臨床外科 22巻2号 (1967年2月)

特集 臨床検査後の偶発症

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はじめに

 わが国で気管支鏡の使用目的が気管,気管支内異物,気管支ポリープ,腺腫の摘出といつた治療上の目的から,幅広く診断上の目的に使用されるようになつたのは,肺結核の外科的療法が盛んに行なわれるようになつた時期からで,気管支病変の有無あるいは病変の程度を知ることが肺結核の外科的療法はもちろん,その治療方針を確立するために必須の検査法として登場するに至つた.

 最近は,胸部外科手術の非常な進歩と共に,肺癌を始めとして肺気管支疾患全般の診断という面で,気管支鏡検査が特に重要視され,さらに全身麻酔の併用によつて,患者の負担を軽減し,診断上の精確度も向上し,安全性の上からも,外来で手軽に行なえる検査法として考えられるようになつてきた.また最近はグラスファイバーの登場により,Optic-Fiber Scopeが考案され,より高い照度を得ることにより,可視領域を拡げると共に,気管支粘膜の微細な病変も発見できるようになりさらに気管支の運動を始めとして,各種の機能的検査を,気管支内腔という場を利用して施行することも研究されるようになつてきた.

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はじめに

 近時,腹腔鏡検査症例数の増加にしたがって,同時に発生する偶発症の問題も無視しえなくなつてきた.1963年山川のおこなつた全国集計によると,腹腔鏡検査3,319例中の事故例は39例1.17%を占め,その内訳は皮下気腫15例,縦隔気腫8例,動静脈栓塞6例,循環不全5例,胃腸損傷5例であつたと報告している.また1966年,有賀は第8回日本内視鏡学会総会において検査による偶発事故あるいは副作用の件数およびその頻度に言及し,腹腔鏡検査による偶発事故あるいは副作用の頻度は11,130例中21例0.189%と推定しており,これは各種内視鏡検査法のうちでも最高の事故率と報告した.われわれの経験によると腹腔鏡検査法は熟練した術者によつて行なわれるならば,安全かつ確実な検査法であり,えられる所見もきわめて重要であるが,一応腹腔内で各種の操作を行なうことは常に偶発症発生に対する深い注意と,その対策に十分な用意を必要とすることを痛感しているしだいである.

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はじめに

 肝胆道系疾患の臨床検査法には,古くからある十二指腸液検査をはじめ,最近の131I Rose Bengal試験,超音波検査にいたるまで多岐にわたつており,それぞれの特長を持つている.

 ところで,臨床検査法は被検者になんらの苦痛も与えず,安全かっ確実にその目的を達することが理想であるのはいうまでもない.

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はじめに

 どのような場合であつても,臨床諸検査で事故を起こしてはならないというのが私の信条である.このためには第一には無理をしないことである.内視鏡検査中で,診断がはきりしないうちに検査を中断しなければならないことがある.このような時には躊躇せずに検査を中止し,後日再検査し,またレ線や一般検査らと総合的に検査を進めるべきである.第二には操作は各内視鏡検査方法の基礎にもとづいて慎重に行なうべきである.操作が行詰つた時には,なおさらこの基本操作に徹すべきであつて,無謀な操作は絶対に行なうべきではない.

 しかし無理せずに基本的に操作すれば,内視鏡ことに直腸鏡検査では偶発症を未然に防ぐことができるであろうか.直腸鏡独自の基礎とは一体どのような点であろうか.こんなことを考えながら以下記述することにする.

膀胱生検後の偶発症 東福寺 英之
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膀胱生検が行なわれる疾患

 膀胱生検が行なわれる主な疾患はいうまでもなく腫瘍であり,特に悪性度,浸潤度の決定に必要である.また,これらの鑑別の対象となる疾患として,前癌状態,炎症性産物があげられる.

 膀胱腫瘍のうちもつとも頻発するのは移行上皮原発の乳頭腫または乳頭状癌である.また尿膜管前立腺,直腸,子宮,時として精嚢腺より発生し浸潤性に膀胱に至る腺癌を認めることがある.また,まれではあるが膀胱原発の肉腫を見ることがある.

