臨床婦人科産科 49巻6号 (1995年6月)

今月の臨床 イラスト 小手術

麻酔と切開

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 妊産婦に無痛分娩の目的で局所麻酔を行う際の麻酔法と合併症について述べる.

2.皮膚の切開と縫合 玉舎 輝彦
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皮膚の切開

 産婦人科領域における手術での皮膚切開では,上方向に延長が必要な時は,正中縦切開を行い,また多くの良性疾患の場合は,Pfannenstiel切開を行うことにより目的を達しうる.

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 開腹術後の創哆開は術前,術後の管理の進歩した現在においても依然として皆無とはならず,術後早期に緊急の対策を講じる必要のある病態で,重篤な合併症である.腹壁創哆開とは腹壁切開創が生理的癒合に至らず,その一部または全部が離開した状態をいう.皮膚,筋膜および腹膜の全層が離開するものと,皮膚のみ,あるいは皮膚と筋膜が離開するものとがある.腹壁創哆開の頻度は0.3〜3.0%と低いが1),周術期管理の改善,抗生物質の使用や縫合素材の開発にもかかわらず後を絶たない.

 創哆開の重症例では創部からの体液の喪失や創感染による敗血症が惹起される危険性も高く,依然として厄介な術後合併症の一つである.

穿刺

4.ダグラス窩穿刺 森下 義夫
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 ダグラス窩穿刺は,ダグラス窩(Douglas’pouch,cul-de-sac)に経腟的に針を刺して,腹腔内に貯留した液体を吸引する手法である.この目的は,腹腔内ことに小骨盤腔内にたまっている血液や膿,細胞などを診断のために採取することである.

5.腹腔穿刺 日浦 昌道 , 藤岡 徹
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 腹腔穿刺は通常急性腹症や慢性腹部疾患に対して,診断・治療目的に施行されることが多い1-2).とくに聴,打診上波動を証明し,多量の腹水の存在が疑われる場合に,好んで施行される方法であるが3),その適応を十分に考慮してなされるべきである4).婦人科領域においては,超音波診断装置により良・悪性腫瘍との鑑別や腹水の性状はある程度判定できるものの,肝硬変などの他科疾患の腹水を含め,穿刺によって得られる情報は診断・治療に直接結びつくだけでなく,今後の治療方針にも臨床上重要である.今回とくに腹水穿刺の実際とその注意点について述べてみたい.

6.胸腔穿刺 山脇 孝晴 , 荷見 勝彦
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 胸腔穿刺の目的には,胸腔内貯留液の試験的採取,胸水の排液,薬剤注入,気胸の脱気などがある.胸膜腔内貯留物が,気体か,あるいは液体かにより,胸腔穿刺の方法が多少異なるが,今回は産婦人科医が対象と考えられるので,液体貯留時の穿刺法について,具体的に解説する.

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 卵巣嚢胞穿刺で長足の進歩を遂げたものが経腟穿刺法である.体外受精治療において超音波断層法ガイド下採卵法が開発され,採卵以外の応用がなされるようになった.付属器に最も近接した腟よりの穿刺が可能なことから,嚢胞穿刺の安全性,簡便性は飛躍的に向上した.超音波を用いた従来の経腹穿刺法に加えて,経腟穿刺法の応用が一般的になりつつある.腹腔鏡下嚢胞穿刺も行われてきたが,現在は腹腔鏡下嚢胞摘出が主流になってきている.本稿では,超音波断層法ガイド下嚢胞穿刺を解説したい.

8.羊水穿刺 末原 則幸
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 羊水穿刺は,①羊水中の胎児由来細胞を用いた染色体分析や酵素の測定による代謝異常症の診断,②羊水中の代謝物質や酵素の測定による代謝異常症の診断,③L/S比の測定などの胎児成熟度判定,④羊水の吸光度測定による血液型不適合妊娠の重症度の判定,⑤羊水培養による子宮内感染の診断,⑥羊水過多の治療,⑦羊水内に色素を注入し破水の診断,⑧羊水過少時の羊水注入などの目的で行われ,産科管理上欠かせない手技である.しかし時に高位破水や胎盤早期剥離,子宮内感染などを起こしたり,陣痛を誘発することもあるため,その手技には十分習熟し,かつ慎重な実施が求められる.

