臨床外科 74巻2号 (2019年2月)

特集 急性胆囊炎診療をマスターしよう

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 急性胆囊炎は緊急処置が必要となることが多い.ガイドラインでは重症度別の治療ストラテジーが示されているが,患者の年齢や併存疾患によっては臨機応変に治療方針の変更が必要であり,いくつかのオプションを知っておくべきである.手術にあたっては,すでに多くの病院で腹腔鏡下胆摘が施行されているが,困難症例に遭遇することもあり,最大の合併症である胆管損傷の頻度は減少しておらず,安全性の確保が問題となっている.最近,手術の難度評価を客観的に行おうとする研究が本邦を中心に進められている.様々な危険回避手技があるため知っておく必要がある.本号では,2018年に大幅改訂された「急性胆管炎・胆囊炎診療ガイドライン2018」をふまえ,急性胆囊炎に遭遇したときにこれ一冊で完璧な対応ができるよう,様々な観点からエキスパートに執筆をいただいた.

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【ポイント】

◆TGの発祥:世界共通の急性胆囊炎の診断基準・重症度判定・治療指針は,International Consensus Meeting, Tokyoでの合意に基づいたTG07(2007年)に始まった.

◆改訂の必要は?:TG07, TG13, TG18においては,臨床の場からの批評的評価を受け,ビッグデータを基に,時代の要請にあるべく改訂された.

◆TG18のポイント:TG13までは,Grade Ⅲは手術適応にはならなかったが,TG18では厳しい条件をクリアし,高次施設では適応になった.

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【ポイント】

◆急性胆囊炎の原因の90%以上は胆囊結石に由来する.

◆急性胆囊炎の早期での胆汁培養陽性率は低く,全体でも陽性率は50〜75%である.

◆無石胆囊炎は重症患者,ICU管理,陽圧換気,高カロリー輸液,熱傷などを背景に発症することが多い.

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【ポイント】

◆主に脂肪組織で構成される漿膜下層外層(SS-O)を内層(SS-I)から剝離するのが胆囊摘出術の基本手技である.

◆SS-OとSubvesical bile ductの関係を整理することで,術中胆道損傷の原因が理解しやすくなる.

◆炎症や虚血によって胆囊壁の層構造が失われると,手術難度が高くなる.

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【ポイント】

◆急性胆道炎の初期対応においては,診断確定後に重症度診断とともに全身状態の評価を行うべきである.

◆全身状態の評価法としては,チャールソン併存疾患指数(CCI)と米国麻酔学会(ASA)術前状態分類が推奨される.

◆全身状態の評価法の特徴と問題点を理解し,適切に運用することが肝要である.

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【ポイント】

◆ラパコレの手術難度は,線維化・瘢痕化の程度,部位を把握することにより判定できる.

◆手術時間や開腹移行,出血量などに関する意識は,術者,施設,国の間で異なる.

◆手術難度を客観的に測定できれば,適切な手術時期や術前PTGBDの是非など,胆囊炎治療に関わる研究の新たな指標となりうる.

薬物治療とドレナージ

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【ポイント】

◆急性胆囊炎の初期治療薬は,各施設のアンチバイオグラムに基づく必要がある.

◆急性胆囊炎の抗菌薬治療期間は,Tokyo Guidelines 18のGrade Ⅰ,Ⅱでは,術前および術中のみが推奨される.

◆Tokyo Guidelines 18のGrade Ⅰ,Ⅱの術中所見で,穿孔,気腫性変化,壊死性胆囊炎などが見られた場合には,感染源の制御後に4〜7日間の抗菌薬投与を行う.

◆レンサ球菌や腸球菌などのグラム陽性菌血流感染を伴う場合には,最低2週間の抗菌薬投与を推奨する.

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【ポイント】

◆PTGBDは急性胆囊炎患者において,胆囊摘出術のリスクが高く,全身管理が奏効しない場合に適応となる.

◆PTGBDを安全かつ確実に行う技術と,ドレナージ後の適切な管理を行う知識を身につけることが必要である.

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【ポイント】

◆左手鉗子で最適な部分を最適な方向に牽引することにより,Calot三角を開き,近接拡大視野で観察する.

◆フック型電気メスにより組織を緻密にフッキングし,微量ずつ切開する.リスク方向にはフッキングしない.

◆ドームダウンでは電気メスの組織への軽微なタッチと通電により,電流密度を制御しながら切開・剝離を進める.