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はじめに

 現在,消化器病の臨床において,胃内視鏡検査はもはや不可欠の日常検査法となり,胃疾患診断の有力な手段として,レントゲン検査と共に威力を発揮している.一昔前まで,胃内視鏡検査は患者にとつてあまり楽でない検査であつたばかりでなく,医師にとってもかなり手間のかかる検査で誰もが気軽に行なえたものではなかつた.しかし最近では検査用具の急速な改良,発達により事情は大いに異なり,胃内視鏡検査は重要な日常検査法としての地位を確立するに至り,検査件数も飛躍的に増加している.1966年の内視鏡学会の全国集計によれば,日本国中の1395ヵ所の医療機関で,毎日,胃内視鏡検査が行なわれているとのことである.

 われわれは慶大外科において,胃疾患の外科的治療を行なうにあたつて,その前提となる適応決定に理論的根拠を与える立場から,胃内視鏡検査の有する効力に早くから着目し,昭和27年1月より各種の胃内視鏡を用い,経験を重ねてきた.

グラフ

腹腔造影法 佐藤 博 , 大坪 雄三
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 腹腔造影法とは,腹腔に血管造影剤を注入して,腹腔臓器漿膜面の形態的変化を追求しようとする方法である.従来汎用されているバリウム服用によるX線診断法は,消化管内腔よりの病変の追求であつて,粘膜面の病変がどの程度漿膜面に及んでいるかについては推論の域をでない.ましてバリウムの到達しない肝臓漿膜面,横隔膜面あるいは後腹膜の病変はまつたく把握できない.われわれはこの点に着目し,簡単な操作で容易かつ安全に施行できる本法を考案・工夫したものである.

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はじめに

 肝臓の悪性腫瘍に対して外科的治療が積極的に行なわれないのは,巨大な実質臓器であるために腫瘍性変化の認知が遅れることが一因である.また一方,生理的予備力が大きいために,いちじるしく分化した多種多様な機構はよく代償されるので,大なる障害性変化がない限り,日常生活上支障をきたさない.このゆえに医療を求める機会が少なく,来院時にはすでに外科的切除の機会を失していることが多いためもある.さらに医療側での肝外科の認識があまりにも不十分であることもその原因の一端をなしているであろう.肝に関する研究は代謝機構に関連する限り,きわめて高いレベルで論ぜられるが,局在腫瘍の検索については,この数年来開発された各種の方法がようやく一般化された現況で,肝に局在する悪性腫瘍の早期発見を積極的に行なうことの困難さは,外科的医療から遠い膵と同様である.

 内外の文献をみると,広汎肝切除成功例を中心とした報告はあるが,症例数も少なく,今後の外科が開発せねばならぬ焦点の1つであろう.わが国では三上1),本庄2),槇3)らによつてこの領域へのアプローチは精力的に進められ,肝区域についての概念も認識されてきたようである.われわれの教室でも最近になつて肝腫瘍の症例や切除例も経験する機会がましてきたので,われわれが行なつている切除のための診断法や,切除に伴う変化などをのべ,肝癌の早期診断の周辺をさぐり,けわしい肝外科への道を開く一助としたい.

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 第3回世界消化器学会議(The 3rd World Congress of Gastroenterology,会長 川島クリニック所長,川島震一氏)は1966年9月18日から24日まで,57国から約3000人が参加して開かれた.本誌では,特に会議のパネルディスカッション「胃炎」に参加された村上忠重氏と,「消化性潰瘍」に参加された大井実氏にお集り願い,会議の様子ならびに日本の消化器研究の現状を話し合つていただいた.

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はじめに

 Fallot氏四徴症は,チアノーゼを生ずる先天性心疾患のうち,もっとも頻度の高い疾患として注目されているが,その外科的治療については,現在なお数多くの問題点を有している,その一つは短絡手術と根治術の手術適応の問題である.短絡手術を選ぶか根治術を選ぶか,それをどのような時期に施行するか.また短絡手術を施行した後,どのような症例にどのような時期に根治術を施行するかと言う問題については,現在なお十分な解答は与えられていない.今回,これらの問題を解決する端緒の一つとして,また手術の予後を追究することは手術にたずさわつた者の責務でもあると考え,われわれの教室でおこなつたBlalock-Taussig氏手術後2〜10年を経た40例の症例につき,遠隔成績を調査したので報告したいと思う.

 Blalock-Taussig氏手術の遠隔成績については,すでに多くの報告をみるが1)2)3)4),その年次的変化を追究検討した報告は乏しい.われわれは,その症例数は少なく,術後の経過年月も短いが,年次的変動を主目的として遠隔成績を検討した.

