看護学雑誌 37巻12号 (1973年12月)

マイ・オピニオン

看護職と希少価値 嶋田 真佐
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 医療の高度化に伴い,専門分野はますます細分化されて,高度な専門技術が要求されてきている.

 看護職も,早くから医療チームの一部門としての在り方を,教育から業務内容にわたって真剣に検討してきたが,他のパラメディカル部門と比較したとき,具体的成果がみられないように思う.その上に,急増する病床数は,看護婦不足を更に深刻にしている.最近では,地方の病院でも病棟閉鎖をするなど,患者さんには誠に申し訳ないが,病院の人手不足は極限にきている.

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成人専門看護婦論 杉森 みど里
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はしがき

 看護学が小児・母性・成人と分類整理されて,教育課程内に体系化されたのは昭和42年のカリキュラム改正からである.母性はもちろんのこと,小児看護学もその専門性から,専門職化への未来展望に具体性を示しつつあるなかで,成人看護学はその新設発想の漸新さにひきかえ,現実の内容混迷は著しい.ことによると,旧カリ時代へのUターンさえきたしかねない,と心配する声さえ聞かれる昨今である.

 看護学校において,だれが,何を,どのように成人看護学を教えるか,という講師会も既に7回を重ねた.しかるに,現実は厳しく,その進展は遅々たるもので,このあたりで原点にもどって整理する必要もありそうな気がしている.この機会をそれに当てると同時に,‘成人専門看護婦’なる耳慣れぬ幻(イメージ)のぼうばくとしたベールを1枚でも取り除けたら,望外の収穫としたい.

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Ⅰ.はじめに

 私は昭和32年東京大学医学部を卒業して,33年耳鼻咽喉科教室に入りました.耳鼻科の医師になって3か月ぐらいした夏の日,北海道の阿寒から,3歳になる女の子が,おしゃべりをしないと言って連れて来られました.当時は,このぐらいの子供の聴力検査を行う施設もなければ,方法もはっきりしていませんでした.

 そのころ小児科の長畑政道,丸山博先生などと協力してこの子供の聴力を,かなり無理をして測定して,聴力が悪いから聾学校に行きなさいと言って帰してしまいました.麻酔から覚めたこの子と母親が病院の正面玄関に座っていたことを,今でも忘れません.以来,小児科と協同して,耳鼻科では河村正三順天堂大学教授などと一緒に子供の聴力測定法などについて研究を重ね,ほぼ14年間が過ぎ去った訳です.

ベッドサイドの看護

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はじめに

 リハビリテーションという言葉は,私たちにとって耳新しいものではありませんが,欧米に比べてその成果は立ちおくれているように思われます.

 寝ている状態から座る状態に,さらに進んで立つことができ,自分で食べられるように援助することは,看護婦の行うベッドサイドにおけるリハビリテーションとして,看護の重要な分野であると考えます.

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 慢性疾患々者の看護にあたっては,身体的欲求を理解してこれに応ずるだけでなく,看護を心がけることがたいせつである.

 多発性硬化症で8年間もの長期入院生活をつづけ,その間,一度の外泊の経験もなく,病院を生活の場としていた女性患者が,社会復帰への意欲に目ざめるに至った経過を取り上げ,慢性疾患々者へのアプローチを考えてみたい.

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 当院は総合福祉施設であり,年齢別入院期間内訳は下図に示すごとくであるが,その92.7%は医療保護患者で,とくに78.5%は65歳以上の老人である.

 私たちはすべての患者に対して,健康への回復,社会復帰を目標に看護するわけであるが,当院のように老人の多い病院にあっては,老齢者ゆえの生理的変化,老年期精神障害に加えて合併症が多く,積極的な医療,細心の注意をはらった看護がなされても,全治はほとんど望めないのみか,重症の状態が長期に及ぶ傾向となり,死をぬきには考えられない.

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 いかな傷病疾患でも,患者のもつ問題点とその看護の対策は,個々のニードに応じてたてられるので,千差万別であることは当然であるが,進行性筋ジストロフィー(以下DMPとする)患者の場合は,ことに個々に特殊性があり,一般患者では考えられない欲求がある.

 ここ数年来の試行錯誤により,いくらか体系づけられてきてはいるものの,その原因予防治療の手だてが確立されていない現在,看護としても画一した計画はたて得べくもない.