*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2022年2月末まで)。

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【ポイント】

◆Grade Ⅱ症例の治療は,急性胆囊炎手術に熟練した内視鏡外科医がいる施設においては早期腹腔鏡下胆囊摘出術が推奨される.

◆急性胆囊炎に対する腹腔鏡下胆囊摘出術では,解剖学的なランドマークに基づく適切な層での剝離が最も重要な手術手技である.

◆高難度手術症例では,重篤な合併症を回避するために,開腹移行を含めた危機回避手術(fundus firstや亜全摘術など)も考慮する.

*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2022年2月末まで)。

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【ポイント】

◆重篤な病態であり臓器障害の悪化や合併症による死亡が危惧されるため,慎重な診療方針の選択が必要である.

◆直ちに抗菌薬を投与し臓器障害の改善を図りつつ,厳しい手術適応条件のもと診療方針を検討する.高度な機能を有する施設への搬送も考慮すべきである.

◆高難度症例が多く,安易に手術を選択すべきでない.手術所見により胆囊亜全摘や開腹移行などのBailout surgeryを選択する.

*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2022年2月末まで)。

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【ポイント】

◆胆道損傷を回避するためのbailout surgeryという戦略を知る.

◆Subtotal cholecystectomy(fenestratingとreconstituting)を理解する.

*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2022年2月末まで)。

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【ポイント】

◆急性胆嚢炎を呈していても,閉塞性化膿性胆管炎(AOSC)などの急性胆管炎の可能性に注意する.

◆乳頭機能温存の治療であるLCBDEは,AOSCを見極め,かつ不測の事態を回避するため,待機的LCBDEを考慮する.

◆内視鏡的治療であるESTなどは,総胆管結石を切石したのちの待機的LCを考慮する.

*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2022年2月末まで)。

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【ポイント】

◆急性胆囊炎では胆囊周囲に高度な炎症や癒着を生じていることも少なくないため,胆囊摘出術の際の胆道損傷に気を付ける必要がある.

◆腹腔鏡下胆囊摘出術(Lap-C)は多くの施設で急性胆囊炎に対する標準術式となっているが,各施設,各術者において腹腔鏡手術の限界を理解しておく必要がある.

◆胆囊摘出時の胆管損傷の治療は,損傷部位の十分な理解と適切な処置の選択が必要である.

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はじめに

 近年,手術支援ロボットが医療分野で広く用いられ,大きな変革をもたらしている.ロボットが手術に用いられた例は,1985年産業用ロボットPUMA560を脳の生体組織検査に使用したことに始まる1).90年代からロボットの手術分野への適用をめざした研究開発が盛んとなり,1991年にはIBMが開発したRobodocと呼ばれるシステムで人工股関節全置換術が行われた2).さらに,現在最も有名な手術支援ロボットの一つであるマスタ・スレーブ型の手術支援ロボットda Vinci(Intuitive Surgical社)もこの頃から開発が進められた.

 本稿では,低侵襲外科手術(MIS)において,da Vinciに代表される手術支援ロボットの普及が最も進んでいる腹腔鏡外科手術を中心としたロボットの研究開発動向を概観する.

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はじめに

 潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)の治療法について,国内外からガイドラインが出されている.本邦からは難治性炎症性腸管障害に関する調査研究1),および日本消化器病学会2)から発行されている.欧州では,European Crohn's and Colitis Organisation(ECCO)からのガイドラインが随時アップデートされており3〜5),米国からはAmerican College of Gastroenterology(ACG)が作成したガイドライン6),American Gastroenterological Association(AGA)が発表したUC clinical care pathway7),American Society of Colon and Rectal Surgeons(ASCRS)が作成したpractice parameters8)などがある.限られた紙面であるため全項目でガイドラインを比較することはせずに,手術適応や重症UCを中心に,国内外のガイドラインを比較する.なお,癌化およびサーベイランスについてのガイドライン国際比較は拙文(本誌73巻12号)をご参照いただきたい.

急性腹症・腹部外傷に強くなる・11

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 小生は沖縄県立中部病院外科研修医(PGY3)です.予定手術や病棟管理に,救急症例に,院内コンサルトに,学会・院内発表や論文作成にと目まぐるしい日々ですが,いつの日か世界を駆け巡る小児外科医になれるよう,どんな症例からも逃げずに立ち向かう医師になれるよう,患者さんへの愛をもって日々の業務に取り組む充実した毎日を仲間たちと送っています.