9.胎児腔水症穿刺 前田 博敬
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 従来より胎児の生化学的情報を得る手段として羊水穿刺および羊水分析が広く行われ,現在でも有用な胎児診断法のひとつである.これに加えて,疾病胎児を対象とした原因の診断あるいは治療の目的で,超音波ガイド下に胎児腔水症穿刺が行われるようになった.本稿では胎児腔水症穿刺の手技上のコツとポイントについて概説する.

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 炭酸ガス(CO2)レーザー光の光エネルギーは,ほぼ100%が水に吸収されるため,水を必ず含む生体の被照射組織は瞬間的に沸騰し,爆発し組織を破壊する.脱水凝固した組織は燃焼し気化消滅する.二次熱による熱凝固は切削,蒸散時の止血に有用であり,高熱による滅菌,創傷治癒促進作用も期待できる.レーザー光の熱作用を規定する要因は,出力,照射時間およびレーザー光線の焦点から照射面までの距離である.レーザー光線を焦点距離で照射する(focused beam)と照射組織は鋭角に深く切削されるが,照射面を焦点から離すと焼け焦げ径は大きくなり(defocused beam)パワー密度は急速に減衰する.以下に,メディレーザーMIC30(持田製薬(株)製)による子宮腟部びらんとバトルリン腺膿瘍の治療法を述べる.

婦人科

11.内膜試験掻爬術 谷口 一郎
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 本邦においても体癌が増加し,また子宮内膜の細胞診の普及により早期の体癌が発見されるようになり子宮内膜試験掻爬術は重要な手術手技となってきた.本術式はその操作が一見簡単に見られているが,盲目的な手術であるがゆえに,熟練者といえども子宮壁の損傷,ことに「穿孔」という重大な後障害を起こすことがあることは周知のことである.今回は当院において通常行っている手技について述べてみたい.

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 子宮頸部円錐切除は1815年Lisfrancによって最初に報告されて以来,その手技に関しても幾多の改良が加えられ今日に至っている.岡山大学においては1962年まではStrumdorf法1)を,1963年以後1972年まではScott法2)を用いてきた.そして,1973年以後はScott法を以下の3点すなわち,①術後の組織診に際して不都合な組織損傷を与えないこと,②術中,術後の出血を減少させること,③術後のfollow upや妊娠,分娩,あるいは腔内照射に際して不都合な頸管 狭窄や子宮の変形などを生じないこと,について配慮した術式の改良3)を行いこれを用いてきた.その後,レーザーメスの進歩と普及には目覚ましいものがあり,1990年以後はcold knifeに替えてレーザーメスを使用した切除を行い現在に至っている.

 本稿では現在当科で行っている円錐切除術の適応とレーザー円錐切除術式を紹介する.

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中央腟閉鎖術(Le Fort手術)

 本手術の対象はほとんどが腟壁が反転した完全子宮脱であり,かつ高齢で性交の必要がなくなった婦人である.術前にエストリオール錠を内服させ,老人性腟炎を治療しておく.麻酔は主として腰椎麻酔を用いる.

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 子宮筋腫は婦人科の日常外来診療では最も頻度の高い疾患の一つである.その中でも臨床症状が著しいのは粘膜下筋腫である.過多月経,鉄欠乏性貧血,不正出血の症状がしばしばみられ,不妊の原因にもなり得る.近年内視鏡の進歩によってある条件下の粘膜下筋腫は子宮鏡下に切除できるようになった.われわれが実施しているレゼクトスコープによる手術方法(経頸管的切除術,TCR)1)について紹介する.