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Ⅰ.はじめに

 私たちは,精神病院の主治医から退院は許可されたものの,長期入院のために社会的自立の自信を失っていた精神分裂病患者に対して,病室内での看護にとどまらず,作業やクラブ活動場面での支持,就労の援助など,広範囲の働きかけを試みた.

 患者はまだ試験就労の段階で,これから,ホステルでの生活を経て自立をはかるという道程の途中にあるのだが,本例は特別な例ではなく,当センター宿泊部門利用者の半数以上を占める,ごく普通のケースである.

カンファレンス・12 大阪府立成人病センター4階東病棟

高齢食道癌手術前患者の1例 前川 ツイ子
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 当センターでは,成人病の特殊性により,老人の医療,それにまつわる看護の難しさが,常日ごろいろいろ問題になっている.

 私たちの外科病陳においても,高齢で,大手術を受ける方たちのために,老人心理や身体の特性を考え,いかにして,手術に対する積極性をもたせて,スムーズに手術を受け,術後の生活指導,リハビリテーションまでもってゆくか,検討を重ねている.

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はじめに

 病院の中での患者に関する記録というものは,過去100年以上もの間,大して変わることもなく続いてきた.その結果,今日,記録は論理性や一貫性を欠き,診療科中心の‘きれぎれな情報の単なる集積’(Weed)になってしまった.

 患者がどのような問題をもっているかを知るためには,この‘きれぎれな情報の集積’を丹念に調べなければならず,一方,患者は入院すると,看護婦・医学生・インターン・レジデントと多くの人から同じようなことを繰り返し尋ねられるのである.看護婦は重大な観察事項を看護記録に記しただけでは不十分で,言葉によるコミュニケーションにも頼るが,これは時間的にも非能率的で,また,看護婦の人柄にも左右されてしまう.

東京看護学セミナー・第9回公開セミナーから・2

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《清拭にみる安楽とは》

 身体の清潔を保ちたいということは,健康のいかんにかかわらず,誰しも持っている基本的欲求の1つであり,患者の年齢や病状,おかれている条件のいかんにかかわらず清潔を保つための援助を行うことは,看護婦の主体的な責務である.そして患者の病気の種類や程度により,入浴不可能な場合にしばしば用いられる技術として,全身清拭や部分清拭があり,それは,看護の基礎技術として,看護教育上も,比較的早い時期に教えられるのである.しかし,どんな時には清拭をすべきかするべきでないかの選択は,看護婦の判断ではなく医師の指示による場合が多いのも実状である.それは清拭が‘身体のふき方’としての手順に終わってしまっていることによるものではないだろうか.技術的な視点から,‘清拭’を見直す必要があり,それは安楽の技術化のうえにも役立つのではないだろうか.前回にひきつづき第9回公開セミナーからまとめてみた(1973.6.8.).

カラーグラフ 職場のユニホーム・16

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 ユニホームのあり方がこのごろ各施設で考え直されてきているようです.私どもでも看護部で全員の希望をとり委員会を作って考えてまいりました.そして昭和大学病院のユニホームとして作成しました.

 素材はエステル 形はプリンセスライン 衿はスタンドカラー また夏も冬も両方着られるように七分袖にしました.

カラーグラフ アイディア

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 忙しさに追われている外科病棟では 清拭という看護の基本的業務は つい おろそかになりがちである.そこで 大半を占める入浴禁止患者を対象に 清拭車を利用した短時間部分清拭を日常業務の中に組みこんでみた.

 アルファケリーを含ませたおしぼりを蒸しタオルにし 術後第1日目から回診前に創周辺を主に胸部・背部・四肢等を毎日部分的に清拭し入浴許可まで続けている.婦人科患者の場合は 青地の専用タオルを作り陰部周辺の清拭も行っている.

カラーグラフ 人体臓器の正常と異常・21

泌尿器系(1) 金子 仁
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 泌尿器は腎・尿管・膀胱・尿道である.この内 最も大切な臓器は腎臓であろう.いうまでもなく尿を作る所で左右1対あり それぞれ140gくらいである.肉眼的に皮質・髄質と分かれ 組織学的には皮質に腎小体と細尿管・があり 髄質には細尿管のみある。

 腎小体は毛細血管の塊りである糸球体とそれを包むボーマン嚢から成る.

