理学療法と作業療法 18巻11号 (1984年11月)

特集 進行性筋ジストロフィー

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はじめに

 進行性筋ジストロフィー(DMP)は19世紀半ばに記載された最も代表的な遺伝性筋疾患である.本症のうち特に進行が最も速いDuchenne型(DMD)は男子を冒し予後は不良である.それ故に本症の成因の究明,治療法の開発は学問的のみならず社会的にも極めて重要な課題である.我が国では本症の研究は古くから盛んであり特に昭和43年以来厚生省より研究費の補助を受け強力な研究班が結成され活発な研究活動が続けられている.また全国約20ヵ所に療養所が設立され患者はここでリハビリテーションを含む治療を続けると共に学校教育も受けることができる.このような施設は他の先進国にも類をみないことである.本項では本症のうち特にDMDに関する最近の研究の進歩と薬物療法,特に蛋白分解酵素阻害剤による治療法の可能性について概説したいと思う.

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はじめに

 進行性筋ジストロフィー症(以下PMDと略す)は,遺伝性の筋疾患の代表的なもので,原因不明であり,その分類は学者により多少の差はあるが1,2),一般にはDuchenne型,肢帯型,顔面肩甲上腕型,遠位型,眼筋型などに分けられるが,前三者が最も多くみられている.成人PMDとして,これらの疾患を扱う場合に,Duchenne型の如く,幼児期より発症して成人期には,車椅子あるいはベッド患者となるものと,成人期に発症して症状は軽度なものがあるなど,一様に論じることは困難であるので,ここではDuchenne型以外の肢帯型,顔面肩甲上腕型など,主として成人期に発症して,比較的緩徐な経過をとるものについて述べる.

 作業原法については,さまざまな角度から把えることが可能と思われるが,本稿では,成人PMD患者の特殊性により,主として生活画から把えた作業療法について,箱根病院に入院している患者と神奈川県における筋ジス訪問検診における経験をもとに述べてみたい.

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 Ⅰ.はじめに

 Duchenne型筋ジストロフィー症(以下PMDと略す)は,幼児期に発症し8歳から11歳位には独歩不能となり,その後は坐位中心の生活が末期まで続く.普通児では成人となって親元を離れていく自立までの時期に彼らは運動機能の低下により著しく日常生活に制限をうけることとなる.その結果,普通児では自己の世界を外へと拡げていく時期に,彼等は介護がなければ外出はおろか,目の前に準備をされないかぎり何も出来ないこととなってしまう.就学時に集団行動にも参加出来ていた子ども達が,障害が進行していっても,自主的に活動出来る内容を少しでも多くできるように生活機器と在宅を可能にしていく介助の合理化をここでは考えていく.

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 Ⅰ.緒言

 進行性筋ジストロフィー症児(以下DMP児と略)に療育の手が指し伸べられたのは,ごく近年のことである.

 公的な教育としては,昭和35年現在の西多賀養護学校の前身である西多賀小中学校の西多賀病院分校に,3名のDMP児が編入されたのが始めで,正式なDMP児の学級としては昭和39年に広島県原養護学校の原病院分校に二学級が設けられたのが始めである.

 また養護学校としては,昭和40年に千葉県四街道養護学校が下志津病院に隣接して設けられた.これに前後して,北海道八雲小・中学校特殊学級が八雲病院内に,大分別府養護学校の分校が石垣原病院(現西別府病院)内に,三重県加佐登小学校が鈴鹿病院内に,徳島県飯尾敷地小学校が徳島病院内に特殊学級を設けられるなど,続々とDMP児のための教育の場が作られるようになった.

 これらの特殊学級は,全国的に増加すると共に,特殊学級から分校へ,分校から養護学校へと昇格していった.そして昭和54年養護学校義務設置の施行以来,それまでの院内学級はほとんど病弱養護学校として独立し,DMP児を主な対象とする病弱養護学校の数は20校をこすに至った.

 それに伴い,その児童・生徒数も昭和44年には約530人だったものが,昭和56年には970人と増加している.

 このようにみると,一見DMP児の教育は順調に発展してきているように見える.しかしその内容を詳細に見てみると,死が予測されている子どもの教育という始めての試みの中で,人間が生きるとは何か,教育とは何かという原点に立ち戻った教師自身の姿勢の問われるなかで,方法論的にも不明確なまま,多くの人々の絶大な個人的努力により支えられてきた面が多く,今後解決していかなければならない課題も多い.

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 協会の設立

 社団法人日本筋ジストロフィー協会は,筋疾患の患者をかかえている家族や,患者が病気の原因の究明と治療法の確立を目指して,昭和39年に発足し43年に厚生省の認可を受けた公益法人である.

