臨床外科 74巻3号 (2019年3月)

特集 これからはじめるロボット手術

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 ロボット支援手術は2018年4月にこれまでの前立腺全摘術と腎部分切除に加えて,新たに12術式が保険適応になり,本邦でもますますの増加が期待される.消化器外科領域ではあまり馴染みのなかったロボット手術であるが,これから導入しようとする施設が増加すると考えられる.その導入に当たって,手術のコツのみならず,必要な機材や手術室でのセッティングなど,ロボット手術を導入するに際して必要な知識は数多くある.本特集は,これから消化器外科領域でロボット手術を導入しようと計画している外科医や手術室スタッフにとって一助となるような企画とした.

ロボット手術をはじめるまでに準備すること

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【ポイント】

◆ロボット支援手術の導入にあたっては,各学会が定めた指針を遵守することが必須となる.

◆指針を遵守して適切なトレーニングを行うことにより,初期症例における安全性を担保することにつながる.

◆外科医のみで本手術を遂行することは難しく,病院側のバックアップと手術チームの構築が必要となる.

手術室看護師側の準備 川口 奈津美
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【ポイント】

◆ロボット手術導入チームの看護師の役割は重要であり,医師,臨床工学技士と協力しロボット導入の準備を行う.

◆ロボット手術導入時には看護手順を書式化し,症例の経験ごとに修正・改善しながら,標準化した手術手順書を作成する.

◆ロボット手術における看護師の役割を標準化し,すべての手術室看護師がロボット手術を担当できることを目指す.

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【ポイント】

◆各診療科医師・看護師・臨床工学技士の緊密な連携により適応可能な手術室を拡げることが可能になる.

◆機器・設備の準備は設置・増設するだけでなく,運用面も考慮することで安全なロボット支援下手術に繋がる.

◆機器トラブルは復帰までの時間を短縮させることとトラブルによるconversionを想定する必要がある.

麻酔科側の準備 稲垣 喜三
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【ポイント】

◆手術枠の円滑な運用や麻酔科医のワーキングスペースの確保に努める.

◆手術実施前に,手術機材の配置と危機管理のマニュアルの整備,シミュレーションを実施する.

◆ロボット支援手術の運用が安定するまで,担当する麻酔科医や看護師,臨床工学技士は固定化する.

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【ポイント】

◆日本内視鏡外科学会は「ロボット支援下内視鏡手術導入に関する指針」および「消化器外科領域ロボット支援下内視鏡手術導入に関する指針」を示した.

◆導入にあたっては,日本内視鏡外科学会が示した術者条件(技術認定取得医など),施設条件(食道外科専門医の常勤する施設など)を満たす必要がある.

◆厚生労働省の示す保険適用施設基準に則って保険診療を実施する.

◆円滑な導入には,使用するロボット支援手術システムの理解,適切な体位の選択,成熟したチーム形成が必要である.

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【ポイント】

◆ロボット特有の機能を利用することで,再現性の高いより精緻な手術操作が可能になることが期待される.

◆ロボットアームの干渉を避け操作性を上げるには,体位,ポート位置およびドッキングの方向が重要である.

◆それぞれの場面で,適切な鉗子やエネルギーデバイスを選ぶことも重要である.

*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2022年3月末まで)。

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【ポイント】

◆非開胸ロボット支援下食道癌根治術は,ロボットの特性を活かし,片肺換気なし,体位変換なし,縦隔アプローチのみで行うものである.

◆従来の手術と同等のリンパ節郭清が可能であること,術後QOLも良好であることが示されている.

◆導入に際しては,ロボットの特徴や縦隔解剖をよく理解することが重要である.

*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2022年3月末まで)。

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【ポイント】

◆ロボット支援下胃切除は胃癌に対する腹腔鏡下手術に伴う術後合併症を有意に軽減する可能性が示唆され,2018年4月から保険収載された.

