看護学雑誌 26巻5号 (1962年5月)

特集 整形外科看護の諸問題

  • 文献概要を表示

 整形外科看護に必要な解剖生理の知識は,人体の運動器についての解剖生理の知識と一致するが,少い紙面で全般をのべることはできないし,また,解剖や生理の専門家でない私には読者の興味を失なわずに,要領よく要点を述べることもできない。そこで,ここでは,問題を正常の起立姿勢と,歩行にしぼって,人間の諸動作の基本となる起立姿勢と,歩行が行なわれるための,身体的基礎的条件を述べたい。しかも,それらの基礎的諸条件の重要さを理解するためには,それらが損なわれたところの病的状態と比較して述べた方が理解し易いと思われるので,病的状態の説明を先にした。しかし,言おうとするところは,正しい姿勢と正しい歩行ができるためには,人体にどのような条件が具わっていなければならないかということと,更に,立てない人,歩けない人を,立って歩けるようにするにはどうしたらよいかということである。

  • 文献概要を表示

はじめに

 運動に関係する組織,器官の疾病に際していろいろな歩行障害をしめす。神経系疾患,整形外科的疾患の診断には重要な症候であり,理解しておくことは診断・看護上たいせつなことであるから概念を述べる。

歩行反射

 体移動Locomotionの際の筋運動そのものは脊髄神経領域にあるが歩行反射の統合中枢は脳幹に,一部は小脳にある。人の歩行運動は随意運動によって始発するがいったん歩行運動が開始したあとは統合反射によって無意識に歩行を継続しうる。

  • 文献概要を表示

 松葉杖歩行は独歩訓練の過程として,ある期間行うもので最終の目的としては松葉杖を不要とする方向に訓練するものですが,下肢の機能障害が高度な場合は支持性を与える意味で補装具をつけ,終生松葉杖を手離すことができない場合もあります。しかし松葉杖歩行の技術を完全に習得する事により,ベット,車椅子,洋式トイレット等より松葉杖歩行に移る動作を容易にし,砂利道や凸凹道,斜面等を歩行したり,水溜りを飛びこえたり,交通信号に従つて交叉点や横断歩道を渡ったり,乗物への降乗車を容易にする事ができ,将来はこれ等が一本杖でなされるようにまで努力すべきだと思います。

 松葉杖歩行の練習を開始する迄には,機能訓練によって下肢の麻痺を最大限に回復させると共に,上半身や上肢が自分の身体を支える事ができるように訓練を行う必要があります。その上,平行棒等で起立位でのバランスをとる事を習得させなければなりません。身体のバランスが満足にとれるようになったら初めて松葉杖歩行に入る時期が来たといえますが,この場合にも歩行にはいろいろな種類があるので患者の環境や身体の調子によって考えた上,少くとも二種類以上の歩行法を習得させる必要があります。

  • 文献概要を表示

1.はじめに

 一般に手足の不自由な子供の治療ということがどこにあるかということを理解され難いのは,一生不自由のまま残ると考えられる四肢の機能障害,或いはそれに附随して起る四肢の変形があまりにひどい場合一般には殆どその受療をあきらめてしまう傾向にあるからでありましょう。

 ここに述べる症例もポリオ罹患後両下肢に高度の弛緩性麻痺を残し,整形外科的な治療をうけることなく成長し,周囲からは殆ど不治?というあきらめの眼でみられ,自からもほぼ治療不可能とさえ信じて,ただ松葉杖に頼りつつ通学していた症例であります。

  • 文献概要を表示

 A・セービン博士の株からつくられた,生ワクチン・ビールスの経口ワクチン(キャンデー)によって,住民に集団的に免疫を与える予防活動がすすめられた結果,ソ連ではポリオの発病率が急激に低下した。

 生きたポリオ・ワクチンによって全世界の全住民が免疫を獲得したら,人類がポリオから完全に救われる実際の可能性があらわれるわけで,今やそうなるという強い確信が得られるにいたった。