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はじめに

 小児の縦隔腫瘍は比較的稀な疾患に属するが,最近学校検診の普及と共に増加の傾向にある.特に重要なことは症状が軽度なこと,およびしばしば咳,胸痛などの胸部の症状を伴うことから見逃されたり,時には肺結核,肺門浸潤などと診断され,誤つた治療をうけていることもある.多くの場合,放置されると巨大発育をきたし,その後の手術を困難とし,あるいはたとえ良性腫瘍でも,悪性変化をする傾向が強いので,可及的早期に発見し,早期に摘出することが望ましい.われわれは最近,10年間(1956年〜1965年)に集計しえた本邦報告例154例および教室における12例の経験より,小児期縦隔腫瘍の特徴についてのべたい.

前斜角筋症候群 大河原 重久
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はじめに

 前斜角筋症候群は過度に緊張した前斜角筋,あるいは肥厚した前斜角筋と中斜角筋により,腕神経叢,および鎖骨下動脈が圧迫されて生ずる一群の症候群に対する一般名である.この他に,同じ圧迫症候群に第7頸椎を主とする下部頸椎横突起の異常延長により生ずる,頸肋骨症候群,および鎖骨と第1肋骨との間隙狭小により圧迫症候群を示す肋鎖症候群がある.これらいわゆるThoracic inletの左右非対称性が存すること多く,この非対称性は頸肋骨に非対称の荷重を加えて発症させ,また肋骨鎖骨間隙の異常狭小を,片側にさらに増加させて発症したり,また脊椎に異常廻転を与えて斜角筋群に異常緊張を生じさせて,前斜角筋症候群を発生する大きな因子となる.このように,これらの症候群は互いに深い因果関係を有していると考えられる.

Eviscerationの発生と予防 好地 衛
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はじめに

 開腹術のあとに,手術創より腸管,大網など臓器の脱出を伴う腹壁縫合不全は,実は術後合併症の極めて基本的な問題であり,ことに新生児の外科,老人の外科において留意すべきであるが,本邦ではあまり問題としてはとり挙げられなかつた.

 しかし,国外では,Evisceration,Abdominalwound disruption1),あるいはBurst abdomen2),Separation of abdominal woundなどと呼ばれ1932年Sokolovの集計報告3)以来,多数の報告があり,その発生や予防に深い関心が持たれてきた.Eviscerationは新生児,あるいは高齢者に発生しやすく,しかも,それらに積極的な開腹術のなされる今日,外科医はこの忌むべき合併症に疎かであつてはならないと思う.

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 特発性食道拡張症の病因論については,きわめて多くの説があり論議されてきたが,Rake (1926)が病理組織学的に証明したAuerbach神経叢の変性,または消失の所見は本症にはつねに認められることである.また,近年食道内圧曲線による検査術式が発達し,種々究明されてはきたが,なおその詳細な機序については不明な点が少なくない.

 病因論について,一致をみない以上,決定的な治療方法が定まらないのは当然であろう.事実,Willis(1678)の鯨骨ブジーに始まつて,Rumpel, Jaffe, Mikulicz, Wendel,Heller, Zaaijer, Girard, Heyrovsky,Gröndahl, Wangensteen, Douprav-sky, Merendino, De-Oliveria, Pe-trovsky, Wendel-中山氏法など枚挙に暇がない.結局は本症を治療すると同時に,逆流性食道炎を起こさない術式を求めてきたわけである.通過が良好になつても,逆流性食道炎が惹起されれば,患者は原疾患によるよりも激しい愁訴をもつことがある.術式の変遷はこの合併症防止に努力してきた歴史と言つても良い.

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 第8回日本消化器病学会,第4回胃集団検診学会,第4回内視鏡学会秋期大会は,うちつづく国際,国内学会にもかかわらず,多数の参加者をあつめて盛会裡にひらかれ,内容的にも大へん実りの多い学会と思われた.それは会長広島大学浦城教授の英断で,一般演題の発表は壁発表にとどめられ,重要な主題10題だけをsymposiumとしてとりあげるという,新しい形式をとられたのであるが,それが成功にあずかつて力があつたものと思われた.

