看護学雑誌 34巻12号 (1970年12月)

特集 公害時代と医療

公害時代と医療の役割 野村 拓
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全国的に汚染された“生活の場”

 いわゆる“公害時代”は,これまでの日本の医学医療体制の弱点を浮きぼりにしつつある。日本の近代史のなかで,これまでに“公害時代”に匹敵するものを探せば,明治初期以来の“急性伝染病時代”や大正あたりからの“結核時代”をあげることができよう。

 急性伝染病対策は,上下水道の整備など生活環境の改善をおざなりにしたまま,ワクチンと抗生物質にたよるゆき方をとり,いまだに赤痢では例年世界第1位の患者数を出している。

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野村論文に指摘された通り,公害を押しとどめる力は“住民運動”にしかありえない。だがその力をとりまく壁はまだまだ厚いようだ。渦中に自ら身を投げうって,公害と対決してこられたおふたりにお話をうかがった

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公害は天災ではない。そしてその元兇も大方は明らかである。にもかかわらず,そのシリぬぐいまでも大衆に課し,われらの犠牲の上に,醜く太ろうとするものがある。資本である。今こそ公害の因果律をしっかりつかもう

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大衆の中に看護の顔を確かめよ,これが本特集の結論のようだ。公害を阻止する力の一端に看護はなりうるか。地域に関心を向け,住民の直接の訴えに接した学生たちの意欲がなえることなく看護の中に息づくように……

カラーグラビア 光学(ミクロ)の世界

硬骨 林 武彦
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硬骨は,造骨細胞の働きで、細胞の周囲に燐酸カルシウムや炭酸カルシウムが沈着して固くなったもので、主要部をなす中間層は,神経や血管のとおるHavers氏管を囲む(同心円状の)Havers氏骨板(特殊骨板)とその間を充填する間質骨板からなる骨細胞でできている。各骨板系の境には,無構造の接合線がみられる。胎児の場合は膠質が多く,カルシウム分の沈着が少ないので、弾力性がある。カルシウム分が増加すると,固さを増す

カラーグラビア ダークゾーン

病院 林 隆喜
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 病み病れた人間たちにとって、病院は本来人間的な暖かみに満ちた安寧の場であるはずであった。いかにも,近代科学の装いをこらした白亜のたたずまいは,清潔で快よいいっときの安らぎの生をうけ負うたかにみえた。だがはたしてそうか。クレオソートの匂いのするシーツの上で,人は孤立のさみしさと、時にはひとしきりの恐怖にさいなまれていなかっただろうか。

カラーグラビア ナーセスモード・サロン

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防寒衣といえば,カーディガンや重いコートを着るのが常ですが,今月は夜の見まわりのときなどに,すぐはおってでられるマントをデザインしてみました。

厚手のウールをベースにして,前面にブルーのトリミングでアクセントをつけた清楚で楽しい防寒衣です。

グラビア

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家庭と仕事の両立は、近ごろ看護婦の最大のテーマだ。みんなそれぞれ工夫しながらがんばっている。ここにも1人—麻生礼子さん看護婦になって、かれこれ15年になろうとしている。職場(慶応病院)では内科病棟の主任として働く麻生さんだが、家庭に帰れば1人何役も演ずる。6人家族の長男の嫁としてとついで5年、2人の子どもを生んで、合計9人という大家族である。30歳近くまで1人で気ままな寮生活を楽しんでいた麻生さんは最初、それなりの、いやそれだからこそ、非常な戸惑いがあったようだ。しかし、時間が不規則で重労働の仕事を今まで続けられたのは家族の協力と、麻生さん自身の誠意と努力と工夫があったから—。そして、これらの調和が他人もうらやむ家庭を築き上げたのだ。

