理学療法と作業療法 16巻10号 (1982年10月)

特集 難病のリハビリテーション

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 Ⅰ.神経難病と在宅ケア

 神経難病は俗語である.ここでは国で定める“特定疾患”,東京都で定める“特殊疾病”などを中心とする神経系疾患群の総称として用いることにしよう.

 神経系疾患群を対象とする診療領域は神経内科を中心として,脳外科や神経小児科に及んでいる.

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 Ⅰ.はじめに

 筆者と脊髄小脳変性症,筋萎縮性側索硬化症,パーキンソン病などの神経難病との関わりは,東京都立神経病院へ勤務してからである.勤務して約2年,43名の神経難病患者を担当しただけの少ない経験であるが,症状の進行・慢性化をたどりながら障害がより重度化する神経難病に対して理学療法士(PT)としての役割を論じてみたい.

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はじめに

 難病という言葉は相当にポピュラーになっているが,その概念は政治的にこれこれの疾患について経済的負担を国が肩替りしますよというものである.医学の分野では,いわゆる難病という分類はみあたらず,文献的に検討してみても的を射ないのが現状である.

 厚生省や東京都で指定した難病のうち,しばしば当院のOT患者リストに乗ることの多い脊髄小脳変性症(以下SCDという),パーキンソン病,筋萎縮性側索硬化症(以下ALSという)の疾患についてOTの役割を示し,かつ在宅診療の実態についてもふれたいと思う.3疾患はそれぞれに異なった臨床像と,異なった経過を示すが,作業療法が対象とする障害は大よそ次のものと考えられる.

 1)日常生活動作の問題

 2)身体機能障害における問題

 3)心理的問題

 4)職業前における問題

 5)家事遂行における問題

 6)余暇の過し方における問題

 以上の項目について,症例検討を含めながらOTの役割を考えてゆきたい.

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 Ⅰ.はじめに

 脊髄小脳変性症は運動失調を主症状とし,病理学的に小脳およびそれに関連する神経経路の変性を主体とする原因不明の変性疾患の総称である.

 本症は慢性進行性に経過するが,本症への治療およびリハビリテーションには近年いろいろな方法が試みられてきている.

とびら

教材としての自分 古川 昭人
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 ここ数年,理学療法士(PT)作業療法士(OT)の養成校の設立がラッシュ傾向にある.かく言う当学院も,今年2学年までが在籍する新設校の1つである.

 新米の教師とリハビリテーション学院生として不慣れな学生との厳しくもあり,またその厳しさが滑稽でもある授業風景が繰り返されている.

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 Ⅰ.発想の問題として

 筆者は老人福祉というのは,究極は,一人一人の生死(いきしに)のことがらだとわきまえていないととんでもないことになるとようやく気がつきだしている.うかつきわまる話であった.江国滋氏の『杖の夢』(朝日新聞1981年刊)は,“老い”を語る絶品のエッセイ集であるが,本書の各篇にもこのことを教えられた.老後保障の全体について,行政改革の側からも強い圧縮の力が加わっていていままでの老後保障の考え方の徹底した検討がもとめられている.この場合についても,考え方の検討や再構築について,どのレベルに基礎をおいて,従来の考え方を再検討するかについての方向はきわめて不明確である.

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 Ⅰ.はじめに

 わが子の“すこやかな育ち”を願わない親はいない.子ども達は,こういった親の想いや願いの中にあって,順調な発育をみせて育っていくものである.その意味では障害のあるなしにかかわらず,この育ちの土壌が基本的に整えられた上に育児の具体的展開がなされることが大切であると考える.

 ところが,精神薄弱児の育ちを捉えてみると,順調な発育状態をみせる子どもは少なく,どこかに歪みをもっている子や子供の能力に応じた力を順調に出していない子どもの方が多いのである.

 筆者は,当弘済学園の母子入園機関(精神薄弱幼児と母親を対象に3ヵ月間,合宿して訓練をする)を10年来進める立場にあって,精神薄弱児の母子関係について学ばせていただいてきた.この中で,精神薄弱児と母親の関係は,なかなか理想通りにいかず,複雑で困難な問題が横たわっていることを知らされてきた.しかし,子ども自身がすこやかに育っていくためには,この点をしっかりと着眼し,厳しい場面に遭遇しながらも,そこを乗り越えて“好ましい母子関係を確立すること”に向わなければならないこと,そしてここに育児の根底があることを親に正しく認識してもらうことが必要であることも知った.精薄児の育児は健常児の育児と基本は全くちがわない.しかし,考え方を漠然と持つのではなく,明確にしていかなければならない点もある.その意味では,基本的な人間のとらえ方から母親自身が自分に問わなければならないようである.もちろん,具体的な育児の適切な進め方についてもである.健常児の育児との共通点と相違点を明確にしながら,根底となる母子関係が確立されていかねばならないのである.

 ここに精薄児の母子関係の実態をとらえながら,好ましい母子関係の確立のためにどのようにとり組むことがよいのかを考えてみたいと思う.