◆学会指針や保険診療の要件を遵守し,ロボットの特性を熟知したうえで,安全に導入することが望まれる.

◆外科医,麻酔科医,看護師,臨床工学技士などによる“ロボット手術チーム”で取り組むことが重要である.

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【ポイント】

◆視野展開やアーム・鉗子の干渉などの腹腔鏡手術とは異なるロボット手術の特性の理解が重要である.

◆自由度の高い鉗子により膵の圧迫や熱損傷も回避できるような手技を目指す.

◆郭清操作,再建操作においては,右手のアーム切り替えを小まめに行い,適切な術野の展開,臓器の把持に留意する.

*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2022年3月末まで)。

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【ポイント】

◆ロボット手術は腹腔鏡に比べ習得が容易とされるが,腹腔鏡とは違った特有の注意点が多数ありlearning curveを要する.

◆腹腔鏡手術との細かな違いを理解したうえで,術式の1つ1つのStepに対し,どのような機器を用いてどのような手順で行うのか,あらかじめ十分なプランニングを行っておくことが非常に重要である.

◆ロボット手術は困難な症例においてその真価が発揮されるが,導入初期は困難症例を避け容易な症例から始めるべきである.

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【ポイント】

◆ロボット支援下手術を開始する際は,安全な導入が最も大切である.そのためには特に下記に留意する必要がある.

◆触覚のないロボット支援下手術では,手前の臓器へのシャフトの干渉が致死的術中合併症に繋がる.

◆サードアームを術者が主体的にコントロールし,常に最適なトラクション・カウンタートラクションの関係の中で手術操作する.

*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2022年3月末まで)。

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【ポイント】

◆肝胆膵高難度外科手術にロボット支援下手術を導入することの意義,注意点,潜在的リスク,初期成績についてまとめた.

◆ロボット支援下肝切除術・膵頭十二指腸切除術の導入に際しては,術者条件,施設条件を準拠し,安全に普及する必要がある.

◆ロボット支援下肝切除術・膵頭十二指腸切除術の手術手技のポイントとしては,血管を直接把持しないことが重要である.

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【ポイント】

◆ロボットの機能的特長は,精緻な肝門部Glisson鞘確保・処理や出血時の縫合止血に有用である.

◆Firefly modeは肝腫瘍や肝区域の同定に有用で,必須の機能と言える.

◆肝切離デバイスはいまだ不十分であり,その拡充は喫緊の課題である.

◆高難度の解剖学的肝切除術や脈管再建を伴う肝切除術で腹腔鏡肝切除術に対する優位性が期待される.

*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2022年3月末まで)。

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【ポイント】

◆ロボット支援腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術では,精緻な剝離・正確な運針が期待できる.

◆確実な動脈先行処理には,ロボット支援手術の特性を考慮したSemi-derotation techniqueが有用である.

◆Wrapping double mattress anastomosis(Kiguchi-method)の導入により,安定した膵空腸吻合が可能となり定型化された.

*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2022年3月末まで)。

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はじめに

 進行肝細胞癌に対する全身治療薬として,それまでの制癌剤と作用機序が異なる分子標的治療薬(TKI)ソラフェニブが2009年6月に本邦で承認を受け,華々しく登場した.しかし,奏効率は2〜3.3%1,2)と高くないにもかかわらず有意な生存延長をきたすlong SDを主な特徴とした薬剤であり,実臨床において効果が実感しにくい薬剤であった.その後,ソラフェニブに続く薬剤の臨床試験が試みられたが,いずれも主要評価項目を達成できず,10年弱の間ソラフェニブに続く薬剤は登場してこなかった.2016年にソラフェニブ不応例に対する二次治療薬としてレゴラフェニブが生存延長効果を証明し3),さらに2017年にはREFLECT試験により一次治療薬としてレンバチニブがソラフェニブに対して生存の非劣性を証明し4),2018年3月に本邦で承認された.さらに,2018年にはソラフェニブ不応後の二次治療薬として,カボザンチニブ5),ラムシルマブ6)の予後延長効果が証明された.

