Reduced Port Surgery—制限克服のための達人からの提言・14
RPSによる食道裂孔ヘルニア手術
井谷 史嗣
1
Hitoshi IDANI
1
1広島市立広島市民病院外科
pp.248-256
発行日 2019年2月20日
Published Date 2019/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407212386
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導入時のケースセレクションと限界
食道裂孔ヘルニアは図1のごとくtype ⅠからⅣまで分類され,症状もtype Ⅰでは胃食道逆流症(GERD)が中心のものが多いが高齢者女性に多いtype Ⅲ・Ⅳではdysphagiaや通過障害,貧血,絞扼などさまざまで誤嚥性肺炎を併発することもある.
近年,腹腔鏡下での食道裂孔ヘルニア修復術/噴門形成術(本術式)が広がってきてはいるものの一施設当たりあるいは術者当たりの症例数は多くはなく,一般的な手術とは決して言い難いのが現状である.単孔式食道裂孔修復術に関しては筆者らも報告しているが1),良性疾患でかつ摘出臓器もない本術式において一か所ではあるが創の延長を要する単孔式腹腔鏡手術の明らかなメリットは整容性以外には証明されていない.加えて整容性を重視した場合は臍部にmultichannel portを挿入することになるが,食道裂孔深部での操作が,特に長身者や巨大食道裂孔ヘルニア症例などで困難となることからも適応は慎重に検討されるべきである.導入時においてはまず標準の腹腔鏡手術に熟練した術者が5 mmスコープを用いたり細径鉗子を用いるneedlescopic surgery(NSS)を導入すべきで,単孔式手術の適応は限定されると考えており,本稿ではneedlescopic surgery中心に述べたい.症例選択としては,type Ⅳなど他臓器の嵌入を伴う症例や短食道が危惧される症例は慣れないうちは避けるほうが無難である.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年2月末まで)。
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