  • 文献概要を表示

 整形外科的治療の多くは入院も長期にわたり,その療法の一環として,ギプス包帯の重要性はいうまでもありません。ギプス固定は一般に身体の広範囲のものが多く,四肢より躯幹に及ぶことも少なくありません。またその固定期間も長期にわたり,さらに固定の形態がいわゆる機能的肢位に準じて固定されるなどの特徴があります。ギプス固定中は四肢や躯幹の運動が制限されるため,精神的にも肉体的にも安静が保ちにくくなり,また生活面においても日常不自由な毎日を送つており,いろいろと問題が起るわけですが,私達が日常遭遇することの一つとして,ギプス患者の衣服の問題があります。本来の衣服の生物学的な目的である身体の保護および衣服の気候に対する調節がスムースに行なわれるためには,それぞれのギプス患者に適した衣服の工夫あるいは改良が必要になります。

 また家庭と密接な連絡をとり生活指導をするためにも,現在どのようなものが使用されているか,またどんなものを進めたらよいかよく知る必要があります。

脊髄損傷各期の看護

脊髄損傷臥床期の看護 弥郡 徳子
  • 文献概要を表示

 脊髄損傷はその(病因)の大部分が外傷性のもの,即ち墜落,打撃,下敷などによることが多く,極く稀には潜水性によることもある。

 年令は20才から40才の壮年期の男子に多い。

  • 文献概要を表示

I.はじめに

 産業の発展とともに労働災害はますます増加する傾向にあります。

 このうち,最も悲惨な身体障害である脊髄損傷は医学の進歩,治療,薬剤の発達にもかかわらず今なお,不治の疾患とされています。現在一般的治療として,○褥創の予防および治療

  • 文献概要を表示

緒言

 最近の重度脊髄損傷の患者に対する治療医学の向上とともに,それに併行して看護も研究の途上にある。特に最近いちじるしく発達してきたリハビリテーションは,ともすれば暗い人生観にひたりがちな患者の人生観を変え,また看護する我々の方でも,いたずらに終生廃人同様となった患者で,希望と変化のない看護を繰返えすよりも,残存機能を活用させて,患者自身の能力を訓練によって修得させ,再び社会人として復帰して,健康人と伍して生活出来るように回復訓練を行なうことは,我々看護婦としても非常に興味のある問題である。

 しかし当面にあたって問題となるのは,この回復訓練の看護というものが,そう簡単に易々と出来るものではないということである。特に重大なことは,初期からはじめた回復訓練の看護の場合,一人の看護婦が終生責任を持つことは勤務の形体上無理なことであり,そのため完全なチームワークと,完全な申し送りの実施である。うまず,たゆまず,患者の精神力を鼓舞しながら,看護婦も忍耐と持続性を養なうことである。訓練というものは,患者の症状の許す限り,休んではならないものである。そして正しい訓練で能率的に介助するのが看護婦の任務である。

  • 文献概要を表示

 最近,看護婦の不足にからんで,しきりに看護業務の再検討が叫ばれている。しかし,看護業務を再検討し“看護”本来の業務のために,その体制をつくり出すという問題は,何も,看護婦が不足しているという背景のみから生まれてきた問題ではなく,むしろ,看護業務の再検討と整備が積極的に行なわれなかったという事情が,逆に,今日の看護婦の不足の原因を招いたとも言える。

 この点について,私たちはここ数年来,いや,戦後新しい看護制度が作られたときから,繰り返し,繰り返し主張してきたことである。言わば,今日の深刻な看護婦の不足の原因が,既にその時から芽生えていたのである。

口絵 写真でわかる対症看護・2

  • 文献概要を表示

 「対症看護」という本(医学書院刊)が出版されたとき,看護の在り方を示唆し今後の方向づけをするものだと非常な好評を得ましたが,これは患者中心の看護という本来の姿を再認識しようとする動きと軌を一にしたからであったと思われます。本誌は驥尾に附して,ここに幾種かの症状に対する看護や処置を写真を通して理解してゆくという一連の口絵を企画しました。看護という語にこだわらずに治療処置の面をも併せて画面にとりあげてゆくことで,かえって症状への全体的な理解を得,さらに看護という行為の意味と価値を浮きぼりできればと念頭しています。

