臨床外科 73巻4号 (2018年4月)

特集 機能温存と機能再建をめざした消化器外科手術—術後QOL向上のために

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 近年の基礎的研究および診断・治療技術の進歩により,外科治療についても必要十分であり,かつより低侵襲な手術を行うという考え方のもとに医療が展開されています.しかし低侵襲手術であれ縮小手術であれ,外科手術では何らかの(または幾許かの)機能の喪失は避けられないことも事実です.そのため外科医には,手術による機能の低下を最小限に留めること,その機能を可及的に再建することが,術後の患者のQOLの点からも強く求められています.

 本特集では,患者の術後QOLの面から,まず総論で生理学的および統計学的評価法を解説し,各論では各術式における機能温存もしくは機能再建法に関して,その適応,治療のコツ(動画も含めて),結果について解説していただきました.

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【ポイント】

◆機能温存術後の機能評価には消化管運動収縮検査などの生理学的評価も必要となる.

◆消化管収縮は常に一様に動いているわけではなく,空腹期と食後期で収縮波形態が異なり,術後早期には正常な収縮は起こらない.

◆目的とする器官を温存しても,その機能が正常に働くとは限らない.

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【ポイント】

◆QOLを評価する尺度は,すでに標準化された尺度のなかに適切なものがあれば,それを使用するのが第1選択である.

◆健康関連QOLは,選好に基づく尺度(代表例:EQ-5D)とプロファイル型尺度(代表例:包括的尺度SF-36やがん特異的尺度EORTC QLQ)に分けられる.

◆QOLをエンドポイントとする場合,質問票の選択,測定時期,測定回数,統計解析方法の設定など多岐にわたる準備が必要であり,データ解析では特に,多重性の問題とデータ欠損の二点に留意する.

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【ポイント】

◆舌骨上筋群温存,舌骨下筋群切離により,術後の喉頭挙上能力を確保し,嚥下機能を保持する.

◆輪状咽頭筋,下咽頭収縮筋下縁の切離により,喉頭気管と頸部食道の剝離が輪状軟骨上縁付近まで延長可能となり,最大限に喉頭温存の口側マージンを確保できる.

◆胃管の場合,食道から胃管への走行がストレートになるように,遊離空腸の場合,空腸に適度な緊張をもってストレートになるようにすることが,食事の通過に重要である.

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【ポイント】

◆腹部食道を可及的に温存し,迷走神経肝枝と幽門洞枝を温存する.

◆再建において新穹窿部とHis角を形成する.

◆前庭部大彎側に過剰な弛みが生じないように吻合する.

*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2021年4月末まで)。

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【ポイント】

◆噴門側胃切除後の観音開き法再建は,良好な食事摂取と逆流防止効果を備えた優れた再建法である.

◆狭窄予防のコツは,横に広い吻合である.吻合径を胃に合わせることで幅の広い吻合となる.

◆大きめのフラップを作成することで吻合部の締め付け感を軽減できる.十分なフラップ面の剝離が重要である.

*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2021年4月末まで)。

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【ポイント】

◆噴門側胃切除術後の空腸間置再建は,逆流性食道炎を予防する目的に開発された再建法である.

◆下部食道と空腸との吻合部へ緊張がかからないよう,空腸間膜処理と挙上ルートについて留意する.

◆横行結腸間膜の孔,空腸空腸吻合部の腸間膜間,Petersen defectの閉鎖は確実に行っておく.

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【ポイント】

◆幽門保存胃切除術は,胃切除後障害を軽減し良好な術後QOLを保つことができる機能温存胃切除術である.

◆早期胃癌が対象であり,根治性を損なうことのない手術適応決定と,正確な術前診断,慎重な症例選択が不可欠である.

◆腹腔鏡下幽門保存胃切除・体腔内三角吻合により,開腹手術と同様の胃胃端々吻合再建が可能である.

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【ポイント】

◆胃全摘術後の空腸パウチ再建は,古くから様々に試みられてきたが,いまだ完成された手術には至っていない.

◆多くの前向き比較試験が行われたが,パウチ再建の意義は明確には証明されていない.

◆しかし様々な工夫を施すことで,パウチ再建は復権する可能性がある.

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【ポイント】

◆根治性と機能温存の観点から,家族性大腸腺腫症に対して大腸全摘・J型回腸囊肛門吻合術が標準術式とされている.

◆肛門側操作で確実な粘膜切除と括約筋温存を心がけることで根治性と機能温存が両立される.

◆1期的手術や腹腔鏡手術の有用性が期待されるが,いまだ十分なコンセンサスを得たものではなく,専門性の高い術式であるという認識をもつことも必要である.