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 このごろ、私はゆうつである。

 女子だけの当校で、若い娘にみつめられて、何がゆううつだ。ひとつおれに代わらせろ、などという無責任な友人たちの冗談を笑いとばす余裕もなくなるほどゆううつである。

ごぶさたしてます 勝島 喜美
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勝島 喜美・大正6年新潟県高田市生まれ。昭和11年高田病院(現・県立中央病院)産婆看護婦養成所を卒業。19年第二種保健婦養成所を修了し、長野県南佐久郡で保健婦として勤務。戦後上京し、22年東大医学部付属医院助産婦復習科卒業後、同医院産婦人科に勤務27年東北大学医学部付属助産婦学校に出向し、29年には産婦人科婦長となり、4年間仙台で過ごす。32年から現在の国立公衆衛生院看護学科勤務。途中33年にカナダのトロント看護大学に留学。今春から日本看護協会第二副会長と助産婦部会長に推され、多忙な日々を送っていられる。母上のすすめで、看護の道を歩まれて30余年、今後とも助産婦界のため、ご活躍いただきたい方である。

特別寄稿

あたらしい時代の看護職 伊藤 清昭
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日々に進歩・発展する近代医療技術の中にあって,専門職能としての看護はどのようなものであるべきか,またその条件は?その進捗を阻む“政治”の問題はさておき,業務上のパートナーとして医師の立場から大胆に整理結論してもらうと──

ルポルタージュ・健康探検

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家計簿にみる膨張の傷痕

 雑誌『婦人之友』の読者たちが,“家計簿をつけとおす同盟”というグループをつくっている。この同盟がスタートしたのは1947年。太平洋戦争がおわって2年目,戦後の生活の荒廃がいちばんひどい時期だった。物資不足とインフレにめけげず,生活苦とたたかおうという趣旨から,家計簿をつけることがはじまったのだ。

 同盟員たちの平均支出のうち,医療費,楽品代,保険費(社会保険費)の合計を,広い意味での医療費ということができる。その金額は,1950年617円,55年1,352円,60年3,029円,65年5,419円,69年8,353円となっている。これを総支出(貯金をのぞく)とのパーセンテージでしめすと,50年3.2%,55年3.4%,60年5.8%,65年6.1%,69年6.5%である。保険費(社会保険費)のなかには,健康保険以外の保険や年全もふくまれているが,家計支出との割合で,医療費がふくらんできたことはたしかである。

連載講座 心臓外科看護

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I.心臓カテーテル法(Cardiac catheterization)

 目的:心臓腔内に管を挿入して,それぞれの場所の内圧・圧波形を描記したり,管から採血して酸素含有量・酸素飽和度を測定することにより,心拍出量の測定,短絡の有無,短絡の所在,短絡の大きさ,循環動態中の狭窄部の有無・所在・程度,弁膜の閉鎖不全などを知ることができる。また肺循環動態の研究,心内誘導心電図を撮影する場合にも用いられる。

 方法:右心および左心カテーテル法がある。右心カテーテル法は多くは右大伏在静脈から,ときに左大伏在静脈,左肘関節部静脈からカテーテルを大静脈→右心房→右心室→肺動脈→肺動脈末梢へと挿入し,その各部位で血液を採取し,酸素飽和度をみる。また血圧を測定する。

医学講座

椎間板ヘルニア 若松 英吉
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I.まえがき

 椎間板ヘルニアとは,病理学的にみると椎間板の芯をなす髄核が,それを周囲から圧縮しながら取りまいている線維輪の枠から逸脱し,後方の椎管内へ脱出して隆起を形成した状態であり,臨床的には髄核の脱出に起因する隆起が根神経を刺激し,腰痛とか坐骨神経痛をおこした状態である。椎間板のあるところ,いずこにもヘルニアを発生しうるのであるが,腰椎とくに下部腰椎に多くみられ,それらが臨床的に意味をもっているので,椎間板ヘルニアというと,一般に腰椎部の椎間板ヘルニアをさす。

 近時,椎間板は組織学的,物理学的,さらに生化学的に広くまた深く検索され,椎間板そのものの性質についてはかなり解明されてきたが,椎間板ヘルニアの発生過程については,いまだ十分に理解されているとはいえない。