ナースの意見

  • 文献概要を表示

 「理想としては,学校所属の臨床指導者をおくことですが,現在は……」というのが臨床指導についての話し合いの場合よく耳にする言葉である。その度に,学校に所属する臨床指導者として働らいている私は,自分の仕事について深く反省させられる。このたび編集室からよい機会を与えられたので,日頃の反省をまとめてみた。

将来の看護婦像と実習

 臨床指導をする際に,必ず心にとめておかなくてはならないものに教育目的がある。それぞれの学校の教育目的に基づぎ,一つ一つの学科の目的がつくられ,それらを完成するために学生は,臨床実習に出ているので,学校の教育目的を知らずに臨床指導計画はたてられない。このことは,充分知っているが,さて実際の面になると,考えさせられる。

  • 文献概要を表示

 多忙な中から,1カ月交代で一人の臨床指導係を置くことにして,1年8カ月が過ぎた。その間,種々の問題に遭遇したが…最近やっとスムースにゆくようになったので,今日までの結果などについて発表させて戴きたいと思う。

 まず病棟の状況を紹介すると,ベット数は57床で,消化器疾患を主としその他に心臓疾患,頭部疾患などが含まれる。勤務員は,婦長を含めて12名(そのうち1名は看護助手)殆んどが新制度の卒業生である。

  • 文献概要を表示

 私は本誌25巻7号に「仙台市立病院における看護業務タイムスタディについて」と題し発表させて戴きましたが,それについて塚本蝶子氏から一考察という態度で非常に有益な大変りっぱな御意見を拝読し(本誌25巻12号に所載),得るところが甚大でありました。

 調査は現状の把握を目的としたものであつて,繁雑をさけるため一括して概要を述べたので,説明不充分のところがあつたことをお詫び致します。ここで一寸申し上げておきたいことは,「タイムスタディによって看護業務の内容をつかむには,仙台式でじゅうぶんであるが,そこから患者の必要としている看護業務の内容を得ることはむずかしく……」と述べて居られますが,看護業務の内容をつかむにも仙台式?(実際にはありません)でも充分でありませんので,塚本氏の御研究の成績を是非発表(掲載)して戴きたく,切にお願い申し上げます。そして御意見のような内容を是非私共,現場に居る者のりっぱな参考になるような御論文を示して下さいますよう鶴首しております。

  • 文献概要を表示

(一)

 すべて設備器具はどれをとつてもそれぞれの使用目的と密接に結びついているものであつて,能率効用はその目的に適合しているかどうかにかかっている。小児病棟看護婦室のありかたを考えるにあたってわたくしがまず看護婦,特に小児病棟受持看護婦の任務の検討から論議をはじめても,まんざらまとはずれの非難はうけないであろう。

 さて,看護婦の従事している仕事をみると,これはあきらかに他の業務から区別されるべき内容を有している。即ち患者を看護する方法において多様であり,その効果において長期にわたる特色をもっているのである。病室でみられるものは,教科書にあるような抽象的な肺炎一般,腎炎一般,消化不良症一般等々ではないのであって,そこに存在するものは,成長の過程環境の相違からそれぞれに特有な個性を,その小さな体内に潜めている小児にあらわれた肺炎であり,腎炎であり,消化不良症なのである。発病経過予後がひとりひとりことなっている。一人の患児に適当な看護が,他のものにとって必ずしも適当でない場合があるのはもちろんであって,看護婦はみずからの判断により,いつも何を採り,何をすてるかを決定してゆかねばならないのである。

救急処置講座・6

鼻出血の救急処置 川久保 淳
  • 文献概要を表示

はしがき

 鼻から出血が見られる場合,鼻腔内面からの出血のみでなく,鼻咽腔や頭蓋底骨折などからの出血が鼻腔を介して出現したり,あるいは喀血吐血の場合鼻から血液が流出することも考えられるのであるが,私が今ここでのべる鼻出血とは固有鼻腔ないし副鼻腔内から原発した狭義の衂血(じっけつ)についてである。