*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2021年4月末まで)。

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【ポイント】

◆直腸癌手術時の骨盤自律神経損傷で,排便障害,性機能障害,排尿障害が生じる.

◆大動脈前面の操作では,血管の外膜が見えないような腸間膜遊離操作が必要である.

◆腹膜反転部の左右外上側の操作で,骨盤神経叢から出る精嚢,前立腺,子宮,膀胱枝の損傷に注意する.

*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2021年4月末まで)。

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【ポイント】

◆幽門輪温存膵頭十二指腸切除は,胃の2/3を切除する古典的膵頭十二指腸切除に比べ,胃の機能を温存することにより,術後の長期的な栄養状態の改善を認めるが,一定の頻度で胃排泄遅延が発生する.

◆亜全胃温存膵頭十二指腸切除は胃機能を温存しつつ,胃排泄遅延の軽減をめざした術式である.

◆両術式に大きな優劣はつけがたく,各症例,各施設において,安全な術式選択をする必要がある.

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【ポイント】

◆膵頭部を主座とする良性から低悪性度病変に対して,機能温存を考慮した膵縮小手術としての膵頭十二指腸第Ⅱ部切除術(PHRSD)は有用である.

◆PHRSDでは胃十二指腸動脈と前下膵十二指腸動脈を温存し,十二指腸の血流を維持することが重要である.

◆PHRSDの手術手技は,習熟すれば簡便であり,術後合併症も少ない.

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【ポイント】

◆膵周囲の授動を先行することで脾動静脈周囲の展開が容易となる.

◆脾動静脈を直線化してエネルギーデバイスの軸に合わせることで,安全に周囲剝離や細い枝の処理が可能になる.

*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2021年4月末まで)。

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【ポイント】

◆胆囊摘出後には,濃縮されない胆汁が食間も腸管内に排出されるため,消化器症状に悩まされる患者群(胆囊摘出後症候群)が一定頻度で存在する.

◆胆囊摘出後の変化に起因すると考えられる,癌発生リスク上昇に関する大規模な報告が数多く出てきている.

◆外科的治療では機能低下を最小限に抑えることが望まれ,肝切除における胆囊摘出についても慎重に適応が決定されるべきであり,安易な胆囊摘出は避けるべきである.

Reduced Port Surgery—制限克服のための達人からの提言・4

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はじめに

 内視鏡外科手術の普及,発展はさらなる低侵襲性の追求を促し,needlescopic surgeryや単孔式内視鏡手術などの開発のきっかけとなった.本稿では,needlescopic surgeryで使用する器具(needlescopic instruments:NSI)について,開発の歴史,器具の機能や特徴,さらには当院でのneedlescopic surgeryの実際やNSI使用上のピットフォールを解説する.

病院めぐり

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 小郡第一総合病院のある山口市は山口県のほぼ中央に位置し,人口約19万人の県庁所在地です.北は中国山地から南は瀬戸内海まで,豊かな自然や歴史が共存する文化都市です.室町時代に大内氏が山口を本拠にしたことから発展しました.また,幕末には萩から山口に藩庁が移され,明治維新の中心的役割を果たしました.2018年は明治維新150年にあたります.「幕末維新やまぐち」と題したキャンペーンやイベントが開催中です.

 当院は山口県農業会にて1948年に開設され,そののち山口県厚生農業協同組合連合会にて運営されてきました.一般病床182床で全16科,常勤医師28名,研修医1名,外国人医師2名が勤務しています.JR新山口駅のすぐ北側に位置し,中国道,山陽道の小郡ICに近く,山口宇部空港にも近いなど,学会出張には大変便利なところにあります.

急性腹症・腹部外傷に強くなる・1【新連載】

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■診療の基本姿勢

 今夜は,救急当直の日です.23時45分,早速看護師さんからコールがありました.

 「先生,24歳女性,右下腹部痛の患者さんです.バイタルサインは安定していますが痛みが強いようです.診察お願いします.」

英文論文を書いてみよう!—なかなか書けない外科医のための集中講義・4

論文のbrush-up 杉山 政則
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 前回の「論文の基本構成」で,とりあえず論文の形(第1稿,草稿)になった.今回の「論文のbrush-up」で推敲を行って,論文を完成させよう.

良い科学論文の5つの条件

 良い科学論文の5つの条件が挙げられている(表1).出典が不明である.

