたものがほとんどである.本年も9月にICAACが開催予定であり,Gram陰性菌,結核菌を対象とした新しい作用機序の検討状況について報告されることがすでにプログラムとして公表されている(http://www.icaac.org/index.php/scientific-program/sessions/invited-sessions).

 開発者についても変貌をとげており,従前はいわゆるメガファーマと呼ばれる企業名を聞けば誰もが周知であるような大手製薬企業がシーズの段階から開発を進めてきていたが,昨今は,ベンチャー企業と呼ばれるような比較的小規模の開発経験が少ない企業がシーズを提供している場合が多い.

 患者側においても変化があろう.医学薬学の進歩に伴い,免疫低下状態にあるような患者も増えてきている.多剤耐性菌による感染症患者には,このような患者も多く含まれており,その病態には複雑な背景因子が関与してくることも少なくない.多剤耐性菌を対象とした抗菌薬開発においては,たとえ比較臨床試験が実施できたとしてもこうした患者が有する複雑な背景要因が試験成績にバイアスを与えないような配慮が必要となってくる.

 本稿では,このような環境の変化も含め,多剤耐性菌に対する抗菌薬開発の動向についてまとめてみたい.

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1.はじめに

 動物に対する抗菌性物質は,獣医療における医薬品だけでなく,家畜の生産性を高めるために使用する飼料添加物も含むため,動物関連業界では“抗菌薬”ではなく“抗菌剤”と呼ばれる.そのため,飼料添加物としての大量使用による多剤耐性菌の出現が,ヒトの医療現場での多剤耐性菌の出現に影響するのではないかといった懸念が議論されている.しかし,こうした状況を受けて,動物用抗菌剤の適正な使用に向けた様々な取組みが続けられているだけでなく,特に食肉となる動物の飼育に関しては,経済性を重視することから,不要な薬剤の使用は控える傾向になっており,一般に想像されているほどの乱用はない.

 本稿では,動物用抗菌剤の使用に対する理解を深めていただくため,法律の規制,耐性菌分離の現状,使用実態などについてまとめた.

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 下記の要領で,技術講習会を実施します.奮ってご参加いただきますようお願い申し上げます.

 本講習会は,「認定サイトメトリー技術者」認定試験の指定講習会と,サイトメトリー初心者のための入門講習会を兼ねております(午前は共通,午後はコース分け).従来の技術講習会(2007年度まで)の「基礎コース」に相当します.

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受験資格:

①~⑤のすべてを満たす者

①申請時に日本サイトメトリー学会の会員である.

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日 時:2012年9月7日(金) 10:00~17:00

場 所:大阪府・千里ライフサイエンスセンタービル

あいまにカプチーノ

臨床検査技師と教養 坂本 穆彦
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 教養って何だろう.昨今の高等教育機関のカリキュラムでは,“教養”はほとんど死語と化している.教養について思いをめぐらせる機会はなきに等しい状況である.しかしながら,教養は必要か? と問われれば,まずはイエスと答えたほうが無難だという程度の認識は一般には残っているようでもある.

 辞書で教養を引いてみると,「広辞苑」では“職業的・専門的な知識・技術に対して広く人間性を磨き高めることに役立つ一般的な学芸的素養”とある.“普遍的・全体的・調和的人間の完成を目指す”ともある.

シリーズ-感染症 ガイドラインから見た診断と治療のポイント・4

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はじめに

 B型C型慢性肝炎のガイドラインは毎年更新されている.これは,ひとえに熊田博光班長を中心とする「厚生労働省厚生科学研究費肝炎等克服緊急対策研究事業(肝炎分野)ウイルス性肝炎における最新の治療法の標準化を目指す研究班」の尽力によるものが大きい.同時にこれらのウイルス肝炎の診断もしくは治療法が毎年何らかの進歩をなしていることを意味する.

 2011年5月からB型肝炎ウイルス(hepatitis B virus;HBV)ゲノタイプの測定が可能となった.また,9月にはB型慢性肝炎に対してpeginterferon α-2a(商品名:ペガシス®)の48週間投与が認可された.さらには,以前は治癒したと考えられていたB型肝炎既感染者から免疫抑制療法もしくは化学療法後にHBVが再活性化するde novo B型肝炎が新聞の記事を賑わせた.

 本稿では,このようなB型肝炎に関する診断法・治療法の変遷を振りかえりながら,現行のガイドラインに基づいた診断法・治療法につき述べたいと思う.

シリーズ-標準化の国際動向,日本の動き・8

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1.はじめに

 遺伝学的検査に関するガイドライン(2003年8月,日本遺伝子診療学会,日本臨床検査医学会など遺伝医学関連10学会,http://www.congre.co.jp/gene/11guideline.pdf)では,「提言」として,遺伝学的検査の標準化や精度管理について次のように記載している.

(1) 遺伝学的検査の分析的妥当性,臨床的妥当性,臨床的有用性が十分なレベルにあることを確認するため,公的審査機関の設置が必要である.

(2) 遺伝学的検査を担当する施設は,常に新しい情報を得て,診断精度の向上を図るため,検査後の追跡調査を含め,公的機関などによる一定の(精度)管理下に置かれるべきである.

 しかしながら,これらに対する直接的な対応はわが国ではまだなされていない.関連組織により下記のような取組みが行われている.