海外ニュースサロン

開発中の超音速機,他
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 イギリスとフランスとが共同で開発している超音速機コンコルドは,1万8千から2万メートルという高空を飛ぶので,現在の高度1万1千メートル程度を飛んでいる飛行機とは異なったいろいろな問題に直面する。

 たとえば,宇宙線を身体にあびるとか,客室内のオゾンの量,あるいはほんの小さな破損が乗客を気圧の低い外気の環境にさらしてしまうといった問題である。宇宙線の例をあげれば,北極経由でヨーロッパから日本へ毎週旅行する乗客は、吸収された宇宙線の量を計る記録計を,飛行機に乗るたびに携行することになるだろう。というのは,北緯あるいは南緯60度をこすと,宇宙線の量がふえるからであり,一年間に0.5remとされている許容量をオーバーすることになるからである。

コンピュートロジー・9 コンピュータ的世界についてのやさしい解説

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 「編集者気質というのも,われわれの代限りということですかナ」としみじみいうのは,大出版社のデスクYさんである。

 「とにかく,今の若い者ときたひにゃ,5時になると.サッサと帰りじたくだ。夜はなにしてるかと思うと,会社の仲間とマージャンだというんですね。一日会社のなかにいて,夜は夜で,また同じメンバーと顔つき合わせているってんだから,これじゃ,動物園の猿だね,まったく。外でなにがおこっているのか,どうやってわかるんだ,いったい」

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 最近はICUやCCUを開設する病院が次第に多くなり,それにともなって各種の患者監視装置も,それぞれの病院の実情にあわせて設備し,より濃厚な治療看護の補助手段として,その依存度が高まりつつある。しかし,患者監視装置というものは看護婦の代理をするものではなく,またその仕事を少なくするものでもない。

 いっそうキメのこまかい看護と監視ができることを目的とする。そこで,患者監視装置のなかでも最もよく利用される心電図・心拍数監視などについて,実際的な面から述べてみることにする。

続MSWの目

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 ある日総合病院のMSWの部屋を訪れたU子さんは,眼科に1年通いつづけた患者である。「先日来一度相談に行きたいと思いながらも,なかなかその気になれなかったが,今日は思いきってまいりました」と話した。

 この美しい27歳の女性は,ある大会社の庶務課で小まめによく働き,同じ会社の人と結婚してもう2年になる。彼女は弱視なので,細かい事務の仕事は不向きであった。あるとき○○新聞で「手術をすれば視力をますことができる」という記事を読んで,夫と相談してこの病院の診察を受けた。まもなく入院して手術も無事にすんで退院した。家事をしているとき,突然目の前が真暗になってしまった。実は網膜剥離をおこしたのである。再び入院し手術を受け,今度は無事に過ぎた。担当の医師は,「また剥離をおこすといけないから,半年間はなるべく下をむかないようにしてほしい」といい,そのためにもずっと服薬をつづけ,外来の診療を受けていた。

グラフ

カドミウム・'70
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本文特集に寄せられた,公害をめぐる種々の論議は,この時代の医療の責務について多くの示唆を与えはしまいか。地球全体に荒廃と精神の疲弊がまん延している。ここに掲載する数葉の写真はその一端にすぎない

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クリスチャーネ・E・シュワイツアー

28才,独身。かの高名なシュワイツァー博士のお孫さんである。医学の勉強のため,この9月に故郷スイスより単身来日,聖ルカ病院で外科学をおよそ1ヵ月にわたって実習した。クリスチャーネさんは医学もさることながら,音楽的素養においても,シュワイツァー博士の影響を強く受け,一時はピアニストとしての将来を思い描いたこともあるというほど,ピアノは得意である。滞在中は,日本の「シュワイツァー友の会」会員の集いに招かれたり,長崎・広島を訪れたりの多忙な毎日を過ごした。ランバレネのシュワイツァー病院で日本の看護婦さんも働けますか,と聞いたら「大歓迎,ただしフランス語ができること」だそうだ。