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 患者に対する“QOL”提供を目指した“Minimally Invasive Surgery”として産婦人科領域においても①子宮付属器癒着剥離術,②子宮付属器腫瘍摘出術,③卵巣部分切除術,④子宮内膜症病巣除去術,⑤子宮外妊娠手術,に対する腹腔鏡下手術が1994年4月より社会保険診療報酬の面からも認知された.

 しかし,これらの疾患に対して腹腔鏡下手術が安全に遂行されるためには,(1)癒着剥離がいかに克服できるか,(2)止血への対応がいかにできるか,(3)臓器摘出がいかにスムースに行えるか,といった点が大きな鍵を握っていることには間違いない.

16.卵管鏡下癒着剥離術 末岡 浩
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卵管鏡下卵管形成システム

 卵管閉塞に対する治療のために新しく開発された卵管鏡下卵管形成(Fal—loposcopic tuboplasty;FT)システムは,経頸管的アプローチにより細く蛇行した卵管内を全域にわたり挿入することのできる円筒状バルーンカテーテル(LEカテーテル)と,内蔵した微細な卵管ファイバースコープからなる.卵管形成用カテーテルの基本構造は,外筒・内筒とバルーンを加圧する拡張器からなり,内筒を押し込むことでカテーテル先端よりバルーンと卵管鏡が前進する構造になっている(図1).この際,卵管鏡はバルーンに連動して前進する.このバルーンには滅菌蒸留水を充填し,カテーテルを前進させる時は6〜9気圧,卵管鏡を進める際には2気圧に調節して操作する.バルーンの全長は10cmである.

産科

17.人工妊娠中絶術 本郷 基弘
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 あくまで触覚を頼りとした手探りの手術操作であるが故に,古くしてなお新しく,初歩的手術でありながら永遠に難しい産科手術,それが人工妊娠中絶術ではなかろうか.妊娠初期の人工妊娠中絶術に限定して,その要点やコツを述べてみたい.

18.頸管縫縮術 南 邦弘
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 頸管無力症の外科療法としてShirodkar法,McDonald法が主流であるが,最も理にかなって頸管縫縮効果のよいShirodkar法について述べる.

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 プロムフェンスは長さ20cm,外径8mmのシリコン製のカテーテルで,先端で開口する主管,先端の2個のバルーンの間に位置する消毒液吐出口に開口する導管,先端のバルーンを膨らませる導管2本の計4本の導管を有する(図1)1).前期破水例に対してプロムフェンスを装着することによって羊水の流出は防止され,主管を通じて抗生物質や人工羊水の羊膜腔内への直接注入,羊水採取,ならびに頸管,腟の持続消毒が可能となる.

20.会陰切開術 進 純郎
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 会陰切開・縫合術は産婦人科医が初めて実施する手術術式の1つである.小手術ではあるものの,切開・縫合の仕方によってはほとんど痛みも腫脹もなく治癒させることができるが,ほんのわずかの違いで褥婦に育児行動も困難なほどの疼痛を与えてしまうことになり,技術の巧拙がこれほど明確に示される手術術式も少ないと思われる.

 ここではできるだけアメニティを考えた正中,側切開の術式と縫合法について解説することにする.

21.胎盤用手剥離術 伊藤 博之
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 一般に胎盤のほとんどは胎児娩出後,9分以内に自然に剥離し娩出される(Dieckmannら).しかし,時には30分以上たっても剥離しないことがあり,その際は用手的に剥離を行う.

22.会陰裂傷縫合術 古橋 信晃
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 会陰裂傷は,表のように分類される.通常の会陰裂傷からの出血はあまり多くない.しかし,裂傷が腟円蓋に及んだり,深く広範な場合には出血量が増加し,縫合に手間取れば結果として大量の失血を招く.

 会陰裂傷縫合は,産科医師によってそれぞれ手法,縫合材料などが異なると思われるが,本稿では,著者の方法を中心に記述する.