 10主題は,内科,外科の区別なく,消化器領域を専攻しようとする者にとつて重要なthemaであつたことに間違いはない.本来なら,その全部をのべるべきであるが,紙数の関係から,ここでは,外科領域ととくに関連深い項だけにかぎつて,討議の内容をつたえることにしたい.

患者と私

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 医者として患者に接し,またその人に治療を加えるのにその人の貴賎,貧富が問題となろう筈はない.またそうあるべきが当然であることは判かりきつたことである.しかしそうはいつても,離れることのできない枢要の地位にある人や,家庭の事情上の問題で,当然加えられねばならない治療,特に私らのようなメスを採って治療を加えねばならない立場のものは,どうしても純学門的立場のみに終始して他のことを全く度外視してその考えや,決定通りの手術をのみ純粋に一挙に貫行することについて,多少の躊躇を感ずることが全然ないとはいえない.そんなことでは,ほんとうの外科医としての天職を完うしていないことは当然なことではあるが,そこが人情である.弱い人間性が,冷たく科学的立場に立たねばならない医師—外科医のメスを鈍らすことがないとは誰もが断言しうるものではあるまい.特にわれわれがこのような立場に立たされることの多い対照患者は,それが医師である場合にも多いことは,これも多くの人の経験されていることと思う.私の聞知している範囲でも,多くの著名な医師が集つて衆知を結集して行なわれた治療の結果であつて,それが結局において逡巡,姑息の誹を免れえない結果に終つたというような例が,そうまれではない.

雑感

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 開業して数年以上たつと,大学医局時代に比べて,乱診乱療といつてはよくないかもしれぬが,むりに快刀乱魔のごとく,患者にとにかく病名をつけねばならぬような毎日を送つているためか,ものごとを深く考える習慣が失なわれてしまつたようだ.だから日曜だけは一日一言も口をきくまい.書物をゆつくりよむかグッスリ寝てみたい.そして誰にも会うまいとしても,医者として年齢が若いほうだし,安直医者で通つてしまつたので,どうしても在宅していると1日休診の筈が5人ぐらいは診てしまうようになる.大抵,小児科患者で"発熱""ひきつけ"などが主訴だが,まず重症患者か否かだけをみわけ,軽症は簡単な処置をして帰すようにするが,問題は生後3ヵ月以下の肺炎兼脱水症の子供がかつぎ込まれた時だ.処置も人手さえあれば,また,体力さえあればやれないことはないと思うが,内科と違つて殺せば母親のうらみは怖しい.小児科病院の救急センターが欲しいと心より思う.

 先日,93歳の老人が(GPからみて典型的な大動脈弁閉鎖不全症患者であつたが)わずか3日間ぐらいでカゼをこじらせて,アットいう間に死亡した.長命でスタミナ(+++)を誇つた聡明な老人(国漢,英独語を解する男やもめ)も,こう早く死亡するとは,大分前より何かかなりの潜在性心不全がかくされていたのだろうが,老人のため,家族を通じて話を聞くので,よく病歴がとれなかつたのだと思う.駅の階段も軽く昇降できたのだが.

海外だより

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 私に限らず,今日,日進月歩の著しい外科領域,特に心臓血管領域の診療研究に当つている者には,欧米から報告される数多くの研究に接し,むしろ時には戸惑いに似た情勢を感ずるのであるが.これらの個々の問題点を明白にし,各疾患に対する治療体系の綜括的判断を誤らずに,しかもわが国の医療現状に沿つた胸部外科の着実な発展を考えるならば,その1つの方法として諸外国の施設の実情を見聞し,多くの研究の背景を確め,その流れの本筋を手取り早く把握し,また彼我の相違を比較検討してみたい魅感に似た感慨をもっことが多いと考える.今日では,渡米することは比較的容易で,多くの人々により米国医学の現況が紹介され,われわれもそれを身近く感ずることができる.私自身もボストン市Tufts-New England Medical Centerの外科主任Deterling教授のもとで若干の経験をつんできたので,それを述べてみたい.

 ボストン市には有名なHarvard大学,Boston大学に医学部があるが,Tufts大学は郊外のMedfordに美しいcampusをもつ他学部を除いて,医学部およびその附属医療施設を一括したTufts-New England MedicalCenterのみはボストン市の下町にあり,古くボストン大火の際にその起源をもつFloating Hospital,Pratt Diagnostic Clinic,Farnworth Surgical Bldg., BostonDispensaryおよびZiskind Lab.などよりなる.