 今回は外傷性消化管損傷のうち,十二指腸損傷を除いた胃・小腸・大腸損傷,および腸間膜損傷を取り上げます.今回のお話が,同じく日々修練に励む外科研修医の皆様の参考に少しでもなれば,また当院の外科研修の臨場感を少しでもお伝えできれば幸いです.

病院めぐり

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 大和高田市は奈良県北西部にある商工業都市で,奈良盆地南西部の低平な沖積地に位置します.この市内の大中に,大和高田市立病院は,1953(昭和28)年に厚生省指定のモデル病院として,一般病床85床で開設され,その後,1970(昭和45)年に現在地の礒野北町に,320床の病院として移転しました.長年にわたって,急性期型の総合病院として機能する一方,地域に根ざした病院として,地域医療の貢献に努め,葛城地区の基幹病院としての役割を担ってきました.

 当院の外科は,主に消化器外科と乳腺外科の診療を行うとともに,非常勤医師を交えて,大腸肛門外来,乳腺外科外来,下肢静脈瘤外来,心臓血管外科外来,形成外科外来など多くの専門外来を開設しています.当科の診療方針は,安全性と根治性を追求し,さらに人間性を求めることです.外科全体で年間約800件の手術を手掛け,そのうち600件以上が全身麻酔下手術です.早くから,胃癌や大腸癌に腹腔鏡下手術を導入し,また近年では,鼠径ヘルニアや虫垂炎も腹腔鏡下で手術を行うため,腹腔鏡下手術が年間350件余りと,全身麻酔下手術全体の半数以上を占めているのが特徴です.また乳癌手術を年間100件以上行っています.

Reduced Port Surgery—制限克服のための達人からの提言・14

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導入時のケースセレクションと限界

 食道裂孔ヘルニアは図1のごとくtype ⅠからⅣまで分類され,症状もtype Ⅰでは胃食道逆流症(GERD)が中心のものが多いが高齢者女性に多いtype Ⅲ・Ⅳではdysphagiaや通過障害,貧血,絞扼などさまざまで誤嚥性肺炎を併発することもある.

 近年,腹腔鏡下での食道裂孔ヘルニア修復術/噴門形成術(本術式)が広がってきてはいるものの一施設当たりあるいは術者当たりの症例数は多くはなく,一般的な手術とは決して言い難いのが現状である.単孔式食道裂孔修復術に関しては筆者らも報告しているが1),良性疾患でかつ摘出臓器もない本術式において一か所ではあるが創の延長を要する単孔式腹腔鏡手術の明らかなメリットは整容性以外には証明されていない.加えて整容性を重視した場合は臍部にmultichannel portを挿入することになるが,食道裂孔深部での操作が,特に長身者や巨大食道裂孔ヘルニア症例などで困難となることからも適応は慎重に検討されるべきである.導入時においてはまず標準の腹腔鏡手術に熟練した術者が5 mmスコープを用いたり細径鉗子を用いるneedlescopic surgery(NSS)を導入すべきで,単孔式手術の適応は限定されると考えており,本稿ではneedlescopic surgery中心に述べたい.症例選択としては,type Ⅳなど他臓器の嵌入を伴う症例や短食道が危惧される症例は慣れないうちは避けるほうが無難である.

*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2022年2月末まで)。

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要旨

症例は74歳の女性.64歳時に直腸癌(stage Ⅰ)に対し低位前方切除術,66歳時に右肺癌(stage Ⅰ)に対し右肺葉切除術,72歳時に胃癌(stage ⅠA)に対して胃全摘術を施行した.術後の定期検査にて肝腫瘤を指摘され,当科へ紹介され入院した.腹部造影CT検査で尾状葉に40 mm,S2に30 mmと7 mmの造影効果に乏しい腫瘤性病変を認めた.術前に転移性肝癌と肝内胆管癌の鑑別は困難であったが,胃癌が早期であることから肝内胆管癌を第一に疑い,肝左葉・尾状葉切除術を施行した.病理組織検査は,肝内胆管癌の診断であった.肝内胆管癌を含む4重複癌の報告は非常に稀であり,検索しえた限り本症例は2例目である.多重複癌であっても根治的切除により予後延長が期待できる.