 近い将来,本邦においても5つのTKIが肝細胞癌に対して使用できる可能性があり,肝細胞癌の化学療法はめまぐるしく変化してきている.さらに,最近非常に注目を浴びている免疫チェックポイント阻害薬の臨床試験も進んでおり,近々その結果が待たれるところである.近い将来,肝細胞癌の化学療法において多数の治療薬が使用できる可能性があり,各薬剤をどのように使い分けていくかが今後の課題であり,それぞれの薬剤の特徴を十分理解しておく必要がある.

Reduced Port Surgery—制限克服のための達人からの提言・15

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はじめに

 胃癌に対する腹腔鏡下胃切除にreduced port surgery(RPS)が導入されてから,pureなsingle-port surgery(SPS)を含め,さまざまなreduced port gastrectomy(RPG)が報告されてきている.整容性を目的としたRPGが試みられるなか,癌に対する手術であれば,安全性はもちろん根治性を担保することは重要である.われわれは,当初よりSPSを行いそのfeasibilityは実証してきたものの,動作制限による外科医側のストレスや,助手が参加しにくいSPSの教育現場を鑑み,ニードル鉗子3本を追加して行うRPSを開発し標準化した1,2).本稿では,ニードル鉗子補助下単創式腹腔鏡下胃切除術(needle-device assisted single incisional laparoscopic gastrectomy:NASILG)を詳述する.

*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2022年3月末まで)。

急性腹症・腹部外傷に強くなる・12【最終回】

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 一年間の連載も今回が最終回です.気合いを入れていきましょう!

 Interventional radiology(IVR)は出血コントロールには欠かせない治療手段であり,技術や機材の進歩でその適応は拡大され,今や外傷に対する非手術治療の中心となっています.しかし,その適応判断や事前準備,手技中の全身管理や手術移行の判断,および合併症への対応を含めたIVR後管理などで外科医の果たすべき役割は大きく,救命のためには,IVR医と外科医の相互理解と協力が不可欠となります.過去10年間に当院で行った緊急IVR 657件のうち,外傷は123件,内因性は534件であり,急性腹症・腹部外傷が占める割合が非常に多く,全例でわれわれ外科医が関与していました(表1).

病院めぐり

明和病院外科 栁 秀憲
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 当院は兵庫県西宮市,阪神甲子園球場から徒歩10分少々の閑静な住宅街にあります.西宮市は兵庫県の南東部にあり,大阪・神戸のほぼ中間に位置しています.どちらの都市にも電車で約15分という便利な場所に位置するとともに,豊かな自然に恵まれた「文教住宅都市」として発展してきました.当院は甲子園球場との関係も深く,甲子園球場で主催されるプロ野球,イベントの救護班を担当しています.

 当院は,戦時中の1940年に川西航空機株式会社(現新明和工業株式会社)の職域病院として設立された川西航空機付属病院が起源です.1947年に明和病院と改名,1954年に医療法人として独立しました.医療法人として創立64年ですが,実質78年間当地の地域医療に貢献してまいりました.

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要旨

症例は65歳,男性.肝細胞癌(S3)の手術加療目的に紹介となった.術前のDIC-CTにて胆囊管に合流する副肝管(B5)を認めたため,術前に内視鏡的経鼻胆道ドレナージチューブ(ENBDT)を挿入し,腹腔鏡下左肝切除術と胆囊摘出術を予定した.胆囊摘出の際,術前に留置したENBDTより術中造影を行い,副肝管を同定したのち,分岐部よりも末梢で胆囊管を切離した.その後,腹腔鏡下左肝切除を施行し,手術終了とした.合併症のない安全な肝切除に際して,詳細に胆道走向を把握することは必要不可欠であり,本症例のように副肝管を有する症例に対してENBDT留置は術中胆道損傷の防止策として有用であると考える.