外国文献

中心静脈圧,他
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 中心静脈圧(CVP)はhypovolemia治療の好個の指針で,それが正常域上限まで輸血するのが望ましいという意見が多い(例Borrow, M.:SGO 120:545,1965).循環量を測定するよりも,このほうが確実で早いというのであり,事実そういうことが多いが,CVPの上下と循環量変化とを同時にしらべた報告は,少くとも人体のショックではほとんどない.また,CVPは心内への血液還流が減れば低下し,心収縮性が衰えれば上昇するが呼吸の深さ,早さの影響を受け,腹部膨満,血液粘稠度の影響をも受ける.Friedman(Lancet 2:609,1966)の14例ではCVP正常域(2〜10 cmH2O)でありながら循環量は14〜35%減少していたという.したがつて敗血症ショックのごときでは,CVPをあまり過信できない.Volemetron(筆者は本邦でもこの開発の重要性を数年来強調しているが当局の認識を未だに得ていない)で頻回に確実に早く,循環量をCVPと同時に測定するのがもつとも正しいショックの補液指針であるという事実をFriedmanは典型的な6例について示している.

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 胃癌に対する胃切除術は,胃十二指腸潰瘍に対する胃切除術と根本的に考え方を違えてかからなければなりません.なぜかというと,癌は非常にリンパ節転移を作り易い疾患であつて,しかも悪性腫瘍であるので,いかにその原発巣である癌の部分を,十二分に摘出したとしても,リンパ節転移を残せば,近い将来に必ず再発を見るということになります.したがつてそれらのリンパ節を完全に摘出する手術を行なわなければなりません.しかし手術的に摘出できるリンパ節の範囲は,ある程度の限界がある上に,熟練の程度によつて,その手術侵襲が段階的に増大します.したがつて技術的に未熟な人々が,もし理論にのみとらわれて行き過ぎた手術をすることは,角を矯めて牛を殺すというのと同じように,患者を死に至らしめる結果になります.この辺が外科学というものが臨床の学問であつて,非常に難しいものであることを示しております.手術は患者を治すことを目的としていますが,同じく患者を治すといつても技術が大いに関与するもので,かつまたどの程度の全身状態の患者に,どの程度の侵襲が可能であるかということを知らなければなりません.

 そのためには医師は患者について日夜を分たぬ修練が必要です.ここがいわゆる医学が経験科学であるといわれる所以です.

講座 外科医のための心電図入門・1

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 外科的侵襲,ことに腹部手術の際に,その侵襲が心臓にどのような影響を与えるか,また麻酔の深度や時間が心臓に与える影響などについては,患者管理の上から十分な注意がはらわれる必要がある.ここにあげたViscero-cardial Reflexは,腹部手術の際にあらわれる冠動脈領域の急性虚血は,われわれが常に念頭においておかなければならないことである.

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はじめに

 脾膿瘍はまれな疾患であつて,腸チフスのごとき急性伝染病,敗血症,感染性心内膜炎などにさいして血行性に発生し,また,身体各部の癤,蜂窠織炎,膿瘍などから感染性血栓が脾に流入して発生するといわれている.

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はじめに

 重症筋無力症の本態に関する広範な研究にもかかわらず,現在なお不明な点が多いが,神経筋接合部のacetyl-cholineに対する反応態度に異常のあることは一般に認められており,neostigmine(vagostigmin)の導入1)2)tensilon(edrophonium, Antirex)test3)の応用は筋無力症の診断のみならず,治療を大いに発展させた.1939年Blalockが本症に対して胸腺剔出術が有効なことを発表4)して以来,重症筋無力症に対する手術が注目され,手術の適応とその効果に関してはおのおの異つた見解を示してはいるが,広く胸腺剔出術が行なわれ,ある程度の成果を収めている5)6)7)8)9)10)11)

 最近,われわれは発症から約100日でcrisisを起こし,2ヵ月間に8回myasthenic crisisを繰返した激衝型の重症筋無力症に対し,正常と思われる胸腺を剔出し軽快をみた1例を軽験したので報告する.

基本情報

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臨床外科
22巻2号 (1967年2月)
電子版ISSN:1882-1278 印刷版ISSN:0386-9857 医学書院

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