病気のミニ世界史

インフルエンザ 大熊 房太郎
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 インフルエンザはしばしば大流行をおこす伝染病なので,昔からその流行は記録されて後世に残されることが多く,すでにヒポクラテスも彼の著作にインフルエンザと思われる病気を記載しているくらいですが,『三代実録』(平安時代に書かれた官撰の国史書)によりますと,わが国では清和天皇の貞観4年(862年)に「咳逆」という病気が流行して多数の死亡者がでており,これが記録の上での日本最初のインフルエンザの流行であろう,といわれています。

 ヨーロッパでの流行の確実な記録は6世紀ごろまでさかのぼることができますが,おもしろいことに西欧ではインフルエンザが流行すると,いつの時代でも,そのインフルエンザにはおどけた調子のニック・ネームがつけられることになっていました。

Hello Nursing・9

勤務と英語 姉崎 宜子
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病院看護婦の勤務体制

 英国の病院看護婦の勤務時間割は,次のようになっている場合が多い。

日勤昼勤(evening off)午前8時〜午後5時断続(on spilit)午前8時〜午後1時30分 午後5時〜8時30分遅番(long morning)午後1時15分〜午後8時30分夜勤(night duty)午後8時30分〜午前8時15分

患者とわたし

6週間の天下(1) 石塚 洋子
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 北九州を流れる筑後川下流の大きな三角州は,底辺が有明海に面し,二辺が川にはさまれて,大野島と呼ばれている。川には車の通る橋がかかっているので,島というイメージも不便さも今ではほとんどない。

 7月の末の最も暑いさかり,その島はい草の匂いに包まれ,夕暮れ遅くまでい草刈りで汗まみれになっている農夫をあちこちで見かける。すでにい草干しの終わった畑は,水田に耕され遅い田植えが始まるのである。

Medical Topics

計画分娩,他 E.M.
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 医学の分野において夢は多いが,産科学の分野の夢のひとつに計画分娩がある。これは予定した日の予定した時間に出産させるということで,もしこれを予定どおりに実行することができれば,妊婦やその家族はもちろん産科医も助産婦も忙しい時間にふりまわされたり,夜中に分娩に立ち会わされたりすることがなくなり,週末も祭日もゆっくり休めることになり,まことに理想的である。

 事実これを実行している病院や開業医もいる。そういうところはたとえば月,水,金はお産の日,火,木,土は手術の日というようにする。お産の日には予定した妊婦を朝早く入院させ,子宮収縮剤の点滴注射とメトロイリンテルの挿入によって陣痛誘発を行ない,人工破膜によって陣痛を促進し,その日の夕方までに分娩にもっていくという方法がふつうとられている。

いわせてもらえば

公害と病院 井上 なつゑ
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 田子の浦のヘドロをはじめとして,この頃毎日のように,空気のことから,建物,ひいては加工食品について,公害ということを耳にする。まるでわれわれが日常生活するのに,公害ときってもきり離せないような気がして,じっと安心していられない。

 私どもの最も大切な米についても,公害とまったく結びついている。農家では害虫駆除に使う農薬のおかげで,米はありあまる農作物となった。政府では稲作を少なくするために,休ませる田をつくることを,農家に補助金を出して納得させている。農家は米を作らなくても,収入は減少しないが,このありあまった米を食べているわれわれは,どういうことになるか,今一度再考したい。

看護風土記

栃木/高知 藤村 福子
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栃木県は,明治29年県都宇都宮市の誕生により,首都圏都市として産業開発に拍車がかけられ,今後も発展途上にある県です。また,日光那須国立公園をはじめ,山と渓谷そして温泉の豊かな,風光明媚なところでもあります。県民性はまじめで,勤勉かつ従順であるといわれます。

最近の交通機関の発達により,東京へも急速に近づいていますが,一方山間僻地の多い事実も否めず,そのため地域住民にとって生活の規制をやむなくされています。

ごぶさたしています

看護教育制度にそって 勝島 喜美
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 母が若くして未亡人になり,苦労したのでしょう,昔の高等女学校を卒業するとき,看護婦になるようにすすめられました。そして今日にいたっております。あらためて履歴をふりかえり,看護教育制度にそって歩んできたことを感じております。