検査の花道・8

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はじめに

 私は,子育て真最中の30代の検査技師.現在小学校4年,1年,保育園年中の3人の男の子を育てる母親です.地元の大学を卒業後,厚生連加茂病院に就職し,産休,育児休暇を3回とりながら勤続12年目になります.その間に病院移転も経験し,現在は豊田厚生病院と名称も変更されました.仕事から帰宅すると夜7時を過ぎてしまうことも多く,帰宅してからは時間との戦いで,育児と家事に追われる毎日を送っています.

 仕事を続けながら子どもが3人もいるなんてすごいねと言われることもありますが,周りに頼れる人や,助けてくれる人が沢山いて恵まれているだけなのだと思います.私がこの原稿を引き受けてよいのかどうか迷いましたが,これから出産して,検査技師の仕事も続けて行こうと考えている若い女性の方に少しでも参考になることがあればと思い,書くことを決めました.

学会だより 第101回日本病理学会総会

病理学新世紀の第一歩 草刈 悟
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 第101回日本病理学会総会は,2012年4月26日(木)~28日(土),慶應義塾大学医学部病理学教室の岡田保典教授を会長として,「医学・医療の中軸をなす統括病理学―病理学迎新世紀」のテーマのもとに,東京新宿の京王プラザホテルで開催された.宿題報告,シンポジウム,ワークショップ,特別講演,教育講演,病理学入門シリーズや系統的・剖検病理診断講習会,臓器別病理診断講習会など多様なプログラムが用意された.一般演題は1,100題以上に上り,参加者数は3,000人を超え,各会場で熱気を帯びた講演・質疑応答がなされた.われわれ職員も参加し,各会場での講演を聞く機会を得たので,本学会の内容の一部を紹介する.

 初日の目玉は何と言っても特別講演で,宇宙航空研究開発機構の川口淳一郎教授による「“はやぶさ”が挑んだ人類初の往復の宇宙飛行,その7年間の歩み」であった.会場は溢れるほどの大盛況で,映画の話に始まり,小惑星を調べる意味,今後の太陽系大航海時代への展望など,ユーモアを交え巧妙な話で場内は笑いの渦に巻き込まれながらも,学生・研究者・学者は学びから脱皮し,オリジナリティそう作・創造力を養うことがいかに重要かとのメッセージが十分に伝わってきた.

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 第101回日本病理学会総会が,2012年4月26日(木)~28日(土)の3日間にわたり,岡田保典教授(慶應義塾大学医学部病理学教室)を会長として東京で開催された.昨年,記念すべき100回を迎え,今回新しい一歩を踏み出した総会のメインテーマ・副題は,「医学・医療の中軸をなす統括病理学―病理学迎新世紀」と掲げられていた.

 病理学会では,医学のあらゆる分野にかかわる実験病理・診断病理学の研究発表がなされる.今年も多彩な内容が盛り込まれていた.内容は,3つの宿題報告と,2つの特別講演「“はやぶさ”が挑んだ人類初の往復の宇宙飛行,その7年間の歩み」,「再生医学・医療の現状と将来:iPS細胞を用いた神経再生・疾患研究」があり,教育講演は海外からの3名を含む9名の講師による肺癌,神経病理,膀胱癌,癌幹細胞,上皮間葉転換,非アルコール性脂肪性肝疾患,婦人科病理,内視鏡手術と外科病理学の講演が行われた.また,シンポジウムは分子標的医学,オミックス研究,統括病理学を主題とした3題が企画された.新しい企画として若手病理診断医の教育・育成を目標とした「病理学入門シリーズ」,日中交流ワークショップを含む10セッションのワークショップ,各分野の診断病理学の最新トピックスを主題とした10セッションのコンパニオンミーティング,例年盛況な臓器別および系統的・剖検病理診断講習会が設けられた.一般演題と学部学生示説を合わせ,1,111演題が集まり,「我が国における最先端がん治療」と題して市民公開講座も開かれた.

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「臨床検査」増刊号のお知らせ

欧文目次

「検査と技術」増刊号のお知らせ

「検査と技術」8月号のお知らせ

次号予告

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 臨床検査技師をめざす人のための教科書シリーズとして定評のある医学書院の“青本”シリーズが全面的にリニューアルされ,その第一弾として『病理学・病理検査学』が刊行された.

 『標準臨床検査学』シリーズは,『臨床検査技師講座』(1972年―),『新臨床検査技師講座』(1983年―),さらには『臨床検査技術学』(1997年―)という医学書院の臨床検査技師のための教科書の歴史を踏まえ,新しい時代に即した形で刷新されたものである.

バックナンバー一覧

投稿規定

あとがき 伊藤 喜久
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 今月の主題は,現代医療における重要課題の一つ多剤耐性菌です.検査システムの道筋は確立されており,MSによる迅速感受性試験など新しい自動検査法も取り入れながら,これからも早期の特異的な診断,予防,フォローの進展が期待されます.これらをサポートする国際的な報告基準の標準化,用語の定義などの周辺整備が待たれます.問題は治療で,今や世界中で臨床上criticalな多くの菌種が多剤耐性となり,有効な抗菌薬が枯渇し深刻な状況が続いています.

 随分以前の話ですがMRSAのアウトブレイクがあり,パルスフィールド電気泳動法で解析したところ,コントロールとして用いた6年前の保存株が起炎菌とまったく同一パターンを示し,本当に驚きました.全国各地の医療施設のどこかで毎日新たな抗菌クローンが誘導され医療環境に潜み,常在細菌叢を形成しながら保持され,日和見感染を引き起こし,地域から国,あるいは世界へと広がっている一端がうかがえました.

基本情報

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臨床検査
56巻8号 (2012年8月)
電子版ISSN:1882-1367 印刷版ISSN:0485-1420 医学書院

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