 現在3,000世帯の会員が登録されている,全国を8ブロックに分け各ブロックの傘下に都道府県毎に支部が結成され,協会の補助事業活動は,支部が当たっている.別に全国27カ所の国立療養所に2,500床の専門病床が整備され保護者会が組織され,支部と同一歩調をとって病院内外の活動を行っている.

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 障害者としての筋ジストロフィー患者

 筋ジストロフィー(以下筋ジスと略称)は原因であって,現実の立場は障害者であるという捉え方が不徹底なように思われる.

 かつて小児患者をもつ親御さん達が,筋ジスとの戦いに立ち上がらなかったら,あれほどのエネルギーは投入されなかっただろう.私も患者として感謝している.しかし筋ジスが小児の病気だというアピールが効果的であっただけに,その陰に隠された筋ジスによる障害者というものが見送られたと思われる.

とびら

ニューメディアの社会 首藤 茂香
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 最近「第5世代コンピューター」という言葉や文字を見聞きする.1980年代は,ハイテク時代の到来であるともいわれており,見る,聞く,話すことが出来るうえに,さらに物事の判断も出来るという人間に近い動き,働きをするロボットが出現している.

 さらに光ファイバーという通信システムによって高度情報化社会すなわち「ニューメディアの社会」が,間も無く訪れるということである.われわれの時間と空間はますます縮められようとしている.

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はじめに

 本シリーズで再三述べられてきたように,心理学では感覚,知覚,認知の三段階を区別して扱うことが多いが,脳の損傷によって生ずる障害も,こうした段階との対応を示す場合が少なくない.今回は資料が最も多い視覚障害を中心に,この段階に従って障害の様相をみていくことにしたい.

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 Ⅰ.障害者と家族の生活実態・生活構造

 障害者(障害児を含む)はその生活の過程で,障害に直接・間接に起因する多くの生活問題に直面するが,そのことを構造的に把握する研究作業は,まだ十分すすめられているとはいえない段階にある.すなわち現象的部分での生活実態の把握はなされているが,実態概念を超えた本質論・構造論については,研究の蓄積が十分なされるには至っていない.

 このことを追究する研究作業は,これまで大きく分けて3つの方向からすすめられてきた.第1はリハビリテーション医学の分野である.そこではまず障害(impairment)に起因する生活問題・生活行動困難を能力障害(disability)と不利(handicap)として階層的にとらえる.そのうえで,障害が能力障害として発現する過程についてはADL評価として,その概念規定や評価法の共通化が,日本リハビリテーション医学会評価基準委員会を中心にすすめられてきたようである.

プログレス

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 精神を,脳と関連付けて研究していく領域である神経心理学は1960年代から,大きく発展した.その発展の中で最も重要と考えられる分離脳患者の研究の成果を紹介したい.この研究は1981年のノーベル医学生理学賞を授与されたものである.

インタビュー PT・OTの挑戦

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 <先生がPTになろうと思われたのは>

 新藤 私はPTになる前,10年間NSをやっておりましたが,1960年国際看護協会の召換で米国に2年間留学,リハビリナースのコースをとりました.帰国後,神奈川県更生指導所(神奈川県総合リハビリセンターの前身)のリハビリ主任をしていたところ,国療東京病院付属リハビリ学院の職員として勤務するよう厚生省より要請されリハビリ学院で救急看護法の講義と学校衛生の仕事をしておりました.その際リハビリ学院が設立2年目にNS等の資格者を対象に編入試験を実施しましたので,試験を受け,学院の2年生に編入しました.ですから当時リハ学院の学生と教師の二役をしていました.

あんてな

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 国際リハビリテーション協会(Rehabilitation International:RI)は,1922年アメリカで国際肢体不自由児協会として設立されて以来,60余年の歴史を持つ障害者問題に取り組む国際団体である.名称は,障害者の概念の変遷と共に変わり,現在の名称が採用されたのは1972年からである.現在世界80力国135団体および7国際団体が加盟しており,本部はニューヨークにある.あらゆる障害を対象とした全国団体であることが加盟条件の一つであり,各国の実情に応じて民間団体あるいは公的機関,また政府機関が加盟している.

 RIの目的は,障害の予防とリハビリテーションの推進,国際的および各国の関連団体の育成の援助,各国におけるリハビリテーション・サービスを確保し,障害者の権利を守る法律の制定の促進,研究調査の実施,国際的情報交換などである.また国連等の国際機関における障害者およびリハビリテーション関係者の代表としての役割も果している.