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要旨

患者は70歳,男性.高血圧症,糖尿病で加療中であった.前胸部不快感を自覚し,救急外来を受診し,大動脈CT検査および冠動脈造影検査を施行したところ,60 mm大の巨大冠動脈瘤および狭心症の診断を得たため,手術目的で当科へ紹介された.手術は,冠動脈瘤切除術に加えて,冠動脈バイパス術を施行した.術後経過は良好で,術後冠動脈CT検査で,良好なバイパス血流が確認され,また,瘤残存などの異常所見も認めず,術後14日目に軽快退院された.今回われわれは,巨大冠動脈瘤を有した狭心症症例に対し,冠動脈バイパス術および瘤切除を施行し良好な結果を得た1手術例を経験したので,若干の文献を踏まえ報告する.

1200字通信・127

左膝の思い出 板野 聡
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 2018年9月,母校のラグビー部創立90周年を記念して,年次総会の中で特別講演が催されました.講師は1987年に開催された第1回ワールドカップの日本代表チームで主将を務められた林敏之さんでした.

 「壊し屋」との異名を持つ林さんですが,そのプレーはあくまで真っ向勝負のフェアプレーであり,だからこそ,学生時代からナショナルチームに至るまで,所属するチームで主将を任されたのだと思われます.また,涙脆いことでも有名で,講演でもそのプレースタイルや生き様通りに熱く語りかけられ,現役部員は勿論,私たちOBも忘れかけていた熱い気持ちを思い出しました.

ひとやすみ・173

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 馬齢を重ねると,各種の研究会や学会などを取り仕切る役が回ってくる.せっかく開催するなら,参加者が満足する会にしたいと思い,さまざまな仕掛けを企画した.

 輸血に関する東北支部例会のため,会員の職種は検査技師や看護師が主体であり,医師や薬剤師は少ない.そこで検査技師や看護師独自のセクションを設定するとともに,「輸血に必要な検査」「小規模医療施設における輸血」「チーム医療」など,日常業務に関連した演題で特別講演,ランチョンセミナー,ミニレクチャーを企画した.

昨日の患者

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 この世に生を受けし者は,誰もが必ず最期を迎える.如何なる最期を迎えるか,そして家族は如何に看取るか,悩みは尽きない.

 Kさんは90歳代で,70歳代に胆囊結石症で腹腔鏡下切除を行った元患者さんである.息子さんも胆囊結石症で受け持ったこともあり,同居しているKさんについての相談を受けた.

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 金谷誠一郎先生とのつきあいは30年になる.手術に「美(Art)」を求める真摯な姿勢は一貫して変わることがない.その背景には,質の高い手術には誰もが感嘆する「美」があり,「美」を有する手術こそ合併症が少なく,外科医が患者に還元できる最高の医療であるとの信念がある.彼の「美」は科学的,あるいは理論的な「技」に立脚する.解剖学/生理学を理解した上でのデルタ吻合の創始,組織損傷をより少なく効率的な剝離・切離を可能にした器機開発からもうかがえる.

 そして癌の根治性を失うことのない合理的な操作手順と,無駄のない術者および的確な指示に呼応する助手の動き,コンサートマスターであり指揮者でもある金谷手術の美しさは本書に添付されたDVDで堪能できる.惜しむらくは現場の録音音声がないことか.これがあれば彼の人間力もさらに理解してもらえたであろうに.

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目次

原稿募集 「臨床外科」交見室

バックナンバーのご案内

あとがき 遠藤 格
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 先日,福岡で開催された第31回日本内視鏡外科学会において『急性胆囊炎の手術のタイミングと成績』というワークショップの司会を務めました.共同司会はTG18の立役者である北九州市立八幡病院副院長である岡本好司先生でした.250名くらい入る会場は満席で立ち見が出るほどで,聴衆の熱気を感じました.

 今回はGrade Ⅲ症例に対してStraightに手術を行った症例もかなり発表されました.多くの施設で在院死亡はゼロでしたが,いくつかの施設では数例の死亡例が報告されました.その多くは,高齢で併存疾患が存在するためにCharlson Comorbidity Indexが高そうな症例でした.実際,私が論文化させていただいた日本-台湾の臨床研究でも,Grade Ⅲでstraightに手術した症例の死亡率は3.62%でした.なかでも神経障害,呼吸障害,黄疸のいずれかが存在する症例では,死亡率は10.6%にもなります.これは肝門部胆管癌に対する肝右葉+尾状葉切除術に匹敵します.

基本情報

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臨床外科
74巻2号 (2019年2月)
電子版ISSN:1882-1278 印刷版ISSN:0386-9857 医学書院

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