インタビュー

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 「脳性まひ児の家庭療育」の執筆者・英国のNancie R. Finnie女史の名はおそらく読者のなかで知らない方はおられまい.(小野啓郎訳,医歯薬出版,初版1970).

 このフイニー女史が,今年の2月初めから約3週間,同国の作業療法士アン・ジョセフォビッツ女史と,日本肢体不自由児協会主催の「脳性麻痺児の早期療育」講習会の講師として来日された.

 全国からこの講習会に対する申し込み希望者が多く,一応125名(内訳:MD17人,PT38人,OT11人,NS19人,ST3人,他(保母,指導員など)37人)に制限されて行われた.編集室でこのインタビューの取材で何回か講習会を聴講させていただいたが,講師,聴講者ともに熱気に満ちた,楽しいそして充実した講習会であった.

 社会保障が発達し各社会資源が横に密接に機能しあい,理学療法士,作業療法士にとって非常に広がりをもった活動が要求され,また保障されている英国の現状をフイニー女史とジョセフォビッツ女史から伺うにつけ,大層うらやましく思ったのは,私ばかりではなく,講習会に参加した聴講者の方々もそう思われたにちがいない.

 そこで,フイニー女史らが主張する治療哲学の精神は,我が国においても,大きな共感を生み,ひきつがれることと思い,ここにフイニー氏のお話を掲載させていただいた.

 インタビュー・翻訳は,今川忠男氏に御苦労願った.またインタビューに際し陰ながら御支援いただいた,小池文英・児玉和夫両氏(心身障害児総合医療療育センター)に深く感謝する次第である.

 (編集室)

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 第17回の意味すること

 日本理学療法士学会も今年は第17回目である.17回という数字に歴史がうかがえる.1966年に第1回のPT,OTの国家試験が行われ,法的資格をもったPT,OTが誕生し始めてから17年経過したことを示しているし,PT,OTの養成校が設立され,その卒業生が社会に出始めてから17年経過したことを意味してもいる.

 一方,昭和57年5月現在のPT協会会員数は2,386名,昭和57年3月の養成校卒業者総数404名,今年の新設校は7校と報告されているから,この数から算出すると,3年後には毎年約600~700名のPT卒業生が社会に送り出されることになり,PTの量的不足は近い将来満されることが予測される.

第16回日本作業療法学会印象記 近藤 敏
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 本学会は昭和57年6月3日,4日の両日,岡山市にて開催された.小林達也学会長をはじめ19名の実行委員の方々の一致団結した力強い運営が随所に見受けられた.学会は新しい情報の交換と,お互いに切磋琢磨する場であることはもちろんであるが,養成校の一教官の立場として,成長した“元学生”の姿に再び会えるのも楽しみの一つである.ただ卒業後1,2年は熱心に参加するが,それ以後になると限られた者しか見かけることができないのが残念である.

 さて学会の方は運営資金830万円という今までにない盛大な規模で,また岡山ロイヤルホテルを借りきって行われたため大変便利でかつ豪華な雰囲気を味わうことができた.会場の受付も簡素化されており,いつもの混雑した風景は見られなかった.参加者は会員520名,非会員,一般120名で,リハビリテーション相談にも20名が訪れ,当然のことながら年々増加している.

プログレス

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 筋弛緩剤は選択的に骨格筋の筋緊張を低下させることを目的としており,リハビリテーション領域では主として痙縮をコントロールし運動能力の改善を目的として使用される.このような薬剤としてはMephenesinの出現以来主に脊髄の多シナプス反射を抑制することにより筋弛緩作用を現わす薬剤が幾つか開発されてきたが,その効果は弱く痙性麻痺に対する効果もはかばかしいものではなかった.これに対し近年痙縮の出現機序に対する生理学的機構の解析や脊髄におけるneurotransmitterの分析が進み,新しい作用メカニズムを持つ筋弛緩剤が幾つか開発されてきている.このような薬剤のうちここでは本邦で市販されているBaclofenとDantrolene sodiumを中心に述べる.

リハビリテーション・インフォメーション

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 病院精神医学会の前身は昭和32年11月にさかのぼる.当時,昭和29年から精神病院における作業療法の協同研究が,東京近郊の精神病院関係者を中心にして行われていた.やがてこの研究班のメンバーが中心となり,精神病院での治療構造を学問的に基礎づける目的をもって,病院精神医学懇話会が昭和32年11月に発足した.

 第1回の病院精神医学懇話会は,国立武蔵療養所で開催されたが,故関根眞一委員長「現代の精神病院は患者の治療の場であるとともに,極めて有意義な治療の器具として,その機能を発揮しなければならないことが強く要求されるにいたった.その観点から精神病院に勤務するものは,常に患者を対象とし,建物並びにそこに従事する人的構成に対し精神医学を基底とした研究を推し進めて行かねばならない…….なおいささかなりとも精神病患者の福祉のため貢献に資することが出来れば幸いである」と,その機関誌病院精神医学に記している.ここには,大学における精神医学的諸研究にあきたらず,精神病院という現実の治療場面に,臨床精神医学を確立しようとする意気込みをみることができる.