23.会陰血腫除去術 河野 勝一
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 会陰血腫の発生は700〜4,000例の分娩に1例と比較的まれな疾患である.会陰血腫は分娩が終結し,安堵している時間,すなわち児娩出後,2〜3時間経過した帰室後に発見されることが多い.症例のほとんどは外科的に血腫を除去し結紮止血,あるいは保存的圧迫,湿布法などでこと足りることもある.しかし,血腫が巨大なときや,奥深く後腹膜下方向に血腫が拡大した症例では,全身状態は不良となり貧血症状も強く,ショックに陥り治療に苦慮する重症例もあることよりやっかいな疾患である.それゆえ,会陰血腫は早期発見,早期治療が重要である.また,それ以前の本疾患に対する配慮と予防がたいせつであるのはいうまでもないが,紙面の都合上,本稿では主に会陰血腫の治療の実際について述べる.

24.頸管裂傷縫合術 大森 茂
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 頸管裂傷とは,分娩の際に生ずる軟産道損傷の一つで,時には致命的な大出血を起こすことがあるので,可及的迅速な診断と処置を必要とする.ただし,このような処置を必要とする程度のものはごくまれで,おそらく1%にも満たないものと思われる.なぜなら,その原因と考えられる,例えば巨大児,CPD,頸管の強靱,遷延分娩などは,それ自身,すでに帝王切開の適応であり,あらかじめ経腟分娩を避ける場合が多いからである.

 子宮腟部辺縁の擦過創や挫滅創を頸管裂傷に入れるかどうかは,意見の分かれる所であるが,時には小さな裂傷から,意外な拍動性の出血を見ることがある.通常遭遇する頸管裂傷は,頸管の3時と9時にあたる部が縦方向に裂けるものをいう.

カラーグラフ 微細血管構築とコルポスコピー・3

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頸管腺開口部周囲の化生に伴う血管構築の変化

 図1は頸管内円柱上皮域の微細血管構築像である.表面は均等な太さの血管からなる毛細血管網で構成されており,網目の大きさもほぼ均等である.しかし,扁平上皮域のものに比べ起伏が強く,何層もの血管網が重なった複層構築になっている.頸管内皺壁に一致した深い溝とともに,頸管腺に一致した多数の円形の深い陥凹がみられる.これら頸管腺陥凹部を取り囲む周囲血管の太さ,走行,分布は他の部位と比べてとくに変化はない.

 図2は頸管内円柱上皮域の毛細血管網を側面からみたものである.扁平上皮域と同様に表層の毛細血管網に対して垂直に向かう血管が末梢にいくほど細くなり,分岐数を増しながら毛細血管網に移行している.しかし,扁平上皮域のものと比べ分岐はより深いところで生じ,錯綜しながら2〜4mmの厚い毛細血管叢を形成している.

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 Q ここ数年外来を訪れる患者さんから尿もれについて相談されることが多々あります.尿失禁診断上の注意点と腹圧性尿失禁の診断法の要点について教えてください(東京KY生).

 A 手術を含む積極的な治療が予定されるときはSUI診断の確立が前提となる.切迫型や混合型の除外はいうまでもなく,排尿困難有無の確認は重要である.切迫型と混合型ではSUIと治療の方針は異なり,排尿困難の合併はSUI手術のとき術式の選択に関係する1).内因性尿道括約機能不全では尿道の閉塞を目標とする術式が選ばれるため,解剖学的(真性)SUIとの区別も重要となる.

産婦人科クリニカルテクニック ワンポイントレッスン

Pfannenstiel切開の勧め 玉舎 輝彦
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 Pfannenstiel切開では,基本的には,左右の上前腸骨棘を結ぶ線上に切開を入れるが,美容上の問題では恥毛上〜下の皮膚線にそって横切開を入れる(図).その上,皮下組織,皮下脂肪を頭部の方に向かって斜め下に切開し,筋膜に達する.

 その後,上層の筋膜を横切開し,切開中心の筋膜を有鉤鉗子で挟み上げ,筋膜をできるだけ腹直筋より十分に遊離させる.このことが,開腹時の腹腔内の展開に役立ち,不十分であると展開しにくい.

