連載 医学と文明・12
遺伝と人間
水野 肇
pp.1626-1630
発行日 1973年12月1日
Published Date 1973/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661916843
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医学の進歩は,多少の違いがあっても,それは臨床面に応用され,ある面では患者の期待を担うが,一方では価値観の変動を求めたり,社会への大きな影響を及ぼすことも多い.このことは,いまさら‘心臓移植’を持ち出すまでもなく,よく理解されていると思う.しかも,これらの医学の進歩は,治療効果が大きく,ドラマティックであればあるほどその心理的・倫理的・経済的・社会的・宗教的な影響は大きい.それだけに,研究段階である間はともかくとして,それが臨床面に応用される瞬間から,これらの問題が急に脚光を浴び,単にマスコミの話題になるだけでなく,ひいては,その研究さえもが続けにくくなることすらある.
こういった点について,これまで医学者はそれほど深刻には考えていなかった.‘研究は自由である.それが社会に問題を起こすのは,社会の利用の仕方に問題があるのだ’という姿勢で,万事まかり通った世界であった.ところが,‘医原病’や‘心臓移植’が出現するに及んで,医師自身も相応の反省を要求されるようになった.いわゆる‘アセスメント’である.
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