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 障害者自身による,初の横断的な国際組織「障害者インターナショナル」(DPI)が昨年12月,シンガポールで結成され,さらにその執行機関である「世界評議会」が,この6月,東京で開催された.各国内と各地域ブロックでの組織づくりや国際舞台での発言など,困難な課題に向けての障害者自身の具体的な動きが始まったわけである.

 DPI結成に向けての最初の出来事は,1980年6月カナダのウィニペグで開かれたRI(国際障害者リハビリテーション協会)の第14回世界会議の中で起こった.

雑誌レビュー

“AJOT”(1981年版)まとめ 古川 昭人
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はじめに

 1981年のAmerican Journal of occupational Therapy(AJOT)の1号から12号までの概観,筆者の感じたことについて述べてみる.

 各号の構成内容は,

 Nationally Speaking

 Features

 Brief or New

 Association

 Departments

 であり,features(論文)は各号3~6題で,その総数は53題である.brief or new(短報・速報)の総数は8題である.今回,このfeaturesとbrief or newの61題に関し概観していく.

 論文内容からみて,OTに伝統的に継承されてきている身体障害関係・小児関係・精神障害関係・その他,に大きく分類した.その他には教育関係・哲学的題材などが含まれる.

 各分類ごとに,その内訳数をみると

 身体障害関係 25題

 小児関係 15題

 精神障害関係 6題

 その他 15題

 であった.

 全体的にみて,感覚統合理論およびテストの妥当性と信頼性についての検証に関する題材が多く,小児関係15題中10題,精神障害関係6題中3題を占めていた.

 また身体障害関係も,その内容は多岐にわたり豊富であった.対象疾患別にみると,慢性関節リウマチ(RA)・脳血管障害(CVA)・腰痛症・切断・脳性麻痺(CP)などであり,主題別にみると,splintに関するもの・更衣動作に関するもの・バイオフィードバックに関するもの・老人に関するもの・自助具に関するもの,その他一般臨床的題材が多く含まれていた.

 精神障害関係は6題と少なく,eye contactに関するもの,ゲームに関するもの,day centerに関するもの,自傷行為,常同行為に関するものなどで,純粋な精神科疾患へのアプローチについて論じたものは極少であった.その他,教育に関する題材が5題,OT原理・あり方・動向などの哲学的・社会的題材が10題であった.

 各号により,類似の関連論文が掲載され,比較的その号の特性を示していたのでふれてみる.

 No.1,12:感覚統合アプローチ

 No.3:スプリント

 No.5:教育

 No.9:OT原理

 No.10:老人

 これら61題の論文のうち,身体障害関係・小児関係・精神障害関係の3分野について,筆者の興味に基づき,やや独断的ではあるがそのまとめについて報告する.

学生から

ありがとうの世界 酒向 俊治
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 大学を卒業して7年,当時商社に勤めていた私は,大学の恩師の紹介で,ある病院の理学療法室を訪ねたのです.

FORUM フォーラム ふぉーらむ

開放講座 奈良 勲
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 金沢大学の大学教育開放センターは昭和51年に発足したが,国立大学では東北大学,香川大学などにごの種のセンターが設置されている.開放センターは主に開放講座を定期的に主催している.ちなみに,今年度の金沢大の前期コースは5つで,1)ボサツの話,2)日本近代教育の形成者たち,3)流通,4)現代のストレス,5)リハビリテーション医学である.受講料は3,000円で通常月に1回,2時間の講義が行われる.

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 理学療法士の養成が清瀬で始まってから二十年になろうとしている.この間,私は学生または療法士としてその歴史と伴に歩んで来た感がある.学生時代および臨床時代初期は,理学療法の概念を把握することができず当惑していた自分であったと思う.その後の臨床経験,臨床教育指導をとおして,自分なりの理学療法概念を把握し得たのは学卒後七年目前後であったように思われる.

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文献抄録

編集後記 福屋 靖子
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 社会の要請,医学の発展に伴い,PT・OTのかかわる分野にも変化をもたらしている.今月号の特集は“難病のリハビリテーション”で,難病へのPT・OTのかかわりもその必要性が高まりつつあり,したがって我々もそれに応えるべく悪戦苦闘しているのが現状であろう.ともすれば,無力感から逃避したくなるような難問が山積している分野でもある.神経難病の医療および在宅ケアに関してはモデルになっている都立神経病院の,ケースワーカーの川村氏には「神経難病患者の在宅ケアの条件」について,池田氏には「難病患者に対する理学療法士の役割」について,また市川氏には「難病患者に対する作業療法士の役割」についてお願いした.

基本情報

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理学療法と作業療法
16巻10号 (1982年10月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0386-9849 医学書院

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