手術手技
胃切除術六題(その3)—胃癌に対する手術(Billroth-Ⅰ法)
中山 恒明
1
,
織畑 秀夫
1
1東京女子医科大学消化器病センター
pp.271-277
発行日 1967年2月20日
Published Date 1967/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204242
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胃癌に対する胃切除術は,胃十二指腸潰瘍に対する胃切除術と根本的に考え方を違えてかからなければなりません.なぜかというと,癌は非常にリンパ節転移を作り易い疾患であつて,しかも悪性腫瘍であるので,いかにその原発巣である癌の部分を,十二分に摘出したとしても,リンパ節転移を残せば,近い将来に必ず再発を見るということになります.したがつてそれらのリンパ節を完全に摘出する手術を行なわなければなりません.しかし手術的に摘出できるリンパ節の範囲は,ある程度の限界がある上に,熟練の程度によつて,その手術侵襲が段階的に増大します.したがつて技術的に未熟な人々が,もし理論にのみとらわれて行き過ぎた手術をすることは,角を矯めて牛を殺すというのと同じように,患者を死に至らしめる結果になります.この辺が外科学というものが臨床の学問であつて,非常に難しいものであることを示しております.手術は患者を治すことを目的としていますが,同じく患者を治すといつても技術が大いに関与するもので,かつまたどの程度の全身状態の患者に,どの程度の侵襲が可能であるかということを知らなければなりません.
そのためには医師は患者について日夜を分たぬ修練が必要です.ここがいわゆる医学が経験科学であるといわれる所以です.
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