プラクティカル・メモ

肘固定用補助具 進藤 伸一 , 大黒 一司
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はじめに

 脳卒中片麻痺患者の運動療法においては,麻痺側の上肢のみ,あるいは下肢のみといった部分的アプローチでは効果が少なく,健側や体幹を含めた全身を1つの治療対象としてアプローチすることの重要性が強調されている.しかし,麻痺が重度であったり,体重が重い患者では,特に骨盤から下肢を重点として治療する場合,セラピストは自分のからだをいかに駆使しても,上肢まで確実にコントロールすることはなかなか困難である.

 このような時,患側上肢だけでも固定できる補助具があると便利である.我々は市販されている膝装具(東京衛材,ニープレイス)にヒントを得て,肘固定用補助具を作製し,使用しているので紹介する.

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はじめに

 “イギリスは万事に変化の乏しい国である”というのが過去二回訪問した経験のある筆者の率直な感想である.技術革新に勤しむ日本の社会と比較すれば遠い昔の大英帝国の栄光に取り付かれ,時代の変化についてこれない不器用な国に見えるのは仕方がたい.反面,今日の近代社会の礎となった産業革命,あるいは文化面ではビートルズやミニスカートの発祥となったのもやはりイギリスである.古い伝統の中に時おり伝統に反抗するが如く瞠目に値する出来事がおこる面白い国でもある.理学療法に関していえば,御存知の通りChartered Society of Physiotherapy(C.S.P.)という世界のPT協会のお手本ともいえる団体のもとに,永い伝統と強い団結を誇っている.10年前の理学療法を知る人が今日再びイギリスを訪問した場合,この間に起こった変化を発見するのに苦労するであろう.しかし理学療法サービスを含む福祉制度の徹底度は我が国の比ではない.見方を変えれば急激な変化が起こる術もない程に成熟しきった技術であり,サービスであると云えるのかも知れない.地域への浸透は満遍なく行われ,とくにOTはdomiciliary OT(最近ではcommunity OTの方が一般的)として地域毎に配置されている.病院や施設内活動に終始しがちな我が国のPT・OT業務に比較すると,はるかに実際的で患者寄りのサービスを提供している.このような底辺の広さから種々の卓越した治療法が構築され,また身障スポーツのI.S.M.G.(International Stoke Mandeville Games通称パラリンピック)が行われるようになったと想像する.諸外国,とりわけ我が国のように経済の成長に伴ってリハビリテーション医療がにわかに台頭し,理学療法においても質量ともに急成長した国に比較すると旧態依然とした治療手技を用いるイギリス流に派手さはないが,彼らの価値感に基づいたやり方にイギリスという国を感じる.しかしここに至って彼らの考え方,とりわけ教育に対する熱意は大きく変化してきたようである.

 本論では最近のイギリスにおける理学療法の教育制度にスポットをあて,1983年度Physiotherapyをレビューしたがらその変革とイギリスのPT教育の目指すところを追ってみた.そんなわけで,いつもの雑誌レビューと異なるが,許されたい.

FORUM フォーラム ふぉーらむ

臨床実習生を迎えて 田中 信廣
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 臨床実習教育は,現在自分に与えられた仕事と思っている.それに携わる人にも,それぞれの哲学・展望があるはずで,自分自身の見方から話を進めたい.

 最初に必要なのは,コミュニケーションの能力だろう.つまり,自分の意志,情報を相手にわかるように伝達し,同時に相手の気持ちをくみ取る能力が非常に大切になる.スタッフ間なら,わかることでも,学生ではそうはいかない.わからないのは学生の不勉強,ということでは,何事も成り立たない.表現する時は,できるだけ単純明快に,相手が理解しやすい形で話をすることが大切にななる.

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 本年2月発刊の「リハビリテーション概論」は,医学的リハビリテーションの基礎・リハビリテーションの展開・リハビリテーションと環境・リハビリテーションにおける専門性の4章に分けられている.各論は,障害論・リハビリテーションの理念(砂原茂一),障害者の心理(三沢義一),職業的リハビリテーション(小川孟),社会(的)リハビリテーション(今田拓),障害児の教育(細村迪夫),行政の関わり(大村潤四郎),工学の役割(土屋和夫),医師・医療技術者(岩倉博光),になっている.本書の発刊を私が待っていた理由は,2つである.

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文献抄録

編集後記 寺山 久美子
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 今年は一回も台風が上陸しなかったと言う.昭和26年以来33年ぶりのめずらしい現象であると予報室がやや興奮気味に喋っていた.冬は例年になく寒く,夏もまた極端に暑かった.そして台風なし…….「米も野菜も豊作間違いなしと手放しで喜こんでよいのですか?」というアナウンサーの質問に,「いいえ,例年は台風で一気に水が増えて助かるのに,今年はそれがないので水不足ですヨ」との答であった.何事も全てよし―ということはないものである.

基本情報

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理学療法と作業療法
18巻11号 (1984年11月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0386-9849 医学書院

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