 これら鼻出血は日常の臨床において比較的多く経験されるにもかかわらず,狭くて暗い鼻腔の構造上,なかなか出血部位を確認することが難しく,しかも鼻領域がはなはだ敏感な感覚器であるためにわずかの刺激でも容易にショック状態,嚔,咳嗽などの不都合な事態を惹き起こし,その止血はたいへん困難なものとされている。

  • 文献概要を表示

Ⅱ.看護のあり方

 前号でのべたように,患者は—殊に重い病の患者はいろいろな心理状態にある。人により場合により異つた心理状態ではあっても,根底には一貫して,生命に対する不安がある。その不安をのぞくこと少なくすることも,看護にあたるものの役目である。身体的に治療を加えて病の回復をはかることが不安をのぞくに必要なことはいうまでもないが,さらに精神的にも不安をのぞくための努力が要る。

 最近,身体的検査の手数が多くなり,また重んじられ,その結果病は数量的にあつかわれ,病人と病気が分離しがちで,医者や看護者は病気のみにとらわれがちになる。したがって治療も病気そのものに対してのみ行なわれ,「病める人間」が忘れられやすい。これでは十分な治療といえない。ややもすると前向きの姿勢をうしないがちな患者に,「自分はなおれるのだ」という確信を誠意をとおしてあたえることである。

質疑応答欄

  • 文献概要を表示

 当産院の現状をお知らせしながらお答えいたします。

 当産院の年間分娩数は約2,000名で新生児在院数が1日約50名,そのうち未熟児および病児扱いは約15名となっております。

連載 限りある命をおしんで・12

神に召されて 工藤 良子
  • 文献概要を表示

 癌の早期発見,早期治療は今日ではほとんど全部が完全に治るようになつた……。

 その新聞記事を読んでいるうちに私はふと胸の重くなるものを感じた。

連載 詩人の話・5

川路柳虹のこと(2) 山田 岩三郎
  • 文献概要を表示

 GOTHIC式のほのほの暗い寺の拝壇冷やかな石に滴れる燭の光の冷い光り,窓の硝子の色ふかい飾模様は夢をみる。

 壁に刻んだACANTHUS白く動いた彼方には銅の聖母の瞳軟かな花のにほひと,薫香の香とあたりを回る森閑の耳の反響にふりかへる室の隅々。

連載

新薬のはなし【9】 増山 善明
  • 文献概要を表示

 今回は最近用いられている糖尿病内服薬の概略をのべることとしましよう。糖尿病内服薬として現在用いられているものは,1)メゾ蓚酸塩,2)スルファニール尿素剤,3)グァニジン誘導体の3種類があります。

連載 時の動き

日韓会談おわる,他 奥山 益朗
  • 文献概要を表示

 日韓会談は小坂外相と寉(チェ)韓国外務部長との間で3月12日から17日まで東京で開かれましたが,肝心の韓国対日請求権については結論かつかないまま終りました。

 韓国は日本が統治中朝鮮銀行を通じて日本に運び込んだ地金,地銀,終戦現在の日本政府の朝鮮総督府に対する負債や在韓法人の在日財産など8項目の請求権があると言い,日本は地金地銀は対価を払っているし,また韓国の請求権は38度線以南で,全朝鮮のものではないと言っています。

  • 文献概要を表示

ひとりの灯もれてひとすじ破芭蕉

 〔評〕独居の淋しみがしみじみとあらわれている佳句です。

附録 看護手順・15

「看護手順」の使用法—内科
  • 文献概要を表示

 本誌では附録として「看護手順」をつけています。

 * 1枚1枚切りはなしてカードにして使つてください。毎号4頁,合計4枚のカードになるようにできています。

基本情報

03869830.26.5.jpg
看護学雑誌
26巻5号 (1962年5月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

文献閲覧数ランキング(
5月3日~5月9日
)