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要旨

4歳10か月男児.急性腸炎で入院中に心窩部痛と黒色便が出現.限局した筋性防御,腹部CTで十二指腸壁肥厚,腹腔内遊離ガスを認めた.上部消化管穿孔の診断で,保存的治療開始.翌日大量吐血し緊急手術施行.十二指腸球部前壁に穿孔と穿孔部辺縁からの出血を認め,穿孔部を縫合閉鎖・大網被覆した.術後6日目に再度大量吐血.上部消化管内視鏡検査で,十二指腸球部後壁に潰瘍(接吻潰瘍)があり,拍動性出血を伴う露出血管を認めた.内視鏡的治療で止血したが,翌日再び大量吐血し緊急手術を施行.後壁潰瘍は穿孔し,胃十二指腸動脈と膵臓が露出しており,局所治療困難で広範囲胃切除術を施行.術後7年経過したが成長発達に問題を認めていない.

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要旨

2017年10月に,わが国の外科医の減少を増加に転じさせる方策を講じるために,ハワイのQueens' Medical Center Hospital外科を見学する機会を得た.学生への外科臨床教育は,日本とは異なり,学生が日本の研修医と同様の役割を果たすなかで,レジデントから屋根瓦方式の外科教育が行われていた.外科レジデントに対しては,「相互評価システム」のなかで,指導医による質の高い教育が行われていた.レジデントは,多忙な日常臨床のなかでも,大幅な地位向上が得られる外科専門医をめざして切磋琢磨していた.日本の外科医志望者を増加させるためには,日本の優れた点を残しつつ,外科医が「憧れられる職業」になることが必要である.

1200字通信・128

昔の話です 板野 聡
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 私は1979年卒ですから,この4月で医学部卒業40周年を迎えます.思えば,一瞬のでき事であったようでもあり,周りの景色を眺めてみれば,1年の40回分の積み重ねであったのだと改めて確認することにもなっています.

 私は,大学卒業後,岡山大学第一外科に入局し,大学での数か月間の研修後,関連病院へ研修に赴きました.今で言う初期研修に相当するのでしょうが,今のようにいくつかの科を回ることはなく,いきなり,全て外科の研修といった具合で始まりました.

ひとやすみ・174

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 献血ルームにはさまざまな想いを抱き,献血者が集う.そして休憩室に設置されたノートに,献血者が日頃考えていることや想っていることを自由に書き綴る.またそれを読んだ献血者が感想を追記し,さらに他の献血者がそれらを読み継いで記載する.

 「初めての献血に来ました.針を刺されると思うと不安でしたが,看護師さんが優しく,また痛みもそれほどではなく,意外と楽でした.アイスもおいしく,次回は友達を誘って来たいと思います」

昨日の患者

親友に娘と夫を託す 中川 国利
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 幼き最愛の娘を残して逝かざるを得ない宿命と悟った時,人はどのように対応するであろうか.悩んだ末に親友にすべてを託し,旅立った患者さんを紹介する.

 Tさんは30代前半の乳癌患者であった.骨や肺に転移をきたしたため,化学療法やホルモン療法を行った.そして実母が幼い孫娘を伴いながら付き添い,ご主人も仕事が終わると必ず病室に顔を出した.またTさんの高校生時代からの親友であるKさんも頻繁に訪れ,病室に笑い声さえこぼれた.

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 2002年の夏に那覇空港に東京から研修医が到着した.空港からバスに乗ってたどり着いた先は沖縄米海軍病院だった.研修医は米軍病院の救急部門で採用をめざして必死に実習をしていた.その際に,米国の救急医学レジデンシーを卒業したばかりの日焼けした指導医がパラパラとポケットブックをめくっていた.