 終戦をむかえ,生まれてはじめて上京しました。当時,東京は焼け野原でしたが,看護界には,新しい時代が開かれる気配がみなぎっていました。

にっぽんふうぞく裁断

フィーリング文化考 亀谷 悟郎
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若ものにピッタリのことば

 フリー・フィーリング・フリーセックスということを歌いはじめたジャーナリズムがあった。ことしの秋のファッション界・雑誌ジャーナリズム界,とくに若ものの世界に媚を売らんとするメディア,その心をとらえようとするメーカーにとっては,「フィーリング」という“ことば”は,金科玉条。いたって大切な,魔術的なことばである。

 このフィーリングということばに対応する感覚を大切にし,若ものたちの心をとらえる世界を小説化し,スター作家になったのは五木寛之である。しかし,彼は,そういった感覚を小説世界の内容としたが,このことばを流行させたわけではない。

あなたと法律

土地や家屋の貸借 瀬戸口 敦子
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 土地や家の貸借関係において,貸主と借主の間の契約を野放しにしておくと,弱者の立場にある借主は,おうおうにして貸主に都合のよい一方的な条件をおしつけられることになりかねない。なかでも賃貸借(賃料が支払われる貸借のこと)の場合には,賃借人は特に厚く保護される必要があるので,そのために特別の法律(土地については借地法,家については借家法)が設けられている。

 次に,これらに関係のある問題のうちから,いくつかをひろってみよう。

あなたのなかの現代

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 10月6日未明,早大生が焼身自殺した。いく通か書き残された遺書のほかに,「とりわけ早大二文当局およびすべての二文学友に訴える」と書いた「抗議・嘆願書」があった。

 「人騒わがせなことをして申しわけありません。しかし,これは被植民地支配下の異民族の末えいとして,この国の社会の最底辺で25年間うごめき続けてきた者の,現代日本に対するささやかな抗議でもあります」という書き出しで,彼は,在日朝鮮人に加えられた差別について抗議し,さらに学生のテロについて「革マルの数度にわたるテロ・リンチなどにより,いく度か傷つき,登校の自由は奪われ,生活の破算,ざ折を余儀なくされた」「私と同様に革マルの学園暴力支配により,退学に追いこまれつつある学生は少なからぬ数にのぼる」と訴えていた。

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夏草の中に山路は埋れてわが足もとに昼の虫鳴く

 〔評〕静寂そのものの山中の感じ を伝えてあますところがない。昼の虫の音がことに生きている。平凡な素材を十分にこなしている。

なでしこのうた

10年ぶりの再会 塩沢 美代子
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 ヤッちゃんはお酒が好きである。毎日のように9時10時まで残業になる忙しい仕事から,くたくたになって帰ると,ひとり住まいの気楽な部屋で一杯やっては,ほっと自分をとり戻す。これで疲れがほぐれるから,身体がもつのだろうと思っている。

 ところで今夜のお酒は格別おいしかった。二度と会えると思っていなかったAさんを,10年ぶりに迎えて,杯をくみ交わしながら夜のふけるのも知らず語らいは果てない。はじめは10年のブランクを埋めるお互いの経過報告でいっぱいだったが,それはそのまま,安保70年をも闘えなかった日本の労働運動のふがいなさの嘆きとなり,どうしたらたて直せるだろうかという真剣な討論に発展していった。消息のたえていた10年あまりの間,お互いにどうしているかなァーと思わないではなかったが,ふとしたはずみで再会の機会にめぐまれたところ,思いもかけずともに労働運動をつづけている仲間と知り,驚きかつ喜んだ。持場こそちがえ,2人の女性は,はからずもおなじような気持で生きていたのだから,10年を越す歳月は決して距たりではなく,話はまるで昨日のつづきのようにかみ合った。一升ビンがいつしかへっていくなかで,ヤッちゃんは,“生きていてよかった”としみじみ思った。

付録 看護計画のための基礎ノート

難聴/耳嗚 大森赤十字病院看護部

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基本情報

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看護学雑誌
34巻12号 (1970年12月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

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