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 筋腫分娩は筋腫表面からの持続性の出血,筋腫核の変性,壊死に続発する感染などのため,早急な治療を要することが多い.このような場合,一般的には腹式単純子宮全摘出術が行われるが,子宮温存を強く希望する例や高度な貧血で早急な手術が困難であるにもかかわらず輸血を望まない症例に対しては分娩筋腫茎の結紮も治療の選択肢の一つとなりうる.我々は慶應大学の田村昭蔵先生の考案したNTライゲーター(田村式結紮器)による腟式筋腫茎結紮を行っているので以下にその手技の実際,本法施行上の注意点などについて述べる.

 結紮に用いる糸はSCS(ネックレススレッド)というNTライゲーター専用のものである.糸はポリビニール製,長さ60cmで先端に直径1mmの輪がついている.この輪に糸の一端を通し,筋腫茎を結紮するループを形成する.なお,糸の輪のついている先端より10cmの間には小さな三角錐が並んでおり,一度絞られたループが再び緩むことがないよう工夫されている.NTライゲーターは拳銃型で先端の小穴よりあらかじめループを作った糸を挿入し,銃身部を通して,糸巻き取りリングの脇の小穴より出てきた糸の端を巻き取りリングに固定する.結紮の手技に入る前に糸をある程度リングに巻き取って,ループの大きさを筋腫核の最大径より少し大きめに設定しておく.

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 高位脊髄障害者の妊娠,分娩例を経験した.患者は18歳の時に,急性横断性脊髄炎に罹患,Th 5以下の完全知覚運動麻痺および失明をきたした.今回42歳で妊娠成立,妊娠39週にて帝王切開術を施行,2,500gの男児を分娩した(Apger 9/10).高位脊髄障害者の妊娠分娩の管理に際しては,種々の問題があるが,主に脊髄障害に起因する自律神経過反射の管理が重要であり,本症例では硬膜外麻酔によって管理した.術後,血栓塞栓によると考えられる脳梗塞症状を呈したが,ウロキーナーゼ大量投与により軽快した.

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 今回われわれは,15歳の女性に発生した卵巣sclerosing stromal tumor(硬化性間質性腫瘍)の1例を経験したので,病理組織像を中心に報告する.肉眼的には,淡黄白色調を呈する充実性部分,浮腫状部分および嚢胞状部分が認められ,組織学的には,細胞密度の高い部分と浮腫状の部分とが,いわゆるpseudolobulusを形成していた.腫瘍細胞は粘液染色は陰性で,ズダンIII染色では陽性像が認められ,転移性腺癌(とくに印環細胞癌)との鑑別は容易であった.また本症例では,核分裂像が散見されたが,良性として容認できうる所見と思われた.

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 臍下小切開(いわゆるマークの切開)により開腹し,嚢腫内容を吸引することにより,内視鏡手術と同様に患部を腹腔外に露出し,核出する方法を開発したので報告する.本術式の適応は,妊娠初期に発見できなかったか,もしくは自然消失を待って経過観察していたが,消失しなかったような症例(妊娠16週以後)で,通常の切開だと妊娠子宮が邪魔になるため,大きな切開が必要となる場合である.術前に超音波断層法により悪性所見のないことを十分確認し,全身麻酔もしくは腰椎麻酔下にマーク切開(2〜3cm)にて開腹する.次いで,無鉤のピンセットで嚢腫を把持し,メスで穴をあけて嚢腫内容を十分に吸引する.その後,創部より嚢腫を引っ張りあげ,腹腔外で嚢腫核出術を行う.終了後は,止血を十分に確認し,牽引解除後の卵巣の創面からの出血を予防し,かつ付属器周辺の癒着を防止する目的で,患部をベリプラストにて包埋し腹腔内に戻す.本術式は,妊娠の中期以後で発見された癒着のない良性卵巣嚢腫に対して,手術侵襲も少なく,試みられてよい方法であると考えられる.

基本情報

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臨床婦人科産科
49巻6号 (1995年6月)
電子版ISSN:1882-1294 印刷版ISSN:0386-9865 医学書院

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