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要旨

症例は70歳代,男性.食道癌に対する食道亜全摘,胃管再建術後6年目に膵頭部癌が認められた.腫瘍は右胃大網動脈(RGEA)へ浸潤しており他科で化学療法を施行されていたが,閉塞性黄疸,通過障害をきたすようになり当初はバイパス術目的で紹介となった.しかし当科で根治手術可能と判断し,膵頭十二指腸切除(PD)を行った.胃管血流がRGEA浸潤によって右胃動脈(RGA)支配に血流改変されていたため,胃十二指腸動脈(GDA)を根部で切離しR0手術を達成できた.本症例の経験から,食道癌胃管再建術後の膵頭部癌に対するPDにおいて,計画的な血流改変によってRGEAを腫瘍近傍まで剝離することなくGDAを根部で切離し,根治性をより高める治療戦略の可能性が考えられた.

1200字通信・116

先生 板野 聡
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 私が大学を卒業したのは1979年のことですので,ずいぶんと時間が経ちました.それでも毎年春になると,卒業当時の新鮮な気持ちを思い出し,リフレッシュさせてもらっています.一方で,最近の新人さんたちは,すでに私が医者になってからお生まれになった方ばかりと気付かされ,医者になるまでの人生より医者になってからの人生のほうが長くなったのだと思い知ることにもなっています.

 最近のことですが,医学部に在籍中の甥っ子と話をしながら,医学生時代,5・6年生ともなると恰好だけは医者らしくなってはいたものの,果たしてその頃になんと呼ばれていたのかなとの想いが湧いてきました.当たり前の話ですが,看護婦(当時は「婦」)さん達のほうが余程役に立ち,学生の私は「君」付けか「さん」付けで呼ばれていたのだろうと想像しています.そんなことを考えていたとき,私が初めて「先生」と呼ばれたときのことを,ふと思い出すことになりました.

ひとやすみ・162

献血啓発の出前講演 中川 国利
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 少子高齢社会の急激なる進展に伴い,血液需要が高まっているにもかかわらず,若年層を中心に献血者の減少が著しい.そこで将来の献血者を確保するため,小・中・高・大学校への献血啓発出前講演を頻繁に行っている.

 講演では生徒の年齢を考慮しながら,血液の働き,献血から輸血までの血液の流れなどを説明した.そして講演後のアンケート調査では,9割弱の生徒が献血に関心を持ち,8割を超える生徒が献血に協力したいと答え,献血に対する理解が深まった.実際,献血ルームに友人と連れだって献血に来た高校生,また親子で献血バスを訪れ,母親が献血する様子を興味深く観察した小学生もいた.

昨日の患者

術後の精神錯乱 中川 国利
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 高齢者では術後に,一過性の精神錯乱が生じることがある.付き添う家族は普段と異なる錯乱状態に困惑するが,患者の異常言動には自身の来し方が色濃く反映され,主治医としては興味が尽きない.

 90歳代前半のNさんは,現役時代は小・中学校の教師を永らく勤め,退職後も地元の町の教育長として活躍した教育者であった.高齢ながら全身状態はすこぶる良好で,認知障害も認めなかった.また検査には協力的で,手術の説明でも理解が早く,とくに異議を唱えることもなかった.しかしながら全身麻酔下に腹腔鏡下結腸切除術を施行すると,術後に精神錯乱が生じた.

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次号予告

あとがき 桑野 博行
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 2004(平成16)年4月より,本誌「臨床外科」の編集委員を拝命し,本年3月をもって「卒業(退任)」させていただくこととなりました.就任は,田島知郎先生(東海大学・当時,以下同様)の後任としてであり,その時には北島政樹先生(慶應義塾大学),跡見裕先生(杏林大学),萩原優先生(聖マリアンナ医科大学),畠山勝義先生(新潟大学),炭山嘉伸先生(東邦大学)の5先生が編集委員をお務めになっておられ,錚々たる外科学の泰斗の皆様の中での不安と,一方で憧れの先生方とご交誼をいただく貴重な機会への期待を抱きつつ参加させていただいたことが昨日の如く思い出されます.

 この14年間,編集作業を通して多くのことを学ばせていただきました.論文査読に加え特集企画の立案にも携わり,そしてこの「あとがき」の執筆も大変楽しみにして,今振り返ってみますと随分勝手なことばかり書かせていただきました.それを寛容していただきました読者の皆様,編集室の皆様に心から感謝申し上げます.本稿が私にとって最後の「あとがき」となりますが,相も変わらず勝手なことを述べてみたいと思います.

基本情報

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臨床外科
73巻4号 (2018年4月)
電子版ISSN:1882-1278 印刷版ISSN:0386-9857 医学書院

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