グラフ 看護界ニュース

第25回保健文化賞受賞式,他
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 保健衛生の向上に貢献した団体・個人に与えられる保健文化賞の第25回受賞式が 9月20日 東京有楽町の第一生命ホールで斎藤邦吉厚生大臣などの列席のもと開かれた.今回の受賞者は 保健衛生を向上させた団体(個人)12 保健衛生の向上に寄与した研究者(団体)2計14件であり 国保直診施設と保健婦との連けいのもとに 母子保健対策など総合的保健活動を推進した静岡県・藤枝市(代表者 山口森三市長)など それぞれの団体(個人)に 第一生命賞厚生大臣賞などが贈呈された.看護分野では花田ミキ氏(青森県環境衛生部公衆衛生課)が 看護事業を推進し地域社会の保健衛生の向上に貢献したとして受賞した.

 保健文化賞は 昭和24年 戦後のわが国の一般公衆衛生思想の普及と保健施設の拡充強化を目的として第一生命保険相互会社が厚生省 朝日新聞厚生文化事業団 NHK厚生文化事業団の後援を得て創設したもので 創設以来毎年与えられてきた.今回の受賞を合わせるとこれまでの受賞者は団体193 個人158人の計351件にのぼり 地域的にもほとんど全国の府県に及び その業績は環境衛生 母子保健 結核 伝染病国民健康保険 医薬 衛生行政など多方面にわたっている.

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 ‘とうびょう’という深刻な また悲壮感さえただよう言葉はもう今の結核病院にはそのままではあてはまらない.早期発見早期治療の方針が徹底した今 結核という言葉の持っていた暗いイメージは 社会においてすら薄くなっている.そしてそれが治る病気だという意識 療養に経済的負担がかからないという現状が なお一層療養者の表情を明るいものにしているのだろう.

 しかし いくら治る病気 社会に完全復帰できる病気といっても 入所者は絶えないし罹患年齢は一定していない.そしてどんな軽い人でも 入所したら最低6か月はいなければならない.健康な者にとっての6か月と比べると 療養者の6か月はまさに耐えること 自らとの闘いの日々である.そしてこの闘いにこそ 看護が絶対的に必要なのである.

連載 看護の原点“助力論”・12

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ある病棟婦長の体験レポート

 さて,1月号から始めたこの“助力論”も,とうとう12回め,年末になってしまいました.予定の半分しか進みませんでしたが,もう1年間書かせていただいて,全体を完成することにしたいと思います.

 ここでは,ひとつの現実経験のレポートを紹介し,それを通して,新しい助力の方法をどうして開拓してゆくか,を少しばかり考えてみる.そして,この1年間の一応のピリオドを打たせてもらう,ということにします.

連載 看護関係の心理・12

天使にならぬために 小此木 啓吾
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看護関係シリーズへの反響

 看護関係の心理シリーズも,いよいよ終わることになった.終わりにのぞんで,本シリーズを執筆した筆者の立場とか,看護精神療法の動向,本シリーズの連載を通して出会った諸問題などを総括してみたい.

 第1に,本シリーズをお読みになった読者の方方の感想批判注文といったものから始めてみよう.恐らく,これらの反響の中に,一番身近で,しかも核心をつく論議が含まれていると思われるからである.

連載 死と看護・12

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流れ(プロセス)の中で—体験学的実習

 世の中には,死に取り付かれた人を見ることがよくあります.私たちが外来や入院患者の中に見かけるガン・ノイローゼというのが,その例です.また,ばく然と死の不安をもっている人の多いことに驚かされます.近年になって公害が問題になり始めてからは,この種の不安神経症が増加しているのは確かです.

 前者のように,ガンというはっきりした対象は,近親の死によって起こされる恐怖によることが多いのですが,依存性が強く,特に何者かの依存を必要とする人の場合に多く現れるようです.一応,簡単な聴診・触診が終わってから‘先生ガンですか?’と質問する患者にかぎって,最近,近親者をガンで亡くしたことを告白します.近親者の看護あるいは見舞いをすることによって,患者への同一化が強くなり,患者の痛みを自分のなかに取り込んでしまい,そこからの分離できない,いわば自律ができていない人にみられるのです.このケースが今日きわめて多くなっています.