 「すみません.ちょっと私にも見せてもらえませんか?」とポケットブックを手にとった研修医はびっくりした.手のひらサイズのポケットブックの1ページ1ページにぎっしり情報が詰まっている.頭部CTの適応,頸椎画像撮影の適応から抗生物質の使い方,肺塞栓のプレディクションルールなど,まさにこれが「ERのミニマムリクワイアメントだ!」と研修医は思った.エビデンスの大事なところが見やすくコンサイスにまとまっている.しかも,日本のハンドブックにありがちな根拠文献のない「俺流」の列挙ではない.

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 臨床現場において「病変の質的診断」は治療方針の決定に直結するため極めて重要である.特に,消化管,肝胆膵領域では悪性病変の頻度が低くなく,常にがんを念頭に置いて鑑別診断していく必要がある一方,がん以外の腫瘍や良性病変も存在するため慎重な診断が求められる.質的診断は画像診断と生検や細胞診などの病理診断の両者によって行われるが,ここに「落とし穴」があることを知っておく必要がある.臨床側では生検や細胞診の検体を病理に提出さえすれば確定診断が得られると考えている「勘違い」の医師が多いが,種々の理由によるサンプリングエラーがあること,肝生検やEUS-FNAの場合には腫瘍細胞の播種の危険性があることも忘れてはならない.片や,病理側では病理医の中でも専門性に差があること,HE染色だけでは確定診断ができない病変があること,病理判定の中にもグレーゾーンがあること,そしていまだわかっていない病態や病変も存在する.この「落とし穴」を埋めるために臨床医も病理を学ぶ必要があり,かつ病理医との連携を深めることが重要となる.

 『臨床に活かす病理診断学—消化管・肝胆膵編(第3版)』が医学書院から出版された.本書には,病理医だけではなく,臨床医が知っておくべき内容が満載である.入門編,基礎編,応用編で構成されており初学者にも理解しやすい.中でも入門編の「Q&A」,基礎編の「特殊染色の基礎知識」,見返しの「使用頻度の高い組織化学染色」は臨床医,研修医に大いに役立つ.「抗体早見表」や資料編として「病理診断用語集」も読者にはありがたい.

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目次

原稿募集 「臨床外科」交見室

バックナンバーのご案内

次号予告

あとがき 絹笠 祐介
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 今回の特集は,昨年4月に多くの術式が保険適用になったロボット手術についてでした.私とロボット手術との出会いは,10年前の2009年でした.当時大腸癌領域では世界一と言われていた韓国の大学に,講演で呼ばれた際,実際に見せていただいた時です.当時のロボット手術はまだまだマイナーで,かつ逆風も目に余るものがある状況での見学でした.当然エビデンスもなく,実際に目の当たりにした手術も,長時間を要し,決して上手な手術ではありませんでした.これでは皆が批判的になるのも仕方がないというのが素直な感想でした.ただ,衝撃を受けたのは手術ではなく,その手元の動きと鉗子の動きでした.まさにintuitive motionで,これは必ず実際の手術に,患者に役に立てることができると思えたことが,今に継ったとしみじみ思っています.時期を同じくして,前職場にて診療科を統括できる立場になったので,院長に直談判をし,病院に導入してもらいました.震災等があり予定は遅れたものの,病院幹部の理解と,コメディカルも含めた良きチームに恵まれ,当時としては非常にスムースな導入が出来ました.

 社会的な問題,技術的な問題,人の問題等々,新しい治療を始めるのは大変なことです.特に外科手術に関して,抗がん剤のようなエビデンスを求めるのは不可能です.エビデンスを求められる厳しい時代に誕生したロボット手術ですが,今後の発展性も考慮すると,間違いなく手術の主役になり得る分野です.一方で,これまでの手術に満足してしまった可哀想な外科医にとっては,無用の長物でもあります.ロボットの機能を如何に患者に提供していくかが,今後問われる外科医の資質ではないかとも思っています.

基本情報

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臨床外科
74巻3号 (2019年3月)
電子版ISSN:1882-1278 印刷版ISSN:0386-9857 医学書院

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