雑感
内科一般医(GP)の窓から
渡辺 亮
pp.261
発行日 1967年2月20日
Published Date 1967/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204239
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開業して数年以上たつと,大学医局時代に比べて,乱診乱療といつてはよくないかもしれぬが,むりに快刀乱魔のごとく,患者にとにかく病名をつけねばならぬような毎日を送つているためか,ものごとを深く考える習慣が失なわれてしまつたようだ.だから日曜だけは一日一言も口をきくまい.書物をゆつくりよむかグッスリ寝てみたい.そして誰にも会うまいとしても,医者として年齢が若いほうだし,安直医者で通つてしまつたので,どうしても在宅していると1日休診の筈が5人ぐらいは診てしまうようになる.大抵,小児科患者で"発熱""ひきつけ"などが主訴だが,まず重症患者か否かだけをみわけ,軽症は簡単な処置をして帰すようにするが,問題は生後3ヵ月以下の肺炎兼脱水症の子供がかつぎ込まれた時だ.処置も人手さえあれば,また,体力さえあればやれないことはないと思うが,内科と違つて殺せば母親のうらみは怖しい.小児科病院の救急センターが欲しいと心より思う.
先日,93歳の老人が(GPからみて典型的な大動脈弁閉鎖不全症患者であつたが)わずか3日間ぐらいでカゼをこじらせて,アットいう間に死亡した.長命でスタミナ(+++)を誇つた聡明な老人(国漢,英独語を解する男やもめ)も,こう早く死亡するとは,大分前より何かかなりの潜在性心不全がかくされていたのだろうが,老人のため,家族を通じて話を聞くので,よく病歴がとれなかつたのだと思う.駅の階段も軽く昇降できたのだが.
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