連載 医学と文明・12

遺伝と人間 水野 肇
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 医学の進歩は,多少の違いがあっても,それは臨床面に応用され,ある面では患者の期待を担うが,一方では価値観の変動を求めたり,社会への大きな影響を及ぼすことも多い.このことは,いまさら‘心臓移植’を持ち出すまでもなく,よく理解されていると思う.しかも,これらの医学の進歩は,治療効果が大きく,ドラマティックであればあるほどその心理的・倫理的・経済的・社会的・宗教的な影響は大きい.それだけに,研究段階である間はともかくとして,それが臨床面に応用される瞬間から,これらの問題が急に脚光を浴び,単にマスコミの話題になるだけでなく,ひいては,その研究さえもが続けにくくなることすらある.

 こういった点について,これまで医学者はそれほど深刻には考えていなかった.‘研究は自由である.それが社会に問題を起こすのは,社会の利用の仕方に問題があるのだ’という姿勢で,万事まかり通った世界であった.ところが,‘医原病’や‘心臓移植’が出現するに及んで,医師自身も相応の反省を要求されるようになった.いわゆる‘アセスメント’である.

2色ページ 統計

平均寿命の推移 沢井 章
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 生命表とは,ある集団のある期間内における死亡状況が,今後不変と仮定した場合,各年齢のものが,平均してあと何年生きられるか(平均余命),人口構造はどうなるかを示したものである.とくに0歳の平均余命(平均寿命)は,しばしばある時期における保健福祉水準の指標として用いられる.

 日本人の平均寿命は,明治24-31年では,男42.8年,女44.3年で,終戦直後まで50年を越えることがなかった.しかし,戦後における平均寿命の伸長は著しく,昭和25年には女が,昭和26年には男が,それぞれ60年を越えた.その後,伸びはやや緩慢になったとはいえ,着実に改善を重ね,昭和46年には,男70年,女75年を突破し,英米独仏などの欧米諸国の水準をほぼ抜き,世界の長寿国グループの仲間入りをした.

2色ページ 老年病学・12

老人患者看護の特殊性 賀集 竹子
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はじめに

 近年わが国の平均寿命が延長し,人口構造が他国に比類のないスピードで老齢化の方向をたどっている.戦前戦中の生めよふやせよの多産多死型の時代から,戦後生活水準の上昇に伴って,家庭では少数の子供を注意深く育てる傾向が強く,つまり少産少死型になってきた.

 また一方公衆衛生の進展や医学の進歩,新薬の開発などがあいまって,若年層の死亡率が低下して老年期に達する人が増加してきた.更に前述したごとく,社会情勢の変化などによって出産率が急激に減少し,総人口の中の老人の占める割合が急速にふえてきたのである.一種の社会的変革といってもよい状態である.

2色ページ 症状の病態生理・9

血圧と高血圧 中野 昭一
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中年過ぎの人が集まると,健康上の話題として常に血圧,ことに高血圧の話がでる.もちろん高血圧とは,血圧が異常に高いという症候を示すことばに過ぎないが,多くの場合,この高血圧が引金となって脳出血を誘発したり,あるいは腎疾患や,内分泌疾患など比較的重篤な病気の1つの徴候として現れていることが多いために,非常に重要視され,すぐ話題にされるわけである.

2色ページ 人間発達学入門・5

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1.青年期の特徴

 青年期は子ども時代を過ぎ,やがて自立した大人になるまでの移行期であるが,この期間を生活年齢で正確に言い表すことは難しい.一般には12-13歳ごろから23-24歳ごろまでを含めている.乳児期,幼児期などに比較して,かなり長い期間にわたっており,しだがって,この間の生理的・心理的変化に従い青年前期,中期,後期と分けられることもある.

 この時期には,身体的・生理的機能や形態の成人域までの到達,内分泌腺の活発な活動による性的能力の成熟などとともに,情緒的・社会的・知的な面における著しい発達がみられる.ここでは身体的成長のうちでも特に形態面の変化を取り上げよう.

2色ページ トランスファー・テクニック・5

患者を床から抱き上げる方法 岩崎 富子
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今回は床から患者を抱き上げて,ベッドに移したり,車椅子に乗せたり,浴槽などの高い所に移す時の介助の方法について紹介したい.

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基本情報

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看護学雑誌
37巻12号 (1973年12月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

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